うそうさ〜第二号室〜

フリゲ・鬱展開・ヤンデレ 万歳!

フリーゲーム「記憶も力も指先ひとつで」感想

「タイトル回収の瞬間はいつも心が震えるもので」

だから言葉は区切られた前置き。

 

 

えー、今回は牧場の牛肉さんところのフリーゲーム記憶も力も指先ひとつで」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

エンド1つの一本道、隠しダンジョンありの中編RPG。もしもワールド前提で、深都民や神々がメインなので、そこそこVIPRPGに触れてもしものお約束を知ってる人向け。

デフォ戦も探索も腕の鳴る、明るいRPGです。

 

 

というわけで、良かった点など。

 

ほのぼのコミカルなストーリー

 

おかしくなったもしも世界を元に戻すべく、記憶喪失のクトネが立ち上がる! というのがプロローグ。といってもシリアスはほとんどなくて、基本的に明るくほのぼのな感じでお話は進んでいきます。

敵キャラも憎めない良いキャラが多いんですよねえ。笑いどころや下ネタはあるけど棘はなくて、明るく元気にみんな笑顔でハッピーエンド!な感じの作品でした。

ちょこちょこ挟まれる会話イベントも微笑ましかったし、それがアイテム回収にもなる一粒で二度美味しい感じも嬉しかったです。

 

 

 

変わる操作キャラと変化球なメインキャラ

 

2015GWの祭りページを見てもらえればわかるとおり、キャラの人選がけっこう異色です。主人公がクトネって時点で珍しいですよね。ですよね? 

斜視子がメインと聞いてプレイを始めたんですが、気づけば大和魂に惚れてました。良いキャラすぎる! 今までほとんど知らなかった深都の皆さんや、ネクロさんのことが知れたのも嬉しいです。キャラに愛着が生まれるようなゲームっていいなあ。

キャラの並び順を変えたら先頭キャラも変わってくれたり、マップチップにマークがないところでも調べたらちょっとした反応があったりするところも丁寧な作りで嬉しかったです。ムシャ。懺悔室やおそうじマシーンの会話差分もクスッとしちゃいました。

 

 

 

全員に活躍の場があるデフォ戦

 

さて、本作の神髄はやっぱり戦闘システム。

MP半分から始まって1ずつ自動回復する、デフォ戦やるゲでたまに見るシステムです。これなんて言うのかな。誰か教えて。

他、敵の弱点を取ったら相手がスタンしたり、麻痺や沈黙で攻撃が半減したりと、かなり色々と戦略の立てがいがあるバトルでした。主人公すらも固定メンバーではなくて、本当に自由にパーティ編成できるのが楽しかったです。

キャラクターが戦闘に参加してなくても倒れてても経験値を共通でもらえるのも、すっごく嬉しい! いつでも好きなときに入れ替えて、余計なこと考えず純粋にキャラだけを見て戦略を立てられるのがとっても楽しかったです。

 

 

 

「わかるね?」と言わんばかりのお膳立て

 

作者側の仄めかしと、プレイヤーへそれを学習させる流れづくりがとっても上手い作品だなあと感じました! 信頼できるゲームです。

例えば、マップの端にちらっと見える宝箱へ至る隠し通路とか。強い攻撃の前の予備動作とか。強攻撃を乱発しまくるけどダウンも入りやすい敵とか。

ここすごく誠実だな~と思うんですよ。難易度の高いゲームって、中には理不尽だったりプレイヤーにイジワルだったりな作品もあるのかなと思うんですけど、本作はすっごく親切なんです。難しさと親切な作りって両立するんだなあって思って、なんだか嬉しくなっちゃいました。RPGやデフォ戦が大好きな作者様なんだろうなあ。

バトルも初見殺しはほとんどなくて、「さて対策の準備はいいかな?」と言うような、ヒントがしっかり効いてるバトルが多かったです。まあ対策用意してても強いんだけどね! 楽しいね!

 

 

 

ニヤリとさせられる敵シンボルの動き

 

上記と少し被りますが、強敵シンボルの動きもかなり面白かったです。よくよく観察すると道に隠れるくぼみがあったり、走ってくるタイミングがずれてたり。ちゃんと避けて背後を取れるように動いてくれる、ここがやっぱり誠実で好きでした。

あと単純に挙動不審じみた動きが見てて楽しい。

青シンボル以外は安定して逃げれるようにできてるところもありがたかったです。無双したい時はバンバン殴ればいいし、ギリギリの良バランスで戦いを楽しみたい人は逃げまくるのがいいかも。なお私は逃げまくる派でした。

 

 

倒して増える会話イベント

 

ボスを倒すと城下町に人が増えていきます。

もうこういうの単純に好きなの。めっちゃ好きなの。コレクションっぽくなりますし、戦闘アドバイスももらえますし、単純ににぎやかですし。いいよね。

 

 

 

惜しいなと感じた点

 

で、もうたまんなく良いところづくめの良作なんですが、最後に惜しいなーと感じた点だけ軽く挙げますね。

 

・教会イベント

百合っ子も女装っ子もいっぱいいるのに全員が全員「同性愛は異常」みたいな感覚を持ってるのはちょっと違和感あったかな。クリア後の会話もたぶんフォローだったんだろうけど逆効果な気がしました。せっかく煮干やクトネがメインキャラだし、CP会話もかなり多かったので、“無理やりくっつけられる”描写のほうに注目したかったなーと思います。

 

・海賊船がやや長め

体感になるんですが、海賊船だけかなりステージとして長かった印象があります。中盤のダンジョンでこの長さはちょっと意外。パーティ分断イベント自体はすっごくすっごく好きなので、内容自体は文句なしなんですが……。

船の前の海?を別ステージとするか、学校と海賊船の順番を入れ替えたらしっくりくるかもなー、なんて。

 

 

とまあ、こんな感じで。

こちゃこちゃっと重箱隅のようなところだけ指摘してしまいましたが、ほんと棘も毒も少なくてかなり明るく楽しい一作です。

新しい好きキャラができて、難易度もなかなかに腕がなる、拍手喝さいな一作でした!

