うそうさ〜第二号室〜

フリゲ・鬱展開・ヤンデレ 万歳!

フリーゲーム「アサルとスパイ」感想

「とにかく誠心誠意謝って逃げときゃなんとかなる!」

最悪責任者に任せような前置き。

 

 

えー、今回は、エビカツドンさんところのフリーゲームアサルとスパイ」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

タイトルからしてなんとなーく殺伐なイメージを持っていたのですが、とんでもない、超絶ハイテンションな一作でした!なんと主役は企業スパイ、会社の新商品情報や謎のデンノウ技術を巡ってどたばたする、社会人必見のギャグADVです。

というわけで、見どころなど。

 

 

 

個性どっぷりガンギマリなキャラクター達

登場キャラの個性がとにかく濃い!

作中の言葉をお借りするならガンギマリ。

そうです、そのくらいとんでもなくハイテンションなんです。

ものすごく人を選びそうではありますが、尖ったキャラを堂々出せるのもやはりフリゲならではかと思います。ここまで突き抜けたキャラを生き生き動かせるのは感服の一言。

 

初対面で圧倒され、繰り出される遠慮ない台詞においおいと突っ込みつつ、終盤にはすっかり愛着が湧いてしまう――というのが定番の流れでしたw

お気に入りはウルチヨさんです。いいですよね残念な美人さん。見た目クールビューティなのに思考が幼な可愛いのもツボでした。

 

 

とにかく動く、見どころたっぷりのグラフィック

キャラの立ち絵が豊富で、ポージングに躍動感あるものが多くて見ていて楽しいです。カノの煽り立ち絵を初めて見た時は笑いが止まりませんでしたw アメリアのCIA紋処ポーズもつい真似っこしたくなります。

単なる差分だけでなく、ほとんどのキャラに2種類以上の立ち絵があるというのも驚き。モブキャラにも立ち絵がある豪華仕様です。また、キーワードの色変えや大文字表記など、メッセージ側の演出もなかなかにパンチが効いています。

 

ただ一方で、ビジュアル面に凝っている分しんどいところも。私はver1.08でプレイしたのですが、画面にフラッシュ効く演出が多くて、慣れるまでかなり小休止を挟みまくりました。というわけで、長時間プレイは避けたほうが良さそうです。アイキャッチでも休憩をほどほどにって警告されてますしね!

 

そうそう、場面の区切りで差し込まれるアイキャッチもすごく面白いです。自作の宣伝を自作でするトートロジーっぷりにこれまた笑いました。

PCの壁紙にしたくなるようなおしゃれなものから、ぶっ飛んだギャグに走っているもの、FFやジョジョのパロディなどなど種類も盛りだくさん。アサルがぬぼっとした表情でビル前に立ってる絵が一番好きです。

 

 

メタメタぶっとびギャグストーリー

言ってしまえば何でもありです。思いっきりメタな警告が飛び出てくることもあれば、連想ゲームのようにキャラが次元を超えたり超展開に突入したりすることもあります。カオスです。

しかしながら一方でこの作品をまとめるとするなら、企業スパイ・アサルの成長の物語、と一言で片づけられるのも凄いところ。そう、あれだけ、あれだけカオスなごった煮状態なのに、本筋はしっかりまとまってるんです。あのドタバタ劇がここまでまとまるとは思ってもみませんでした。

 

多少、この世界はこういうもんなんだ!の勢いで片付けられてしまい消化不良なところはありますが、それが許されるだけの世界観が作れているのも確か。キャラ設定に関する複線も凄まじく、ちょっとしたこぼれ話や一発ネタが終盤に絡んでくることもあるからびっくりです。

ギャグセンスと崩壊上等のノリが最後まで冴え渡るストーリーでした。

 

 

絶妙なタイミングのSEと盛り上がるBGM

何より有難かったのがSE! アクションパートに入る直前は大抵の場合、デデンッと警告用のSEが鳴ってくれるので、事前セーブが捗りました。話の要所でSEが入るのは、ロンパや逆裁などを彷彿とさせてくれます。こういう音の面での演出ができるのもゲームらしくて良いですよね。

それぞれのキャラに専用のBGMが当て嵌めてある、ような?

