うそうさ〜第二号室〜

フリゲ・鬱展開・ヤンデレ 万歳!

フリーゲーム「Sweet*Sweet」感想

「胃袋掴むためには材料集めから」

腱鞘炎まっしぐらで混ぜまくる前置き。

 

 

えー、今回はマテンロウ計画さんところのフリーゲーム「Sweet*Sweet」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

私が本作を知ったころには公開停止されていてしょんぼりしていたんですが、この度過去作全公開に伴ってプレイできるようになりましたー! やったー! 「過去のゲーム詰め合わせ」からDLできるはず。

概要としては、お菓子作りをしながら百合百合するシミュレーションゲー。軽いアクションを含みます。

 

というわけで、良かった点など。

 

 

かわいいがぎゅっと詰まったグラフィック

 

お菓子のレシピ、作る工程、会話内容などなど、あちこちに甘くてポップでかわいい雰囲気が詰まったゲームです。ウィンドウとかデフォルメグラフィックとか立ち絵とか、なんかもうとにかく全体的にキュートなんですよね。

お茶会の会話も気の置けないお友達って雰囲気がよく出てて癒されます。お見舞いイベントや恋愛相談など、王道シチュをしっかり押さえてあるところもグッド。主人公の葉子ちゃんの反応がはわはわあうあう系なのもかわいいんですよね~。

難点はプレイしてるとお腹がすいちゃうところかな!

 

 

 

誰もが好きな人を好きでいられる世界観

 

さて、これだけほんわかした雰囲気ならストーリーも癒され系だろうと思うところ。実際、9割はギャグとほのぼのが入り混じるまったりしたお話です。だからこそ1割のシリアスに身が引き締まります。

ピンポイントに好きだった展開なんですが、ネタバレになってしまうので言うに言えないところがもどかしさ。とりあえず、百合ゲーというよりは禁断の愛についてのお話かなあ。色々な形の恋愛があっていいよねという寛容さを感じました。

 

 

 

簡単モード搭載の3ボタンアクション

 

まずアクション要素があると聞いてめっちゃ焦ったんですよ。しかも目押し! でもありがたいことに簡単モードがあって、一応ランクAならなんとか一発で取れました。ぜぇはぁ。

クリアに最低限必要な要素はかなりゆるく設定してあるようなので、エンドを見るだけならアクション超々苦手マンでもいけるはず。操作自体もボタン三つのシンプルアクションです。

ただ、やりこみ要素としてコレクションバッジがあります。あくまでトロフィーみたいなものなので、集めなかったからと言ってマイナスになるわけではありません。でも、完璧主義かつアクション苦手ならちょっと厳しいかもとだけ。

条件自体はクリア後にヒントが見られます。

ちなみにチュートリアルのお菓子作りはあえて失敗して、アキラちゃんにお任せしちゃうのをおススメします。反応が楽しいので……。

 

 

魅力的なキャラクター

 

はわわわ天然系のかわいい主人公、ヨッコ。元気いっぱいで引っ張ってくれるアキラちゃん。このメイン二人に始まり、個性的なキャラがたくさん登場します。

ピアノ弾きのクールな兄、なんだかんだで面倒見の良い幼馴染、謎の美人なお姉さん、おちゃめな人妻など、立ち絵も豊富でかわいい!

特にお兄ちゃんが好きなんですよねー。兄キャラが妹に話しかける時に一人称がお兄ちゃんに変わるの好き。クールと見せかけてハートが熱々なのも好き。

王道な性格を揃えて、期待に応える展開をしっかり見せてくれる印象でした。

 

 

 

特売日を狙ってやりくりする学生感

 

さて、本作はお菓子を作るだけのみならず、お買い物パートもあります。

ここで面白かったのがお小遣いの設定ですねー。学生らしい金銭感覚で、みんなから報酬としてもらえるお金も、百円単位がほとんど。お店経営系だとお金の桁数ってインフレするイメージがありますが、本作はのんびりのんびりプレイしてやっと五千円に届くような感じで、この値段設定がなんだか好きでした。

曜日限定の食材はなるべく買って、いつでも買えるものは特売日に買い溜め。こういうやりくりも、ちっちゃな財布でやりくりしてる感じがあって楽しかったです。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

ツクール製で古い作品というのもあって、ウェイト多めのもったりしたプレイ感ではありますが、ほのぼのな世界観にはよく合っていると思います。

気軽にプレイし始めて、思わぬ関係性に身を乗り出し、なんだかんだでハッピーエンドにニッコリする恋愛ゲーでした!

 

 

 

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「その身に文字を刻み込み、数千年へ届かせる」

美しき女神は息すらしない前置き。

 

 

えー、今回は脳内審議会+さんところのフリーゲームMUSE」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

VIPRPG2009GW祭りで公開された作品。リンクが消えてプレイできなくなるかと思いきや、有志の方のバックアップのおかげで2019年現在でも無事にプレイすることができました。感謝……ッ!

VIPのノリやもしも設定の影は全くないので、ツクスレ慣れしてない方でも遊びやすい作品だと思われます。

 

というわけで、良かった点など。

序盤のシンボル敵については少しだけ攻略的な意味でのネタバレを書いちゃってますのでご了承を。

 

 

懐かしネタを踏襲する攻略法

 

敵キャラは基本的にドラクエやFFなど古来のRPGシリーズから来ています。中でも強敵扱いとなるシンボル敵にはトンベリやカルコブリーナなど、ちょっと変わった攻略方法を必要とする敵もいて、かなり腕が鳴りました。特にFFは幼女の時に数作しかプレイしたことなかったので知らない敵も多かったんですが、そのぶんパズル的な楽しみができて楽しかったです。

敵の情報を見ることのできるアイテムもありはするんですが、基本的に見れるのはHPMPくらいなもの。中にはHP∞なんていう表示の敵もいます。この、「いやいや無理だろ!」から「正攻法が無理ってことは……?」と思考を切り替える感じがすっごく楽しかったです!