 

追記ではネタバレ感想。

 

 

 

 

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フリーゲーム「灰の森」感想

「五十の瞳が私を苛み、七つの四肢が一人を包んだ」

何本生えようと君は一人な前置き。

 

 

えー、今回は茶番nuさんところのフリーゲーム灰の森」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

こちら、マシュマロ経由でおススメ頂いた作品になるんですが──

もう、すっっっっっごく私好みでして!!!

出会えて本当嬉しいありがとうございます泣く。

 

概要としては、人外系のR18BLノベルゲー。といってもケモや羽根角系ではなく、人の形を保った、言ってしまえば奇形や人体実験が主です。人外だからこその展開が楽しめるうえ、どのルートも一つは鬱展開があり、濡れ場もあり、がっつり長編で心行くまで味わえた名作でした……!

 

というわけで、前置きが長くなりましたが良かった点など。

 

 

人外ならではの展開

 

本編の始まりは、人体実験施設からの脱走から。登場するキャラも多腕、巨人、結合双生児などなど多種多様です。

で、こういうのってやっぱり見た目のインパクトで持って行かれることが多いと思うんですよ。実際スチルもグッドで立ち絵差分も多いから、ビジュアル面でも嬉しくはあるんですが、そうじゃなくて。

私が何より推したいのは、描写に人外ならではの要素がたっぷり詰まってるからなんですね!

もうすっごいんですよ、言動が自然なんです。特に人外組、ぽろっと零れ出る言葉が根本から違うんですよね。あ、これは本気でこのキャラが“生きて”るからこそ出てくる言葉だな、って思うんです。具体的にはネタバレになっちゃうので追記に伏せますが……。

“普通じゃない”と呼ばれる人たちも“普通”にご飯食べて寝て仕事して過ごさないと生きられないということを改めて突きつけられるような気持ちでした。

 

 

 

仄暗く君を思うエンド

 

どのルートにも暗いエンドが1つ、あるいは2つ以上含まれているんですが、これがまたとても私好みで……本当に好みで……出会えてよかったです。心から。

私常々書いているとおり、こう、自分の境界線や存在が薄ぼやけていくような展開が大好きでして。つまり、大好きでした。

 

描写や設定がとても緻密なんですよね。惹かれ合う理由にも、全てをかける動機にも、きちんと納得がいくストーリーなんですよ。だからこそ悲劇も映えるし、やるせなさがまたよく沁みるという……。ただ鬱なだけじゃなくて、一瞬希望とか、これからの未来とかも見れるからこそ、先の暗さがよくよく感じられて好きです。

さらに言えば、一見都合の良いハッピーエンドでも経緯や設定を開示してくれるので、鬱大好きな私でも明るいエンドを前向きに受け入れることができました。

まとめると、どのエンドも満足感がある! 

物語の骨格がよくできてるなあと思います。

 

 

 

知的で話が早いキャラクター達

 

けっこう全体的に、よく周りを見ることのできるキャラが多いです。クールだったり飄々だったり。おちゃらけてたり脳筋だったりするキャラも気遣い屋さんだったり演技だったりして、とにかくお話の進み方がかなりスマートでした。

主人公自体、天然+冷徹みたいな性格をしていて、とらえどころがない感じなんですよねえ。この性格付けにもまた理由があって、いやもう、あちこちが繋がって本当面白かったです。

お気に入りキャラはナバト! 出てくるたびにどんな意外性が飛び出してくるのかとドキドキしながら読み進めていました。

でも、どのキャラもルートに入れば魅力的に見えて、やっぱりどのルートも好きなんですよね~。そして、キャラに性格はあっても属性じゃないというのも強く感じました。行動理念が本当きちんとしていて、生きてる感じがします。

 

 

 

事前知識として入れておきたい点

 

さて、最後に読み進めていて意外だった、ちょっと事前に心構えが欲しかった点について記載していきます。合わなかった点では断じて無いので、誤解なきよう!

 

・他キャラの登場率はまちまち

攻略対象は4人いますが、ルートによって他キャラが登場する比率はまちまちです。特に序盤は主人公合わせて5人で行動するので、ルート入りしてからは他のキャラも気になりがち。単独行動中などは特に、今他の彼らはどうしてるのかな、というふうに意識が余所に飛んでしまうことがありました。

詳しくは書けませんが、どのルートでも良い具合にやってます。やってるはずです。やっててほしいなあ…………。

まあこの感覚は、特に他キャラの登場シーンが少ないナバトルートから始めたせいかも。彼のルート、とても好きですがちょっと異質でもあるので。彼らしくて好きですが。

ともあれ、べったりいつまでも仲良しこよしな関係ではない(そしてその距離感がとても良い)という点には触れておきますね。

 

・サブCPあり

詳しく書けないのが難しいところなのですが、とりあえず原則は主人公が受け固定です。ただ、受至上主義の方には向かないと思います。CPの話というよりは、一人の人間が誰とどう折り合いをつけていくかの話として読むのが合う作品。伝わるかな……。

