うそうさ〜第二号室〜

フリゲ・鬱展開・ヤンデレ 万歳!

フリーゲーム「獄都事変」の人気の理由を考える

「狙ってできた人気者は鼻つまみ者と相違ない」

やっぱ自然体が一番な前置き。

 

 

えー、今回はリンネ堂さんところのフリーゲーム獄都事変」の感想を、書くはずでしたが趣向を変えて、獄都を踏まえたうえで色々考えたことをつらつら書きますね。

ネタバレを一部含みますが獄都語りが主眼ではない、かもしれない感じです。

ふわふわだな!

 

純粋に感想が読みたい方はこちら

 

 

前書き

 

さんざ噂になりメディアミックスになりと話題の有名作、今更ながらプレイしました。いつも通り感想文書こうと思ったんですが、「どうしてここまで有名になったのか」が気になってまとめ始めたら作品の感想ほとんど書いてなかったので、感想はまあ例の如く1年後くらいに別記事にまとめるとして。

今回は人気の理由について注目しようと思います。

でもこれ書いてる人はマーケティングとか全然齧って無いしそもそも最新フリゲにほぼほぼ触れていないので、あちこち雑なのは許してほしい……そもそもこれもすでに語り尽くされたところではある気もする!

 

で、前提として私は獄都を無難に楽しんだ人間なので、獄都めちゃくちゃ好き愛してるフリゲでナンバーワンってご意見の方から見ると、ちょっと不快な書き方をしているかもしれません。

……というかホラーフリゲに喧嘩を売っていると思われてしまうかもしれない懸念。

ホラーじゃないのもホラーもまんべんなく楽しんでる身ですとだけ先に自己紹介しておきます。

 

 

 

最強の万人向け

ともあれ。

結論書くと、獄都事変がここまで人気になった理由は、

「キャラとストーリーが万人受けしやすい」

だよなあと思います。当たり前って強い。

 

キャラは癖がありすぎるだろというお声、わかります。平腹はダークホースだよね。

でも個性と万人向けは共存できるはずなんです。

 

 

まず、人気の出るフリゲって分けるとこんな感じかなあと思っていて。

 

 二次やメディアミックスが盛り上がるタイプ

 (短編、ホラー、実況)

 古き良き大御所タイプ

 (長編、硬派、実プレイ)

 尖った味で根強いファンを獲得してるタイプ

 (前世覚醒せよ、クソッタレー、喋るReadme)

 

獄都は断然二次タイプですよね。

中でも特に獄都は、一緒に楽しむというより作品を土壌にして自力で想像して楽しむやり方が好きな人に向いているゲームというか。作品本体にどっぷり熱と圧があるようなものではなくて、あっさり味の本作を履修したうえでその周りの界隈で盛り上がるタイプだと推測しています。

なので、まずはなぜ二次でここまで盛り上がれたのか、から書こうかな。

 

 

 

獄都が持ってる人気要素として最も強いのは、

「キャラ萌えをするにあたって本編中の障害が欠片もない」

ところだと思います。

というより、あの作品はキャラ紹介導入編であってマイナス要素を抱けるほどの描写は本編にない、と書く方が良いのかなあ。

感覚としてはTRPGセッションのキャンペーン第一幕ですよ。わからない? 私にはわかる。もっと言うと、本編やるだけでだいたいこのキャラはこういう性格付けでこういう喋り方するんだなっていうのが掴めるのが強いなと思います。

 

キャラクターがストーリーやシーンに振り回されていないのもポイントですよね。

獄都本編のストーリーは明らかにホラーという名の感動路線、お化けものによくある王道。でも例えば、ラストで斬島がうだうだ長ったらしく躊躇ったり無闇に感動的なモノローグを入れたりはしない。ここ。ここめちゃくちゃ強い要素だと思います。ここしっかりできてるだけで覇権握れる。実際握ってる。

 

あるじゃないですか、「このキャラなんで唐突に出てきたの」とか「いつのまに君たち仲良くなったの」とか「キミ前と言っとること違うやないか」とかうんぬんかんぬん。お涙頂戴やCP要素、ストーリーの盛り上げのためにキャラが犠牲になるようなアレ。キャラがそのキャラらしくない動きをする展開。

それが無いってだけでね、もうね、強い!

 

ついでに書くと獄都って、主人公は獄卒ですがスポットの当たる主役は別なので、本編中はあんまり獄卒たちのキャラ性や過去云々を深く考えずに済むんですよね。

獄卒同士の関係はすでにできてて、急にすちゃらかなことを言いだそうがそれはキャラの自己紹介であって、ツッコミを入れるほどこちらは彼らに感情移入できていない。だから「なんでこう動くのか」っていうストレスも感じない。

つまり、個性は感じるしそこに我々プレイヤーの好き嫌いは発生するとしても、キャラを解するうえでの工程は万人向けなんですよ。だから、癖のあるキャラを万人向けに紹介している、と言いたい。伝わってくれ。

 

導入部分ゆえのあっさり味が、転じて妄想しやすい環境になり、本編で語り過ぎないぶん二次創作する隙もある。舞台設定や世界観はほどよく固められ、和洋折衷は多少ゆるいというおまけつき。

こういうライトさが高じて爆発的に大人気になったんだろうなあと想像しています。

 

ついでに書くと、

  • キャラのイメージカラーができていて推しの主張がしやすい
  • 台詞のほとんどがキャラ同士の絡みorキャラ属性の紹介代わりの短文
  • イケメンばかり
  • 極端な性格で描き分けやすい

辺りも二次が盛り上がる土壌として盤石だなと思います。

 

フリゲというよりはソシャゲタイプの盛り上がりをしている気もするなあと世迷言。

 

 

 

逆算で考える

 

んでまあ、フリーホラゲをちまちま嗜んでると、二次盛り上がりのタイプを狙って大暴投事故起こしてる作品もあるなあと感じるので、そこについても。

公式ブログや私信SNSやDLサイトの紹介文で、

 

実況で知名度を上げる→イラストやボイスをバンバン貰う→大人気!

