うそうさ〜第二号室〜

フリゲ・鬱展開・ヤンデレ 万歳!

フリーゲーム「くるくる斜視子はステキな魔法」他12作品感想

「魔法って何でもできちゃうキラキラな何かなのよ」

いつまでだって信じていたい前置き。

 

 

えー、今回は六角レンチ(ざるそば)さんところのフリーゲームの感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

多数プレイしたので、この記事では魔法具現化メインのものを中心に取り上げます。

すべてVIPRPG、見るゲことノベルゲ、長さはまちまち。相互に関係ありそうな作品はなるべく前後にまとめて言及していますが、気づいていないものもあるかも。

 

というわけで一覧はこちら。

 

 

『舞台裏走馬灯夜』

 

[概要]

ノックアウトとメモリストリーム。仄暗い雰囲気の会話劇。

 

[感想]

タイトルから舞台裏とあるように、どこかのもしもが終わりを告げた後の世界のようです。

後述の「さよならは一撃で」に関係あるのかも?

メモストさん初めて見たので、急な冒頭に驚かされましたが、構造が見えてからはじんと沁みる話でした。のっきゅんの台詞一つ一つが重々しいというか、こちらを必死に繋ぎとめてくるように見えて……。

こういう、“何かを”と求める話は良いですね。

 

[一言]

終わってしまった世界にピンとくる方、のっきゅんをシリアスに推したい方向け。

 

 

 

『さよならは一撃で』

 

[概要]

黒背景と色文字の終末世界。餡軍中心、あとダークサモン×ノックアウト。他作品より長め。

 

[感想]

「>はなつ」というコマンドをプレイヤーに入力させることで、物語に入り込ませる演出が上手いなあと思いました。メッセージ枠の表示の仕方すらも「>はなつ」を彷彿させる徹底っぷり。

顔グラすらないストイックな画面ですが、このように要所要所の表現やセーブアイコンの変わり方など、シンプルながら演出が光ります。

何よりあの「>つよくはなつ」があまりに、あまりに、鬱で、震えました……。

おにいさんの言うことや綺麗な白い人など、何か設定がわかるとより楽しめたであろう部分もあったんですが、まだまだもしもシリーズに疎い時期にプレイしたのもあって初周ではわからず。ただ、それでも何か残そうという切実なセリフ回しが印象的でした。

ダークサモンとの終わりしか見えない閉鎖生活、または後ろ向きな幸福。実に良い……。

のっきゅんのひたすらに愚直な一途さと、ダークサモンの賢いようで足踏みしかできていない不器用さが大好きでした。

余談ですが「×は」表記を、のっきゅんの存在が皆から消えていく伏線みたいなあれかなーと思ってたんですけど、一人称隠しだったんですね。ハハハ。すまん。僕派です。

 

[一言]

終わった世界や鬱展開が好きな方向け。

 

 

 

『忌み子呪い子魔法の子』

 

[概要]

ブラインドとうっすらサイレンス。色んな意味で暗いけど救いはある。

 

[感想]

ブラインドの目に関するはい設ってけっこう多岐に渡ると思うのですが、この設定が一番好みかもしれません。「素直ではなく従順」という評し方もとても好き。

魔法具現化に対する特殊設定や、世界背景が覗き見れますが、奥深くまでは語られず、あくまでほんのりとした光明だけ見せて終わります。もうちょっと深みを知りたい気持ちもありつつ、この懺悔室みたいな雰囲気が素敵だったので満足感もありつつ。

暗闇魔法に合わせた演出も話の雰囲気と併せて良いところでした。

 

[一言]

鬱設定や仄暗い話が好きなら。

 

 

 

『くるくる斜視子はステキな魔法』

 

[概要]

斜視子(ピンク髪コンフューズ)中心、状態異常魔法具現化。ほのぼの→シリアス。

以下の感想はちょっとネタバレ強めなので未プレイの方は注意。

 

 

[ストーリー・世界設定]

 

上記『忌み子呪い子~』で見れた世界設定が出てくる、というか、こっちが本編であちらがスピンオフの扱いとのこと。先に忌み子~をプレイしてしまったので中盤以降の衝撃度は少し薄れてしまったかもしれないけれど、雰囲気のギャップだけでなくキャラ同士の関係性など見どころは多かったので、結果としては大満足。

 

斜視子は底抜けに明るい子として描写されていますが、何も考えていない明るさではなく、裏を飲み込んだうえでの明るさなのが本当に痺れるなあと思いました。痺れる。コンフューズだけど。

そんな斜視子の言う「恋した」は公式アンサーだと「彼に」という意味だとわかってはいるんですが、ついつい拡大解釈して「あの世界に」だと捉えたくなります。そう思えちゃうくらい、あの銀河でのセリフが輝いていて!

そりゃもちろん、掛け値なしにあの世界が素晴らしいなんてこと彼女は思ってないでしょうけど、嫌いなところや嫌なところを斜視して小さな幸せに焦点を合わせるのが彼女の生き方かなあと思っているので、そういう意味だとやっぱり世界に恋したって思いたいなー、なんて。

 

あとは、魔法具現化設定の解釈ってかなり作り手によって幅広いんだなあとも思いましたねぇ。定義解釈の面でも興味深かったです。戦闘においても彼らの限界を迎えていく日常についても、各々の状態異常がカチリとハマる描写が多くて唸らされました。

よくよく考えると本当、異常魔法っていわゆる属性魔法と比べてなかなかにえげつないですよね……そこが好きだけど……。

 

シスターと少女の話はスケールの大きさに驚かされましたが、あれがあるからこそ途中は鬱でも読後感はさっぱり明るいんだろうなーとも思います。

 

この作者様のセリフ回しが好きすぎるとこれまで煩いほど書いてきてますが、この作品は「喪に服せ」「くるぐる娘」等々のオマージュありきの呪文めいたワードも多かったように思います。それがまた独特のリズム感を生んでるのかも。

 

 

[グラフィック・キャラ]

 

まずスチルが多め、そして何よりタイトル画面の斜視子がかわいい!

個人的には前バージョンのタイトル画像のほうが斜視感出てて好みですが、現状のがかわいいのも確かなので、両方味が合っていいという結論になりました。勝手に。

セーブ画面のアイコンの使い方も斬新ですよね! ですよね? 少なくともこの作品で初めて出会って、一目見た時のおしゃれさに惚れました。

 

あとは、ブラインド贔屓なので一枚絵多くて嬉しかったり。ともだち達の後日談を、あえて語らずに見て想像させるところも良いですよねぇ。ブラインドは忌み子~だとして、他キャラの話もどこかにあるのか、私気になります。

サイレンスの本名の元ネタとか何かあるのかしらん。

 

けっこうCP要素も強めだったので、カプ萌えしがちな自分にはおいしかったです。アンガーとスリープの関係性がとても好き……。直情型と自己犠牲型って萌えます。

覚醒スリープいいよね。

ポイズンはさらっとした一言がとても自然に伏線となっていて驚かされました。

 

最後に、コンフューズの「女の子が泣いていいのは~」のセリフがたまらなく大好きです。この作品のすべてだと思います。次点は「自分の選択は~」のあれ。何より一番は斜視子の「ありがとうって!」のあれ。

 

 

[一言]

明るく鬱な裏表反転系の話、状態異常魔法具現化が好きなら是非とも。

 

 

 

『データベースの悪霊』

 

[概要]

『くるくる斜視子~』から時が経ち、蘇った魔法具現化兵器、キャンセル&メモスト! という感じ。テンポよく明るくそれでも鬱。

 

[感想]