ふわっとしたことしか書けず心苦しいですが、とにかく自分はこの要素があるからこそ好きです。深みとえぐみと良質な設定を堪能できました。

 

・おまけやスチル回想は無し

もしかすると私が見つけ切れていないだけかもしれませんが、少なくとも全エンド見た感じ、おまけ要素などはなさそうです。作品自体かなり昔のものにはなるので、致し方なくはありますが、EDやスチルなどの回想ができないのは惜しまれるところ……。

幸いセーブスロットはエンド数に対して多めに用意されているので、これからプレイしようかとお考えの方は特に、回想用データを作っておくのをおススメしておきますね。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

もっともっといっぱい語りたいところがあるんですが、どうしてもネタバレに触れてしまうので続きは追記で!

 

とにかく、多腕や奇形、鬱展開、恋の一言では片付けられない執着や情念などが好きな方に強く強くオススメします! 公式サイトに完全攻略フロチャートもあるのでご安心!

 

追記ではネタバレ感想。

 

 

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フリーゲーム「Sky[Rain]」感想

「毎日キミの言葉を聞いて毎日キミに何も言えない」

力不足が悔しかった前置き。

 

えー、今回は原産国さんところのフリーゲーム「Sky[Rain]」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

クリックで読み進める、ノベルゲーの皮を被った何かのゲーム。

一応直接的な真相は述べませんが、ネタバレを避けて書く自信がなく、じわっと滲み出てます。でもこう書いておけば好きな人は察してくださるのではと期待。

 

演出やストーリー面のネタバレを避けつつ攻略したい方向けの記事も書いてみてます。未プレイでお悩みの方はこちら↓

フリーゲーム「Sky Rainシリーズ」攻略 - うそうさ〜第二号室〜

 

 

というわけで、良かった点など。

 

 

ゆるかわな立ち絵と閉塞的な画面

 

ふにゃふにゃしたゆるーい雰囲気の立ち絵や手書き文字がまず印象的でした。

初見では、ゆるゆる日常系のギャルゲなのかな~と思わされますし。色々終わってからも、また見え方は違えど良い効果があるなあと感じました。

 

険のある印象のきょーこちゃんは何処か牙を抜かれて見えて、

生真面目な印象の大和は何処か肩の力が抜けて見えて、

逆にイメージ通りの柔らかい態度のりえは時々見せるやりづらさが強調されて、

あなたの親友のマジな顔は線に隠れて見えないまんま。

 

いやー、マイルドにされることで受け手の印象もずいぶん変わりますよね。上手かったです。

 

で、対照的なのが背景画像。

ゲーム中はずっと雨が降り続けています。空は暗く、黒く、曇天を想起させるシステムウィンドウと共に、ゲームが進行していきます。ゲーム自体のウィンドウが縦長サイズで手狭な印象なのもまた良いんですよねえ。

かわいくて、ゆるゆるで、なのにどことなく息苦しい。まさに本作の印象がそのまま見た目に出てる気がします。

 

 

 

 

とっても簡単でどうにもむつかしい数値管理

 

難しいって言いたくないこの気持ち。

システム自体は簡単です。会いたい女の子に対応する数値を上げて、会いたい女の子のところへ通いつめればエンドにはたどり着けます。なんてったってギャルゲです。

一方で、越えようと思うとむつかしいです。意地悪とかテクニックが必要とかではなく、そもそも難易度という表現をこのゲームに当てはめたくないなーという気持ちがあります。なのでむつかしい。

種さえわかってしまえば楽々ですが、ピンとこないとそこそこ詰めプレイを要求されることになるかも。といってもプレイヤーにはあらゆる手段が用意されているので、どうとでもすることはできます。解法となる道筋が複数あるのもプレイヤーに優しい仕様でした。

この優しさもまた、捉えようによっては可愛らしくて好きです。

 

 

 

 

思索に富む言い回しと芯に届きやすいセリフ

 

チュートリアルの言い回しからして大好きなんですよ!!

普通の、無難な、システムメッセージとして考えるとかなり違和感のある言い回しなんです。だから印象に残るし、あれってそういえば、と考えるフックになっててとても素敵。

○○用って言い方がなんだか嬉しいんですよね。

 

さて、こういった色々と見え方の変わる台詞がある一方で、直球に心を揺らしてくれるセリフもたくさんあります。なんてったってギャルゲなので、みんなは色々なやり方でプレイヤーこと私に向かって声を上げてくれるわけなんです。がんばりたくなっちゃうよなあ。

 

さらには、日常会話がふいに哲学めいた話題へと発展することもあります。哲学というと大袈裟かな……。思索、夜になんとなし思うこと、皆とわいわい騒いでるときにふっと覚めた時のこと、明日を考えた時にどことなく祈りたくなる感じ。そういう話が隙間に挟まれて、膨らんで、私の心の奥に触れてくれるような感じがしました。

どうしてもポエマーになっちゃうな! もうちょっと身近でよくある感情を語ってくれてると思うんですけどね。言葉はむつかしい!