 

みたいな狙いが見てとれてちょっとこちらが引いちゃうような作者方も正直いらっしゃったりするんですが、そういった方々の作品ってほとんど「キャラがシーンに振り回されてる」か「キャラ同士の関係性がさっぱり見えてこない」なんですよね。知らない間に誰かが誰かに惚れてたり、伏線なしで過去話がぶちこまれたり。

 

ここらから逆算すると、獄都の人気の理由は自然と知れるなあと……

 

……思ったんですけどこの手の作品も少なくとも一定数の人気は確保できてるらしく。

そういう作品はすごく単純に考えて、キャラよりも世界観や設定重視で二次創作してる層が強いのかなあ。キャラがシーンに振り回されてるってことは、キャラを犠牲にしても演出を優先させているってことですもんね。感動って勢いなところもあるし。

 

 

脱線しかけたので戻すと、この点、獄都は世界観の要素も手堅いんですよ。

わかりやすいのは制服と名前の統一感。他、セリフ等で説明はないにせよ、佐疫と田噛が交代することで助角さんの部屋に見張りが一人つくようになっていることがわかる動き。死んでも死なない(やりたい放題できる)設定、等々。

この辺りの設定ってそれだけで萌えるところありますよね。よね? 不死設定ばんざーい。

 

というわけで、ストーリーはあっさり味でも世界観に惚れこんで二次してる人も居はしそうだなあと思います。

 

 

 

 

すごい、珍しくまとまった長い文章を書こうと思い立ったのに何一つまとまっていない。

 

長々書いたけど結局のところ、

 

  • 人気の理由は(なんとなく)わかる
  • でもキャラで推そうとしてるのにシーンが勝ってしまってちぐはぐになってる作品も多いから獄都の形式を狙ってやろうとすると逆に失敗すると思われる
  • 癖のあるキャラや展開も万人向けにはできる(ただし表現における万人向けとはとても狭い範囲なので、作者がその枠内で満足できるかどうかは別)
  • 構図としてはフリゲ的盛り上がりというよりソシャゲ的盛り上がり

 

辺りがうっすら見えてくるまとめなんだと思います。おわり!

フリーゲーム&web小説「アキトDATE」シリーズ感想

「美しく整えればどんな些細なものも黄金へと変わる」

お掃除上手は魔法使いな前置き。

 

 

えー、今回はFBIさんところのフリーゲーム「アキトDATE ショート ~尾のない黒猫~」「アキトDATE 第一話 ~凶行の違和感~」およびカクヨム小説「8%の悪意」「カフカの証書」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

特定の作品の感想だけ読みたい方は目次から↓

 

 

ひとまずとっつきやすいものからということでフリーゲームの2作のみに言及しますね。

 

全てシリーズもので、フリゲのほうは時系列の間にシェアウェアの「不完全な神の部屋」を挟みます。

ノベルと操作を交互に挟むミステリゲー。推理ゲーってなんとなく敷居の高いイメージがあるのですが、この作品はほどよくギャグも交えてとっつきやすい印象でした。

 

というわけでさっそく良かった点など。便宜上、「尾のない黒猫」のほうをショート、「凶行の違和感」のほうを1話と書かせて頂きますね。

 

 

 

シリーズ共通の見どころ

 

アニメのように細かく動く一枚絵

 

紹介文に「コミックを読む感覚で」とあるように、とにかく一枚絵が動きます!

特にショートのほうではプロローグの時点でぎょっとさせられました。アニメだこれ!?

ただ話しているだけの場面でも、調書に目をやったり向き合ったり、微妙に顔を逸らしたり、細やかな動きが丁寧に描かれています。何百枚どころか何千枚の勢いで描かれたのではないでしょうか。ひぇぇ……!

また、このさりげない動きが推理やちょっとしたヒントに絡むのもポイントです。

推理ものやミステリ系のゲームは“見て”気づくギミックが多いと思うのですが、ことこの作品は随所でその“見てわかる”ヒントが隠されていて、実に凝った作りだなあと思わされました。

 

 

明るいキャラとシリアスな展開

 

そしてグラフィックのみでなくストーリーや推理のほうも勿論引けを取らない出来です。

ギャグちっくに進む物語は佳境に近づくとグッとシリアスさを増し、なんのかんのと言っていた主人公も引き締まった発言を見せてくれます。理詰めで責める立ち回りはまさに名探偵さながら。けれども本人は変に気取らずあくまで等身大なのがまた魅力的でした。

硬派な推理はシリアスに、導入や幕間の展開は軽快に。上手に緩急つけて引き込ませるストーリー作りだなあと思います。

また、登場人物にわかりやすいキャラ付けがされているのも好印象。複数キャラを憶えづらい自分にはたいへん助かりました。

 

 

 

何回も試したくなるクリッカブルモード

 

推理ゲームといえば探索と考察がつきもの、特にこの作品は探索が楽しかったです!

重要なものからどうでもいいものまで、とにかくテキスト量が半端じゃないんですよねぇ。連想ゲームのごとくぶっ飛んだ方向へ話が進むものもあり、アキトの反応を見たいがために探索してるようなところもありましたw 最終的に結論だけしか表示されなくなってわけわからんテキストになる、あの一連の流れがほんっとツボで大爆笑です。

また、ちょこちょこメタな視点でプレイヤーの正気や意図をうかがわれるのも面白いところ。ついつい手を出してみたら突っ込まれることもしばしばで、行動を読まれる楽しさを味わえました。

何に対してであれ考察ボタンを押せば真剣に考え込んでくれるアキトが好きです。

 

 

推理が苦手でも手を取ってくれるシステム

 

私はこの手のゲームの証拠品提示がどうにも苦手でして。こうだと思う!っていうのが輪郭しかできてないので、肝心の根幹の推理を求められると詰まってしまうんですね。

しかしこのゲームではありがたいことにほどよく唸りながらも進めました。その理由がアキトからの絶妙なヒントです。

推理を間違えた時に、「どこからどこまで」が合っていて足りないピースは何なのかをきちんと教えてもらえるんですよ。そこはわかってるんだけど導き方がわからない……みたいなもやもやを抱えずに済むんです。これは本当にありがたかった!

推理ができない、うまく説明できないプレイヤーの気持ちに寄り添うようなヒントの出し方でほれぼれです。

最悪の場合はアキトに頼って助けてもらうことも可能という親切設計でした。

 

 

 

 

 

続いて、各作品ごとの感想など。

 

以下、推理やミニイベントのヒント的なところまでは言及しているので、ネタバレ注意です。

 

 

 

 

『アキトDATEショート 尾のない黒猫』

 

他所で「番外編的な立ち位置」と書かれていたのでこちらからプレイしたのですが、時系列としてはむしろこの作品が最新でした。あっちゃー。けれども、前作との絡みやちょっとしたあらすじは全て主人公が説明してくれたので一安心。むしろ過去作に興味が出たので良かったかもしれません。

 

[探索面]

ベランダのブツに気付かずしばらくうろうろしてはいましたが、そこ以外は特段引っかからずに進めました。

もうねー、あっちこっちの探索テキストが楽しすぎるんですよ。勉強部屋で何度ベッドぴょんぴょんしたことか。ゴミ箱をしつこくしつこくしつこく狙った時の狂いっぷりも好きです。

 

[推理面]

途中までは自信度MAXで進んでいたのですが、ラストでは大いにやり直しになりました。いやぁ、あやふやな推理ではいけませんね。

どうやらカードと考え方は合っていたようで、アキトの反応がなんか楽しかったです。おおうと来た。推理の証明の仕方があのさりげない行為に絡んでいるというのも、気持ち良くカタルシスが味わえました。

 

[ストーリー・グラフィック面]

真っ先に言いたいのが換気扇!