ここのキャンセルみたいな、不幸な私より下の奴を作ってやるという原動力のラスボスタイプ大好きです。よくありそうな反論を先んじて、やはりこれまたテンポよい美文で封じてくれていたのもすごく読みやすかったですね。

キャンセルがどこまでキャンセルしてしまうか、という能力の解釈が一番楽しかったかも。ダメージを受けたという事象のキャンセル、実に燃えます。ここまで便利能力だともはやチート。しかしそれを軽く上回る勇者アレックスおよび愉快な仲間たちの活躍ぶりもかっこよかったです。

おまけが奇譚◆~の系譜らしいのがとても気になる! うおおおお。

 

[一言]

QRコードは実際に読み込めます。こういうの本当大好き。

 

 

 

『ぴんくへあ~まつり』

 

[概要]

ピンク髪の子達中心。すぴぶーちゃんは!?と思ったけど当時はいなかったのかも。

 

[感想]

だいたいがゆるっとギャグです。短編集っぽいノリ。

カットインがずるいんですよね、悔しいけど笑いました。あの文字の出し方ずるすぎるやろ。

一番のメインは斜視子生誕の経緯話だった気がします。くるくる斜視子のために大いなる苦労と努力とエターナルの危機が起こっていたんだなあ……。

 

[一言]

ちょこっと病んでる斜視子をギャグちっくに応援したいあなたに。

 

 

 

『女の子らしさってなんだろう』

 

[概要]

スピブレちゃんとキャラかぶりしちゃってるかもどうしよう、な斜視子ちゃん。

 

[感想]

いやあ斜視子ちゃんはめちゃくちゃ可愛いですよね!!!!?!?

冒頭のあいさつ最高でした。かわいいかよ。知ってる。

ライチインタビューからの疾走感が最高でした。笑いました。最高でした。よそいきじゃない君が好きだよ。ほんのりくるくる斜視子の設定も見え隠れするので、あの作品を読了後に気持ちを切り替える感じでプレイするとより楽しいかも。

なんだかんだで超光属性なスピブレちゃんのほうも好きなので、いいとこどりな感じでした。

少女性ってなんていうか、脆さと自分勝手さと可愛いを混ぜてねるねるねるねした感じの概念かなって思ってます。

 

[一言]

闇をチラ見せしちゃうキュートガールに惚れたい人向け。

 

 

 

『年明け前に駆け抜ける乙女というネタ』

 

[概要]

やみいちとライチと斜視子。

 

 

[感想]

新年あけましておめでとうございます!

なノリでお送りする超疾走カルトギャグ。腹パンはないけどきっとハラパニスト向け。あの勢いでやらかした後の温かなメッセージ、やりおる。さりげなくBGMがかっこいいのも良いですよね、ずるいわぁ。

 

[一言]

せっかくなので是非とも年越し前くらいにちらっと。

 

 

 

『マリンスノーに似た粒子』

 

[概要]

フレイムⅢとブライアン。ぽえみてぃっく会話劇。

 

[感想]

魔法具現化の死とは? という話。

私はこの命題に対して、消失する、または元となる属性の何かがあれば無限に生まれる(集合意識から個々の取りたい記憶を選んで生まれる)かなーとぼんやり思っていたので、解釈として水の合う話でした。水の。フレイムだけど。

フレイムⅢの感傷的な語りを、ブライアンがいつもの調子で雰囲気ブレイカーしていくので、ポエムにのめり込むにはちょっと距離感があります。が、恥ずかしくて居たたまれない雰囲気になるよりは、ポエムにマジレスしてくれるキャラがいるほうがVIPらしいし、ある意味ほどよく沁みるのかも。

タイトル画面がロゴ含めシンプルにおしゃれで好きです。

 

[一言]

魔法具現化の設定解釈が好きな方、しんみりしたい方向け。

 

 

 

『ダー惚の夢』

 

[概要]

オレも魔法具現化が欲しい!なダー惚中心、ダモンとのっきゅんと水煮さんちょこっと。

 

[感想]

水煮さんにも影が薄かった時代があったんですねぇ。ほうほう(梟)。

全体的にノリはギャグ、ちょこちょこダモンがツンデレます。あとメンバーがのっきゅんとダー惚だとツッコミがいない。

こちらのほうを後でプレイしたんですが『こどくの道に』の明るい前日譚というか前設定だと思えば良いのかもしれません。元々ブラインドが好きな自分としては正当にブラインドがダー惚の使役具現化キャラになるのもアリだなー、なんて。でもなんかキャロルともダーエロとも誰ともつかない位置で蠢いているのが状態異常具現化の味な気もします。

ともあれ、前触れなく勢いよく登場する500Gの男がめちゃくちゃ好きでした。

 

[一言]

ダー惚メインの明るい話でめでてぇしたい人向け。 

 

 

 

『こどくの道に』

 

[概要]

ダー惚がやみっちを攫ってきた。設定暗め、会話明るめ、裏表展開。

 

 

[感想]

やみっちが絶望顔したり強がりながら怯えたりするよやったね!

でも泣いてるやみっちなんていなかったんだ!よかったね!

ダー惚も笑ってるよ!あはは! 

な感じ。

 

というのはわりと表面の話で、実際はダー惚の道化っぷりの裏にあるささくれを逆撫でていくような話。魔法具現化に関する設定が闇深くてよき。隷属させるにはまず身体から!

普段好き勝手してるダー惚がちょっとお兄さんっぽいポジションにいるのも萌える。置き土産の杖のお礼の言葉が場違いにほのぼのしていて、何とも言えない気持ちになりました。このギャップがたまらんね。

「完璧な一人だけ、」「ほんとうに愛していたとも言えずに、」等々のセリフについては同作者の『独白◆~』を読んでおくとピンとくるかも。なんかこの、誰も駄目だと言わないのに自分の中の定義だけがそれを拒むみたいな、自己葛藤のセリフが多く詰まっていて好きだなあと思います。

 

[一言]

ほどよい長さで鬱もあり、明るい中に隠し切れない闇を感じる作品。一番好きかも。

 

 

 

『ハカモリサン妄想癖』

 

[概要]

アイスⅢ、ショタコンフューズ、恍惚なる闇、サモン、そのほか子どもたち。電波祭り。病んでる。

 

 

[感想]

 

まずBGM含め起動画面の雰囲気がめちゃくちゃ好きです。

ここで早くも惚れていた可能性はあります。

 

曇天と雪と墓場の陰鬱な雰囲気から始まり、色々とままならない感情が爆発して、また陰鬱に戻る構成。モノクロ画面+赤のグラフィックも良い演出です。

エピローグで他人事のように話す子どもたちがそれこそ狂気の証でぞくぞくします。

俺達は狂ってるんだぜ!ってアピールしてくるんじゃなくて、降り積もる狂いが襲い掛かってくる辺りも純度高いなあ―、なんて。歪みの純度ってなんだよ。

 

恍惚やサモンがこういう役回りになっている作品も初めてだったので、そういう意味でも新鮮でした。ある意味これって乙女ゲーだよなと血迷ったことを言い走るくらいには震えながら萌えました。

想像する余地が残されているのも良いですよね。料理の原材料は土の下なんだろうなあとか、あの唐突過ぎるプロポーズは本心からじゃなくて逃げるための口実が8割くらいあったんだろうなあとか、レストランの名前からもう呪いは始まってるんだろうなあとか。

アイスさんが最後には喜んでくれるっていうアレがR付きに思えてなりません。えぐい、好き。

 

「死ぬんだ!」「死ぬね!」の流れで例の曲が思い浮かんだんですが、同梱テキスト見たら案の定でニヤリでした。元ネタに負けない勢いと狂気があって素敵です。

 

 

[一言]

おねショタ、墓場、ヤンデレ、妄想癖などなどにピンとくる病みもの好きはぜひぜひ。

 

 

 

 まとめると、

  • 色々含めて一番好き → 「こどくの道に」
  • 萌え部門一等賞 → 「ハカモリサン妄想癖」
  • ギャグと疾走感が最高 → 「女の子らしさってなんだろう」
  • 推し → 「忌み子呪い子魔法の子」

でした!