 

せっかくなので好きな会話とかは追記で少し語りますね。

とにかく、あえて言わない遠回しさとか、率直に伝えてくれる素直さとか、両方を味わえる良い文体でした。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

1プレイは十分前後で終わるかなと思いますが、それ以上に時間をかけてじっくりと向き合いたくなる、素敵な演出のゲームでした。

 

追記ではネタバレ感想少しだけ。

 

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フリーゲーム「送電塔のミメイ」感想

「常に健全と前を向き恐れを斬ればそこに君」

幸福は此処に在りやな前置き。

 

 

えー、今回は里見しばさんところのフリーゲーム送電塔のミメイ」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

和風で一本道、恋愛要素もバトルシーンもあり。でも根っこの部分は感動と穏やかさが引き立つ作品でした。

 

というわけで、良かった点など。

 

主人公ミメイの描かれ方

 

厳密には夜刀とW主人公だと思っていますが、物語の中心はミメイだと思うのでこのような書き方にて。

ミメイは雑に括ると天然キャラです。人を守り鬼を断つ、そんなシーンではきりりとした姿を見せてくれますが、日常パートではどことなく少しズレた台詞が見え隠れします。

感銘を受けたのが、その天然具合の描写について!

わざとらしさが全くないんですよ。アピールして笑いを取りに行くための天然ボケではなく、あまりにも自然なんです。ただ彼女の中にそういう世間ずれしてないところがあるだけで、良いように解釈する人もいれば呆れて心配する人もいる感じ。

キャラ属性じゃないんですよね。ああ彼女はこういう人なんだなあ、ってすんなりと肌身に受ける感じ。鈍いとよく評される彼女ですが、そののんびりとした気質はむしろ周跨ぎを苦としない穏やかさを感じました。

うん。素敵な女の子です。

 

 

夜刀との自然な距離感

 

プロローグは斬り合いから。化け物退治を巡って夜刀とミメイにひと悶着起きるシーンから物語が転がり出します。

で、てっきりケンカップル的な話が始まるのかしらんと思っていたんですね。ところがどっこい、かなり初期から二人の相性の良さはよくよく伝わるように描かれています。ツンケンとして見える夜刀の面倒見の良さ、超然として見えるミメイの懐の深さ。夜刀のキツイことを言う癖はミメイの鈍い性質で包まれて、ミメイのズレた言動はすかさず夜刀が鋭くカバーする、この関係性がとてもあたたかで素敵でした。

物語終盤にもなるとさらに彼らの関係は変わります。言葉で描写される部分以外にも、行間や章と章を挟んで、見えない部分での距離感の変化を強く感じましたねー。

 

 

人の恐怖を写し取るコゴリ鬼

 

主題はざっくり言えば化け物退治。もちろん切った張ったの大活劇もありますが、静かに話が展開し、すとんと消え失せていくような回もあります。

この退治対象であるコゴリ鬼ですが、憑かれた者の恐れるものに姿を変える、という設定でありながら、怖がらせることが主眼ではないのだと伝わってくる描かれ方が好きでした。ホラーを意識させる描写はあるものの、プレイヤーを驚かせたり精神的に削ったりするようなやり方はされません。ここ、作品の本質に誠実で好きです。

内的な恐怖と向き合うと言えばいいのか……。

見て見ぬふりをしていたこと、成長の妨げになっていた思い出、ずっとしこりとして残っていたけれど何ともできなかったこと。そういった小さく深い棘を抜いていくお話だったなあと思います。

余談として、符や式を編む時の詠唱シーンがとても好き。

 

 

色鮮やかな数の式

 

主人公ミメイは未来を見るという能力を持っています。

この能力の描写がすっごく好きなんですよ!! 時にはファンタジーの様に千里眼めいた描写をされる一方、地に足付けて着実に演算として描かれる時もあり、いやあ俗に言ってしまえば実にカッコよかったです。

もちろん魅力的な面のみならず、持つ者の苦労も重荷も歯がゆさも、しっかり見せてくれます。それでもくじけず歪まず、先に進もうとする真っ当さがとても眩しいお話です。

また、文章だけでなくグラフィックにも注目したいところ。最序盤から幾度も表示される、あの赤く美しい折り鶴と幾何学めいた模様のあれです。あの色彩が濃くなる演出も、魔法陣が力を受けて活性化するみたいなイメージが膨らんでとても惚れ惚れしました。

 

 

スチルとセンスで魅せる一枚背景

 

立ち絵のタッチはどことなく柔らかで女性的。風に揺れる髪のさらさらとした感触が伝わってくるような感じの絵柄です。これがまた本編の穏やかな雰囲気とよく合うんですよねえ。感動的なシーンではスチルが使われることも多いんですが、なんていうのかな、光源の使い方が上手いなあと感じます。溢れて、本当に眩しい。

一方で、戦闘シーンは剣閃や鋭い眼光も交えつつ、ハッと目を引く演出になっています。バトルシーンのBGMも大好きなんですよ!! あの和風の盛り上がりと、詠唱や斬り合いが重なる感じがもう熱くて好き。

 

章初めの、プロローグみたいな文字だけの演出も好きです。

フォントの特色かもしれないんですが漢字の大きさなど諸々の配置がすごく巧みで、文字だけでも目を引いてくれます。トレーラー画像みたい。プレイ後に気付いたんですが、あれ、背景が千羽鶴の折り方?なんですねえ。

ともあれ、あの印象的なセンテンスも魅せ方もすごく素敵でした。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

00年代作品ですが、未だにファンも根強い作品です。ツイッターで先んじて呟いていた時も反応の多さに驚かされました。何年経っても名作は語り継がれていくんだなあ。

 

公式サイトでは夜刀とミメイの一枚絵も見られます。あの雰囲気の柔らかさ、本当に陽だまりを感じるイラストでとても美しいんですよね……。

二人の関係性がお好きな方はお見逃しなく!