曲を聞いて「来た!」と感じられるのも盛り上がりました!

 

 

怪しまれないよう切り抜ける、かんたんアクションシステム

基本のノベルパートの他、潜入先でイドウやハッキングを試みる選択式の探索要素もあり、ゲーム性もしっかりしています。失敗してもちょっとした会話イベントがあったり伏線が詰まっていたりして、ただで転ばずに済むのが良いところ。

 

何よりのアクション要素は、オリジナルシステム「キンキュウイベイジョン」です。

潜入先の警備員などに見つかると起こるこのシステム。指示されたキーを時間内に打ち込むだけの簡単操作ではありますが、こういった要素があるのと無いのとでは緊張感がやっぱり大違いだなーと感じました。

ただ一か所、“連打”だけはややこしかったかなと。実質2・3クリックで十分なので、連続入力の際にうっかりかちかちしすぎて別キーの判定を失敗することが多かったです……。

 

さらにもう一つのアクション要素として挙げられるのが「アサルスロット」。これまた敵と出くわした際に起こるシステムで、スロットで選ばれた3つの選択肢のうちどれかを使って相手をやりすごします。選択肢の幅や反応パターンが多く、キャラや遭遇する相手によって対応が変わるのも面白かったです!

 

 

 

他にも、収集アイテムのコインやギャラリー、自分で設定できる決め台詞など、細かな遊び心が満載の一作でした。ただ読むだけに留まらない、コアで笑えるゲームをお探しの方にオススメです!

フリーゲーム「仮にAくんとしよう」感想

「彼が何者か誰も知らない」

知り合いじゃないと言うに言えずなんとなく話を合わせることってあるよねな前置き。

 

 

 

えー、今回は、クロチカさんところのフリーゲーム「仮にAくんとしよう」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。ダイレクトには書きませんが、ネタバレになるかもしれないので、察しの良い方はご注意を。

 

選択肢分岐ありのホラーノベルゲーム。夏にぴったりなホラーの雰囲気ではありますが、あえてこの季節に感想を投稿します。舞台は吹雪なのでセーフセーフ。

というわけでさっそく魅力的な点など。

 

 

 

手をつけやすい短編集

プロローグ終了後、お好みの怪談を二択で選びながら読み進める流れです。どの怪談も10分程度の短いものなので、まとまった時間が取れなくても気軽に一本分楽しめるのが魅力の一つかなと思います。それに、ホラー独特の緊張感が長続きするのも、このお手頃な長さゆえのものかもしれません。

 

好きなのは「異世界から」、怖かったのは「二度と会いたくないやつの話」、トラウマになりそうなのは「みえないおともだち」でした。

なんだろう、単純にお化けの仕業でしたって言われるより、この手の得体の知れない何かが出てくる話のほうがぞっとします。身近に感じるからかな。

身近と言いつつ、どの話も怖かったんですけどね!

 

 

 

音の効果を最大限に使った演出

 

プレイしていて強く感じたのが、BGMの使い方の上手さでした。静と動の使い分けができていると言えばいいのかな。くるぞくるぞ、とドキドキが高まっているところに合わせてBGMも盛り上がってくるので、緊張感が倍増します。未プレイの方は是非イヤホンでプレイして頂きたいものです。

私が思うに、ホラーで重要なのは雰囲気作りですよね。この、何かが起こるぞという盛り上がりこそが恐怖を産み出すと言うか。気にしなきゃ楽なのに、ついつられて色々と考えてしまって背筋がぞわぞわしちゃったり。

この雰囲気作りに気合いを入れているのがひしひしと感じられる作品でした。

 

 

 

シンプルながらも余韻の残るエンド

 

エンディングのうち、トゥルーに当たると思われるAくんエンドはぞっとする恐怖が残るエンドです。

特に選択肢の片方、電気消す、が怖すぎて。さりげなくいるこの感じが。ひぃ。最後の伏せ字、×い×んは何だったのかなーと気になるところ。恥ずかしながらプレイ中は全然見当がつかなかったんですが、どうも他のサイトさん等を巡っていると瓶の怪談に関係あるあのワードが有力のようですね。ふむふむー。