アレクソウルは先手取って殴れば勝ちだと思っていたので、むしろその時点で詰むことになるとは思わなんだ……。なので倒せたときにはにやついちゃいました。

 

 

多様な魔法から二つを付け替えるシステム

 

この攻略の難易度を上手く調整しているのが、魔法の制限について。魔法は付け替え式で一人二種類まで、魔法書を手に入れさえすれば何度でも覚え直すことができます。魔法の種類はかなり多めですが、あれもこれもと付けたい気持ちをぐっと抑えてやりくりするのが楽しかったですねー。

特にボス戦では初見勝利を目指すというより、色々つけて準備を整えてから挑む感じ。特殊な戦法が必要なボスはそのための魔法が事前に手に入るようになっていて、ぴったりハマる感覚が気持ち良かったですねー。手に入れたものってやっぱすぐ使いたくなるのでなおさらです。

 

 

高いエンカ率と嬉しいドロップアイテム

 

普段はランダム、強敵はシンボルのエンカウント方式。特に雑魚はエンカ率が高めで、数歩歩けば当たるくらいの印象でした。

で、本作は雑魚戦も楽しかったんですよ! やっぱりドロップアイテムのおかげかなあ。どの敵も固有のドロップ装備品を持っているので、倒せば倒すほど見返りがありますし。武器防具屋の売り物は意外と属性耐性が少なめなので、手に入れるならやっぱりドロ漁りが効率的なんですよね。

なんだかんだで装備品はファイアガードとドラゴンウィップしか買ってない気がするなあ。

ゼラチナスマターは苦労しただけのかいがありました。へっへっへ。

 

 

多くを語らぬ壁の文字と探索

 

バトルだけでなく、探索も面白かったんですよ!!

壁に書かれている文字はスクショするのが吉。このヒントの書き方も好きなんですよねー。過去の歴史が刻まれている文字と、強敵のヒントが刻まれている文字とがあって、どちらも味わい深かったです。

謎解きとヒントの関連がすっごいちょうどよい難易度だったんですよねぇ。

夢中になってゲームしてる時は気づけなかった謎も、ちょっと手を置いてスクショを見返したら「あーーーー!!!」って閃いたりして。いやもう、あの閃いた瞬間が楽しかったなあ! つい語りたくなっちゃうけど、さすがにネタバレすぎるのでここは追記にて。

何気、あの数クリックの文字数だけでシンプルにヒントを出せるところもすごいなーと思います。

 

 

デフォ戦士に優しいシステム

 

ワンタッチで全回復してくれる妖精さん、ワープポイント、戦闘時のBGMオンオフなど、あると嬉しいシステムがばっちり搭載されています。喜び。通常BGMが戦闘入っても継続するの特に大好きです。

図書館で事前に戦闘時のルールを開示してくれているところも嬉しかったですねー。中でも属性装備や耐性の重複について言及されているのすっごく助かりました!

 

併せて言うと、属性耐性が一つで収まる点も好き。耐性装備をつければつけるほどカチカチになっていくシステムも、インフレ鉄壁感が楽しくはあるんですが、どうしても装備品の枠が足りなくなってしまうんですよ。そこをアクセサリ枠増加などで工夫していく形になるかと思うのですが。

逆に本作は削る方向にかじを取っているのかなー、なんて。

一方で状態異常の数は多いので、どれを捨ててどれを取るかみたいな取捨選択はばっちり楽しめます。毒と炎上はキッツイけど行動不可系に比べると後回しになりがち……みたいなジレンマ。腕が鳴ります。

 

 

シンプルにニヤリとさせられるストーリー

 

さて、この手のバトル重視作品はストーリーがシンプルなのが多め。実際、本作も淡々と進行する印象は強いです。主人公も無口でグラフィックすらあえて削ぎ落されていますしね。

が、中にもストーリー面としてかなりグッとくる要素がありまして!

具体的にはラスボスのところと、例のスターライトの本がある場所。既プレイヤーには通じる、といいな! まったくお話がないわけではなく、むしろ必要十分な量に抑えられていると言いたいくらい。短いセンテンスでガツンと殴られる感じが好きでした!

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

隠しボスを探索で見つけるとウキウキする方、難易度高めのバトルを求める戦闘狂の方、静謐な雰囲気で黙々と進みたい方などにオススメです。

 

追記ではネタバレ感想。

 

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フリーゲーム「赤繋の子供たち」感想

「教える親がいないので自力で天才になってみせました」

軌道修正をされない戦車ほど恐ろしい前置き。

 

 

えー、今回はぱんけーきさんところのフリーゲーム赤繋の子供たち」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

一時期サイトに繋がらなかったり別の跡地?ができていたりした、ぱんけーきさんですが、この度ブログのみ復活したもようです。うわーいパチパチ! そこで過去作が掲載されていたのでDLしてきました。

という経緯により、元は「ぱんけーきMIX」というシェアウェアとして販売されていたらしい本作、今はフリー化しているのでとりあえず記事タイトルもフリーゲームとさせてもらいますね。

 

前置き長くなったー。本作はがっつりL〇、ロリ系のノベルエロゲです。この作者様なのでもちろん鬱展開です。

というわけで、良かった点など。

 

 

崩壊と敗戦の世界観

 

まず、背景画像のほとんどが廃墟であること。ここが実に良かったですね~。壊れかけの椅子などしっかり描写も廃墟してて、退廃萌えみたいなところのある自分には嬉しかったです。水漏れした瓦礫の上で踊る白ワンピースの少女、これだけでもう情景が美しい。よき。

他、爆弾降下や敵軍の恐怖、インモラルな軍事作戦など、何かと退廃とした世界観が魅力的でした。一方で清潔を保たれた居住スペースや駆動する巨大機械などもあり、舞台自体は避難シェルターに近い感じかも。こういう限界状況で身を寄せ合って先の暗い日常を過ごす展開大好きなんですよね。

 

代わってちょっと残念な点についても。主人公の行動が、特に序盤を越えると暢気すぎるのが気になりました。流され系。といっても、未来を早々に諦めて怠惰に快楽と平和を貪っていると考えれば、ある意味この世界観に合うのかもしれません。

 

 

心をズタズタにされる性描写

 

まあエロゲなので当然性的なシーンもあります。

同人エロゲだとR18シーンを小出しにするかガッツリワンシーンで掴みに来るかで分かれるイメージがありますが、本作は長めの濡れ場で殴りに来るタイプでした。いや、エロシーンで殴るって言い方するのもどうかとは思うんですが、殴られてるようなプレイ感なんですよ展開的に……。このえげつなさが大好き……。

避けがたい事情とはいえ主人公のクズさが見え隠れするところも良かったです。最後の日にヒロインを逃がそうとするのではなく先に一発ヤッとこうと思うとことか顕著。(色んな意味で)一生懸命かつ無知なロリへ性行為を教えていく描写が丁寧でした。