 

 

 

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フリーゲーム「いずれまた森になる」感想

「哀しきかな一人芝居、安らかなれ死骸達」

だれもいなくなった前置き。

 

 

えー、今回は時雨屋本店さんところのフリーゲームいずれまた森になる」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

30分足らずのお手軽プレイ時間に対して、鮮烈に余韻を残してくれる一本道探索ゲー。前情報が無いほうが楽しめると思うのですが、根幹のネタバレ部分で性癖を擽られる方が多いような気もして、感想の書きっぷりにいつになく悩むところ。

とりあえずタイトルからしてとても美しいので、これでピンと来る方はきっと合う気がします。

 

ともあれ良かった点など。

 

 

光と影の美しさが際立つマップ

 

本作は冒頭で明記される通り、マップチップはおばけさんによる合作となっています。

このマップの美麗さと言ったら! 誰もいなくなった世界、瓦礫に巻き付く蔦、ゆっくりと朽ち果て行く建造物、そして月明りなどなど。舞台からして退廃的な美が感じられる設定なんですが、目で見てそれを感じられるのがもう……たまりません。すごい。まさに感嘆。

光源の使い方が印象的なんですよね。暗い道にぼうっと灯る光、底の見えない水面の向こう側、光の代わりに目を引く白い花。ただ光らせるだけじゃなくて、色々な形で道標を敷いてくれているような印象でした。

あの小舟の一本道(川?)が好きだなあ。戻れない終わりを今から見に行くんだな、という、おしまいの予感がとても切なかったです。

 

 

彼の視線を感じ取れるテキスト

 

やっぱりキャッチーなのはグラフィックなので真っ先に取り上げましたが、テキスト面にも注目したい部分は多くあります。

一番印象に残ったのは、セリフと情景描写の違いですね。

セリフはテンポよく楽しく進み、そして終盤にふっと口を閉ざし、緩急をつけて。そして情景描写はしっかりと骨肉付けて、主人公の視界に入り込むかのような文章で語られます。この文体の違いがとても興味深かったです。多彩。

何よりこの情景描写があることで、ただ“目で見て綺麗”だったマップが変わるんですよね。“肌身で美しさを感じられるマップ”になるんです。五感が増えるような、より入り込んで崩壊した世界と隣り合わせになるような、そんな感じ。とても素敵でした。

あと私、本作の繰り返されるモノローグが大好きなんですよ!!

詳しくは追記に隠しますが……好きです。

 

 

間の取り方が絶妙なシーン

 

さて、この幻想的で退廃なマップを歩くのは、名前も明かされない魔術めいた男。ミステリアスな主人公と共に、退廃美の際立つ世界で、さぞ静謐な物語が開かれる──

────かと思いきやわりかし序盤はハイテンポです。このギャップやよし!

間の取り方が上手いんですよねえ。そっと手にアレを装着し、ゆっくりと腕を上げる……このウェイトをしっかり取ってくれてるからこそ笑っちゃうんですよ。しかも後を引く。じわじわくる。

で、さらには同じシチュエーションを逆の方向性で利用してくるところも巧みです。既プレイヤーには伝わる、はず!

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

廃墟、風変わりな雰囲気の主人公、退廃美などにピンとくる方へおススメしたい短編探索ゲーでした。

 

追記ではネタバレ感想。

 

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フリーゲーム「ユーラルーム」感想

「恐怖とは未知の怪物か柳の影か?」

はたまた正面貴方のことかな前置き。

 

 

えー、今回は時雨屋本店さんところのフリーゲームユーラルーム -Ulalume-」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

エンド分岐有り探索ホラー。全エンドを見て1時間強くらいかな。

追いかけっこあり謎解きあり。全体的に難易度は易しめですが、グッドエンドを見る時だけは難易度が上がります。でも一点コツを掴めばなんとかなる……なった……ので詳しくは追記にて。

 

 

とりあえずまずは、良かった点など。

 

 

様々な種類の恐怖

 

メインはクリーチャーが襲ってくるタイプのびっくりドキドキ体験ですが、丁寧な演出によるじわじわくる恐怖も楽しめます。

シナリオフックである消えた警備兵や、化け物に対する恐怖もそうですが。なんというか、プレイヤーに恐怖を受信させるのが上手いんですよ! 何事もないはずの音にもビビっちゃったり。うまいこと不安を煽ってくれます。

やっぱり信頼できない隣人の存在が大きいんですよね。悪いことばっかり得意な双子の弟、ヴィクター。困ったときにさくっと銃をぶっ放してくれる頼れる奴でもあるんですが、彼がいるかどうかで緊張感は段違いになるはず。良いキャラしてます。

 

 

 

謎解きは拳銃でショートカット可能

 

さて、この手の探索ホラーで私がよく感じることとして、エンド分岐と周回の手間があるんですよ。中でも中盤の選択肢やゲーム中での行動でルートが決まる場合、種がわかった道を何度もやり直すことになるのがけっこう大変なんですよね。

で、面白いのが本作の銃の使い方。なんとこの銃、謎解きをさくっと省略して先に進めちゃうんです! 作中で何度も警告されるように、初見ではなるべく使わないほうが無難ではありますが……。周回プレイの時にはたいそうお世話になりました

プレイヤーとしてメタ的にありがたい要素ですし、銃を遠慮なくぶっ放すという行い自体がのちのちに効いてくるのも上手かったです。

また、謎解きではありませんが、作中でちょっとした本棚を読めるシーンがありまして。あそこがメッセージウィンドウ一行ずつじゃなくてバッと一面貼りなのも、読みやすいしスピーディでいいなー、と思います。