ゆるーいエンドのほうも好きです。いやー、ああくるとは思わず、PC前でずっこけそうになりました。やられた!w

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

さくっとできる怪談もの、ホラーものをお探しの方にオススメです。

 

 

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フリーゲーム「カイロスの夢貸し屋」感想

「便利なものには裏がある」
かといって不便も嫌な前置き。

 

えー、今回はSereneさんところのフリーゲームカイロスの夢貸し屋」の感想をつらつら書きますね。一部レビュー風です。

 

選択によって展開が変わるノベルゲーム、仕様はなんとFlashPlayerで、特別なインストールなどはいりません。キラキラ動くマウスの軌跡は美しく、ついついキャラの周りをくるくる回らせてしまいます。

 

というわけでさっそく、良いなあと思った点について。

 

 

可愛く綺麗なイラスト

イラストはノベルゲーらしく、基本は可愛い雰囲気です。一方、背景などは美しく、雰囲気が出ていてときめきます。特にあの歯車の部屋は見惚れてしまいます。
時々出てくる一枚絵もはっとする印象のものが多いですねぇ。

 


選択通りのシナリオ

この作品は、「選択」がかなりの割合を占めています。なるほど見事に、選択肢通りのエンドを迎えることができるでしょう。この辺り、プレイヤーとの齟齬を少なくしつつも、予想外の方へ転がっていくシナリオには大変楽しませてもらいました。
ノベルゲームの定番をうまくシナリオに組み込んだなあと思います。

 


ED曲

特定のEDに行くと、テーマ曲とスタッフロールが流れます。
鳥肌が立ちました。もちろん、良い意味で。テーマ曲もいわゆるゴシックっぽくてカッコよく、惜しげもなく使われる立ち絵や新規絵に目が離せませんでした。終わってもちょっと余韻でぼうっとしてしまいましたねぇ。
あのクオリティはびっくりさせられます。好きです。

 

 

 

一方で、残念な点として、

 

 

システム面の不便さ

これに尽きます。
セーブロードスキップオートバックログ、一切無しです。ノベルゲームには致命的。しかも、文章が途中でもクリックしたら話が進んでしまうので、文章を見逃す可能性が高いです。
まあ、シナリオの流れからして、セーブロードバックログは「選択」のスリルが削られてしまいますから、多少は納得がいきます。が、スキップオートは是非欲しかった……。
ENDが7つという嬉しいボリュームが、周回プレイの不便さのせいで、プラスマイナスゼロになってしまっています。こればかりは本当に残念です……。

 

それでも他の点は本当にクオリティが高いので、焦らずじっくり読み進める余裕さえあれば大変楽しめるかと思います。

 


とまあ、こんな感じで。

不思議アイテムを手に入れる系の、因果応報ものの話や、ちょっとダークな話を読みたい方は合うかと思うので、是非ともプレイしてみて下さい。

フリーゲーム『Glare』シリーズ感想

「しゃべる家電に愛はあるのか?」

最近の家電製品ってけっこうな頻度でお知らせしてくれるよねな前置き。

 

 

えー、今回はクレナイブックさんところのフリーゲーム『Glare』シリーズの感想をつらつら書いていきますね。一部レビューっぽいかも。

 

女性型アンドロイドとツンツンいちゃいちゃしながら過ごすノベルゲー。ちょこっと操作あり。何よりも、ツンデレメイド、という言葉にピンとくるならDLすると幸せになれると書いておきます。グレアさんかわいいよグレアさん。

 

難易度はかなり高めですが、攻略サイトを作って下さっている有志の方もいらっしゃるのでご安心を。

 

さてまず、このシリーズに共通した特徴から挙げていきましょう。

 

 

 

検!索!システム

 

このゲームの一番の特徴として、文字入力での検索システムが挙げられます。“家電”であるグレアさんとお話をして、そこからキーワードを導き出して検索、さらにお話が発展――というのが大まかな流れ。

bot然りゴースト然り、たとい相手がプログラムであっても、こちらの問いかけに反応してくれるというのは、お話している感があって良いものです。この作品ではその話しかけを文字入力の形で表現されているんだろうなあと。時にはとんでもない方向に話が転がることもあって、ついにやにやとしてしまいました。

 

ただ、少しばかり困ったところとして、反応するワードが限定的という点も挙げられます。なので発想は合っていても検索ワードの言い換えが思いつかず詰まってしまうことも。とはいえ反応ワード自体はかなり多く作ってあるので、その辺りの膨大な労力を考えると高望みしすぎているのかもしれませんね……。

 

というわけで私はちょくちょく攻略サイトに頼りました。

ヘタレユーザーでごめん!