 

 

わかりやすい選択肢と配置

 

システムとして良いなあと感じたのが、諸々の配置について。

まずヒロインは双子で、名前が二人とも三文字です。見た目も話し方も全く異なりますが、ノベルとして文字だけみると混同しがち

ここを解決しているのが配置の仕方なんですよ! スチルや立ち絵は常に向かって左がちとせ、右がかなた。選択肢の並びは上がちとせで下がかなた。二人のどちらかを追うシーンでも、左の道を選べばちとせ、右の道を選べばかなたと出会えます。

そう、配置が一貫してるんですよね! 誤クリックせずに済む、ぱっと感覚で判断がつきやすい並びなんです。ここ本当、さりげないけどすっごくプレイヤーに優しくて素晴らしいやり方でした。

 

また、スキップ機能についても少し。欠点として本作はどうしてもかなり昔のゲームになるのでオートモードがなかったりスキップが未読既読差別なく全飛ばししてしまったりします。

ですが、スキップについてはアイキャッチを挟むことで、プレイヤーがクリックして留める間を設けてあるんですね。ここもありがたいなと感じた点でした。

 

 

おでこは幼女の特権!

 

スチルや立ち絵の絵柄は変わらず、性癖によく合いました。この方の絶望顔がめちゃ好きなんですよね! 目を見開いてぼどぼど涙流してる感じ。すごくクる。

真っ暗でどこまでも堕ちていきそうな瞳とか、狂気シーンでの顔面崩壊とか、目玉を強調する描き方とか、鬱好きにピタリと合うポイントが盛りだくさん。二人とも体つきが貧相なのも、未発達感出ててよきです。明るい面だとちとせの栗型お口が好き。

あと、二人ともおでこちゃんです。私はおでこ民ではないはずなんですが、二人の見た目が中身の幼女感にしっくり合ってて、なかなかおでこキャラもいいもんだなーと思えました。感謝。

 

 

注意事項?

 

なおここまで語っておいてなんですが、本作はルート制限がかかっています。

改めてサイトの跡地を拝見したんですが、どうもルート入り条件に対する修正パッチが昔出てたみたいなんですよね。配布されているゲームデータは修正前の日付みたいなので、たぶん現状ではルートが解放できないのかなーと。

まあこれは出会った時期的にもしょうがないかな。プレイできただけで御の字ってことで。

 

 

とまあ、こんな感じで。

地獄みたいな終わり方をしてくれる、とても素敵な作品でした。

追記では少しだけネタバレ感想。

 

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フリゲサイト「ぱんけーき」5作品感想(『トキシックブルー』『夜想蒼瞳のデザートパレス』『悲願心中フラクタル』『求愛食葬』『鉢の底』)

 

 

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フリーゲーム「鴉の断音符」感想

「弾みをつけて高らかに、空を飛ぶにはそれがふさわしい」

太陽も宵闇も肯定していきたい前置き。

 

 

えー、今回は飼育小屋製作委員会さんところのフリーゲーム鴉の断音符」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

エンド分岐と選択肢分岐が豊富な、サスペンス寄りのノベルゲー。なんと主人公は鴉、しかもヒト並みの知能を持ち人の言葉が話せる鴉です。

 

というわけで、良かった点など。

 

 

主人公はヤタ、選択するのはあなた

 

特徴として挙げたいのが、本作は徹底して“三人称視点”であることです。

プレイヤーであるあなたは選択肢を選ぶことができます。しかし、あくまで選択できるのは行き先のみ。鴉のヤタがどのように行動し、何を告げるのかは、ヤタに託されているのです。あくまでヤタの意志はヤタの自由によるものである──みたいなところが好きでした。

面白いのが、こうやって明確に境界線を引くことでプレイヤーの私は切り離されているはずなのに、逆に強く没入感があるんですよね。

ヤタがあなたの存在をしっかりと認知し、こちらへ呼びかけてくれるからというのもあると思うのですが。ヤタ≠プレイヤーであるということをシステムで強調しつつも、操作はヤタ=プレイヤー。三人称とメタ視点を採用することで、この矛盾のような感覚を見事に表現しきっているゲームであると思います。

 

 

様々な形で表現される断音符

 

選択肢は8種類×6日分。文章量や差分の多さを察せられる方は察せられるかと思います。当然ながら結末も多く、行き着くところはなんと16種類。明確にエンドと銘打たれているのは同じく8種類で、残り8種類は道半ばで終わったりおふざけ展開だったりです。

このエンドの道行きが好きなんですよね~!

人に馴染む鴉となると、まあ素人考えでも、人・鴉・中庸の3ルートくらいが思い浮かぶところ。ですが、本作はそういう典型をあえて外してきているように感じました。もちろんどっち寄りみたいな傾向は見えますが、それ以上に“何になりたいか”“どう生きたいか”を答えてくれるエンドが多かったように思います。

単純に人間か鴉かで切り取れないみたいな。テンプレを外し、ヤタだからこそ選べる多様性を見せてくれるところが好きです。

 

 

音を意識させてくれる文章

 

文体もかなり洗練されている本作、沁みる文が多くてとても素敵でした。

毎回選択する前の、鼓舞するような文章がとても好きなんですよね……。私達はどこまでも行けるんだと本当に信じられる、心が浮き立つ、美しい文章です。さりげなくヒントをねじ込んでくれるところもありがたし。

そして何より本作で好きなのは、断音符の意味がエンドによって変わっていくところです。

それに応じて、エンドに行く前から音を意識させてくれる文章が少しずつ増えていくんですよね。背景描写にも音を意識させるものが増えて、センテンスに音がついていく感じ。暗くても明るくてもロマンティックで好きです。

同様に、ヤタの背負うものが変わっていくところも好きなんですが……ここは追記でもう少しだけ。

 

 

とまあ、こんな感じで。

分岐が多いと難しいイメージがあるかもしれませんが、特定の場所に通い詰めるだけでも十分にお話が終える作品です。文章の美しさ、メタ構造の気持ち良さに触れたい方へおススメです。

 

追記ではネタバレ感想。

 

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フリーゲーム「ウルフズエデン」感想

 

 

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フリーゲーム「大海原と大海原」感想

「キミがこんな時に笑うんだってこと初めて知った」

キミがこんなふうに泣き叫ぶんだってこともな前置き。

 

 

えー、今回は海底囚人さんところのフリーゲーム大海原と大海原」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

RPGとあるもののプレイ感はADV寄り。

物語上の関連は薄いですが、システムの特徴としては別作『灰色庭園』とほぼ一緒です。なので具体的に知りたい方はそちらの記事の前半を読んで頂けると幸い。

また、最近になってリメイク(演出強化版)が公開されました! 当記事はリメイク前の内容ですのでご了承ください。 

 

というわけで、良かった点など。

 

魔女と和風が寄り添う世界観

 

前情報として知っていたのが、「魔女が出てくる」「海の世界」「不穏」くらいだったんですよ。で、実際プレイしてみると、想像以上に和風な要素が多く出てきて驚かされました!