 

 

 

さりげなく丁寧な演出

 

地下水路という舞台設定がまた良いんですよねえ。水面にキャラの影が映る、この演出が色んな意味ですごく巧み。こういう、現実だと当たり前に起こることをきっちりゲーム内でも反映してあると、没入感も高まります。

音に反応する化け物がいるという設定で、ゲーム内でも歩くと実際に音が鳴るの、臨場感がすさまじいんですよ……! なんかむやみに焦ってしまったり、ぱちゃぱちゃ鳴る水音がいやに大きく感じてビビってしまったり。あ、音量調整はできるのでご安心ですが、心的な意味でね。

 

また、画面の変化もポイントの一つ。特にトゥルーエンドの鬼ごっこではかなり死にまくることになるんですが、この変化がモチベになってやり遂げられました。詳しくはネタバレになるので追記へ伏せますが、かなりあちこち細やかで惚れ惚れでした。

エンドによってちょっとした場面のセリフが変わるなど、セリフ分岐もたっぷり。

あと恐怖とは逸れますが、劇場の張り紙に書いてあることが一枚ずつ違うところも楽しかったです。

 

 

 

引用たっぷり格調高いセリフの数々

 

さて、雰囲気作りを推しまくったところで、最後に!

本作の一番好きなところが、引用の仕方です。タイトルからしエドガー・アラン・ポーの詩である本作。この元ネタのラストをこうしてストーリーに反映させるかという驚きがあり、またそれを別作品とつなげる驚きがあり……。オマージュしつつもしっかりオリジナルストーリーとして生み出しているところが素敵でした。

主人公が劇団員だからこそ、引用の数々を拾い上げてくれる流れも自然ですし。何より「演じる」というテーマともしっくりくるんですよね。

 

そも、意味深で知的な台詞を吐き狂いながら走り去っていく少女、みんな好きでしょ! ぼくは好きです!! 素敵でした!

ちなみにとりあげられている作品類は参考文献として同梱してあるので、クリア後に閲覧するのをおススメします。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

一つ「あっ良いな」って思った演出が二重三重の意味を持って襲い掛かってくる、良質な作品でした。双子ネタ好きな方、狂った少女、美文名文、演劇などが好きな方にオススメです。

 

追記ではネタバレ感想。

 

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フリーゲーム「はにょう6」「MAZE」「絶対パコれる漢字トレーニング」「俺が数ヶ月かけて作った戦闘アニメ4」「ダイバー・ダウン」感想

「一風変わったシステムについて行かせるか振り落とすか」

食らいつく側も調教されてる前置き。

 

 

えー、今回はフリーゲーム「絶対パコれる漢字トレーニング」「俺が数ヶ月かけて作った戦闘アニメ4」「ダイバー・ダウン」「はにょう6」「MAZE」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

どれもVIPRPG、やるゲ。戦略性高めの作品が多め。作者様は別々、相互に関連性はありません。自分用メモで済ませる心算だったのでいつもより文体雑ですご了承。

 

というわけで良かった点など。

 

 

 

 

 

 

      『絶対パコれる漢字トレーニング』

アクションパズル?戦略?だと思う。プレイ時間は1時間とあるが、1戦30分はかかったのでとても1時間で終わると思えない。

 

[ストーリー]

お姉さんとズコバコしてモテモテハーレムを築く男子中学生、という時点でなかなかにパンチの効いた導入である。外見が6つのうちから選べれるのも無駄に凝ってて良い。

主人公が喪なのと、パートナーのお姉さんがド畜生なのとで、物語は基本的に喧嘩腰。敵から逃げればブーイングが飛び、戦闘中に実況者が煽り芸を披露していく。すさんだ心が水を得た魚のように暴れ狂う展開。

敵を倒していって自分の順位を上げていく、という流れは少年漫画的かもしれない。

 

[バトルシステム]

マップ上のオブジェクトを集めまくって漢字に変換し、ストックした漢字を部首分解したり合体したりして武器や防御技を作り、コマンドバトルに移行するシステム。例えば「椅子」と「剃刀」をストックして、「梯子」と「刀」を作るなど。

漢字が尽きても、敵の攻撃をガードし切れば漢字を奪えるなど、起死回生も狙える。漢字が思いつかない場合は10個部首を捨てて新たな漢字をゲットできるガチャシステムも搭載。

作った漢字をマップ上で使用できるのも面白い。

漢字でバトルという発想からして斬新だけれど、発想だけでなくシステム回りきっちり詰めているのはかなり好印象でした。

 

[その他]

探索とバトルどちらにおいても柔軟な頭と漢字知識が必要なので、ひらめき系が苦手な私には難易度がめちゃくちゃ高かった。でもこの発想を実際にやろうという胆力がすごいし、一文字漢字だけでなく四字熟語までためらいなくぶっこんでるのには感服の一作。

 

 

 

 

 

      『俺が数ヶ月かけて作った戦闘アニメ4』

戦闘とダンジョン攻略重視のRPG

 

[ストーリー]

有って無きようなもの!