 

でも、やはり自分で検索ワードを見つけられた時は嬉しかったものです。ツンツングレアさんが反応を返してくれた時のあの喜びといったら、たまりませんね!

 

 

 

いちゃいちゃしながら真相を暴くストーリー

 

こういうジャンルは、SFって呼んでいいのかしらん。

とにかく、このシリーズは単にグレアさんといちゃいちゃするだけのものではありません。いえ、いちゃいちゃシーンもありがたいことに豊富なのですが、それだけではないのです。

メインのストーリーには必ず、大きな謎が一つ挙げられています。それを解くためにグレアさんとお話しているうちに、だんだんと謎の背景が浮かび上がってきて、まさかの真相に辿りつくという……。

男性向けなラブラブ要素は勿論のこと、読み物としても面白くまとまっている良いストーリーでした。

 

 

グレアさんかわいい

グレアさんかわいい。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

続いて、それぞれのナンバリングの感想を。

 

 

 

 

『Glare1.10』

 

全年齢の健全バージョンもあるのですが、私は悪い大人なので堂々とR-18のほうに手を出しました。えろ可愛かったです。

 

初めは何をどうすればいいのやらぽかーんとしてしまいましたが、だんだんコツがわかってくるとこれが面白いんですよねぇ。超ツンツンだったグレアさんがゆっくり心を開いてくれるのがまた可愛くって。

ヒント機能も大いに役立ってくれました。ありがとうイケメン。クリア後のおまけもひそかに嬉しい仕様でした。

 

うん?と気になっていた違和感が、ラストに明かされる事実で綺麗に回収されるのも気持ち良かったです。

ぶっちゃけると今までツンデレに萌えることは少なかった私なんですが、ツンデレもよいものだなあと思わされました。ツインテは元から好きだけどね!

 

 

 

 

 

『Glare2.10』

 

検!索!のイメージが強いですw

「げ」から新キャラが来るのかとひやひやしていましたが、そんなことはありませんでした。良かった。私は純然とグレアさんだけに愛をそそぎたかったのだ。

両手広げてドヤ顔している検索グレアさんの立ち絵が好きです。

 

シナリオ面としては、1と比べて日ごとの小目標がなくなったぶん、ちょっと大変だったかも。ルートマークはあるんですが、いかんせんそのルートの繋がりが難しくて……。

でも、2になって反応ワード数やタイトル回収など、コレクターに嬉しい要素が加えられたのはとても嬉しかったです! これだけグレアと会話を重ねてきたんだなーと感じられて、クリア後はしみじみワードを眺めてしまいました。

 

1の時と比べると、グレアさんがはしゃぎがちだったり語尾が「なのです」に変わったりと、デレ期が楽しめてとても可愛いです。反応ワードにもきわどいものがあったりなんかしちゃったりして。

メインの真相も、切ないながらロマンティックで素敵でした。最後につくオチも好きですw

 

 

 

 

 

とまあこんな感じで。

現在はシェアウェアとしてglare3も発売されているようなので、ひとまずフリゲ版でお試ししてからがっつりのめりこむ……というのもありかと思います!

フリーゲーム「シュナイダーSchneider」感想

「並行世界の君を全員連れて帰りたい」
そして意外と飽きちゃう前置き。

 

えー、今回は終止音さんところのフリーゲームシュナイダーSchneider」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽくなるかも。

 

魅力的なところを挙げていきますと、

 

 

 

多数のエンド

 

エンドがとにかく多いです。なんとその数45! どれも味のある結末で、コンプリート魂も燃え上がります。

あ、もちろんコンプが苦手という方でも、いくつかエンドをこなせば大体の世界観は感じられるかと思うので、その辺りをさらっと楽しむのもありだと思います。


私は「人字草」と「外界狂気ノーマル」がお気に入りですねぇ。

「人字草」の方は、あの終末感がたまりません。

「外界狂気」はタイトル通り、狂気ネタやバッドエンド好きにはたまりませんでした。他にも何かと黒いエンドが多くて楽しかったです。

 