換気扇です!

あの、煙が換気扇に吸い込まれていくあの一枚です!

すごくさりげないけど、めちゃくちゃ重要じゃないですか? ストーリーのヒントにもなってるし描写としても上手だし……。もう驚愕物でした。特筆されないのがまたニクイ、絵師様の観察力がよく伝わってきます……!

面白かったのはエアコンの考察。室外機、勉強になりました。

また、ごうんごうんと回り続ける洗濯機が随所で伏線として絡むのも上手いところ。暴くことの虚しさといえばミステリにはつきものですよねぇ。アキトが言えば言うほどあの三人に責められたのもまた、重さを感じさせる展開でした。

そこをぱっと明るく終わらせる、読後感に気を遣った構成も素敵です。

 

 

難点は某所でエラーが出ることかな。いっぺんセーブした後ロード画面からロードし直すと普通に進むはずなので、同様の現象になった方はお試しあれ。

 

 

 

『アキトDATE 第一話 ~凶行の違和感~』

番外編を先にプレイしてしまった、ということで改めて1話をプレイ。黒幕が後に引きずる、ということもなく、これ短編できっちり完結しきってくれていたのがとても嬉しかったです。追加コンテンツよりフルパッケージで遊びたい派なので……。

 

[探索面]

事件開始前から探索パートが挟まれるので、少し冗長に感じるところもありました。早く話を読み進めたいのに間違い探しみたいな虱潰しをしなければいけないこのもどかしさ。この辺りを改善したのがショートなのかもしれませんね。

数は少ないながらもアキトが面白反応を返してくれるのは健在。ついついループするまで調べまくってしまいましたw 田中の名札と冷蔵庫の反応が好きです。

 

[推理面]

かなり序盤からキーアイテムの表示があることや、ブツを調べなければ先に進めない=需要アイテムの察しがつく辺りから考えると、ショートよりも難易度は優しかったかなあと思います。心なしかドヤ顔ができました。

けれども、きっちり一つずつ説明していく手順や、犯人の行動を詰めていく流れはこちらのほうがシビアかもしれません。少なくとも一部だけわかってる状態の自分では、思わぬところで引っかかることがありました。この冷たい視線、これだから推理ゲーはやめられないぜ!

おまけのほうもなかなかにハイテンションな挑戦状なので、気楽な気持ちで是非に。

 

[ストーリー・グラフィック面]

ひょんな一言やちょっとした会話が終盤にカチリと嵌まり込む、この構図の上手さはやっぱり1話から発揮されていたんだなあとしみじみしました。

犯人役が取り乱して小物感を出すことで、最後のシリアスなモノローグにいっそう哀れみがでるというのも良いところ。ショートを知っているおかげか、アキトの内面の変化がいっそうわかりやすくてしみじみします。

イラスト面も、過去作の方が古めなのは当然ではありますが、動的なイラストは当時から上手だったんだなあと思わされました。かなりの枚数使ってるであろうところも変わらずの良点です。

 

 

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

私はアキトデート読みがしっくりくる派です。

 

へろへろ推理力な私でしたが、サブタイトルや冒頭の回収、伏線の撒き方が上手なおかげで両作とも最後まで楽しく一気プレイできました!

現代もの、ヤンキー風でキメるところはばっちりキメる主人公、グラフィックの動と推理の静、辺りのワードにピンとくる方へおススメです。

 

 

 

 

 

余談。

アキトシリーズはカクヨムのほうでも活動されていて、こちらではweb小説でアキトの活躍を見ることができます。文体は台本調なのでノベルゲ慣れした人にも読みやすい形式。媒体は変われど味は安定です。

というわけで、そっちの感想もちょこっと。

 

 

 

8%の悪意

タイトル回収のセンスが今回も冴えてました。8パーセントという小さいような大きさを終盤に上手く意識させているのが素敵。

だておにーさんは年下集団に紛れた異物なわけですが、このメンツの中だと彼のなんだかんだの面倒見の良さが光るなあと思いました。

 

 

カフカの証書

ビターな読後感は安定の良点。前作でラスボスめいた立ち位置だったクドケンが、また違った見方になるのも興味深かったです。

8%と比べるとやや読みづらい印象があったのですが、これはキャラの語り口と前提となるトリックの解説がややくどかったからかも。

でも、読みやすいトリックの裏に読みづらい意図を隠して、簡単と思わせて捻った切り口にしていあるところは実に面白かったです。

 

 

 

 

カクヨムのほうはタイトル回収の巧みさが特に光りましたねぇ。

 

そしてやはりシリーズ共通して、謎を暴く爽快感よりも、秘密を晒し上げることへの抵抗感や、人が言葉にせずあえて回りくどく隠す気持ちのほうを強く意識させる構成だなあと思います。

 

この、どうにもならない感情をタバコの煙と共に押し込めるような世界観が大好きでした。

フリーゲーム「きらめきの君 ~毒村腐美変~」感想

「いいから媚びて好きって言ってろ豚共!」

萌えの数だけ消費されていく前置き。

 

 

 

えー、今回はLakrisさんところのフリーゲームきらめきの君 ~毒村腐美変~」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

どうしてもネタバレを匂わせる文になってしまいますので、察しの良い方はご注意ください。

 

 

オタクが巻き起こすパンチの効いた超展開

 

ある意味テンプレと言ってもいいほどのオタクらしいオタクが街に繰り出すところから話は動きだします。

一通りストーリーを読み終えると納得がいくんですが、プレイし始めの時は「とにかくパンチの効いた作品」だなあと思いながら読んでいました。強烈な第一印象を残すネーミングや外見しかり、毒舌暴言迷惑行為で絡んでくるヒロインしかり。さらには予感や伏線は一切抜きでドカンと超展開が混ざり込むので、初めは動揺して前の選択肢まで戻ってしまいました。正規ルートでした。あってた。

こんな感じなので、序盤でふるい落とされて読むのをやめてしまう方も居そうな気はします。が、私としては最後まで見れて良かったです。

さて、こんな大暴れのお話をどう畳むのかという点について、詳しくはプレイしてもらうとして。とにかく想像もしない綺麗な終わり方をして、読後感はかなり爽快でした。

 

 

名は体を表すツン(ガチ)ヒロイン

 

この作品を楽しめるかどうかは、ヒロインを許容できるかどうかにかかっていると思います。

顔合わせたとたんに暴言! やっちゃいけない指サイン! 物の強奪・棄損!