ダクネスリナックスメビウス・アンデットナイがメインメンバー、もしもシリーズの設定がある程度前提。一応盛り上がりっぽいところもありはするけど、基本は「ぶっ飛ばしに来た」「ようこそ」の繰り返し。

だからといってセリフがつまらんというわけでもなくて、随所に立ってるモブキャラ(モブではない)が喋る赤裸々開発日記などはちょっとくすっとしてしまう。マップの引用元とか、こだわる人はとことんこだわるんだろうなあ。

他にもボスが初手で自分の弱点を開示してくれたり、スキル構成をゲロってくれたりと、何かと潔くてメタとわかっていてもシュールなセリフも多い。名乗りを上げる武士のようだ。

 

[バトル]

じゃあ何がメインかって、バトルとダンジョン攻略。

特にバトルはまさにデフォ戦の究極を目指したかのような出来。正当手段で撃破するボスもいれば、メタな要素マシマシでプレイヤーを殺しにかかってくるボスもいる。

絡め手のボスは戦法をある程度事前申告してくれるとはいえ、「どう倒すか」の発想力がないときついかも。少なくともレベルを上げて物理で殴るタイプの自分にはかなり難しかった。でも勝った時の脳汁はすごい。

戦闘時の行動順を指定できたり、スキル取得を自分で選んだり縛ったりと、とにかく戦闘面でのこだわりが熱すぎる。

 

[探索・やりこみ]

ダンジョン自体はあちこち凝ってたし、仕掛けも多くて目新しいところばかり。

なのだが、アクションを要求されるところが非常に多くてアクション苦手マンな自分には辛かった……。移動が常時超倍速なのもきつい。落とし穴がきつい。一応、イライラ棒しなくても済むショートカットがあったり、雑魚敵全無視スキルがあったり、親切設計なのだとは思う。ただその親切さに私がついていけなかった……!

タイムアタックで開く宝箱があったり、プレイ後のプレイヤーレビューがあったりと、やりこみ要素も高め。攻略方法さえわかれば作業的にボスを殴り飛ばせる、のかもしれない。

 

[その他]

途中でちょいちょい力尽きたけど、ふと解法を思い立ってやりたくなるところもあった。ツクールのデフォ戦が好きな方、とにかく戦略ゲーをやり込みたい方向け。

 

 

 

 

      『ダイバー・ダウン』

ノンフィールドで前進するのみ、起こるイベントもボスバトル以外ランダムの一本道ゲー。雪道ゲーなるものとのこと。

 

[ストーリー・世界観]

有って無きようなもの。

既存商業作品のパロディがかなり多いらしく、自分は元ネタがさっぱりなのでピンとはこなかった。でも、ボス邂逅時の「注意せよ!」とか「コウリン様はお食事の時間である!」とかの言い回しはめちゃくちゃ好き。

あと、背景にストーリーを流していくED1のやり方も斬新だなーと思う。バトルに熱中してると内容が頭に入りづらいのは難点だけど、ストーリー編重というわけでないから見逃しても気軽に楽しめる。

 

[バトル]

攻撃力>防御力なら攻撃が通る、という算数さえできればプレイできるシンプルさがまずGOOD。そうでなくてもランダムで1ダメージ入るという運要素がまた上手くて、思わぬ事故でゲームオーバーしたり手がなくても博打で持久戦を仕掛けられるところが楽しい。

さらには、途中から“詰まる”やり方が上手い。物語中盤辺りから、初見だと撃破する方法に悩まされてつい逃げたくなる敵が出てくる。勘が良かったりゲームに慣れたりしている人ならきっと初見で通ってるんだろうし、私みたいな脳筋タイプでもいっぺん詰まってもう一周してEDに辿り着くことで、エンドロールへの道がわかるようになっている。レベルデザインっていうのがきっちり用意されている感じ。

 

[システム]

セーブがランダムっていうのは個人的に否定派だったけど、本作はセーブの出現率がかなり高めに設定してあるので全然問題なかった。何よりコマンド入力がかなりテンポよいので、ゲームオーバーになってもすぐリカバリできるのが強い。

おかげで中毒性が高くて、気づいたら1時間経ってる、なんてのもざら。

呪文構築システムも、メモ取る面倒さはあるにしても、このちまちまメモ取って入力するアナログなプレイ感が古き良き時代を思い出されて楽しい。そういえば2000年代作品らしいね。2018にプレイするこの逆行っぷりよ。

 

[一言]

黙々時間を忘れてプレイできる良ゲ。

 

 

 

      『はにょう6』

きっと誰もが知っている、戦略SRPG。ファーレン系やFE系とも違ったプレイ感。全体的に詰将棋寄り。

 

[ストーリー・世界観]

ギャグ、かと思いきやけっこうしっかり戦争して、やっぱりギャグで〆。三大勢力を上手いこと切り替えて、群像劇に仕立ててある。登場するキャラが多いことを生かしていると思う。暗くなりかけたらギャグでぶっ飛ばし、中だるみしたらシリアスで引き締める、テンポのよいお話。

主人公ポジのリナックスがやっぱり見どころ。名言が多いんだよなあ。けろっとした顔でズバッと真理を突きつつ、時には年相応の未熟さも見せてくれるところが好き。

四天王の力量差でバランスはとれているにしても、そこそこナイ軍贔屓な雰囲気ではある。ナイ軍好きだからいいけど。

 

[合わなかった点]

先に難点から。一言でいえば情報開示が不足。

まず前提として本作は反撃が特定のキャラ限定の仕様になっている。考えなしに敵と隣接しても自軍が削られるばかり。敵の射程外からうまく削ったり、相手をおびき出すことを前提として進めないといけない。だというのに、こちらが見れる情報は敵の行動範囲のみで、相手がどんな攻撃手法を持っていてどのくらいまで射程があるのかは全く分からない。