 

同作者様の他フリーゲーム感想記事↓

shiki3.hatenablog.com

shiki3.hatenablog.com

フリーゲーム「Sacrificial」「死にたがりと魔物」「続・死にたがりと魔物」感想

「おまえのせいで死にそびれた、どうしてくれる」

責任もって死ぬまでお傍にな前置き。

 

 

えー、今回はQoltoresさんところのフリーゲームSacrificial」「死にたがりと魔物」「続・死にたがりと魔物」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

同じ作者様ということでまとめて取り上げますが、「Sacrificial」と「死にたがり~」2作との関係はありません。

どちらも人外×人間なBLゲー

 

というわけで各作品感想。

 

 

『Sacrificial』

 

[概要]

 

奴隷少年な主人公と共に廃墟探索ゲー。探索&ノベル。脅かし・追いかけっこは無し。

BL要素はクリア後の話にぎゅっと詰まっているので、本編だけ見ると純粋に少年と人外のハートフルストーリーとも見れそう。

 

 

[感想]

 

何もわからぬ廃墟、怪しげな研究日誌、不穏な絵本などなど、全体的に雰囲気はホラーチックです。手記が出るとなんとなくCoCな気がしてしまうのは業なんでしょうかね。余談ですが。

 

特に探索パートでのマップがかなり雰囲気出てて、薄暗がりの不安が目の前にあるかのようでした。

デフォルメ調で見やすいのにも関わらずこれだけの不穏さも出せているのは、やっぱり光源や塗り方の関係なんでしょうか。おえかきしないのでわからない……。ともあれ、部屋を変えるとアングルが変わったり、背景写真と手描きマップを使い分けたりするのも上手いなあと思いました。

 

また、ハッピーエンドの描写の仕方がとても好きです!

二人のぎこちない触れ合いが“見て”とれるのがすごく良いなあと思いました。“ノベル”ゲームでこういう差分描写をしてくれる、そのうえ文章では語りすぎず二人の会話で進行していく、このバランスがなんだかとっても好みです。

二人の話がこれからというところで終わってしまうので、少しばかりの物足りなさも感じてしまいましたが、そもそも短編ゲーですしまとまりとしてはばっちり。むしろ二人を気に入ったからこそ先を見たいと思えるわけですよね。

 

おまけで読めるサイドストーリーでは、より凄惨な少年の過去が読めます。BL的謎穴ではなくさらっと数行で洗浄描写があるんですが、これがまた家畜扱いっぽくて良いなあと思いました。エロもこちらに詰まっているので、本編読了後に読むとほのぼの→鬱な流れを楽しめます。

 

エンド2つとありはしますが、バッドエンドのキーとなる選択肢は一つだけなので実質、ゲームオーバーとハッピーエンドな印象。バッドエンドのスチルが大好きです!

 

 

[一言]

陰鬱な世界観、人外×少年、仄暗いほのぼのや鬱展開が好きな方向け。

 

 

 

 

『死にたがりと魔物』

 

[概要]

 

メカクレ朴訥人外×自殺志願者の黒髪少年。人外と言っても形状は人寄り。朝チュンまでのエロと鬱展開。ノベルゲ。公式攻略があるので安心。

 

 

[ストーリー]

 

自殺志願ということでドギツイ鬱展開が来るのかと身構えていましたが、黒鷹に救われる展開のほうが主なので読後感としてはほのぼのでした。一歩間違えれば死亡エンドだったらしいのですが、私は一発でエンド3の生存エンドに辿り着けたからなおさらほのぼのと感じるのかもしれません。

基本的に主人公が選択肢を選ぶ直前に自分の気持ちをある程度示してくれるので、そこに沿うようにしていればトゥルー行きです。なので攻略としても難易度は易しめ。

彼が主人公を甘やかし気味に愛してくれるので、糖度も高めです。

 

特に終盤では、黒鷹が暗躍したよっていう流れなのかなーと思っておりヤンデレ萌えとしてそわそわしていたのですが……。あまりそこは触れられませんでしたねぇ。

ただ、彼らに対して主人公はそう執着も持っていないようですし、たとえそこが明かされたとしてもそこまで亀裂は生じないということなんでしょう、おそらく。

主人公が感づいているかは別として。何より感づいていてもいなくても萌えるのでこれはこれで妄想の余地が出ていいかなー、なんて。

 

おまけ設定文がとても楽しかったので、これからプレイする方には是非コンプを目指してほしいです。黒鷹さん色々経緯を経すぎぃ! うっかり神のうっかり救済にはめちゃくちゃ笑いました。運命の出会いおめでとう!

 

余談ですが、名前変換で「“あなたの”名前は?」と尋ねてくるBLゲーは珍しいなーと思いました。BLゲはなんとなく、夢主人公というより主人公はオリキャラという立ち位置でプレイする人が多い気がしたので。

 

 

[グラフィック]

 

DLの決め手があの、黒鷹のメカクレな外見なんですよね……! メカクレ大好き、ずっと隠されてる展開も後から目が見える展開も好き。黒髪キャラもけっこう好みなので、外見がとにかくツボなキャラ達でした。

また、主人公の結衣にはたった数回だけの表情もあって、顔グラが細やかだったように思います。エピローグだと意外と大きく成長しているのもまた、しっかり男の子って感じがして良い!

怪物のスチルや過去の伝承のスチルなどはかなり禍々しく、ストーリー上こそほのぼのとはいえ、黒鷹と出会って順風満帆とは言い切れない不穏さが感じられて鬱展開萌えとしておいしかったです。

 

 

[一言]

黒髪萌え、鬱設定萌え、なんだかんだで絆される展開などにピンとくる方むけ。

 

 

 

 

 

『続・死にたがりと魔物』

 

 

[概要]

 

上記『死にたがりと魔物』の続編。

初めに人間界編と魔界編、2つのルートに分岐する複数エンド。前作より鬱は控えめ、ただし理不尽死は多め、人外要素も強め。

 

 

以下、特にネタバレ気味かもです。

 

 

[魔王編]

 

さくさく死んでいくのはこう、人間の無力さを感じられて実に、実に好みではありました。ですが、正解ルートを選んだ時に「そういえば前黒鷹が言ってた」みたいなモノローグが2・3回あったので、せっかくなら先にその黒鷹のセリフを出しておいて伏線兼ヒントにしておいてくれたらより輝いたのになあと思います。

 

キャラの掘り下げという意味ではとても嬉しい続編で、中でも結衣がモノローグで毒づいてることが多くて笑いました。前作ではあまり意識できませんでしたが、黒鷹と会う前の彼もこうやって両親や苛めっ子に裏でぐちぐち毒づきつつも表面上良い子ちゃんを演じてたんだろうなあと思うと、彼の根暗さがより感じられて良かったです。

 

魔物や魔神達は西洋の雰囲気なのに、山神等については仏教っぽい概念が入ってて、服装がアジアっぽい……言ってしまえばごった煮な感じはちょこっとだけ引っかかりましたが、ある意味一番フィクションらしくてよいのかも。

 

 

 

[人間界編]

 