確かに海って海神様云々で和風モチーフが出てきてもおかしくはないんですよね。

西洋イメージの魔女っ娘、革ジャンシルバーアクセじゃらじゃらヤンキー、和服美女、これら和洋折衷入り乱れがすんなり違和感なく受け止めれるような世界観なのが本当すごいなーと思うんですよ。

自作マップで統一されてるからなのかなあ。ともすればちぐはぐになりそうなのに、一つの「大海原と大海原」の世界として丸ごと受け入れられちゃうところが凄かったです。

海の中に鳥居、浪漫が実に良い。

 

 

豊富な衣装とキュートな違い

 

『灰色庭園』はヨザファイア個人のお話と世界の危機のお話、二つが同時進行していく群像劇な印象でした。一方で本作『大海原と大海原』は主人公大海原が色んな意味で中心です。

で、注目したいのが大海原の衣装替えについて! 作中で何度かお着替えしたり変身したりするんですが、この違いがすっごく魅力的でした!

真っ白の無垢な少女から始まり、可能性を秘めたマリンカラー、そしてそこから決まった一色へ。爪先から帽子の先まで、隅々までモチーフが凝っていて、どれもすっごくキュート! あえて比較するようなスチルやエンド絵が用意されているのも、見ように寄ってはかなり皮肉で、痺れます。好き。

大海原がこれだけ衣装持ちなのもやっぱり、大海原の特別感、中心人物感がよく出てていいなー、なんて。そんなわけで全体的なシステムや進み方は前作と近しいんですが、魅せ方はまったく違った味でした。

 

 

秀逸なシステムグラフィック演出

 

スチル、立ち絵、マップなど、グラフィックの演出は飛び抜けて魅力的です。死の海のあれとか、もう、ザッと血の気が引きましたもんね。すさまじくて。

もう見た瞬間に破壊力の強さは伝わると思うので、未プレイの方は見て感じてもらうとして。

個人的に注目したいのが、システムグラフィックの変化です。メッセージウィンドウから始まり、顔グラ、メニュー画面などなど、あちこちが細やかに変化していくんですよね。こういう場所ってプレイしていると一番目に付く一方、ここってある意味メタな部分だとも思っていて。このメタさが、プレイヤーを認識しているような冒頭のモノローグ、世界が侵食されていくような感覚と上手く噛み合ってるなあと感じました。

 

 

見せない方が興奮する法則

 

公式の年齢制限と注意書きの通り、物語終盤はけっこうなエログロがあります。

表現自体は一応、間接的なんですよ。局部や汁が出るわけでもなければリアルな臓物がでるわけでもなく、ドットがちょっと赤くなるくらいですし。マップの狂気的な変化は心底怖気が走るほどでしたが、それもホラゲでは見られるくらいの描写具合でそこがメインというわけでもないかなという気がしますし。

ただこう、エグイ。えげつない。このえげつなさが大好きです。

容赦ないんですよね!! 鬱に対して!!!

たとい可愛い女の子であれ「キャッ」なんて叫び声では許されませんし、ピュアなときめきも目の前で無残に汚されます。この、リョナに片足踏み込んでる感じがすごく……すごく……性癖に合いました。好き。

 

 

物足りなかった点について

 

最後に合わなかった点。

総勢何十名のキャラが出演する本作ですが、大海原を中心としたお話が展開されていったぶん、やはり扱いきれていない印象が強かったです。顔のないモブキャラも多く登場したぶん、顔有りネームドキャラの多さに集中が削がれる印象も。

また、肝心の設定がほぼほぼ脇に追いやられていたところも気になってしまいました。そもそも使い魔や魔女はどういう存在なのか、姫の父親はどういった意図で一人だけを選ぶことになったのかなどなど。プレイヤーへの説明役が欲しかったかなあ。思い返すと『灰色庭園』ではヨザフ達がその役割をしてくれてたのかも。

 

この辺りの消化不良感が解決するかなーと思って漫画版を拝見したんですが、やっぱりもやもや。ゲームのあらすじをなぞりつつ、猫山さんなどの脇役を削って短く整えたような感じでした。

単品で完結した話を読みたいと思いがちな自分には、この手のキャラゲーはやっぱり合わないのかなー。

 

もちろん、名作だとは思うんですよ! 

前述の好きポイントもほんとそうですし、ノーマルエンド大好きですし。性癖にめちゃめちゃ合いますし。フカミが好きすぎてもうやばいがとまらない好き、初見でふんわり妄想してた展開が現実化して倒れるかと思った喜び。

 

 

 

とまあ、こんなところで。

全体として、ゲームとして見るとちょっと評価は厳しい。でも演出やワンシーンは一番って言いたくなるくらい好き。こんな感じの極端な感想を抱く作品でした。

 

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フリゲサイト「とらねこさんの小屋」短編作品感想

「ここぞで決め台詞を噛まずに言える、これぞ主役の才能」

善悪問わず最重要ポイントな前置き。

 

 

えー、今回はとらねこさんの小屋さんところのフリーゲームこそっとロビン」「こそっとスティーナ」「従僕たちのクリスマス」「脱出!本日のディナーはレオン!?」「従僕たちの特製ケーキ」「魔法学園の特待生 ~パウルと退学の危機!?~」「グリム・ゲートの銀銃」「マジョマモ」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

先に述べます、文字数めっちゃ長くなりました。すまーん。

作品同士をリンクさせたりゲストキャラに別作品の主人公が登場したりするスタイルがお好きな作者様のようなので、『エインワーズ家の従僕たち』シリーズをプレイした流れで一気に色々とプレイしてしまうことにしました。

全体的にギャグ寄りの作品が多め。

 