また、特定の条件を満たせばボーナスアイテムが貰えるものの、そのボーナス条件は全て伏せられている。一応全滅かクリアすればわかる時もあるけど、ノーヒントなのに「NO BONUS」と煽られるのはムっとする。

ただここは私の楽しみ方がそもそもズレている感は否めない。要は死に覚えゲー、試行錯誤でどんどん手順を最適化していくことを楽しむ詰将棋ゲーだと考えれば、むしろ本作は至高と言えるはず。

 

もう一点、終盤のインフレ具合。

HPも高く長期戦になりがちで、それを何度もやり直すことになるのはけっこう精神的に疲労する。削りはタコ殴り前提、警戒持ちがいないと詰むような面が連続で来たのは正直きつかった。人魚持ち大暴れのマップといい色々なキャラに活躍の場面がある、と言えるのかもしれないが、最終面やその直前で出撃ユニットがかなり狭められてしまうのは辛い。キャラ贔屓しない人向けゲーム。

 

 

[楽しかった点]

楽しかった点は、タコ殴りシステム!

始動条件はあるものの、強制出撃メンバーや普段使わないメンバーもタコ殴り人員として活用できるのが嬉しい。カットインもかっこいいし、顔グラと違うカットインのキャラがいるのも嬉しくて、ついついタコ殴りを狙いたくなる。Sヒールで死地を救われた回数は数知れず。

 

キャラによってコストの違いがあるのも面白い。MPは尽きると終わりだけど、面によってはチャージが必要な弾タイプよりずっと使いやすかった。ただの置物にならないよう、近接攻撃手段が必ず一つは用意されているところも親切。

特に恍惚は強制出撃が多いキャラなのにけっこう攻めた作り、癖のあるユニットだなーと思う。愛用してたのは闇勇者四人とミーア。

 

あと各種セリフ。

どれも端的でセンスがあって、SHIFTキー押すのがすごく楽しかった。メタ的に説明が入るのもありがたい。仲間をどんどん増やしたくなる。特にダークデイジーのセリフがどれも好き。

本編だとリナックス・アレックスのセリフがやっぱり面白い。勇者一家言いいよね。

さりげないところだと、移動する時に鳴るダンダンダンダンってSEが好き。

 

 

[一言]

攻略wikiに向かって拝み倒す構え。

 

 

 

      『MAZE』

 

[概要]

MUSE』の続編と聞いたけれどシステム的には全く別物、ストーリーもほとんどないので単品で楽しめる。

 

[ストーリー・世界観]

MUSE』で感じられた、探索することで世界観やバックストーリーが明かされたり謎解きがあったり、という側面は大幅に削られた。ここ好きだったのでちょっと寂しいポイント。

無口主人公で名前が簡素なところは続投。一応、囚われの少女というエモいシチュエーションが楽しめはするけれど、あんまりお話としての満足感はないかも。

でも、不穏なノイズと共に裏と表の世界が切り替わるシステムは大好き! マップチップはシンプルなのにおどろおどろしさを演出できるの流石の一言。看板の文字列等々を見るに、どことなーく設定されている世界観は察せる、あるいは妄想できるだけのシナリオフックは撒いてくれている感じ。

 

[バトル]

じゃあ真髄はどこにあるのかって勿論バトルなわけです。倒した時の達成感が凄い。

レベルシステムが廃止されてゴリ押しはしづらく────なったと思わせて実は脳筋プレイもできる塩梅。ウィンドの行動中断の有用さに気づいてから世界が変わり、ヤドリギを手に入れてからようやく本番が始まった。

一応ノードーピングで黒水晶敵全撃破とラスボスまで行ったけど、裏ボスは倒しきれなかった……。デフォ戦士はたぶん勝てるんだと思う。ぼくにはとてもできない。

ドーピング無双にならないように獲得ポイントがかなり少なめに設定されているところも、作者の「戦略ゲーとして戦って欲しい」みたいな意図を感じて好き。

 

システムとしてはバトル開始時のMPが決まっていて、戦闘中にチャージしながら戦うやり方。さいはてホスピタル。『MUSE』がなんだかんだで通常攻撃最強だったのに対して、『MAZE』は魔法の多様性をより押し出してきた雰囲気。この関係で、攻略法を閃いたら一発というよりはトライアンドエラーを繰り返して最短ルートを探っていくような、詰将棋ゲーになっている感覚はある。

敵グラにもしもキャラが出るようになってキャラ厨な自分大歓喜。代わりにFFDQ系のメタ貼り戦法もできなくなったけど、やっぱり名前と敵グラでなんとなしに予想できるキャラもいる。

 

[攻略]

攻略というかドロップアイテムメモ。せっかく書き溜めたので曝しておく。もちろんネタバレ注意、あと確定ドロップの一戦限定バトルは書いてない。載って無いのもたぶんある。解析とかよくわからんPIAY専の私みたいな人向け。

ハンター クレアデルナ

ハウンド メイジマッシャー スティミュラント ディスペルハーブ

スカウト 安らぎのローブ スティミュラント ディスペルハーブ

ツインヘッド ドラゴンスピア

シャドウ04 闇の衣

とうめいさん 気合のハチマキ

シャドウ03 暴食の剣

ソビエツキーうんたら 集光板

シャドウ02 魔封剣

プラズマ生命体 光のカーテン

シャドウ05 八咫鏡

サイコアーティスト 水鏡の盾

タンク 日緋色金ノ剣

 

[一言]

敵でも味方でもフルフル強すぎわろた好き。