こちらは魔界編よりも平和でコミカル。

一部闇へと誘われる展開もありはしましたが、デートシーンもあって基本的には明るいルートでした。

デートコースが多いのも選ぶ楽しみがあって良かったです。水族館でオラついた海洋生物に祝福されてるスチルがお気にいり。

 

エンドとしてはこちらの、事務所開いてわいわいエンドが好きです。ああいう異能事務所とか妖事専門店って良いですよね。短編連作に向いてそうだし、妄想が膨らみます。

こっちのルートで初めて到達したのはリリスさま登場エンドだったのと、魔界編から始めたこともあり、驚かされるところも多くありました。わぁい美乳巨乳。

そんなこんなで、ホラーが苦手な人はこっちのルートから始めると、どんな苦難が訪れてもクスリと笑える、かもしれません。

 

一応、人間世界を捨てきれない葛藤みたいなものも見え隠れはするんですが、基本的に厭世的なので案外さくっと魔界へGOしてくれる印象でした。死にたがりだった経緯を考えれば当然と言えば当然……と思いつつ、やっぱり人間世界では新しい居場所の獲得も難しかったかなー、なんて。

なんというか、初めは人間界に友達や親しい人や憧れる教授ができて、未練を感じて魔界に行けない主人公を痺れ切らした黒鷹がかっさらう的な展開を想像していたのですが。前作で既に黒鷹という居場所が先にできてしまっていたから、人間界ルートは終の棲家ではなくあくまでお別れやお引越しのための気持ちの整理をつけるための余暇、という形に落ち着いたのかなあと考えたりもしました。

 

 

 

[グラフィック]

 

全体的にスチルの美麗さがさらに拍車かかってて、特に魔界編では禍々しさをがっつり感じられて良かったです。眼光と威圧感、よい……。

中にはコミカルなスチルもあって、特に魔界編は終始シリアス寄りな展開なのにギャップを感じましたが、笑った直後にデッドエンド的な急転直下もあり素晴らしい二段構えでした。

しれっと足もげてる黒鷹さんスチルもかなり好きです。

 

CGで物の大きさや体格差も意識されているなあと感じました。ぱっと見ただけでこちらがか弱い存在だとわかるのはこう、絶望感が高くてよいですね……。

 

完クリすると設定資料も見れるので、それこそ絵描きさんには涎ものかもしれません。黒鷹の文様の細やかさがすごい……!

 

 

 

[一言・余談]

 

実は何一つ疑わずこちらが完成版だと思っていたのですが、シナリオやら世界設定やらがぎっちり詰まった有料の完全版もあるそうです。なんと驚き。

フリー版だけでもそこそこの長さな一作ですが、興味のある方はせっかくなので有料版を覗いてみるのもありかもしれません。

 

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

 

鬱展開も糖度高めの甘い関係も楽しみたい方向けの作風でした。

人外×人間なBLをお探しの方に。

フリーゲーム「奇譚◆寸劇◆独白◆~」シリーズ感想

「臆病者だと罵ってくれ、前を向いているだけ褒めてくれ」

そこまで踏み込む気など無い前置き。

 

 

えー、今回は六角レンチ(ざるそば)さんところのフリーゲーム「奇譚◆灰色の海の果てを睨む」「寸劇◆鳥篭の中で嗚咽を聞く」「独白◆幻肢痛と薔薇に心捧ぐ」「名の無い彼のためのエピローグ」「少女一名ろくでなし数名」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

VIPRPG、餡軍中心、見るゲ。キャラの設定をある程度知らないと楽しめないかも。それぞれ相互に関係性がありそうだけど単品でも楽しく読めるノベルゲーです。

初めは◆3作だけ取り上げるつもりでしたが、「独白◆」の幕後に当たる「名の無い~」を加えて、さらにはそれらを踏まえたうえで「少女~」をプレイするとたいへんおいしかったので合わせてしまいます。

 

どの作品も、正式タイトル自体だって大好きなんですが、解凍時のフォルダ名もぴったり嵌る感じが素敵で、フォルダ名を上書きしてしまうのがもったいなく感じてしまうほどでした。演出重視の方や、暗い雰囲気が好きな方向け。

 

 

 

 

 

『奇譚◆灰色の海の果てを睨む』

 

[概要・雰囲気]

 

公式紹介文の「寂しい死人の集まる、灰色の海にようこそ」。この一文で想像した雰囲気がそのまま形になっているような作品です。ダーブラメイン、シェイドⅢとダー恍がサブメイン。

 

 

[内容]

 

話すたびに鳴る錆の効果音がとても心に残ります。色味も抑えてあり、心に潜っていくような語り口も合わせて陰鬱に見えるところもありますが、鬱というほど暗くはなく、「沁み入る」印象です。

本当ね、選びたくても選びきれないくらいどのセリフも言葉選びが秀逸で響くんですよ……! ダーブラが自然体なのも良いなあと思います。説教でも嫌悪でもなく、ただじっと話を聞いて、思うところを話すだけ。この距離感がとても心地よい。

そしてダーブラ本人は動かないけれど、こちらの気持ちや感情は静かに大きく揺さぶられるところがありました。周りは、口は、心は、指先は、足は。順番に動いていき、最後に届く――話の構成が素晴らしいです。死ぬと生きる、待つと動くの違いがリンクしているのも本当大好き。終わり方も泣きたくなるくらい穏やかで好き。

 

ラストは勿論の事、章としては奇術師の話と蟲食いの話がツートップです。きっと定期的に読み返すんだろうと思います。

 

 

[一言]

 

「苦手な人は苦手な作風」ということで裏を返して私の好みど真ん中な作風でした。

 

 

 

 

 

『寸劇◆鳥篭の中で嗚咽を聞く』

 

[概要・雰囲気]

 

闇と雨と会話劇。シェイドⅢとダー惚。

 

 

[内容]

 

タイトル画面の雰囲気がまず好き。開始コマンドの言い回しも好き。

少し理解が難しく、それでもじっくり読みたいと感じたので二回読みました。

倦みながら惰性で生き続けるシェイドⅢと、独りの自分を殺し続けるダー惚の話、なのかな。棺桶と暮らす少女と自分殺しの男、ってだけで絵になりますよね。

二人が完全に歩み寄るでもなく、お互いの境界を守ったままで淡々と殺されかけたり歓談したりしている、この距離感がやっぱり好きです。

 

ダー惚がたくさんの自分を作り出して嫌になる度押し付けて殺し殺されて、という流れ、でいいのかな。もはやどれがオリジナルなのやら、シェイドⅢに会うたびダー惚の中身は変わってるんじゃないか、と思うのですが。それすらもシェイドⅢが作中で切って捨ててるので、もう本当に踏み込みすぎないスタンスでやってるんだなあと思います。

孤独が怖くてポンコツなのが僕、世間に慣れてて人殺しも平気でできる道化が俺、だと思っているんですが、ともあれ一人称使い分けはよいものですね。

 

シェイドⅢがラストでにっこりするのは、同類の救えなさを嗤うみたいなものなのかなー、なんて。

 

 

[一言]

 

薄闇の中でぼぅっとしているような、ほどよい倦怠感のある一作。

 

 

 

 

 

『独白◆幻肢痛と薔薇に心捧ぐ』

 

[概要・雰囲気]

 

孤独な集団が詰め込まれた箱庭での独白。ダー惚以外もいるけどダー惚しかいない。

 

 

[内容]

 

読んでよかった、読んでよかった、読んでよかった!!

三作とも甲乙つけがたくはありますが、一番琴線を揺さぶられて心を掻き毟られたのはこの作品です。あとがきにもありますが、ダーク恍惚なる闇の見え方が160度通り越して175度くらい変わります。臆病な道化者の虚しさがたまらない……!

