うそうさ〜第二号室〜

フリゲ・鬱展開・ヤンデレ 万歳!

フリーゲーム「非行兄妹と後日談のアリア」感想

「傷はいつか癒えるとよく言った、なら時間の早回しもしてみせろ」

癒えるまでの苦しみを感じることすらできないくせにな前置き。

 

 

 

えー、今回は嫌気性ネオテニーさんところのフリーゲーム「非行兄妹と後日談のアリア」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

 

www.freem.ne.jp

 

 

悲惨な過去を持つ兄妹が、それでも意外とコミカルにいちゃつきつつ進むRPG。基本は一本道、クリア後ダンジョンでさらに別エンドが楽しめます。

 

 

というわけで、さっそく良かった点など。

 

 

 

ダークな後味の残るストーリー

 

まず、オッと思わされたのが、世界観の導入について。

本作は勇者と聖女が世界を救った“後”のお話。そして、魔物がすっかり人間と共存する世界になっています。

ここで斬新だったのが、作中でこの舞台設定がモノローグではなくイベントやNPCとの会話で察せられるようになっている点でした! 主人公二人は当事者でこの世界で生き続けているわけなんだから、改めて解説なんてしないというのも、当然と言えば当然なのですが……。その当然がきちんと成り立ってるのが素敵。

 

さて、この魔物との共存の歪みを示すかの如く、各地では色んなエピソードが発生します。そしてそのほとんどが、ジリっと苦い後味で終わります。そここそが好きでした!

イジワルな鬱展開じゃなくて、こう、「ああ……」とざわつく余韻を残して終わる感じなんですよねえ。好みな塩梅でした。

 

 

 

コミカルだけど激重感情

 

暗いイベントがあり悲壮な過去があり仄暗い舞台があり……しかし意外にもプレイ中はさくさくと進められるのが本作だったように思います。

というのもまず、全編を通して兄妹ががっつりいちゃいちゃしてくれているからかと!

いやもうね、兄妹もの好きな方は必見ですよこれ……! 

重めのエピソードの間にコミカルなやり取りを挟んでくれるので、シリアスの胸焼けや緊張の中だるみもなく、じっくり楽しめたように思います。

 

エンドも、舞台設定だけ見れば崩壊へと向かっていくようにも見えますが、兄妹という観点で見るとものすごくハッピーエンドだなと感じました。これまで兄妹に感情を寄せさせてくれるつくりだからこそ、すんなり受け入れられる構図だなあと思います。この、どこにフォーカスを当てるかで後味が変わるお話も、深みがあって好きです。

さらにもう一個見え方の変わる展開があるわけですが……この辺はネタバレなので、追記にて。

 

 

 

 

探索しがいのあるダンジョンと救済措置

 

落とし穴、滑る床、毒沼などなど、今となっては王道のRPGダンジョンギミックが盛りだくさんで兄妹を迎えてくれます。腕が鳴るなあ! こういう古き良きギミック好きです。

一応、ノーコストとはいきませんが、地形ダメージ無効の装備やトラップを全スキップするアイテムなどの救済措置も用意はされています。ReadMe読むの大事。

隠しボスがいたり、NPCとの会話で強いアイテムや武器に出会えたりするところも、RPGといえばコレな魅力がバチバチに出てて嬉しかったですね~!

 

ダンジョン攻略だけでなく、バトルもなかなか手強い本作。故に、道具屋さんはきっちりとチェックしておくことをおススメします。

特に本作はセーブポイントが限られているので、どこでもセーブできるアイテムは個人的に必須でした。アイテム欄の一番上にあるから連打でうっかり使っちゃったんですが、まあまあそこはご愛敬で。99個買いは正義!

 

 

 

 

装備品やアイテムの絶妙なフレーバーテキスト

 

あとちょっとしたところだと、装備品の名前や説明文が好きです! 

アルマちゃん、キャラチップはちまちま可愛いのに装備品は魔女とか女王とか夜の娘を想起させるものが多くて、ドキドキしちゃうんですよね……。へへ……。ノエルの方も短刀二振り連撃や即死効果など、どちらかといえばシーフやアサシンっぽい感じで、作中で言われている「チンピラ」感がしっかり出ててニヤニヤしました。手先と力で生き延びる小さき者、大好き。

 

また、注目したいのが魔物図鑑! 説明文がアルマの視点で見た魔物の所感、というところがとても好きでした!