いやこうやって書くと本当酷いですね。正直、私は初めのうちはめちゃくちゃこの子嫌いでした。けれども先が気になるのと、素直でイケメンで微笑ましいジョンが好みだったので手を止めずにプレイ。

するとどうでしょう、いや意外にも、あっと驚く展開を経て、このとんでもない美少女ヒロインが可愛く見えてくるんです。くるんですよ。私も自分で驚きました。

終章の熱く切ない展開はとても忘れられません。「ばいばーい」には泣かされました。あれはずるい。泣くしかない。

そんなわけで、彼女を大いに嫌っても最後には好きになれるか、あるいは初めから惚れ込めるかが、この作品を楽しめるかどうかのカギになってくると思います。

 

 

美しいスチルBGM、エンドロールの回帰性

 

そしてスチルやBGMにも注目したいところ。この急展開なストーリーを見事描写しきる手腕はまさにあっぱれの一言です。細かいことは投げ捨て、勢いに飲まれていいのだと教えてくれます。BGMがオリジナルというのも良いですよね。

八分咲きにはやられました。次の展開でさらにやられました。あれはずるい。

また、プレイ中「あのキャラのエピソードは無くても良かったのでは…?」と思わされるシーンが複数あったのですが、いやいやとんでもなかったです。最後までプレイし終わると、どの要素もきっちり噛み合い見せ場を作ってくれていることに気付けました。

 

 

 

 

 

 

と、ここまで書いておいて何ですが最後に気になった点として。

 

終盤に挟まれるメタ要素

 

ここは私の中で賛否両論があがりました。

が、ネタバレ必須なので詳しくは追記にて。

よくよく考えると良い点としてあげるべきなんだろうけど、なあ!という感じです。

 

 

 

 

ともあれ、全ての要素が見事に噛み合う、超展開に見せかけた緻密なギャグホラー感動ノベルでした。

これから挑む人には、合えば良いかなくらいのゆるいスタイルでプレイすることをオススメします。

 

 

 

同作者様の他フリーゲーム感想記事↓

shiki3.hatenablog.com

 

 

追記ではぼかしたところの内容など。

 

 

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フリーゲーム「きらめきの君~妖精ミラン変~」感想

「キミは私の王子様で救世主で素敵なヒーローなのっ!」

だからもちろん役に立ってくれる前置き。

 

 

えー、今回はLakrisさんところのフリーゲームきらめきの君~妖精ミラン変~」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

一本道ノベルゲー。

ネタバレを隠すとターゲット層に届かない気がするので、あらかじめぶっちゃけてしまいますが、ギャルゲと見せかけてダークに裏切る素敵な一作です。鬱というよりは後味悪い系かもしれません……細かすぎる違いかもですが。

というわけでさっそく良かった点など。

 

 

 

世界の危機とドタバタ不穏なラブコメ

 

平凡な男子中学生の元にやってきた可愛くてワガママな妖精! 

謎の失踪事件と世界の危機!

憧れの美人なクラスメイトを守るため、なんだかんだと学園生活!

あらすじだけ見るとすごーく、あの年代のラノベちっくな展開です。筆箱に異種族を隠して慌てるようなアレ。王道でドタバタな学園ファンタジーラブコメ

 

特にデートシーンなどは、きゃあきゃあ騒ぎつつもそれっぽい雰囲気になっちゃう展開が実にギャルゲっぽくて良かったです。色気ないはずなのに可愛く見えちゃうヒロインって最強ですよね。

 

で、勿論それだけで終わる作品をこのブログで取り上げるわけもないんですけれども。はい、私の好みどおりの展開でした。つまるところダークな後味です。そもそもダークだと紹介文にあるので覚悟はしていましたが、予想を上回る容赦ない滅多撃ちっぷりに痺れました。何故か爽快感さえ感じるほどです。好きです。

 

 

 

 

キュートが好き? おしとやかが好き?

 

メインヒロインと言うべきは二人。キュートな小悪魔系のミランちゃんと、清楚でおしとやかな佐久間さんです。

私は衝撃度という点で行くならばミランですが、キャラとしてなら佐久間さんが好きです。甲高い声よりはウィスパーボイスが好きなので、そういう点でも佐久間さん派。ですが、ミランの中の人もあの勢いある演技や「やっほー、浩太君」の台詞を聞くと良い仕事してるよなあと思ったり。うーんどっちつかず! どちらも魅力的です。

 

そんな二人のうち、どちらかの選択を主人公は迫られるわけですが、この選び方が実に良かったです!恋というより憧れで、結局は打算塗れな感じとか、大好きです。

クズ思考ばんざーい!

 

 

魅力倍増のフルボイスと着せ替えありのグラフィック

 

上記でも触れましたが注目したいのは魅惑のフルボイスです。男性キャラも女性キャラもモブ寄りのサブキャラも、皆に熱と気合いのこもった声が入ってます。

男性陣の発狂ボイスや名言は破壊力が高かったですねぇ。演じてる人も楽しそうだなあと。そして女性陣は、特に佐久間さんのボイスが最高でした! もうね、地の文にあった「透き通るような」という描写を忠実に演じているこの素晴らしさですよ! 聞き惚れます。また、三田さんのボイスも全力でそれっぽさを追求してあって凄かったです。いますよね、あの手のハスキーにくぐもった声の女子って。

また、グラフィックも作画力が高く、シンプルな1種類でも見飽きません。ヒロインのお着替えがきちんと立ち絵に反応してくれるのも嬉しいところでした。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

意外性のあるラブコメや、王道を裏切る展開にわくわくする方向け。

 

 

同作者様の他フリーゲーム感想記事↓

shiki3.hatenablog.com

 

追記ではネタバレ込みの感想など。

 

 

 

 

 

 

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フリーゲーム「四人の王国」感想

「旅行の計画だけは一人前」

実際行くとなると躊躇われる前置き。

 

 

えー、今回はスパイスキャットさんところのフリーゲーム四人の王国」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

エンド分岐と会話分岐が多数のウディタ製アドベンチャーゲーム。追いかけっこやゲームオーバーはなく、物語を通して濃密な対話をするような、独特の味わいがある一作です。

というわけで、さっそく魅力的な点など。

 

 

現実と理想のギャップを叩きつけられるストーリー

 

まず、この作品の物語は厳しいです。それは難解であるとか鬱展開であるとかそういう意味ではありません。現実でも直面しそうな痛々しさや生活を営むしんどさ、夢を追い続ける徒労を遠慮なく叩きつけてきます。