前述2作で語った通り筆力は勿論、セリフが本当に素晴らしくて! 常に一歩踏み出しきれなかった9番がラストに爆発するラストのがたまらなく真に迫っていて、読んでいて気が狂いそうでした。大好きです。

 

アイデンティティが崩壊するようなクローン体、研究施設と実験動物、軟禁状態で慰めは絵本だけ、などなど舞台設定がすでに好みな陰鬱具合なんですよね……。はい設でおなじみナルシストやホムンクルス等々の説明の裏背景として説得力が満ち満ちているのも凄いところ。キャラへの愛を(勝手に)感じる出来でした。

 

色っぽい描写もグロっぽい描写もあります。が、エログロというよりはこう、誰もが幼い頃に感じる(と思っている)、淫靡なものへの嫌悪感や孤独感、もっと卑近に言えば親の情交をうっかり覗き見てしまったみたいな裏切りに近い感覚でした。

この、潔癖に近い嫌悪感の描写がすごく上手なんですよね……。

 

何よりもうタイトルが大好きです。この作品に幻肢痛とつけるセンスが好きすぎる。

レコードの話が出てからBGMが流れるようになったり、クラシック曲が中心だったり、セーブ画面の蝶に変化があったりするのもまたストーリーと絡んで響くところです。本当、良い演出でした……!

 

こっちを読んだおかげで「寸劇◆~」の理解も進んだ気がします。

これからプレイの方がもしいるなら、最後に右キーでエピローグを見るのをお忘れなく。

 

 

[システム]

 

「寸劇◆~」の時からさりげなく文章スキップ機能が搭載されていましたが、今作ではこのノベルシステム部分がかなり至れり尽くせりでした。

スキップ有り、バックログ有り、回想の読み返しもできるうえにそのための薔薇マークがさりげなくお洒落。ツクール製のノベルではなかなか味わったことのない充実っぷりでした。

一番ありがたかったのは中断セーブですね……! いわゆる栞を挟む機能。元々読みやすく章ごとに分けられてはいるのですが、やっぱり噛み締めるように読みたい作風なので手を止めやすいのはありがたかったです。

 

構造上似た口調のキャラが多く出てきますが、文字色の違いのおかげでセリフ部分は混乱せずに済むのも助かります。この色違いがラストの発狂で良い演出になっているのも上手いなあと思わされました。

 

 

[一言]

 

実験生物、箱庭世界のブロマンス、虚勢を張った道化者など。

ダーク恍惚なる闇が好きならとにかく是非とも。

 

 

  

 

 

『名の無い彼のためのエピローグ』

 

[概要・雰囲気]

 

『独白◆』~を踏まえた、僕と俺の話。ダー惚メインでシルエット中心の短編ノベル。

 

 

[内容]

 

タイトル画面からして陰鬱に心を引きずるこのセンス。大好きです。

あの彼が、どういう経緯をたどってあの右キーおまけ話に至ったのか? そのあたりがほんのりと補完できる、かもしれない感じでした。幕後と書きましたが、幕間ともいえる気もします。

心を取り戻す、洞窟を抜ける、などなど。モチーフは明るいんですが、街へ行く目的や彼のこれからの生き様を考えると、なんとも仄暗いものを感じずにはいられません。何物でもない灰色の虚しさよ……。

 

[一言]

『独白◆~』が気に入った方はお見逃しなく。

 

 

 

 

 

『少女一名ろくでなし数名』

 

[概要・雰囲気]

「奇譚◆」「寸劇◆」「独白◆」を踏まえて読むとたいへんおいしい5分ゲー。アレックスとブライアンとリナックス、そしていつもの餡軍3名。

 

 

[内容]

 

あの見覚えある背景画像が出てきた瞬間に「これは!」とガッツポーズ決めました。やったぜ。

だらだらゲームしながらだべってるだけ、と言えばそれまでですが。重々しすぎるダーブラのセリフや、それにバカヤローと言いながら気を許すシェイド(デコ)、いやあ実に微笑ましかったですね……。

◆3作がこう、仄暗い中に光を求めて落ちくぼんでいくような話だったなーと思っているので、こういう一見和やかな話が見れてなんだかほっとしました。奇譚◆の雰囲気が一番近いかも。

 

 

[一言]

完結編、とまでは言い過ぎだけれども、一通りプレイした〆にさくっとやりたい話。

 

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

特に◆のつく3作においては、あらすじや中心人物は違えど、どれもどこか陰鬱な雰囲気が漂っていて、それなのに言葉の一つ一つが輝く良作でした。VIPRPGにもシリアスゲーや鬱ゲーはたっぷりあるのだなあと改めて思わされるなど。

雰囲気や世界観を大事にしたい人に強くおススメです。

 

 

 

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フリーゲーム「贄の赤ずきん(R15版)」感想

「モテる女の子の条件は従順で家事上手なお花の似合うふくよかさん」

そして男より馬鹿であることな前置き。

 

 

えー、今回はA子さんところのフリーゲーム贄の赤ずきん(R15版)」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

エンド分岐そこそこ、カニバ要素とエロ要素在りの乙女ゲー。

元々はR-18シェアウェア、でいいのかな。有料の同人ゲーとして販売されていたこちらの作品ですが、エンドを一部楽しめる体験版もといR-15版がフリゲとして公開されましたので手をつけてみました。

 

というわけで良かった点など。

 

 

揺れるお胸とメルヘンブラッドな画面

 

やはり真っ先に言うべきはグラフィック面のクオリティの高さでしょう。

まさに食べちゃいたくなるぽわわん可愛いヒロインに惹かれ、起動して、直後の血飛沫にぎょっと身を引いたのも良い思い出です。鬱の予感を隠さないこの姿勢、実に良き。

スプラッターなのかと言えばそういうわけでもなく、あくまでダークメルヘンにとどまっていたのも乙女ゲらしいところ。また、コミカルなシーンではデフォルメ調の一枚絵に代わるなど、シナリオの雰囲気を大事にされているグラフィックが多かったなあと思います。

スチルや立ち絵がうまく動き、キャラが要所でよく動いたり迫られる臨場感を味わえたりしたのも良かったです。

 

そして、目が行くのは揺れです。そうです、ヒロインの胸がたゆんたゆん揺れます。流石元はR-18シェアウェアなだけはありますよね。なお、思わず大胸筋サポーターを差し出したくなる私のようなプレイヤーのために、揺れをオフにする機能もついています。この辺り有難い配慮でした。

 

 

同じセリフの異なる気持ち

 

選択肢分岐によるシナリオ調整自体はよくある形だったんですが、同じ共通ルートでも、誰を攻略中かによってセリフの意味が変わって見える点が興味深かったです。

オルフの「ウィルから離れろ」という言葉が顕著ですよね。ルートによってオルフの考えが違っているだろうことがわかるからこそ、深みの増すセリフでした。

また、選択肢によって同じシーンに一文追加される、なんてことも多くて。キャラクターの心情や価値観がどう変わっていくのかを丁寧に見せてくれるシナリオ構成でした。

 

 

人と狼、男と女、馬鹿と賢い

 

先の項目に加えて、こちらも。

どのエンドを通っても、各々の持つものを対比する展開が多かったように思います。

初めは狼に怯えていたり、馬鹿だからと言われることを聞き流したり、あるいは伝えることを諦めていたりしたキャラクター達が次第に歩み寄っていく流れは見ていてとても好ましかったです。無理に同じでなくていい、違う価値観で共存する在り方が丁寧に描かれていました。

特にウィルルート、彼は狼か人かという問いに対するリリアの回答が本当に素敵なんですよね! オルフが指摘していた通り不毛ともいえる答えを、先が楽しみでわくわくするようなものとして描けるのは、まさにあのヒロイン像とシナリオの丁寧な積み重ねがあってこそだと思います。

 

 

頭が残念過ぎる大馬鹿ヒロイン

 

そして特筆すべき最大の点はここでしょう。ヒロイン像です。

例えば恋に対して鈍感だったり、皆に対して優しかったり、ちょっとうっかりさんだったりするのは乙女ゲヒロインあるあるの属性です。が、この作品のリリアは違います。

優しいだけじゃない、鈍感なだけじゃない、真の意味で“馬鹿”なんです!