どういう生態をしているか、あの世界でどういう扱いになっているか、といったところが読めるのも好き。文量もほどよく「読み物」って感じで、楽しかったですね~。

 

本作は低確率ドロップ品があるんですが、それについてもきっちり記載されていてとても親切なつくりでした。欲を言えば、ボス戦は取り逃がし回収不可というのが寂しくはありますが……。オートアナライズの装備があるだけでもかなり配慮が利いていてありがたいあなと思う次第です。

夜は図鑑が読めなくなる仕様もどことなくリアルで好き。

 

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

  • 庇護と執着の境界線上にいる関係性
  • 嫉妬や依存
  • 震えや憂いはありつつもカラッと成し遂げる復讐譚
  • 兄妹いちゃいちゃ

などにピンとくる方におススメです。

 

 

追記ではネタバレ感想

 

 

 

 

 

 

ネタバレ注意!

 

 

 

アリア

 

クリア後のイベントを全てこなしてやっと、聖女の動機がわかるというこの構図がとても素敵でした~……! タイトル回収シーンで胸が震えましたね! 

勇者の求めた優しい世界をせめて叶えようとしたんだろうな……。勇者は聖女の嫉妬による暴走を知ったら恨むのかなあ……。なんか、彼なら許してしまう気がして、いっそうつらいなあ。こうして想いを馳せることはあっても作中で回答が得られないところがまた、「後日談」で好きです。

 

そしてこれ地味に良い意味ですんごい皮肉だなーと思った点があって。それが町中のNPC達なんですよ。

民家にいるスライムやミノタウロス?はペット扱いされてたし、人魚は客寄せパンダ扱いだし。なんかね、魔物が人間より下の生き物として扱われてる感じがしたんですよね……。これは穿った見方かもしれませんが。

ただ、少なくとも対等には見えない。ここが、結局のところ聖女の内にいる魔王からの脅しで作った、かりそめの優しい世界という感じがして……刺さりました。

 

これを踏まえると、ノエルとアルマがいなくても、いずれあの共存は壊れていたと思うんです。

だからこそ、アリアの「道を踏み潰したのがあなたたちでよかった」みたいなセリフが、改めてジーンときました。

 

 

 

 

アルマ

 

初めは毒舌がきつくて少し苦手に感じていたんですが、一言喋ればいいくらいの頃もあったというエピソードで軽率にころっと見方が変わってしまいました。事情も知らずにごめんな……!

ただ、こういう風に見え方が変わる時点で、私自身もあの世界のモブと同じな気がしちゃうんですよねえ……。うぅ。うぅうう。そういう意味でも、没入感のあるキャラでした。

あと単純にキャラ属性として、ヤンデレ一歩手前薄幸依存型妹は素晴らしく良い。

 

ヤバそうな人間に対する嗅覚の鋭さが素晴らしい……と思ったのですが、そもそもヤバくない人がそんなにいない世界だったことを今思い出しました。はは……。NPCのセリフも凝ってて、たまにドロッとしてていいですよね。あの世界。

魔物図鑑もそうですが、警戒心の強さやドライさがきちんと描写されるからこそ、お兄ちゃんへのデレデレ具合がよく分かって素敵でした!

お兄ちゃんの方を横目で見るモーションと、箒に乗るモーションが大好きです。

 

 

 

ノエル

 

スタッフルームのシスコン要素抑えたというコメントにぎょっとしました。マジで!? あれで!? 内側にはもっともっと濃くて熱いアルマラブな気持ちがこもってるんですかね……にやにやしちゃいますね……。

アルマが単独行動する時のセリフが印象に残っているからというのもあるかもしれません。

戦闘中のポジションもそんな感じで、ひたすらアルマにヒーリングをかけつつ気が向いたら二回攻撃する係でした。アルマ絶対倒させないマン。

 

あと、ノエルはキャラがというよりちょっとしたシーンが印象に残ること多かったかな。マリスにズバッと言うこと言うシーンはこっちがスッキリしました。

常に攻撃的なんじゃなくて、最低限でも得になりそうなら人の言うことを聞く、世界憎しで目を曇らせずにちゃんとアルマを守るためなら融通効いてる感じが好きです。人間社会の中でアルマの盾になり続けていたであろう立場が垣間見えるので……。

 

 

 

 

いやー、やっぱ震えたのはタイトル回収かな!

クリア後ダンジョンをプレイするかどうかで満足度は大いに変わる作品だと思います。見逃がしている方は是非!