「どうやら世界の危機らしいけれど私達には関係ないわね?」
やること済ましてすっきりしちゃおうな前置き。前置き。
えー、今回はゆきやどりさんところのフリーゲーム「AshSnow Eve」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。
一本道、面クリ型のRPG。ほんのりと鬱展開。
同作者様の次作『エクスシアの翼(以下エクスシア)』とも関連のある作品です。本作→エクスシアの順番で遊ぶとより楽しめるはずですが、私はうっかり逆順でプレイしちゃいました。てへへ!
というわけで、エクスシアの感想が前提の記事になっています。ご了承あれ。
では、良かった点など。
仄暗い世界観とゆるいじゃれ合い
鬱蒼とした森の住処を抜け、とある目的のために街に向かうところからお話は始まります。夜になると襲い来る化け物、怯えて閉じこもる人々、そして双子の目的等々、舞台設定はかなり暗めです。また、中にはぎょっと目をむく鬱展開もあり、全体的に仄暗いムードが漂っています。好きです。
一方、キャラや掛け合いはかなり明るめ。
主役の双子からして二人の世界でマイペースに進んでいくおかげで、ほどよい距離感を保って楽しめました。感情を入れ込み過ぎて心がザクザク刺される作品もそれはそれで大好きなんですが、この作品はバトルがテンポよくさくさく進みますし、ストーリーもこのくらいの温度感が丁度いいなーと思います。
事あるごとにしれっといちゃつく双子
やっぱり好きなのが双子の仲の良さです!
ちょっとした会話の隙にいちゃつくのを忘れない心意気。弟“で”遊んでいる感じも姉弟の力関係があっていいなあと思います。「だ、騙されないぞ」がすごくツボでした。
あ、終盤からアッシュの女装話が出てきたり、どことなく男の娘風に扱われるネタが少しあったりします。といっても軽いものだったので、この手のネタ苦手な自分も無難に受け入れられました。
弟側も何かとデレて好きアピールをぽろっとこぼしてくれるのがたまりません。
双子のドット絵の身長差も狂おしいほど好きなんですよ。バトル画面で立ってる二人を見てるだけでにこにこできてしまう。力関係はスノウのほうが上っぽいのにかばう側に立つのは弟っていうところも萌えます。
かばう技の説明文もすごくときめくんですよね! 味方を、じゃなくて、姉を。こういうさりげないところが凝ってる作品大好きです。
難易度(比較的)易しめのバトル
バトルも進め方もエクスシア同様、さくさく進んでバトルが熱いシステムです。
エクスシアのほうでは敵のカウンターがかなり強かった印象でしたが、本作はアビリティにカウンター無効がある他、デバフ技も豊富なのでまだ手心を加えられている印象でした。敵の一撃でHPが半分消し飛ぶこともあまりないので、やっぱり未プレイの方は本作でバトルシステムに慣れてからエクスシアのより高みに挑むのが良い流れかなー、なんて。
代わりに全体回復技が無いので、アイテムや集気法、ガード技をけっこう重宝した覚えがあります。それでもだいたいは初見クリアできた、はず。
ギリギリで勝利してガッツポーズを決めるバトルも好きですが、「しっかり対策すれば意外と勝てる」くらいの難易度も達成感があって好きです。
あと、バトル中にたくさん動いてくれるドット絵も必見です!
スノウがコマンド選択中にゆーらゆーらしたり、攻撃時に設定どおりおリボンを解いたりするところが細やかで素敵でした。
とまあ、こんな感じで。
双子がらぶらぶしながら仄暗い世界をサクサク進むRPG。
この響きでピンと来る、私のような方がいるなら是非。
追記では次作の内容も含んだ考察や解釈やストーリーの気になったところなど。
同作者様の他フリーゲーム感想記事↓
ネタバレ注意。
いやあ、双子のいちゃいちゃに注目しすぎて肝心のストーリーがしっかり読めていないんですよね! はっはっは。
一日おいて、「そういえばあれはなんだったっけ」と思うことが出てきたので、一個ずつ羅列していこうという試みです。
エクスシアのほうもがっつりネタバレ含むので、両作クリア済みの方向け。
また、『AshSnow Eve』のリメイク前である『白の双子と赤い星』、『エクスシアの翼 亡国の凶星』のリメイク前である『エクスシアの翼(無印)』にもどっぷり触れております。
時系列
私は書きながら・話しながら考えるタイプなので、雑記をここ(ふせったー)に書いたのですが、まあ見づらいので要約すると、
エクスシアの伯爵手記前半→Ash本編→手記後半(帝国滅亡)→エクスシアオープニング→マガイモノ発生→エクスシア本編→タイムリープして手記後半の前へ乱入→戻っててハッピーエンド!