詳しく語りすぎるとネタバレになってしまうので、追記に片付けますが。

知人がやらかした時の気まずさや、自分の失敗談を掘り起こされるようなむず痒さ、挫折を味わうやるせなさなどが込み上げてきます。

だからこそ。ぜひとも、腰を据えてプレイすることをオススメしたいです。

私がプレイした時も先が気になり、一緒に終着点を見届けたいと思って寝る間も惜しむ勢いでプレイしましたが、一方で辛すぎて中断もしました。剥き出しの心に触れてくるような作品です。

 

 

 

プレイヤーの選択を肯定してくれる世界

 

もちろん辛いだけではありません。1週目では本当に心から、深くのめり込んでプレイして良かったなあと思わされました。

ゲーム開始時にプレイヤーは主人公の設定をします。名前等の基本的なところから、好きな季節などの日常会話になりそうなところまで。そしてこれらの設定は、半分以上が表に出てきません。

でもこのOP、一周した後でしみじみと、大事な導入だったなあと思いました。こういうのを考えるのと考えないのとでは物語への没入感が段違いなんですよね。そして何より、このゲームに唯一求められた、「ありのままのあなたとしてプレイしてほしい」という旨のお願い。これが一番だと思いますし、実際ありのままでプレイしようとするとかなり葛藤したり困ったり苦悩したりするんですが、それでもそうやってプレイして良かったです。

私は特に感情移入しながらやるタイプなので、リアルに胃が痛くなりました。

 

選ぶ選択肢によって、キャラからの評価や印象が変わるのも面白いところ。本筋は変わりませんが、随所随所でぽろっと零れる言葉に、「ああこんなふうに見てもらえてるんだなあ」とにこにこしてしまいます。

初回プレイはネタに釣られずとにかく自分らしくを目指したので、「まじめで優しい」と言われ続けました。せやろ。へへへ。なので、ガラッと変えてみた2週目での評価のギャップが面白かったです。カーくんの呆れ反応好きです。どうもコメディアンでした。

 

終盤になればなるほど、選んだ選択肢に対して辛い反論がきます。冷たい反応がきます。厳しいことをたくさん言われます。

でも、どれを選んだとしても、その意思を最後まで尊重してくれる、とても優しいゲームだと思います。

選択に対してストーリーが答えてくれると、本当にゲームをプレイしているという実感が持てて良いですよね。

 

 

 

嫌なところも良いところもあるキャラクター達

 

多くのキャラクターが登場します。

初めは嫌な奴だなと思ったり、不審な奴だなと思ったり、かわいいなと思ったり優しいなと思ったりします。その第一印象は多かれ少なかれ変わるはずです。主人公も含め、心からどの面も素敵だと思える聖人君子のようなキャラは一人もいません。

そう、たとえサブキャラであろうとも、長所と短所があるんです。人間はだれしもそうですが、それをキャラクターでやろうというのが物凄いと思います。どのキャラにも見せ場があるのもまた、色々な側面を知れる良い機会となります。

私がプレイして一番ギャップがあったのはセイでした。まさかあの場に出てくるとは。

一方、良くも悪くも長所も短所も全部ひっくるめて予想通りかつ印象深いのはクーフィアです。この書き方でもう私が彼女に対して並々ならぬ想いを抱いているのは伝わるかと思います。伝わるかなあ。深くは追記に流します。

 

とにかく、ストーリーだけでなくキャラクターも深みのあるリアルな造形をしています。

 

 

 

音や光、時間が反映するマップ

 

ストーリーも勿論ですが、マップや操作面でも熱く良さを語りたい一作です。

まず驚かされたのが、序盤のテラスでの月光! ほかのマップでもそうですが、光源や光の差し込み具合がものすごく凝っていて、見ていて飽きないんですよねぇ。歩くと揺れる草や、暮れていく日、不穏な闇の中の瞳など、細かなところの演出がこだわり抜かれています。ただ行ったり来たりするだけのイベントがあっても随所がこだわり抜かれているので飽きませんでした。風の音や草をかき分ける音、不穏な水音など、SEも自然。

 

それにきちんとマップを探索したり歩いたりすることで主人公がひたすらにあこがれ続けた“冒険”を体感できている感じがします。

長く歩くと日が暮れて、疲れたら歩みはゆっくりになって。そんな当たり前が体感できるのは改めて嬉しいことですね。余計な道や不要な帰還ポイントはばっさり切ってくれているのも迷子になりがちな私としてはありがたかったり。

 

さりげないところでは、好きな食べ物。初回はカレーでした。嬉しかったです。

また、会話イベントの起こるタイミングだとキャラがこっちを見てくれたり、ぴょんぴょん飛んでアピールしてくれたりするのもポイントです。クーフィアだけ歩幅が短いのか、歩行グラがちょこちょこぴょこぴょこしてるのもとてもキュート。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

本当、呻いて苦しんで楽しんで感動して、心をぐわんぐわん揺さぶられた一作でした。

 

問いかけてくるような作品が好きな方、キャラクター重視の方、理想と現実のギャップに悩む方、夢見がちな女の子が好きな方にオススメの一作です。

 

 

 

 

 

追記ではネタバレがっつりの感想など。

 

 

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フリーゲーム「SPIEGEL EI(シュピーゲルアイ)」感想考察

「鏡の裏側に映るあなたは虚像?」
表裏の隙間にある見えないものを大切にしたい前置き。

 

えー、今回はTEPEMOKさんところのフリーゲームSPIEGEL EI(シュピーゲルアイ)」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

複数エンドありの探索考察ゲー。サイコアドベンチャー、とありますが、個人的にはホラーと感じる場面もしばしば。

何よりも真っ先に言いたいのは、「頼むから実際にプレイしてみてくれ!」ということです。特にこの作品は自分がプレイするかどうかで味わいが本当倍は異なるのではないかなと感じました。

あと、かなりの推しゲーです。このブログで推すからには闇と幻想的な意味で推しです。十本指に入る気がしています。好きすぎて考察が5千字を越えましたがまだ考えたいことがいっぱいです。

 あ、考察目当ての方は下部の追記までスクロールしてくださいませ。

 

 

と、長い前置きはこれくらいにして、良かった点など。
とにかくネタバレがもったいないゲームだと思うので、この時点で少しでも興味を持って下さっている方はDLしに行くのをオススメします。

 

 

 

 

 