 

ミステリ?ホラー?引き込まれるストーリー

 

ミステリ要素が強い√やホラー要素でぞくっとさせられる√、時々SF要素も混ざってくることもあって、一口でまとめられないくらいにはジャンルが幅広いです。
そもそも冒頭、主人公が屋上から突き落とされるという、衝撃的な展開を楽しめます。ひゃっはー。

 

 

 

私がプレイしたバージョンでは素材サイトの立ち絵が使用されていたのですが、現在は自作立ち絵のバージョンもあるとのこと。個人的にはオリジナルの立ち絵のほうが嬉しい派なので、また機を見てDLとプレイをし直したいな~と思います。

 

 

 

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フリーゲーム「cubic3」感想

「1d3に賭けましょう」

判定時点で既にファンブルな前置き。

 

 

 

えー、今回は、GLOBULE.INFOさんところのフリーゲームcubic3」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

 

一周5分以下、クリアまで1時間未満の短編ノベルゲーム。いやー、この短さがめちゃくちゃ効果的なトリックを産んでくれる良作でした。

 

周回プレイ必須で、考察しながらプレイするのが好きな方向けです。とはいえ雰囲気ゲーではなく、きちんと答え合わせもあるので読後のすっきり感を大事にする方も楽しめると思います。

 

 

というわけで、さっそく魅力的な点を。

何を書いてもネタバレになってしまいそうで怖いですが……w

 

 

 

多面系のシンプルな構成

 

前述の通り1周は短いのですが、そこに詰められたトリックはかなり緻密です。何周もするうちに真相を掴みかけて、でもそれが意外な方向に進んでいって、ようやく全貌を掴めたと思ったらEDリストが埋まっているという。そしてぴったりのタイミングで答え合わせ。最後まで翻弄されながら読めてとても面白かったです。

真相さえわかればすんなりと理解しやすくなるのも凄い! シンプルな形をここまで見事に多面系に仕上げているのはさすがの一言でした。

 

 

 

視線や視点を意識した見せ方

 

加えて挙げたいのが視覚面での演出!

冒頭で出てくる赤い光の動かし方や、視界の開け方、視点の低さなどなど、随所がかなり凝っています。初めは気づけないくらいさりげない違いなんですが、話し手がわかってくるともう、ぞくぞくきました。

立ち絵もずるいですよね。ああいう独特の絵柄も好みです。

 

 

 

えげつない純愛ストーリー

 

ほとんどのEDが暗く、残虐で、愕然とするようなものばかりです。どのキャラクターもさらっと悲惨な目に合います。しかしながら読後感はかなりすっきり。驚くほど救いの感じられる展開で、いやまさかこうくるとはと唸らされました。

鬱展開がある程度許容できて、純愛ものが好きならやって損無し!と叫びたくなる一作です。

 

 

 

可愛らしく意味深なEDリスト

 

周回して新しいEDに辿りつくごとに内容が増えていくEDリスト。これがまた面白かったです! 単体だとわからなかったエピソードが繋がっていく快感や、空いた部分がどう埋まるのかというわくわく感を心ゆくまで楽しめました。

時々追加される落書きも可愛いんですよねぇ。

初めのうちはえげつないエピソードにぎょっとされるかもですが、このEDリストの可愛さに中和されて、独特の不穏さが出ている気がします。ポンデ!

 

 

 

 

公式サイトにもあるように、プレイの仕方によっては「わけわからん」で終わってしまう危険性もあります。なので、遊び方については軽く目を通しておくことを推奨します。しっかり遊んだらかなりぞくぞくくる一作です!

 

追記にはネタバレ込みの感想など。ご興味ある方は追記よりどうぞ。

 

 

 

 

 

 

 

ネタバレ注意!

 

この作品特にネタバレ見ると魅力が半減してしまうので既プレイの方のみでお願いします!

 

 

 

 

 

 

考えながらプレイしても良いし、流されるだけ流されて最後にはっと納得するのも良い、色んな遊び方ができそうなノベルゲでした。

 

ノベルでもしっかりゲームしてる作品はほんと素晴らしいですね……!