軽いあらすじやイベントのネタバレを含むので、未プレイの方はご了承ください。

 

 

 

 

 

 

      『こそっとロビン

 

[概要]

おちゃめなコソドロの楽しい会話を聞きながら家探しをするゲー。5分で1プレイのお手軽さと、エンディングの代わりのリザルトコメントが魅力的。

 

 

[良かった点]

 

・探索ポイントの会話の多さ

まず、会話の多さ! いたるところに家探しポイントがあって、それら全部にロビンのセリフが仕込まれているところがすっごく細やかで素敵でした~! 危ないとわかっていてもついセリフが気になって調べてしまったり、明らかにアウトとわかっていても突撃したくなる時があったり。調べることの楽しさがぎゅぎゅっと詰まってます。

 

・こんなところに隠し部屋

単純にお金探しの運ゲーかと思いきや、意外な隠し部屋もあり、5分の中にちょっとした謎解き?要素もあるのが良い捻りでした。5分の短さに応じてわかりやすいところにあるのもグッド。

やろうと思えばコンスタントにMAX金額の3万ジル超えも狙えます。やったね。

 

・嬉しいリザルトコメント

探索が終わるとボスからお褒めの言葉やお叱りの言葉も頂けます。何が理由で探索が終わったかによってセリフが変わるという、ここでもかなりの細やかさを感じました!

例えば特殊っぽいセリフポイントを上げると、つまみ食い、犬、鼠、本、隠し部屋の名刺などなど。

やること全てに反応をもらえるのって、プレイヤーとしてすっごく嬉しいんですよね!

おそらくはリザルト会話が一番長くてロビンの意外な秘密がわかる、あの終わり方が実質トゥルーエンド?なのかなと思っています。はぁやりこんだ! 楽しかったです!

 

 

[一言]

さくっとプレイできて、テンポよく楽しいを感じられる良作でした!

 

 

 

      『こそっとスティーナ』

 

[概要]

広めの1マップのあちこちに散らばる人たちから財布をスリまくるゲー。お手軽に数分で一通りプレイできます。

 

 

[良かった点]

 

・ゲストキャラ勢揃いの賑やかさ

見覚えのある燕尾服がいたり、見覚えのある黒帽子がいたり、同作者様の他ゲームで見かけたキャラが盛りだくさんです。スリを成功させたら話しかけられる、というご褒美的な形になっているのも面白い点。MV規格の歩行グラだとけっこう印象の変わるキャラもいて、色々と新鮮でした。

 

・スリにもテクニックが必要

盗みやすいキャラと盗みづらいキャラがいるのもメリハリがあって良ポイント。中には後ろから狙っても気づかれることがあって、やられた!って叫んじゃう楽しさがありました。

一か所他人の視線を気にしないといけないところがあったり、猫が重要だったり、きちんと話を聞けばスリが可能になるギミックが仕込まれているのも楽しかったです。

 

 

[惜しい点]

 

・スティーナの薄さ

似たタイトルの『こそっとロビン』と違い、スティーナ自身のセリフは少ないのが残念。スティーナは単なるアバターという感じがして物足りなかったです。

 

・モチベがスコアだけ

上記と被りますが、リザルトコメントも自分の稼ぎや成果に関するコメントだけだったので、数字ではなくキャラの新たな一面が見れることにやりがいを感じる私にはやっぱり物足りなさがありました。

ゲストキャラのセリフは大好きなんですけどね! 同業者~にニヤリとしました。

 

 

[一言]

ファンなら「こんなところにあのキャラが!」という楽しさが味わえる作品。

 

 

 

      『変装名人ルノワール

 

[概要]

着せられた濡れ衣を剥がすために町中を練り歩く、プチ推理もの風アドベンチャー。ツクール製で数十分でさくっとプレイできます。

 

 

[良かった点]

 

・推理が苦手でも安心のフラグ進行型ストーリー

「犯人はお前だー!」ができるだけでもう良ゲー認定したい!

こちらがピンと来ていてもきちんと証拠を揃えてフラグを立ててお膳立てしなければ、相手には言い逃れられてしまいます。逆に言えば街中の人にきちんとお話していけばほぼ自動的にイベントが進むので、そこまで推理が得意ではない私のような人でも楽しくプレイができます。段階を踏んでいくおかげで理解もしやすかったですねぇ。

 

・あっと気づけばやられるトリック

そんなわけでゆるゆるとお気楽にプレイしていたんですが、中盤でやられました。さらには終盤で、某セリフを二度見した後、思わず叫びました。いやあやられた! うまいなあ! 

単純だからこそ使い方が上手くて良く効きますし、良く見ればヒントもきちんと撒いてあるんですよ。顔グラがデフォルメ調なのも気づかせないための意図かなー、なんて。

なお、詰んでしまうシーンもあるのでセーブはこまめに。やり直しも数分なので楽ではあるんですけどね。

 

 

[惜しい点]

前述の通り捕まえるためにはフラグを立てる必要があるのと、フラグのためにあえて誤っている相手を犯人として指定する時もあるので、「3回犯人当てを間違えたらゲームオーバー」のシステムが紛らわしく感じました。

特定の人物にしか選択肢が出ないので推理が不要だったシーンも多かったですし、犯人指定はそれこそラストだけでも良かったかもなーと思います。

 

 

[一言]

全員を集めて推理を披露!なシーンに憧れる方向け。

 

 

 

      『従僕たちのクリスマス』

 

[概要]

エインワーズ家の従僕たち」(以下本編)の番外編。ツクール製、読むだけ短編のクリスマスゲー。

 

 

[良かった点]

 

レオンだけじゃなくてわりとあの家の従僕皆がコメディお祭り体質なんだなあとわかったところが微笑ましかったです。年相応にキャッキャしてる感じ。

チケット制やくじ引きや魔法での選定等ではなく、音に合わせてくるくるプレゼントを回していくというどことなく庶民的な方法もちょっと面白かったり。

あとさりげなくウィルがエインワーズ家に来てまだ1年経っていないことが発覚して驚きました。あれ、そういうことですよね? 新入りなのにすっかり馴染んでてすごいな~。

 

本編では影だけあってお前誰だよ状態だったシャルロッテ君に陽の目が当たったのもポイントですね。今後の活躍が楽しみです。

主要人物だけで閉じるのではなく、モブ従僕さんやネームドの個性的なキャラが交じり合って大所帯を感じさせてくれるのもほのぼのしました。

こっそり逃げていく(←犯人)に爆笑です。あのくだりめっちゃ好き。

 