鏡と現実を行き来する、ギミックとストーリーの絡み合い

上手いと思ったのはギミックとストーリーの絡み合いです。鍵ゲーになりがちな探索ゲーにおいて、こうやって通行禁止の状態や謎解きがきちんとストーリーに絡んでくれるのは本当に嬉しい!
ただのギミックに終わらず、それ自体が物語の本筋の暗喩になっているところにもぞくぞくします。深読みって楽しいですよね…!
マップの独特な色合いや世界観にも惚れ惚れです。現実側のクラシックな寮と、鏡側の幻想的な世界、両者の対比がこだわり抜かれているなあと感じました。スクショ一つで心を掴める一作だと思います。

 

 

適度な難易度ときちんと置かれるヒント

 

謎解きについてもう少し深めて、良いなあと思ったのがヒントの出し方です。
本編中に答えへ辿りつくためのヒントがきちんと提示されてるんですよね。これ、当たり前のようでいて、意外とフリゲでは少ない気がします。例えば青は英語でブルーってことだって、一般常識ではあるし見なくたって解けるだろうけれど、作中に探せばあるのとそもそも無いのとじゃ作品に対する好感度は大違いです。
あくまで“探せば”見つかるところにあるのも良ポイント。文章で提示するヒントと見てわからせるヒントの二種類があったのも、常に新鮮で楽しかったです。

 

 

メタで突き刺してくる構造

システムだけでなくストーリーについても。
OPの彼女の台詞にまず、心を刺されました。キャラではなくプレイヤーの名前を入力するタイプのゲーム、好きなんですよねぇ。これから何が起こるのか、ぞくりとした予感が脇起こるOPです。
そして、勿論刺さるのはここだけではありません。
与えられている選択肢は「はい」「いいえ」――だけでなく、「選ばない」。この発想にはやられました!
プレイヤーの動きを見透かすかのような言動、知らずと罪悪感がわき起こる構造、これだから良質なメタゲーは良いものです。

もうね、END:Aへの行き方が私大好きなんですよ!!
あちこちでザクリと刺してくるような言動があるのも良いですし、それらを乗り超えて辿りつく先がああいう結末なのも素敵です。

 

 

ゆるく怖く優しいキャラ達と小ネタ

登場するキャラクター、特に主人公の周りを取り巻くキャラ達は皆親切で優しい子ばかりです。静かで幻想的な世界の中だからこそ沁みるところもあり、時々交える会話にほのぼのとさせられることも。
一方で、時に鋭すぎるほどこちらの心を穿ってくる台詞を言ってくれるのもまた、魅力の一つです。
もうここは語り過ぎると全てがネタバレなのでここまでにするとして。
加えて驚かされたのが小ネタの数々です。同行者の違いや時期の違い、入力した選択肢の違いなどなど、「こんなところにまで!?」と喜びの悲鳴をあげたくなるほどボリュームたっぷりな小ネタ会話でした。会話分岐が大好きな自分にとっては最高の一言です。

 

 

 


とまあ、こんな感じで。
語りたいけど語り過ぎるともったいない、そんな不思議な一作です。

ルールオブローズっぽいという意見を別所で見かけましたが、暗くても陰湿ではない点と、自己との対話がメインになる気がするのとを考えると、少し毛色は違うかも?

 

ともあれ、比喩やダブルミーニングなどに長け、考察もギミックも楽しい一作でした。
新鮮なシステムや意外性をお求めの方や、幻想世界観に惹かれる方に強くオススメします。

 

 

 

 

以下はネタバレどっさりの考察もどきな考察です。

 

 

 

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フリゲサイト「ととと☆ぷろじぇくと」作品感想

「逃がしてあげないだけでは生温い」
逃げる意志から奪っていきたい前置き。

 


えー、今回はととと☆ぷろじぇくとさんところのフリーゲーム8作品の感想をつらつら書きますね。

 

基本的に、

  • 30分以内に完全クリアできる短編ゲー
  • 探索もRPGも難易度は低め、攻略完備
  • グロ、ヤンデレ、鬱展開、不穏

な作品が多めです。

関係性がある作品も無い作品もありますが、ざくざく漁って一気にプレイしたので、記事も一つにまとめ…………
ようと思ったら意外と多くなったので、今回は探索・脱出ゲー編です。多作!

 

ノベル・RPG・シューティング編はこちら↓

shiki3.hatenablog.com

 

 

 絶賛したいところと合わないところ、両方を感じるゲームが多かったので、普段よりもレビューっぽいかもしれません。でもいっぱいプレイしたくなるくらい楽しかったのは確かです!

 

というわけで今回の記事で取り上げる作品一覧は以下の通り。

 

 

 

 

『欠損少年は満ち足りる完全な部屋で。』

 

[概要]
短編の探索メイン脱出ゲーム。ヤンデレに軟禁されたという導入通り、病み甘毒な乙女向け。

 

 

[ストーリー・システム]

ヤンデレといっても殺伐脅迫タイプではないので、基本的にはデレデレな病みセリフを堪能しつつお部屋を探索する展開になります。「ミラのことを見ていたい」というセリフの通り、ジン君があちこち動き回ってミラのために尽くしてくれるのが微笑ましかったですねぇ。ベッドイベントでは速度に驚いてリアルに声が出ました。

謎解き自体はとても簡単です。数字の四則計算くらいで、基本的には言われた通りの場所を探索するだけ。脱出できないということはまずありえないかと。
なので脱出ゲーとしての楽しみより、乙女ゲーとしての楽しみが重視されている作りです。

ジン君と仲良くなったら画面のハートが溜まっていくなどの特典があります。かわいい。進行度や好感度がセーブ画面で一目でわかるのも、プレイしやすかったです。
パスを知ってる2周目でも手順を辿るまで入力ができないようにされている他、重要ポイントをジン君が塞いでいるのもさりげなく上手い進行管理でした。

 

 

[グラフィック]

まず真っ先に触れたいのはマップチップ! ピンクピンクしいお部屋にハートが散らばって、そりゃもう少女趣味で夢かわいいなマップになってます。くまさんチップとクッションのチップが可愛すぎる……!
マップのスクショを見て釣られたという人も多いのではないかなー、なんて。

メニュー画面の立ち絵も二人の体格差がよくわかってよいですよね。ジン君腰の位置が高い!そしてミラちゃんほんのり肉付き良くてかわいい!