アンチじゃない、アンチじゃないです。念のため。

 

とにかく彼女は察しが悪い、そして同じ話を何度も繰り返さなければいけません。特にここはデニスルートで顕著、彼女自身が自分に抑制をかけているのも理由の一つではありますが、それにしても見ていて「よく今まで生きてこれたな!?」と思えるくらいに頭が弱いです。

そしてその頭の悪さに自覚的なので、自己評価も基本的に低いです。でも、馬鹿なので落ち込んでもすぐ忘れるか誤魔化されます。しかも鈍感なのでけっこう図々しいシーンもあります。

 

だから、率直に言ってめちゃくちゃ理解不能なヒロインでした。流されやすいせいか、言動がちぐはぐなんですよね。頭弱くてお胸がぽいんぽいんって要素だけ見ると男性向けヒロインのテンプレなはずなんですが、おかしいな……。

滅私奉公タイプかと思いきや自分の命も優先したがるし、そのわりに無警戒に狼さんと共同生活するし、お母さんっぽいこと言い出すけど母性キャラって動きでもないし、いやあ本当にわけがわかりません。最後まで読めないキャラで新鮮でした。

特にバッドエンドや魔女ルートでの彼女は、ずっとリリア視点で進んでいたのにも関わらず理解不能でした。「いつのまにそんなこと考えてたの!?」みたいな。

 

このヒロインの独特感は絶対余所だと味わえません。かなり個性的で新鮮、ある意味人を選びそうだからこそ推したい一点でした。

 

 

 

 

一方で、合わない点について。

 

 

 

合わなかった点

 

合わなかった点はまとめてしまうと、テキストの文体。ここに尽きます。

後は理由等をだらだら書きなぐっているだけなのでお見苦しいようだったらポンと読み飛ばして頂ければ幸い。

 

 

・突然馬鹿じゃなくなる違和感

 

リリアが急に豊富な語彙で饒舌になる時があって、ここだけは受け入れがたかったです。例のルートは除外するとしても。

例えばオルフにスプーンの説明をしてる時とか、尻尾の手触りを確かめてる時とか。頭の回転が鈍いという意味なら明瞭な説明は合いませんし、知識が足りないという意味で頭が悪いのなら知的な言い回しは避けた方が無難。それこそスプーンの説明の時は「ザバっとやってひょいって……」「全然わからん」みたいな流れだったら馬鹿っぽさが出たと思うのですが。

 

リリアはウィルの説明やオルフの言葉も理解できないというある意味ちゃんとした馬鹿なので、せっかくやるなら隅々まで貫いて欲しかったと強く思います。村の皆がそうであったように、ただでさえイライラされがちなキャラ属性なわけですから、貫かなければ物語の根幹が崩れてしまいますし。

某重要な設定があるならなおさら、この中途半端な“ただの馬鹿じゃない”アピールはもったいないと感じました。

 

余談ですが、ここまでフォローや言い訳なしに“頭が残念なキャラ”をやり遂げているヒロインはそうそう見れません。プレイヤーのストレスを圧してでも馬鹿に躍らせた、その発想や良し。独特ですし是非もっと生かしてほしかった、発想自体は素敵でした。

 

 

・地の文に意志が透けすぎている

 

一人称の内容を三人称でやっている感じ……ええと、言い換えれば意図が透けすぎているのが少し目に障りました。

もしかすると、リリアが頭悪い設定なので、文章もあえて説明的にして、リリアに言い聞かせるよう狙っていたのかなーとも思いつつ。それにしてもやっぱり私には根本から文体が合わなかったのかな、と思います。

 

不要な横やりと世界観ブレイカーな一言も気になりましたねぇ。

シリアスなシーンで突然覆水盆に返らずの説明いるかな、とか。わざわざ念を押さずとも継母は根っからの大悪党なんてことわかりきってるだろうにな、とか。あとはどこのシーンもそうですが同じことの言い換え繰り返しが多すぎて冗長だなーとか。いやここは私にもブーメランで常に返ってくるので大口叩けないんですけども。

 

「作者はこういう意図でここの描写をした」「このキャラはこの時こう考えていた」という説明があまりに多くて、抒情的な文体の設定資料を読まされている感じでした。やっぱり少しは想像の余地を残して、物語に“感じる”要素を与えて欲しかったです。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

 

私個人としては文体が合いませんでしたが、グラフィックのクオリティの高さ、シナリオの構成の丁寧さ、ダークメルヘンな方向に堕ちかける攻略対象など、萌える点も多くありました。だからこそ一通りプレイしようと思ったわけですしね!

 

物理的にも乙女的にも食べられちゃう展開にピンとくる方へ。

 

追記ではネタバレ込みの感想など。

 

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フリーゲーム「もしもダー惚が… ×3」の感想

「とりあえずこれでも咥えときな!」

点滴代わりに薔薇一本な前置き。

 

 

えー、今回は2008年VIPRPG紅白のフリーゲームもしもダー惚が… ×3」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

VIPRPGでもしもワールドのやるゲ。ダー惚中心で、「ナイ軍」「餡軍」「ダーク〇〇」あたりのワードの意味がわかる人向けになってます。

 

というわけで良かった点など。

小ネタ等はある程度ネタバレしているので気にされる方は注意です。

 

 

レベル上げなど要らぬ、デフォ戦ボスラッシュ

 

ラッシュ、と言うほどバトルゲーではないのですが語呂が良かったのでつい。作品の全体構成は、ストーリー→おつかい程度のダンジョン→ボス→ストーリー、な流れです。

で、その中のバトルがかなり熱いのでまずはそこから。

 

レベル上げもなければ金もない、もちろん武器屋防具屋は使えない、キャラの固有スキルと状態異常と装備品で詰将棋的に殴り勝つタイプのバトルが主です。といっても基本的に勝利条件はそこそこ普通のRPGなので、ストーリーを見るだけならばあっさり勝てるゆとり仕様(公式)です。

 

じゃあ真髄はどこかっていうと、ボーナス条件です。

特殊な条件を満たして勝利すると豪華報酬がもらえるこのシステム。「これムリゲー/運ゲーじゃね?」というものから、「初見撃破ヒャッハーw」となるものまで盛りだくさんで、歯噛みしながらF12する楽しさをとくと味わえました。これだから試行錯誤デフォ戦ボスラッシュはやめられないんだよなぁ!

全滅するとヒントをもらえるので、頑張ればきっとなんとかなります。熱いバトルをお求めならぜひ。

ゆるゆる楽しみたい人向けにも書いておくと、ボーナスアイテムは取得しなくてもストーリーは同じですし、何もなくとも十分ごり押しが効く難易度なのでご安心ください。

 

MPが切れるとHPがガンガン減る、特殊な状態異常も面白かったです。わりと無視してごり押しした覚えもあります。やられる前にやればいいんだ!

