「悪魔に情け容赦は似合わない」
黒翼にふさわしい生き様を探しに行く前置き。
えー、今回はpineteaさんところのフリーゲーム「Destroy」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。
しらみつぶし探索系の脱出乙女ゲー。攻略無しだとかなり難しそうですが、私は遠慮なく攻略頼る派なのですいすい進みました。公式で出していただけているのがありがたい!
というわけでさっそく特徴など。
魔物と人間の両面楽しめる豊富なエンド
初回の何も見ないで進んでいた際のプレイ時間はだいたい20分以下、攻略を見ると10分くらいだったのですが、その短さの中にエンドは14種類もあるという豊富さでした。
銃器が出てくることやヒロインがセイレーンという魔物なこともあり、世界観はどことなく血生臭い雰囲気です。中には“魔”を生かしたエンドもあり、大変興奮しました。好きなんですよそういうの。
前向きなエンドもあり、魔物と人間の対比がエンドの色にも出てるなあと思わされます。
惜しいのは、全体的なボリュームがコンパクトな関係で、鬱の余韻が少なめなところでしょうか。この手の短編ゲーは分岐をセーブロードしてハイ次、というエンド回収作業になりがちでもあるので、せっかくの重苦しいエンドが味わいきれなかったのは惜しかったなあと思います。
扉から出る前に長めの会話イベント等があるともっとのめりこめたのかも。
とはいえエンドが多いのは嬉しいことですし、何より悪役であるロイのセリフがどのシーンでも必ず一つは響きました。セリフ回しがね、かっこいいですよね……ずるい……。
極力無個性寄りの無口主人公
乙女ゲーであってもヒロインのキャラや性格ががっつり味付けされているもののほうが多い中、この作品はとことん無個性寄りです。
設定付けされているのは外見、種族がセイレーンであるということくらい。声を奪われているので話すことすらありません。
面白いなあと思うのは無個性寄りでも行動に個性が出ていること。エンドによって展開の闇の濃淡が異なるので、場面によっては主人公の行動が突飛に見えたりひどくドライだったり、あるいは情深く見えたり、万華鏡のように印象が変わります。
“私が”というより、“この子は”黙ったままの胸の内でどう感じてどう考えて行動したんだろうという想いを馳せたくなる主人公でした。
余談ですが私、セイレーンと言えば人魚寄りのイメージがあったので、羽根の話をされてたいそう驚きました。ググってみたところ魚系の印象は中世からで、それ以前は鳥系だったとのこと。ほへー。勉強になります。
あちこちに仕込まれまくるアイテム
マップが歩きやすくまとまっているのに対して、得られるアイテム量がなかなか多めなのも特徴の一つです。序盤は探索範囲が狭いこともあり、探すまでもなくぽこじゃかアイテムが手に入ったのでテンポの良さに驚かされました。
ただ一点個人的に、例のカギはもっとわかりやすい位置に配置しておいた方があの選択肢の意味も出るのではないかなーと思ったり。すぐにでも外に出れる状態で鍵を手に入れたこともあって、あの選択肢が脱出降参の意味だとわかるのに間が必要だったので……。
謎解きはほとんどなく、練り歩いてしらみ潰せばなんとかなるので、そういう意味では難易度低めなのかもしれません。暗号が2周目からは時間短縮できるのもひそかに助かりました。
他、ステンドグラスのようにパッと美しいエンド画像や、細やかな攻略対象の台詞反応など、短いながらも良点は多め。
気軽にプレイできるので、紹介ページ等見てピンとくるならプレイしてみると良いのではないかなあと思います。
追記ではネタバレガッツリのエンド一言感想。
同作者様の他フリーゲーム感想記事↓
ネタバレ注意。エンド名表記だったりキャラ名表記だったりブレてます。プレイ順というか、たどり着いた順。
・お化け屋敷の秘密
初エンドがこれで大変困惑しました。そんな、そんなつもりでは……! 私はただアイテム取得らしきフラグを回収したかっただけ……!!
・ウェルガー良
そういえばこの子名前も言えないんですよね……としみじみ。
・ウェルガー優
お日様が眩しい。こう繋がるか―としみじみしました。ウェルガーは下っ端っぽいので根っこまで黒には染まっていない気もしますし、人好きされる後輩属性な印象を受けるので、先行きは明るそう。
・ウェルガー護
こういう展開好きです。好きです。大好きです。
ウェルガーの中には純然な惚れた気持ちのほかに、ここまでしてくれたこいつを手放せないとか、目を離すと何が起こるかわからないとか、そういう罪悪感やら恐怖心やらもあるとなお美味しいなあと思います。
目が、の辺りはちょっとピンと来なかったり。力を使えば使うほどどこかが不自由になっていく設定なんでしょうか?
ロイの「頭のなかを~」の台詞にぞくぞくしました。一文で感じるえげつなさ。無口主人公はピュアだと信じたい派なので、純真だけど本性は魔、みたいな萌えをぞんぶんに味わえました。
・ウェルガー逃
タイトルがなんかすごく良い。響きます。この後のウェルガーにはなんだかんだでセイレーンのことをほどほどに思い出として昇華しつつ、牢から監視ありきで解放されて、本当にこのままで良かったのかと思い悩みながら組織の末端に戻ってほしい気持ちでいっぱいです。こういう猪突猛進なキャラが過去の後悔を引きずり、へらへら笑う時があっても本気では笑えないみたいなのが性癖です。
「俺は金と権力に許されている」は名言だと思います。
・ウェルガー殺
てっきり俺は受け入れる等々言われるのかと思いきやいったん怯まれたので、ウェルガーはまっとうな感覚してるなあという印象が強まりました。いやなにせロイは冷血漢だしドートは肝座ってるので……。ここで引くことで逆に最後に腹をくくってやる男らしさが光る気もしますし、タイトルが皮肉すぎて痺れます。
・ソレジャナイ
ボーパルバニーだこれ!! まさかエンド種別にウサギが含まれているとはびっくりでした。
・帰還
かなりドライなエンド。でも一番あり得そうな話ではあるなあと思います。
誘拐されて勝手に逃げ出そう言われてこちとら振り回されてたまったもんじゃないよなあと。そりゃ愛想も尽きるというか、そもそもないよなあと。
・ドート優
かなりロマンティックで驚きました。おじさまとなると格が違う……!
同じ展開でもウェルガーの時は行き当たりばったり感が強かったですが、ドートだとかなり安定感があって、なるべくしてなったという感じがしましたねぇ。キャラの違いでこうも見え方が変わるんだなあと驚かされました。
・ドート殺
このエンドだと主人公はドートの想いすらも何とも思っていなさそうな感じがして悲恋萌えがたぎります。
・ドート良
なんかほとんどのエンドで書いてますがやはり例に漏れずタイトルが痺れます。エンド画面の透き通るような色使いも心に刺さる。
・ドート逃
なんとなくドートさんは死に急いでいる感じがするのでこのエンディングは最も鬱だろうなあと思います。
・ドート護
この人は本当に色々と背負いたがるなぁもう! 感謝でも愛でもないのがまた。
早いところあらゆる煩いごとを放り捨てて自分のために生きてほしいです。
・囚エンド
最後までデレないそこに惚れます。本命かもしれない。適当に手慰みで弄んでふと気まぐれに切り捨てられたいです。でもあの人はこういうタイプの女一番嫌いだろうなー!ジレンマー!
なんやかんやと全回収に燃えました。