 

 

タイトルの意味がとても気になる一作です。

なんとなくですが、

3人(に見える)葛城

体育倉庫・病院・崩壊世界の3つの世界

僕・君・そいつの3人

桐生君・高山君・白石君の君付け3人組

などなどの色んな3によって別々に見える側面が集まって一つの固まった箱庭世界を作りあげている――みたいなのを表しているのかなあと思ったのですが。どうなんでしょ。

 

 

いや、しかし本当、あの立ち絵にはやられました。あれで混乱して同じエピソードを数周したのも良い思い出です。上手いよなあ本当。

 

 

 

EDリストが埋まっていくとどんどんはっちゃけていくんですよねw 特にデートやメイクラブの辺りは書き手のうきうき感が伝わってくるようで面白いです。

よくよく考えなくてもものすごーーくえげつない展開だと思うのですが、あまりにトゥルーエンドが幸せに満ちている感じだったのでなんだかこっちも笑顔になってしまいましたw

 

絶望しかないような世界で一切の悲壮感を感じさせないのもまた、あの二人の愛の強さと安心があってこそなんでしょうねぇ。微笑ましいなあ。いや、微笑んでる場合じゃない環境ではあるのですが。

あのタイトル画面の清涼感も、トゥルーエンドを通ると納得できます。

 

 

 

何かと魔改造されがちなクトゥルーものをよくここまで上手く調理したなと思います。がっつり落とされたうえですくいあげられる、綺麗にまとまっている良作でした。

フリーゲーム「ビューティフル・コックローチ」感想

「どこまで逃げても追ってくる、あなたが振り向かない限り」
やめられない止まらない前置き。

 

 

えー、今回はロメゾンさんところのフリーゲーム「ビューティフル・コックローチ」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

個人的に公式サイトの紹介文がものすごく秀逸だと思うので、引用させて頂きますが……

どん底から這い上がりRPG


7割方、下ネタとアクの強いキャラクターで出来ています。

いやあ、まさにこの通り。でもバカゲーではないんです。この作品の真の魅力は、エンディングまで物語を見届けてこそ伝わると言っても過言ではありません。


ぐだぐだ書き連ねるのも何なので、ある程度項目分けしてこの魅力について語っていくとしましょう。

 

 


とにかく濃くて濃くて濃いキャラクター

主人公:アル中 
相棒:下ネタイケメン
楽しい仲間達:スケベ爺、娼婦、失脚官僚、金好きショタ、その他たくさん。

 

もうこうやって書いただけでヤバイ人達がそろい踏みなのがよくよくわかります。いやーでも悔しいことに、良いキャラしてるんですよねぇこれが!
不良が河原で猫を拾うと二割増しで素敵に見える法則がありますが、終盤はまさにこれに似た現象が起こりまくります。けれど、この法則に甘えるわけではありません。忘れず下ネタを持ってきて見直しかけたところをもう一度蹴落としておくのも流石の構成です。

全く仕方ない奴らだなあ、でも憎めないんだよなあ。あるいは、私と似ててやんなっちゃうなあ、でもわかっちゃうんだよなあ。みたいに感じることもしばしばでした。
それぞれのキャラクターの大事なものやテーマが最後まで一貫しているのも気持ち良かったです。

 

 


意外にも王道で緻密なストーリー

さて、アウトロー系の個性豊かなキャラクターが集まったのなら、話もドカンと暴れまくる話になりそうなものですが……濃いキャラや熱い下ネタに反して、ストーリーはとても王道です。
勇者が世界を救いに行く。言ってしまえばたったこれだけのこと。
けれども、この王道展開のストーリーに濃いキャラ達が絡み合うことで、他では決して見られないオリジナリティの高いドラマが楽しめるのです。ろくでなしだからこそぶつかる多くの挫折、数多の後悔、そしてそれらを時に茶化して軽く思わせてくれる下ネタの数々――。
馬鹿馬鹿しいと一笑に付すのは簡単ですが、そこを突き詰めて、笑いながらも問題に向き合っていく真摯さが感じられる一作です。

 