 

 

恍惚多すぎの原典

 

原典、と書くと言いすぎかもしれませんが、少なくとも始まりの一端は担っています。どうやら偽恍惚なる闇の初出演作でもあるそうです。初めのころ偽恍惚とダー惚と混同してたんですよね、懐かしいなあ。

とりあえずダー惚好きにはとにかくやってほしい、恍惚と先代周りを知りたい人にもやってほしい、そんな感じ。元々餡軍は気になってたんですが、これプレイしていっそう好きになりました。

色んなキャラが出てきますが、メインとして動くのは偽ダーエロ・ディオナ・ダー惚・恍惚・偽恍惚・ダモン・リナックス辺りかなと思います。

 

 

記憶喪失のIKEMENの行く末と真相

 

メインストーリーももちろんすごく好みでした! 短編ながらストーリーは濃密、でもテンポよくさくさく。あと、テーマを言うとネタバレになるので隠しますが、こういうのが主題の作品って好きなんですよね……。何一つ伝わらないなこの書き方だと……。

重たいものを飲んでそのまま沈む展開もあれば、「まあでも僕IKEMENだからな!」でなんとかなっちゃう展開もあります。どちらも好きです。

恍惚ズがメインなだけあって、一部で頭脳戦が出てきたのも盛り上がりました。頭のいいイケメン! 敵のたくらみを看破する展開! 浅知恵を上回る悪知恵! いやあ素晴らしい。

なんだかんだと勢いで一気にプレイして今いました。

 

 

豊富な会話分岐とマルチエンド

 

ストーリー進行に応じて、メインキャラはもちろんのこと魔王軍のその他雑魚扱いのキャラまできっちり会話が変わってくれます。スライムのグルメコメントが好きでした。

また、終盤になると自分で仲間の入れ替えをすることができ、以降のボス戦ではキャラがそれぞれ別のセリフを喋ってくれます。たった一言であっても会話差分回収できるRPGってすごい好きなんですよね……。ボス戦があれこれ試行錯誤するタイプなので、お試しついでに会話も聞けて一石二鳥でした。ラスボス戦の偽ダーエロ兄ちゃんのセリフが好き。

 

また、ダー惚×3のタイトルに合わせるようにエンドも3種類(厳密には2+おまけ)あります。パッチ追加されたものではあるらしいのですが、いやはや良いタイトル回収具合だなと。

迎えたエンドによっては開発室のコメントも一部変わります。ステータス画面もお見逃しなく。

 

 

とまあ、こんな感じで。

ダー惚中心、詰将棋デフォ戦、シリアスありハッピーありなどにピンとくる方向けの一作でした。

 

追記ではネタバレ込みの感想など。

 

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フリーゲーム「毒薬のシルエット」感想

「肝心要は想像させて、煙に巻いては逃げ出すのだ」

少しだけ死の恐怖に似ている前置き。

 

 

えー、今回は時雨屋本店さんところのフリーゲーム毒薬のシルエット」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

推理風おつかいADV、プレイ時間は4時間強くらいでした。多少の論理パズル?なども含みますが、犯人当てをするというよりはミステリ小説を読む感覚で楽しめます。

公式には「どこからでも読みはじめられる」とありますが、個人的には1章からを強く強く強くおススメしたいです。

 

 

というわけで良かった点など。

 

日常を感じられる舞台と、丁寧な演出

 

主人公ルナさんはレインクラウド通りに住む薬屋さん。街の事件に巻き込まれたりしつつも日々お薬をお届けする日々。

そんなわけで、基本的な舞台は街になります。特に序盤は同じところを行ったり来たり……

……と書くと退屈そうに感じられてしまうかもしれませんが違うんです。

 

まず、ルナさんの立ち絵や歩行ドットが毎日変わります。衣装替えです。おでかけ前のお着換え等がきちんと話に組み込まれているのってすごく、良いですよね。リアルな日常を感じます。他にも街の人もちょくちょく会話が変わるし、天気が変われば店は閉まるし、メモ書きは書く人や状況によって変わるし、時にはカットインまで。

同じ場所を歩いているのに新たな発見――ってまさしく日常の一ページだと思うんですよ。それになんていうか、愛着が湧くんですよね。何度も歩いて舞台に愛着ができたからこそ、その場で起きるドラマが光るという。ゲームならではの表現だなあと思いました。 

 

 

短編連作小説で大舞台でドラマとなるストーリー性

 

あと、この作品をプレイしていて強く感じたのが、ジャンルの幅広さです。

まず、タイトル起動時はチャプターセレクト、小説の目次を思わせる構成。その直感通り、序盤は短編ミステリをさくさく読み進めるようなプレイ感です。けれども次第に中盤でなんとなく物語の核が見えてきて、お話は小説から大舞台、人間ドラマへと変わっていくんですね。“ADV”“ノベルゲーム”という枠を飛び越えて、しかし小説でも映画でもできない表現をやってのける……そんな印象でした。

絵になる構図があちこちに仕込まれているからなおさら感じるのかなあ。

大筋の物語は回想もしっかり加えて、ある程度先が読めるくらいわかりやすく。一番大事なとっておきは、最後まできっちり伏せて驚かせる。そういう使い分けや丁寧さを感じるお話だったなあと思います。

いや本当、7話と8話が好きすぎてですね! 積み上がったものが! こう! ぶわあああああっとくるんだよ!! 実に盛り上がりました。

 

 

視線を意識する構成と描き分け

 

前述の通り細やかなお色直し等を挟む、立ち絵変化も豊富な今作ですが。服も勿論のこと、各キャラの立ち絵の細やかな変化がとてもうまかったなあと思います。おやっと思う時には必ず理由があるし、キャラの特性によってきちんと描き分けがされているし。おまけ部屋でじっくり閲覧できるのも嬉しかったですねぇ。

 

また、立ち絵のみでなく、ドットを使った各シーンの演出も素晴らしかったです。

さりげないところだと、ベランダに出れば雨が降る、屋根の下を通れば影ができる、辺りでしょうか。なんか、当たり前と言えば当たり前なんですが、作り物の世界でそういう当たり前が再現されていると世界観が深まる気がするんですよね。

印象に残ったシーンについては書きすぎるとネタバレになってしまうので堪えますが、一か所だけ。視点が下に誘導されたと思ったら次には上へと昇っていく某シーンでは、一緒に気持ちもフィナーレへ向かって盛り上がっていってくれて、静かに熱い構図でした。

 

 

ヒーローでも悪人でもない、そこそこ卑怯な一般人

 

この作品にはなかなかチート、もとい、特殊な立場のキャラが多く出てきます。肩書だって、王・暗殺者・魔女・怪盗・探偵・冒険者見習い・猫等々様々です。しかも魔法もござれなこの世界、これだけあればさぞかし、ヒロイックな大舞台になることでしょう。

が、この作品の中で動くキャラ達はあくまで、役割ではなく人として動いている印象を受けました。

 

簡潔に書くとこの人らめっちゃ人間臭いんですよね!

 

危なくなったら夜逃げするし、善人でもイラッとくる時はあるし、しんどい時は何かになすりつけたくなっちゃうし、難病持ちでも案外明るい! なんかそういう、行動と心の動きがすごくリアルで、現実でも似た人とどこかで出会えそうな錯覚までしてくるキャラ達だなあと思ったんです。

それでいても、それぞれのキャラの物語はものすごく、ドラマなんです。シリアスと笑い、緊張と緩み、人に見せる顔と見せられない顔……そういったものの使い分けが非常に巧みだなあと思いました。

 

 

 惜しかった点

 

と、大絶賛する一方で、惜しいところも少しだけ。

  • 誤字脱字名前ミス多め
  • イベントシーンでの歩くスピードが演出を考慮してもかなり遅め(特に序盤はさくさくでよさそう)

他の要所が丁寧だからこそ、もったいないかなと思います。

 

でも、逆に言えば気になるところは本当にここくらい。

話が長くなるとセーブが挟まったり、イベントポイントにマークがついてたり、次やることがわかりやすいToDoリストにまで演出が仕込まれていたり、細やかな点も光りました。

おまけ部屋のボリュームたっぷり感もめちゃ嬉しいです。舐めるように読んでしまったぜ!