 

[惜しい点]

本編のロイの買い出しミニイベントが好きで、その理由が皆にきっちり好きなものを聞いていく律義さだったので、今回の相手を考えずに押し付けていく感じは残念でした。猫好きはかわいいけどゴリ押しはやだなあ。

 

 

[一言]

従僕たちの雰囲気が感じられて、世界観がより知れた一作でした。

 

 

 

      『脱出!本日のディナーはレオン!?』

 

[概要]

ツクール製、選択肢で分岐する脱出ゲー。『エインワーズ家の従僕たち』の番外編。スクショでわかるので書いてしまいますが『幻影のビブリオ』の彼も登場します。ほんのりBLネタ有。

 

 

[良かった点]

 

相変わらずのドタバタコメディ感と、テンポの良さ。スピーディに事が運んであれよあれよと言う間にお約束のゲームオーバーに辿り着く流れが楽しかったです。

 

分岐の選択肢が多めで、ゲームオーバーにバリエーションがあるところも素敵。

中身によってはけっこうヒヤっとする展開もあるんですが、レオンが根っから明るい性格なのとギャグ補正のおかげでどうあがいても笑いに収めてくれるのでご安心。

 

後半になるとエンドのスチルまできっちり変わってくれるところに思わず吹き出しました。

アガートの登場のおかげできっちり起承転結がついて、良い話として不思議とまとまってしまうところも、いやあやっぱり上手いなあと思います。

しかし彼がここにいるとなるとリコはどうしたんでしょうね?

ビブリオ集めする前の時間軸なのかなー。

 

 

[惜しい点]

きっちりゲームオーバーを全回収してからおまけ部屋に辿り着いたので、セーブ頻度の設定にガクッと力が抜けました。初めに設定させて欲しかった……!

以降の作品ではセーブタイミングが小刻みになっているので感謝感謝でした。

 

 

[一言]

ワーウルフ達の流れるような連携が一番笑いのツボにハマりました。

 

 

 

      『従僕たちの特製ケーキ』

 

[概要]

ツクール製、選択肢で分岐するノベルゲー。『エインワーズ家の従僕たち』の番外編、内輪ネタでわいわいする感じ。

 

 

[良かった点]

背景画像がどれもメルヘンでほんわか可愛かったですね~。前作の脱出ゲーが魔物の巣窟ということでおどろおどろしかったので、また変わった味わいを楽しめました。

今作はセーブがこまめにできたのも嬉しいところ。

また、怖い怖いと噂だけ聞いていた執事長の強さがほんのりと示されるイベントでもありました。てっきり全属性魔法を使えるエキスパート的なのを勝手に想像してたんですが、剣使いなんですねぇ。

全員同室というのも驚き。従僕に個室って言うのは確かにあり得ないでしょうけど。お坊ちゃん軍団ということを考えると、特にディーとかは来たばかりの頃には不服そうにしていたのかもしれないなー、なんて想像も膨らむ設定でした。

 

[合わなかった点]

メタネタ! シャルロッテ君は出生?や扱いからしてメタ要員なんでしょうかね。

 

[一言]

番外編を制覇するなら勢いで。

 

 

 

      『魔法学園の特待生~パウルと退学の危機!?~』

 

[概要]

ツクール製、選択肢分岐型の短編ノベル。ファンタジー魔法学園もので、敬語口調の男の子と好き勝手する妖精ちゃんの踏んだり蹴ったりなお話。

 

 

[良かった点]

 

・ちょっとした会話に見え隠れする世界観

まず主人公パウルの特徴でもある鏡魔法の設定! 

これすっごくわくわくして大好きでした!

初めて魔法が発動するシーンがもうかっこいいんですよ~。

攻撃魔法やゴーストが苦手って言うのもこう、特質系ならではのデメリットって感じがして良き良き。パウルの性格的にも納得ですよね、こういう内面とスキルが噛み合うのってすごく好きです。

こういうトリッキーな技ってどう運用するかで戦略や活用場所がガラッと広がるからいいですよね……! 作中でも色んな使われ方がされていて、物語にも幅が出ますし、何より見ていてすごく楽しかったです。

 

・スニーキングに合わせて隠れるデフォルメキャラ

基本的には画面右側にキャラグラフィックが表示されています。で、深夜の寮に忍び込む関係でキャラが隠れたり逃げたりするんですが、お話に合わせてデフォルメキャラもぴょこぴょこ逃げたり消えたりするんですよ。隠れた時の緊迫感が味わえて楽しかったですし、肩辺りの定位置にひょこっと妖精が戻ってくるのはほのぼのでした。

 

・格式高さを感じさせるシステムグラフィック

画面全体に金属のオシャレなフレームがついていたり、背景として表示されるマップチップも豪奢な雰囲気だったり、見てわからせる世界観が味わえました。また、ロード画面で二人が移動する等々、待ち時間や画面切り替えの間も飽きない工夫があったのもアイキャッチって感じで凝ってましたねぇ。

 

 

[合わなかった点]

 

で、世界観や魔法設定、敬語キャラ自体はとっても楽しかったのですが!

合わないところが本当にとことん合わなかったので語調強めの長文で書きます。

 

・貧乏ネタが無神経

ネタにマジレスします。

貧乏ネタイジリのシーンは見てられませんでした。

アガートみたいな損得勘定しっかりしててお財布のひもが固いキャラに対しての扱いならすんなり納得いくんですけどねぇ。パウルは本人が頑張って苦学生している描写がいっぱいあったので、あれだけ頑張ってるのに馬鹿にされるのはひどすぎるという気持ちが先立ってしまいました。

 

・妖精リリィの性格

この子を「可愛くて憎めないキャラ」と感じられるかどうかでゲームの評価がガラッと変わるゲームだと思います。そして私はこの子大嫌いです。

まともな謝罪はグッドエンドだけだったりこの子自身にはお咎めが全く無かったり、元凶なのにストーリー上は変に持ち上げられたり。

口プロレスしたら映えるキャラだと思うんですけど、パートナーがやり返さないのでなおさらバランス悪く感じましたねー。

いっそ序盤から「妖精は性格に難あり」ってことを提示しておくとか……? 硬派な海外ファンタジーなら妖精=ヤバイみたいな認識はわりとよくあるみたいですし。

まあ何にせよ、扱いと態度が私には合わない!