なのかなーと思っています。
これが大前提。
「17歳」で「同じ時代に存在できない」
エクスシアのほうで気になっていたのが、この二つのセリフの矛盾だったんですよ。
全員がマガイモノという設定なら寿命が消えるのは理解できるんですが、それで17歳って言い切れるのはどういうことなんだろうなーと。外見年齢だとしたらあの双子は不老不死になるわけですよね。一方でエクスシア世界のマガイモノは一応人間コミュニティを築いて親の概念を持っているっぽいので、不老というわけではなさそうで、混乱してたんです。
マガイモノもアルゴルも同じもののはずなのにどうして特性が違うのか。
で、結論として双子はマガイモノではなく自然発生したアルゴルだから、特別に肉体年齢だけ固定化した不老不死になったのかなー、と。
リメイク前等もプレイした関係でEve内に情報開示があったかはうろんですが、ともあれAshのほうをプレイして、双子はマガイモノとは別の産まれ方をしているので外見年齢が固定化されているんだろうという解釈で落ち着きました。
マガイモノとアルゴル
作中で双子がちらりとマガイモノ=アルゴルだと言われていましたが、前述のとおり自分は少々起源が異なるものとしてとらえています。
リメイク前のAshとリメイク前のエクスシアであれば夢から発生し連鎖増殖していく化け物として繋がるんですが、リメイク後の無印エクスシアは「天使が人の皮を被せたマガイモノ」というものが増えているので、設定が一つ増えるんですよね。
……ですよね? 自信が常にないのに断定形を使うぞ!
ともあれ。
この世界観の中でアルゴルと言えば、
1.赤い凶星(人に夢を見させるアルゴル光を照射するための人工衛星・手記参照)の影響を受けた人
2.アルゴルに襲われアルゴル化したもの(目覚めなくなった人の死体が化物に・手記参照)
3.夢から自然発生したもの(双子)
4.人工的につくったもの(ドロシー、コロナ)
であり、「四つの翼を喪う」という表現で四つの起源があると示してあるのかなーと考えてます。で、中でも2はリメイク前でこそいたけど、Eveと無印エクスシアでは登場しなかった……はずなので、実質は3つの設定が生きていることになるんですかね。考え違いだったらすみません。
マガイモノと言っても上記の四つの条件を満たしますが、ここに
5.元アルゴルの人間
が加わりました。
私はエクスシアから入ったのもあって、5のパターンでしかアルゴルマガイモノは生まれないんだと思い込んでいたんですよねー。それで双子の時系列で大混乱してたようです。納得!
伯爵
続いて以前にエクスシアの記事でも書いた「ドロシーって誰だったんだろう」問題。
とりあえずエクスシアの手記は伯爵のものであり、当時は正気だったのだろうと考えると、伯爵が凶星こと人工衛星を作った本人あるいは中枢にかかわる研究者だったのかなーと思います。
いまいち伯爵のこともわかってないんですよねぇ。Ashでは決着をつける前に逃げられてしまいましたし。
エクスシアの討伐で出てきた顔の無い男というのが伯爵かなとほんのり睨んでもいるのですが、もしそうだとしたら続編に出場するフラグを立てておきつつ双子の知らない間に吹っ飛ばされてることになるのでそれは、どうなんだろう。違う気がしてきました。
とりあえず、伯爵はまず双子の出生や設定を明かすための存在として当時は生まれていたと思われるんですよね。で、双子の設定ってEveではちらりと人外を匂わせて終わるのみなので、結果として彼が構成上行き場を無くしたのかなーとぼんやり思っています。
説明役であり本筋には特に影響のない人物、とばっさり切り捨てることもできるのかも。そう言い切るには惜しい人材ですけども。
Eve
そしてエクスシアのラスボスこと彼女ですが、やっぱり彼女の設定周りも不明でした。あの世界観は夢がかなりの力を持っているようなので、彼女は人工衛星の動力であり常に夢を見続ける眠り姫だということぐらいはぼんやり理解したのですが、うーん。結局どういう立場の人なのかなーとかなんで動力に起用されたのかなーとかは謎が残ります。
もしかしてドロシー=Eveなのかなとも思ったのですが、どうともとれるので、うーんうーん。
あくまで舞台装置、という解釈で収めておくのがいいかも。
リメイク前を踏まえて
さて、公式サイトのほうに名前がちらりと載っている通り、本作は『白の双子と赤き星』と名の付くリメイク前作品があります。Eveのみだと疑問点が浮かんできたのでそちらもプレイしてみたところ、やっと構成の意図?みたいなものが見えてきた気がしました。
リメイク前の二作は思うにどちらも「主人公二人」の話としてスポットが当てられているんですよね。二作を繋ぐのはマガイモノではなくむしろ「夢の力」の設定。
一方でリメイク後は二人だけでなく「世界観」にスポットが当てられているんだと思います。なので、世界の謎を解き明かすためにエクスシアのラスボスがEveに変更されたり手記が追加されたりしたのかなと思います。
エクスシアでサロスが報われたりサイモンが増えたりしたのも、キャラを限定してスポットを二人にだけ当てる必要がなくなり、どのキャラもまんべんなく描写できるようになったからなのかなーとかとか。
逆に双子は本人たちが異形側であり、もう世界設定をある程度知っているのであまり構成が劇的には変動していなかったのかなーと思っています。
スノウも好奇心や気まぐれで介入することはあっても、他人の事情を面白おかしく引っかき回るタイプではないです。何よりどの世界にいっても互いが支えで二人で生き続けるという強固な絆およびいちゃいちゃがあるので、どこにいっても変わらないのかもしれません。
ともあれ、どの世界線でも重要なのはお互いの絆かなーと思うので、
サロス健気好き!!とか双子永遠にいちゃついてくれ!!とかの私のとめどない萌え嗜好は正しかったんだということで無理やりいい話っぽく終わろうと思います。ああ楽しかった! 色々考えたくなるゲーム大好き。
とまあ、こんな感じで。
熱い戦闘バランスもスタイリッシュなバトルモーションもにこにこできるいちゃいちゃも仄暗い舞台設定も、全部肌に合う作品でした。