また、キャラクターがたくさん出てきて混乱しかけたところにレブロッカvsチンドラーの説明を加えたり、勢力に疑問が出てきたところで世界地図を見るギミックを入れたりと、世界情勢の説明を入れるタイミングがとても上手だと感じました。
出てくるキャラクターはかなり多く、途中までは群像劇の様相を成していますが、それがどんどんミケーレという主人公に集まって最終的に一本筋になるのも素敵です。

 

 

 

容赦なく叩きこまれる下ネタ

忘れちゃいけないのは下ネタの存在ですね!!
真面目な方向に行きかけたところで、ここがチャンスと言わんばかりにすかさず飛んでくる下ネタにはもはや笑いを通り越して拍手したくなります。街の人との会話も遠慮なくそっち系ばかり、というかほとんどの街に娼館がある時点でお察しです。個人的には初めの街の、会話後に超ダッシュするお姉さんとの話が好き。

 

ただ、まあこれはクリアしたから思うのかもしれませんが、この作品の下ネタはほとんどが茶化しのために盛り込まれている気もします。暗い話を落ち込みすぎないように、自己嫌悪に塗れた主人公を突っ込みで動かすために、真剣な話が嘘くさくならないように――考えれば効果は色々ありますが、とにかく何か凄まじい計算によって下ネタが組み込まれているように思えます。


……なんて、そんなことを実際に言うと作中の彼らは嬉々としておバカな下ネタを連発してくることと思いますがw

 

 

 

ツクールならではの演出と意外なミニゲーム

ファンタジーならではの魔法シーンなどはツクールのドットを使って上手に演出してくれていて、ダンジョンの仕掛けやお城の間取りの広さなどでもしっかりと世界観が表されています。
後述するバトル面に難点があってもやっぱりツクール製で正解だと感じるのは、こういうところからなんですよねぇ。言葉で語り過ぎない、ドットでの演出が見ていて楽しいんです。


監視を逃れるミニゲームやパズルなどもなかなかの手ごたえでした。特にミケーレの床色合わせのところが好き。一方でアクション能力を要求されるミニゲームもあって、アクション苦手な自分には辛いところもありました……。ピンクの獅子が憎らしいです。
とはいっても、やっぱり全体的にストーリーにあった仕掛けが多くて物語としても楽しめましたし、詰みそうなところでは作者様の攻略ページを大いに活用させて頂いたので、なんだかんだと面白かったです。

 

 

 


さて、最後にちょっと惜しかった面にも触れますが……

 

 


高難易度のバトルとリターンの低いレベル上げ

 

アドベンチャー面が中心と思いきや、とあるダンジョンからバトルの難易度が跳ねあがります。
パーティメンバーは大抵低レベル+高レベルの編成になっていて、その高レベル1人に合わせた敵の強さになっていることがほとんどなので、レベル上げは必須です。
まあ、レベリング自体は良いんですが……ラスボス戦では固定メンバー4人なのに対して、それとは別に中ボスを倒すためにある程度レベル上げをしないといけないメンバーが6人いるというのがどうにも。もちろん、中ボスまでと割り切ってさくさく作業すれば良い話ではあるのですが、手間とリターンが合わない感じはしました。

 

きっぱりバトルの難易度を下げる、または道中の固定メンバー戦を省略することが出来てさえいれば、ストーリー面のみならずRPGとしても大絶賛できたんだけどなあと、少し惜しく感じます。

ただ、呼術の設定や、酒切れという独特のステータス異常、そして何よりそれらを使ったストーリー上での演出には目を見張るものがあるので、やはりツクール製の良さを生かしている作品であるとは思います。

 

 


とまあ、こんな感じで。


バトルに難あり、メインキャラも人を選ぶ輩ばっかり、けれども全体としてはかなり良質で、合う人にはもう忘れられないくらいしっくりくるであろう一作でした。

ストーリー重視の方や、公式サイトを見て少しでもピンときた方なら、試しにDLしてみることをオススメします。

 

私がうだうだ書かずとも、タイトルが全てを表してくれている気もします。素直な奇跡は信じにくい、青臭い展開も嫌いじゃないけど気恥しい、そんなひねくれた私にぴったりで、とても楽しめた一作でした。

 


追記では遠慮なくネタバレ感想です。

 

 

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