 

と、合わなかった点をがっつりと書きましたが。

このゲームの全てが嫌いならこんな感想書く時間すら惜しいわけで、実際、世界観が深まること自体はとっても楽しかったです。

 

 

[一言]

理不尽ギャグや、不運・不遇枠のキャラに萌えられる人向け。

 

 

 

 

      『グリム・ゲートの銀銃』

 

[概要]

ツクール製のノベルゲー。アングラな世界と、総元締め的な立場のクールな男、そして彼を取り巻く皆々の一連のドラマ。

 

 

[良かった点]

 

・オシャレなキャッチコピーと興味を引くタイトル

ふりーむさんのキャッチフレーズに惚れました。

いや元々エイ僕のほうで気になっていた作者様だったんですが、各作品の一気プレイをしようと思い立ったのはこの作品のこのキャッチフレーズがあったからです。あのフレーズ、かっこよくないですか!? かっこいいよ!! 銃と心臓という単語選びでぼんやりとお話の色が読み取れるのも良いですよねぇ。

あと細かいツボなんですが、私「ゼルダの伝説」とか「アルジャーノンに花束を」とか、意味深なカタカナが実は主人公名じゃないパターンのタイトル好きなんですよ。いるでしょこういうの好きな人。私は好きです。

 

・小道具の使い方と見せ方

暗器の針やポイズンクッキングなど、作中でドットとして出すには細やかな物に関しては、またちょっと違った見せ方がされます。四角い枠で拡大するあの演出、推理ものでは良く見ますがこういう形式の作品では新鮮でした。

おかげでタイトルとなっている銃により印象がつきましたねぇ。

さりげないところだと画面のフレームやメッセージウィンドウなど、あちこちにオシャレでかっこいい雰囲気が演出されているのもグッドでした。

 

 

・冷徹キャラだからこそ光る特別扱い

イロモノぞろいの悪役軍団みたいなのって燃えますよね。萌えではなく燃え。好きです。

義腕の戦闘狂が暴れ回るとか、美しいお嬢さんが華麗に飛び道具で敵を伸すとか、好きでしょみんな!! 僕は好き!!!

キャラデザも良かったなー。やっぱり私この方のキャラデザ好きなんですよね。他作品になりますがパウルとかドツボですし。ヴァインの紫がアクセントな髪型も好きですし、ピンク髪で選ぶ服によっては甘ロリにもなれるであろうルベッタがあえて青い服なのもクールさが増して素敵ですし。

余談ですがルベッタの顔グラ差分は好みのものが多くてテンションあがりました。こちらは萌えのほう。眇める視線に惚れそうです。

 

で、本題について。常に冷徹であるというヴァインの姿勢を崩さずに、そのうえで本編を描いているのがなるほどなーと思いました。恥ずかしながら初めはまったく読み解けなかったんですが、終わってから改めてもやもやを考え直すと、主軸自体はしっかりしてるんですよね。話を重ねるごとに「なんでヴァインはあんなやつを?」という点へ言及するキャラが増え、プレイヤーの意識もそっちへ流れていき、そしてそれがラストへ繋がるという。意図する流れは理解しやすかったです。

 

 

[惜しい点]

 

・本格的なアングラを求めると食い違う

ヴァインや周りの人達のダークな一面が脅しや暗転で終わることが多く、ライトノベルにおける敵キャラサイドな塩梅でした。報復の面がたいてい爆破で終わるので、怖さが伝わらない感じ。ちょっとイキリっぽくも見えます。

もう少し実際手を汚す、ヤバイものをどんとお出しするシーンがあれば説得力もあったかもですが……。闇社会ということでこちらが期待値を上げ過ぎていたのも悪いかな。

逆に言えば、流血や本格的な鬱は苦手と言う方でも楽しめる作品です。

 

・主人公はヴァインで主役は別キャラ

こちらの読解力不足を棚に上げて話すんですが、第三話辺りに来るまであの子はサブキャラだと思ってたんですよね。ましてや彼女が心臓に当たるほど重要ポジションだとは思えてなかったので(解釈がこれでいいのかも自信がない)、脳内で軌道修正するのにちょっと時間がかかりました。

ヴァインが言っていた彼女の利用価値、という建前をすっかり信じ込んでしまったのもあります。だからこそ終盤で代わりになる修理技師がやってきて捨てられる展開になるんだろうと期待していたので、思わぬ方向に目が点でした。

 

いっそオークションの話から入ってしまっても良い気がするんだけど、ヴァインの人となりを知ってないと「あのヴァインが!?」という驚きは生まれないだろうということもわかるので、うーんうーん。

キャラの印象と登場順は比例するんだなあという学びも得られました。思えばこの作品、ラスボスも主軸キャラも途中からの顔見せになるんですよね。それこそサブイベントで先行して過去編を出しちゃうのも良かったんじゃないかなー、なんて。素人考えですが。

RPGならプレイアブルキャラになるかどうかで重要度のメタ読みもできるけど、ノベルは難しいですよねぇ。

 

 

・どの話からでもプレイ可能

と、公式にはありますが。回想シーンで章が切り替わるわけではなく時系列も地続き、短編連作という印象は薄いです。キャラが多い作品でどこからでも形式を作るのはよっぽどのことが無い限り無理ではないかなあ。

どこからでも読める作品って日常系ミステリが多い印象なので、少なくとも「銀銃と呼ばれる“まで”の物語」という一続きのドラマを提示するのであれば、どこからでも宣言はむしろ削って良いのではないかなと思います。

 

 

[一言]

銃と悪が華々しく、かつ情も含んで活躍する一幕を見たい方向け。

 

 

 

      『マジョマモ』

 

[概要]

時間制限なしのパズルゲー。1プレイ数分でコレクションシステムあり。『エインワーズ家の従僕たち』と一部世界観やキャラが共通しています。

 

[良かった点]

 

・時間に追われず圧に押されるシステム

私は初回プレイでシステムを勘違いしていたのですが、敵の進軍はパズルを消せば行われるので実質ターン制です。消さない限りゲームも進行しないので、手を止めてじっくり悩んでから一手消すようなプレイになるかなと思います。

属性切り替えとパネル消しが同じ操作なので、感覚でプレイ方法が伝わるのもお手軽でした。アクション性を要求されず、じっくり腰を据えてプレイできるタイプのパズルゲーです。

 