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

 

ニアカップルなバディ・コンビもの、リアルなキャラ像と人間ドラマ、毒殺、寿命差、等々にピンとくる方へおススメの一作です。

 

なお、過去作の小ネタがいっぱい仕込まれていて楽しいので、知らなくても楽しめはしますが是非ともプレイしてみてほしいなあと思います。

追記ではネタバレ込みの感想など。

 

 

同作者様の他フリーゲーム感想記事↓

たくさん書かせて頂いているので、代表的な関連作のみ。

shiki3.hatenablog.com

その他は下部か右柱の検索窓で 「時雨屋本店」でどうぞ。

 

 

 

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フリーゲーム「ヒューミニアの花婿」感想

「誇りとは振りかざすものではなく携えるもの」

さあ今日も背筋を伸ばしていきましょうな前置き。

 

 

えー、今回はThunderSonia(サンダーソニア)さんところのフリーゲームヒューミニアの花婿」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

ボリュームたっぷりヤンデレがっつりの、恋愛ノベル乙女ゲー。サブキャラにもボイス付き。

別作の話をしてしまいますが、『うそつきあくまとわたし』のヤンデレ具合がとても気に入っていまして。公開情報を聞いた時は「あの作者様のヤンデレゲー!」とテンションが上がったものです。

 

というわけで良かった点など。

 

 

ヤンデレに正面から向き合うストーリー

 

ヤンデレ乙女ゲーというと今までは2パターン出会ったことがありまして。初めから終わりまでヤンデレ尽くしのマルチバッドエンドものと、特定のルートでヤンデレエンドに向かうもの。

この作品はそのどちらにも当てはまらない、病みに至る経緯もしっかり書き上げたうえで堕ちルートから更生ルートまで用意してある、まさにヤンデレ好きのための一作でした! シリアスにここまでしっかりヤンデレと向き合っているのは本当に嬉しかったです!

 

私はやっぱりヤンデレは過程が重要だと思っているので、恋が病みに染まる流れがきちんと見れたのがもう萌えました。ある種のギャップ萌えみたいなものですよねこれ。エンド分岐する前からがっつりヤンデレ言動が混ざり始めるのも大満足でした。

各キャラがそれぞれの事情で各々別のタイプのヤンデレになっていくのも丁寧で良いです。

 

 

 

女王の誇りと貫く愛

 

このヤンデレと向き合うガッツを有しているのが、我らがヒロインもとい主人公のイヴリン女王様です。乙女ゲーというと攻略対象に注目しがちですが、この作品では彼女の魅力があってこそという部分も多くありました。

女王という肩書がしっくりと当てはまる、誇り高さで芯が通っている方です。

設定負けしていないのが本当にすごい。

「もうダメかもしれない」という時に、弱いヒロインとして嘆くのではなく、国を背負う者としての責務で一度は立ち上がる――心から応援したくなる主人公です。

 

こうして踏ん張れるヒロインだからこそ、時には体当たりでぶつかって叩いて説得してヤンデレと向き合う展開が光るんですよねぇ。

 

一方で、両親を亡くして、という事情もあり、時には年相応の少女らしさや心の弱さも垣間見えます。ちゃんと弱いところもある、っていうのが本当にツボなんですよ。弱さを知ったうえで苦難に立ち向かえるヒロインは本当に強いと思います。そして、ここまで気高くあってなお心折れる展開も萌え的な意味では心が躍ります。

 

共感もできるし、物語のキャラクターとして応援もしたくなる、乙女ゲーの距離感として絶妙なヒロインでした。

 

 

 

力の入ったボリューム感

 

さらにストーリー面で特筆すべきは個別ルートの長さです。

一応、前半が共通ルート、後半が個別ルートとなってはいるのですが、かなり早い段階から攻略キャラを選択して二人きりで話を進めることができるので、実質ほぼ全編個別ルートです。なんて贅沢なんだ!

 

メインキャラだけでなくサブキャラのエンドもあるので、それこそフルコースなボリューム感です。しかも頭からつま先までヤンデレいっぱい、夢のようですよね……!

サブキャラ相手でも中には想いがメインキャラに向いているエンドもあったりするので、通じない片思いや横恋慕も楽しめます。これもまた新鮮なストーリー構成だなーと感じました。

 

 

 

豊富な病み立ち絵とキュートなケモミミ

 

視覚面で「おお!」と思ったのはアイキャッチです。初めはアルシオンルートから入ったんですが、個別ルートに入ってあのアイキャッチを見て、今後の期待に思わず声を上げて喜びました。

また、立ち絵もハイライトが消えるものから不穏に微笑むものまで多種多様です。ストーリーのボリュームに負けず劣らずスチルも多め。かわいい絵柄で攻略対象も年下っぽい属性の子達が多いので、不穏な展開でのギャップも楽しめます。

 

獣人と言っていいのかな、いわゆるケモミミな攻略対象ばかりなのでそういう意味でも需要を狙い撃ちしている作品です。しっぽ動いたり耳が立ったりするのも微笑ましい!

国によって特色が違うのもさりげなく興味深いところ。マジックアイテムや各国の情勢調整などなど、ファンタジー世界設定としても楽しめました。

 

 

 

声質ぴったりのパートボイス

 

なんと驚き声入りフリゲです。最近多くなりましたよねぇ。嬉しいことだ。

パートボイス、と書かれていたのでてっきり返事や数単語だけ喋ってもらえるタイプだと思い込んでいたんですが、実際は声を覚えられるくらいかなりたくさんボイスが入っていて驚きました。

声質もまさにハマり役な人ばかりで、演者さんの幅広さにしみじみします。

 

ただこれについては一方で不満点もありました。

まず、名前変換機能の関係でヒロイン名を二人称で呼ばれることがあるんですが、シーンによって違和感があったこと。上手い言い換えをしたり、絶妙な吐息でごまかしたりしている部分もありはしたのですが、そもそも名前を呼ばずに済むような場面もいくつか見られたので、テキスト自体を調整してもよかったのではないかなーと感じました。

次は、滑舌の関係。私の好みも勿論ありまずが、どうしても作り声が目立ったり鼻声かかったりで聞きづらい方がいたので、ちょっともったいなかったなあと思います。

おそらくは演技力>>>滑舌でオーディション?してるのかなー、なんて。逆に言えば「ボイスは演技力あってこそ!!」という方にはむしろ大満足な一作だとも思います。

 

実際、病み演技がうっとりするほど上手い方がそりゃもう多くって!

ボイスのおかげでただでさえ良質なストーリーが割り増しで響くことも多々ありました。

 

演技という意味ではティルツの中の人が飛びぬけて好みでしたねぇ。弱っている時と激高する時、恍惚な時、とにかく声の使い分けが上手なんです。それでいてちゃんと別人ではなくティルツの声だなあと思えるんですよ。ひょええ。

あとは、ロシェルの序盤と終盤の切り替えも良いですよね。ロシェルルート入った後に周回プレイで序盤のロシェルに合うとクスっとしてしまいます。このロシェルの未来の姿を知っている優越感的な。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

ヤンデレ、ケモミミ、身分差や逆光源氏計画などに萌える方にオススメです。

 

 

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フリーゲーム「ナイトメアの見る夢」感想

フリーゲーム「深雪に咲く」感想

 

 

追記ではネタバレ込みの感想など。

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