他にも、スチルの一目で「ヤバイ」とわかる雰囲気は秀逸でしたねぇ。ほのぼのスチルも病みスチルも裏が怖い! 素晴らしい!
起動画面でパチパチ瞬きしてくれるところも、さりげなく凝ってて良いなあと思います。

 


[惜しいところ]

・OPのBGM

私自身のスペックの問題でもあるんですが、歌詞有りの曲だとお話が追えなくなっちゃうんです。なので探索パートからあの曲が始まってくれると嬉しかったかなあと思いました。
といっても、BGMチョイス自体は本当に素晴らしいです! ボーカル入り曲自体は大好きですし、お洒落な雰囲気のおかげで探索も飽きませんし。何よりあの部屋がまるでリラックスルームのように錯覚してしまえるのでジン君の手腕をひしひしと感じます。


・病み具合が浮気性

前述の通りグラフィックの病み具合はかなり高いのですが、病み言動の根本が薄く表面のみのヤンデレに感じられてしまうのが残念でした。ヤンデレと聞いて思いついたことをすべてやらせている感じというか、ころころ意見が変わってしまう感じというか。
Q&Aを見る限りだとヤンデレにおいて過程が大事ってところは作者様も感じておられるようなので、あるいはジン君が「あれが駄目ならこれ」と切り替えられるタイプのヤンデレということでしょうか。しかしそれだとミラちゃんへの執着も薄まってしまう気がするので、うーんうーん。ここだけ惜しかったです。

 

 

 

[エンド感想]

ネタバレ有りなので色変え伏字で隠しますね。

 

バッドエンド
「死ぬか。」の躊躇いの無さと潔さが、本当にジン君にはミラしかいなくて欠損しているんだなあと思わされてよいです。お食事ドットの細やかさと、食べ終わるときちんとドットが変化する職人ぶりもグッド!

 

ノーマルエンド
手際が良い。
前述で「あれが駄目ならこれ」と書いたのも、この手際の良さを感じたからだったりします。
ミラちゃんの衣装も、下着はきわどいのにブラは着込んでいる感じがこう、上半身を可愛さ・下半身を男の欲で包んでいるようなアンバランスさがあって大変よろしい。
余談ですが初回プレイでは好感度ゼロで突き進んでいたので、ベッドシーンで好感度を調整するだけでこのエンドに行けたことにびっくりしました。ちょろいぞジン君!さすがの溺愛ぶりだ!

 

ハッピーエンド
「こう来たか!?」が一番です。まさかの展開に戸惑うジン君が微笑ましいし即順応するスペックが羨ましい……。動揺するってことはジンも心の中でこの生活を受け入れてもらえるわけがないってちょっとでも思ってたってことなんでしょうかねぇ。
いずれにせよ開き直る女の子は強くてよろしい! 幸せ(幼児退行)で何よりです!
ミラちゃんにしてもこう、頑張っても認められないならいっそ頑張らなくたっていいじゃない、という思考に堕ちたのかなーなんて。ジン君は本当に一貫して彼女が望む世界を作り上げたのだなあとも思います。

以上、伏字終わり。

 


[一言]
ヤンデレ好き、甘ったるい病み展開が好きな方向け。

 

 

 

『欠損少年は思い出す女神と鍵の小さな家で。』

 

[概要]
謎解き無しの一本道探索脱出ゲー。前作の関連があるため上記『欠損少年は満ち足りる~』のプレイを強く推奨。

 


[システム・グラフィック]

とりあえず、ダウンロード派なのでWindows版をプレイ。
鍵ゲーを自称する潔さが好きです。


SmileGameBuilderなるソフトのゲームを始めてやったのですが、いやあ変わった操作感で面白いですね! 一人称視点の時は酔いそうではらはらしたんですが、三人称視点に切り替えるといつものRPGっぽい平面視点になって安心でした。三人称視点だと見つけられないオブジェクトがひっそり紛れているのも探索ゲーらしくて良いですよね。
前作と比べてゆめかわいさは軽減したものの、怪しい雰囲気や謎めいた洋館の雰囲気は出ていて、これはこれで別の趣がありました。
あとドット絵の二人がかわいい。

 


[ストーリー]

ジンとミラちゃんの出会いや過去がわかるということで、どことなくファンディスク寄りなイメージの作品でした。満ち足りる~における正史が判明するのも興味深いところ。しかし、あれだけのことをされておいてまだジンを全否定しないミラちゃんはタイトル通り女神として成長している気がします。もうどうにもならないという諦念からかもしれませんが。

謎空間に対する説明として、過去作の関連らしきメモがありはしたんですが、個人的に謎や設定は世界を超えずにシリーズ内で完結して欲しいんですよね……。なので不思議パワーってことで言及が避けてあったほうが、雰囲気ゲーとしてより楽しめた気もしました。シリーズではなくもっと大きくととと様ワールドの設定として受け入れれば良いんでしょうけれどもね。

上の一点を除けば補完編ということで満足。「もうちょっと工夫を凝らした方が~」の台詞に、いや君たち似た者同士のおしどり夫婦やないかと言いかけたのも良い思い出です。

 

 

[一言]
前作が気に入ったなら併せて是非。

 

 

 

『悪夢はひっくり返らない』

 

[概要]
百合百合短編脱出ゲー。案の定不穏。

 


[見どころ]

欠損少年~と少し似た構造ではありますが、ヒントが直接的なものから婉曲的なものになっていたので自分で探索している感じが出てくれました。ストーリーは一つ目の記憶でピンと来てしまうところはありますが、わかっていても楽しいのがこの手の作品ですよね。

 

マップのかわいさも特筆すべきところ。一般家庭にありがちなものをきちんと配置したうえでこんなに可愛いミニチュア感を出せるのは本当にすごい! 探索時の反応も多く、クリア後のおまけモードはめちゃくちゃ楽しかったです。
また、立ち絵の表示が大きめなので、怪しげな彼女の傷や主人公の表情変化がわかりやすいのも素敵でした。そして何よりタイトル画面の構図が大好きです!!

 

キャラクターの行動原理が一貫しているのも好ましく、クリア後にはなるほどなあと思わされる点も多め。じわじわと変わっていく薄ら寒さが感じられるのもツボでした!

 

[一言]
甘ったるい世界観、メンヘラヤンデレ、百合が好きな方向け。

 

 

 

『コルウス・カエルレウス』

 

[概要]
探索ゲー。主従。「脱出を目指せない」が言い得て妙。

 

[感想]
片方のエンドは「いいのかそれで!?」と驚かされ、もう片方は良いダークエンドだなあとにやにや。超短編ですがスチルの気合の入りっぷりや、青冷めたお部屋なのに豪奢なデザインな辺りがとても好み。
そして何より、何よりキャラデザがめちゃくちゃ好みなんですよね!! もっと長編でもやりたかった!
さらっと鬱展開ですがエンドは不思議と爽やか味。
あと音量調節機能密やかにめちゃくちゃありがたいです。

 

[一言]
不穏な従者と無気力クール美少女はよいものだ。

 

 

 

『コルウス・ラピス』

 

[概要]
『コルウス・カエルレウス』の続編。謎解き脱出タイムアタックゲー。


[見どころ]

探索ゲーあるあるの仕掛けをぎゅっと詰めた一品。
紹介ページにあるように、これからフリゲを作りたい人や脱出ゲー慣れしていない人にも安心して“お約束”を知ってもらえるゲームだと思われます。


ゲームオーバーが石化というニッチな需要に対応してくれているのも嬉しい限り!