・クロスで燃やす斬新システム

パズルゲーというと消せるラインも重要かと思うのですが、本作は十字型というところに斬新さを感じました。敵は列で攻めて来るのでこちらも列で消したいところですが、考えなしにポンポンタップするだけでは一パネル分しか消せません。この範囲の狭さに頭を悩ませるパズルでしたね~。

そんなわけなのでデフォルトの難易度はかなり高い印象です。そこを必殺技や範囲拡張のパネル、巻き込み消しなどで補ってある印象。救済策としてウィルが活躍してくれるところも、エインワーズ家好きとしては嬉しいところ。

落ち物パズルは好きなんですが、こういうディフェンスっぽい体感のゲームは初めてでとても新鮮でした。

 

 

[惜しい点]

 

スコアによってコレクションやちょっとした駆け合いが見れる、それ自体はとっても嬉しい点。ですが要求点数がシンプルに階段式なので、失敗が込むと萎え落ちしがちでした。

バチバチにやり込み向けのものがあること自体は燃えます。なのでコレクションのレベルデザインをもう少しアンバランスにして、序盤のモチベと終盤のやり込みの段差を用意していれば、もっと中毒性が出たのではないかなと感じます。

 

[一言]

ポチポチクリックでお手軽なパズルゲーをお求めの方向け。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

特に長編で感じたんですが、起承転結とお話の〆を作るのが上手い作者様だなーと思います。あと萌えポイントや燃えシーンがバシッと決まってて、わかってるねえ!と言いたくなります。

合わないところも感じるんだけど、それ以上に合うところが大きくってプレイした作品が多かったです。

 

 

 

同作者様の他フリーゲーム感想記事↓

フリーゲーム「幻影のビブリオ」感想

フリーゲーム「エインワーズ家の従僕たち」感想

フリーゲーム「エインワーズ家の従僕たち2」感想

フリーゲーム「闇色スターナイト」感想

フリーゲーム「僕は未だに、わからない」感想

「エンドロールを千切って次いで擦り切れるまで繰り返す」

とうに余白まで書き込み切った前置き。

 

 

えー、今回は高野M明さんところのフリーゲーム「僕は未だに、わからない」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

VIPRPG、選択肢ありでエンドは1つのノベルゲ。R-18を匂わせたり全裸だったりするシーンはありますが、メインはエロよりシリアス鬱です。

同作者様の他ゲーム『ごめん、まだわかんないや(以下『ごめん、』)』を中心に、複数作品を前提とした続編的なストーリー。前提となる作品は同梱テキストファイルにあります。

 

 

 

というわけで、良かった点など。

 

 

意味がなくとも味がある選択肢

 

お話としては一本道、どうあがいても鬱一直線。そもそもが『ごめん、』の凌辱ルートから派生しているので、当然と言えば当然ですね。ですが本作はうっすらと救いも見え、どちらかといえば切なさも感じるストーリーだったかと思います。

面白かったのが、選択肢の分岐について。

展開は一本道でも、一日目と二日目の選択肢によってかるーく分岐が起こるんですよね。例の年齢のところ。凸シェイドⅢの愛嬌が見える分岐で楽しかったです。名前についても『ごめん、』の彼を入力すると反応が変わって、差分回収派としてニヤリでした。

 

 

 

繰り返し繰り返さない展開

 

言ってしまえばループものの本作。しかしながら、完全なループではないところが一番の魅力だと思っています。前述の選択肢の分岐もそうですし、ループの短さにしてもそう。繰り返しだなと思わせておいてズラすところが実に巧みです。

キャンセルキーがメッセージスキップとセーブ両方兼ねてるところも上手いんですよね。うっかり飛ばしちゃった、というのが断じて起こらないシステム。選択肢できちんとストップできるっていうのは本当、さりげなくものすごく重要なんですよ。プレイヤーからするとめちゃくちゃ有難い仕様でした。

 

 

 

痩せぎすで生々しい身体を持つ魔女

 

他作品で見られるとおり、凸シェイドⅢは徹底して「魔女」「毒婦」として描かれます。ダウナーで、色気があって、人を引き付けてやまない女性。これ、こうやって形容するだけなら楽ですが、それを実感させるだけの雰囲気作りができているのは本当かなりの手腕だなあと感じました。

正直、エロの主流って肉感と汁気みたいなところあるじゃないですか。焼肉みたいなこと言ってしまったな。あながち間違っちゃいないな。閑話休題

凸シェイドⅢは真逆を行ってるんですよね。あばらが浮くほど痩せてて、褐色で、コスプレかってくらいあからさまな紫色のバニースーツ着てて、化粧(に見える刻印)もガッツリ。で、これ自体は個々人の性癖によるものなので良いんですよ。

 

言いたいのは、この痩せぎすな体でガッツリとエロティックな熱気が出せているところ! 生気はないけど生々しい熱はある、胸は揺れないけれど舌は蠢く、荒げた吐息が伝わってきそうな描写力がすさまじかったです。これは好きだからこそ書ける文章だなと感じます。

最中の描写抜きでこの濃密さなんだからもうたまったもんじゃないですね。文才が化け物だ。

 

 

 

厨二でお洒落な文体

 

『ごめん、』で魅せてくれた文体も相変わらず、むしろパワーアップ。この方の文って比喩表現が芳醇なんですよね。漢字たっぷりで含蓄のある雰囲気で、良い意味で厨二っぽい文章が好きな自分には本当馴染みました。

一緒にお風呂してる時の「尾」の比喩とか好き。

あと、魔女らしい人を陥落させる面と、少女らしく一途で懸命な面、両方を描写してくれるところも実に好きでした。魅せるだけ魅せていなくなってしまう、そんなところも好きです。まさに影を追う感じ。

そしてタイトル回収がうますぎる! 決め台詞の使いどころとその中身に関しては一番の作者様だなあと思います。

 

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

好きな作品の続編は怖さ半分ワクワク半分でプレイする私ですが、見事に予想を超えて納得の結末を描いてくれた良作でした。

未プレイの方にはこの作品から入るより、他作品から順当に追って世界観を深めていくのをおススメしたいところです。

 

 

同作者様の他フリーゲーム感想記事↓

フリーゲーム「ごめん、まだわかんないや」感想

VIPRPG6作一挙感想(白昼夢チルドレン) 

VIPRPG「想い出とまわる君 ~Memories Of...~」感想

フリーゲーム「棺の魔女」他3作品感想