パスコードがどれも不穏な語呂合わせで覚えやすいので、二週目が助かりました。謎解き自体の難易度はかなりイージーですが、私のようにあちこち調べてとりあえず反応を確かめたいタイプだとタイムオーバーするかも。さりげなくアイテムの説明もゆるゆるで和むので、時間があればぜひ。

 

ストーリーはあってなき感じですが、二人の関係性がほんのりと覗けるのは前作のキャラデザを気に入っていた身としてラッキーでした。意外とデレデレラブラブな関係なのも微笑ましい。すくすくと魔界皇女に育ってほしいですね。


[一言]
タイムアタックに燃える方、石化の性癖を取得している方向け。

 

 

 

 

『良い子と悪い子』

 

[概要]
別作者様のweb小説をフリゲ化した、短編探索ホラゲ。謎解き・驚かし・追いかけっこはなく、オブジェクトを全て調べたら自動で話が進むタイプ。

 

[見どころ]


原作やスクショを見ると察せると思うので書いてしまいますが鬱展開です。
子どもらしいほんわか可愛いエピソード、を踏まえたうえで抉りにくるのがよくわかってらっしゃる展開でした。「私そこまで子どもじゃないんだけどなあ」って感じのセリフがすごく良いです。無力な幼女らしさがなお増してます、素晴らしい。


調べるオブジェクトが多く、全てに回想とスチルがついている細やかさもポイント高め。
顔グラの必死を越えて鬼気迫る感じもえげつないです。良き。
エンドに到達するとみられる、クレヨン描きみたいなエピローグが闇深くて好みでした。

 

 

[惜しかったところ]


原作小説以外のルートや過去回想がきちんと用意されているからこそ、原作通りのあのエンドではもう一声を求めたいところが出てきました。例えば、大文字表記のあの部分だけ赤字にするとか、倉庫内を逃げ回らせて無力感を演出するとか。ここだけ原作そのままなのはちょっともったいないなーと思います。

 

 

[一言]
リョナゲー寄り鬱展開。

 

 

 

『かわいそうなレイナちゃん!』

 

[概要]
金髪ツインテちゃんの死亡パターンを収集する探索ゲー。リョナエログロ。
以下の感想文もグロ寄りなので注意!

 


[見どころ]

一応謎解き脱出ゲーの形ではありますが、実際のところはリョナゲ・特殊性癖ゲというイメージでした。超嬉しい。

ホラゲの死亡パターンをついつい全制覇してしまったり、自分用に死亡集動画を作ったりしてしまう、まさに我々のためにあるような短編ゲーです。


序盤で回収できる死亡シーンが多めなので再開や見直しがしやすいのもありがたいところ。また、集めた死亡パターンは本棚で見返せる他、おまけとして死亡ドットの閲覧もできます。性癖をわかっていらっしゃる!

 

ただ死ぬだけでなく、死亡時に色々汚物が散ったり、ドットとスチルとで死に方の使い分けがされていたりしたのも好印象でした。美しい死に際もロマンですが、あんなにかわいい子がグヂュグヂュになるというのもこう、高ぶるものがあるので。
えっちな描写をチラッと挟んでくれるのもまた上手いですよねぇ。気持ち良いと見せかけて、な展開が多くてぞくぞくしました。

 

上手いと思ったのは、暖炉のスチルを使った演出。
動きがあって見返したくなったのは、火だるま。
性癖直撃したのは、人形化。
どれが好きかである程度性癖が図れそうで楽しいですね。淫魔ネタも好きです。

 

レイナちゃんが中二病脳筋寄りでチョロインっぽいところがまた、リョナ映えするんですよね。「海老で鯛が~」の台詞がとっさに出てくるセンスにちょっと吹き出しました。
歩いている時のドットもたぶん自作なのかな、デフォの歩行グラと違って足や髪がぴょこぴょこ動いてとってもかわいかったです!
他、アイテム説明文も面白いので必見。ハサミに笑いました。

 

 

[一言]
特殊性癖とリョナエログロを求めるなら何が何でもやってほしい一作です。

 

 

 

『桃娘監禁飼育』

 

[概要]
ピュアなアルビノ少女が監禁から脱出できるかもしれないゲー。カニバ、体型変化、鬱展開。

 


[ストーリー・設定]

桃娘というタイトルからてっきり中華系かと思い込んでいたのですが、意外にも現代日本な雰囲気の舞台でした。グロ的な意味だと元ネタの要素は薄めなので、期待しすぎてしまったところもあったかも。


ストーリー面ははっきり書くと好みに合わなかったです。
クリア後特典がどうも、理不尽鬱がご都合鬱になってしまったのでマイナスでした。食事代が安い等々もそうで、無茶な言い訳でシチュエーションを作ってしまわずとも、桃娘をやりたいなら潔く母親が元の逸話を知っていたという設定にしてしまえば良かっただろうになあと思います。
……ここまで語っておいてなんですが、桃娘の元ネタって出典どこなんでしょうね。H×Hで初めて見てときめいたのですが、きちんとした原典は知らないなあと。ご存知の方いたら教えてください。

 


[グラフィック・システム]

演出面は、何よりもまず立ち絵。毎朝、主人公の立ち絵を表示することで黙して語る演出が素晴らしかったです!
調べる点が光っていて、さくっと攻略できるのも短編ゲーとしてお手軽で良いところ。
エンドの文字のフォントも、さりげなく彼女の育った背景を感じさせて、じわりと刺される感じでした。よきよき。
とにかく、まさに“食べちゃいたい”な見た目で白桃っぽい彼女が可愛かったのでグラフィック面は満足です。

 


[一言]
さくっとプレイできて、日々の変化にぞくっとするタイプのホラーにピンとくる方向け。

 

 

 

 


とまあ、こんな感じで。

 

短編でも印象に残るものが多く、また豊作なこともあって長期間楽しめました。


上記の中でも特に、

まとまりがよく完成度が高い!
『悪夢はひっくり返らない』

君の性癖がここにある!
『かわいそうなレイナちゃん!』

の二つをツートップで推したいなあと思います。
いずれにせよさくっとプレイできるので、気になった方はぜひ!

 

 

同作者様の他フリーゲーム感想記事↓

shiki3.hatenablog.com