うそうさ〜第二号室〜

フリゲ・鬱展開・ヤンデレ 万歳!

フリーゲーム「すでに私たちは地獄のまっただ中でした。」「さよなら、モナーRPG。」感想

「時が過ぎ色あせても君の感動は無駄にならない」
そう信じて突き進みたい前置き。

 


えー、今回はローゼンクロイツさんところのフリーゲーム「すでに私たちは地獄のまっただ中でした。」「さよなら、モナーRPG。」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。


実は本内容、2018(!?!)に書いた記事です。それが今になって発掘されたので、闇に葬るのももったいないってことで公開します。

もとは備忘録のつもりだったので、記事内容がいつも以上に配慮がなかったり文体が雑だったりします。ご了承。

 

 

 

 

『すでに私たちは地獄のまっただ中でした。』


まどマギとかゆめにっきとかタオルケットとか散々言われてんだろうなあと思ったら案の定だった。一部の用語やマップが近いだけで内容は全然違うんで誤解しないでください。

 


[ストーリー]


エログロ鬱展開で叩き落しておいての選択肢。無口主人公がしゃべってくれる瞬間とは毎度良いものです。選択肢はめったに出てこないけど、その分出て来た時は4つくらいあるから、プレイヤーの意思に合うものがより選びやすくて良い。2周目oっぱi安定。
自分か、命か。というよくある選択を、ここまで暗澹かつ熱く提示して来る作品は初めて。エンディング後のことも色々考えさせられた。またおはようになったらいいなあ。


全体的に淡々としている印象だけど、キャラクターが訴えかけてくるセリフはすごく身につまされるところが多くて、プレイヤーとの距離感のバランスが良い。っていうのは、鬱展開では落ち込みすぎず、真相辺りでは熱く、といった風にプレイヤー側で調整できるから、展開は酷くてもそこまで病まずにすむなあと。もちろん病みたい人はがっつり感情移入すれば良いと思う。
子どもたちに贈り物もらった時は泣いた。


ちょくちょくクトゥルフしてるので好きな人は嬉しいんじゃないかな。ニャル様には勝てないから逃げよう。
「パーティインした」とか「逃 げ ろ !!」とかの、ありそうでめったに見ない独特の表現がすごいツボ。自害したとか生還したとか表現がキツイのも世界観を表してて良い。

 


[戦闘]


状態異常やステータスアップダウンがきちんと機能している。ディフェンシブ重ねがけ安定。適正レベルが表示されてるから無駄なレベル上げしなくていいし、きちんとアイテム集めてたらボスもやや余裕くらいで倒せてちょうどいい感じ。

 


[探索]


スイッチ切り替え型のダンジョンが多かったかな?  広すぎず、仕掛けもその場所の雰囲気に合った感じで楽しかった。

アクション要素がちょこっとあって、避けを要求されることも。とはいえアクションむちゃくちゃ苦手な自分でも数回チャレンジしたらなんとかクリアできるくらいのゆるーい難易度。本当助かった。


サブダンジョンとか、後から戻ってきたら入れるような隠し要素とかも豊富で、プレイしていて飽きなかった。

回収不可になるのはエンディングのすぐ手前まで行った時だけだから、焦らなくても大丈夫。魔女倒したぜやったー。

 


[その他]


DLの紹介ページが全てを物語ってると思う。興味が湧いたら喰わず嫌いせずにやってみてほしい気持ち。素直なハッピーエンドを信じられないひねくれた自分にはぴったりだった。

 

 

 

 

『さよなら、モナーRPG。』

 

モナーRPGを知らない私がやっていいものか、と思ったけど、知らなかったからこそやってみて良かったなあと思える作品。メタメタ。

 


[ストーリー]


メタと批評家様(笑)と感動でお送りする感じ。

選択肢が多いので、やろうと思えばとことん非道残虐になれるし、良い子ちゃんプレイもできる。フリーシナリオで自分の好きなところから進められるのも良い。

私は勇者蹴散らして、クトゥルフ系倒して、ブルーブルーじゃなかったインディゴぶちのめして、滅んだ星の残骸を垣間見て最終決戦へ。なるべく犠牲者が出ないルートを選んだつもりなので、2周目は色んな地域を絶望に貶める極悪プレイをしてもいいかもしれない。


しぃちゃん主人公でやってたんだけど、エンドロールのにっこりで涙腺がやられた。あのネットユーザーがクレクレになるんじゃないかという危惧を抱いてしまったりもするんだけどこれは邪推だろうねぇ。こうやって書いてる今も、自分はあの妙にとげとげしくて腹立つネットユーザーの一員なんだよなあと思うともやもやするところもある。感想って人を不快にさせることもあるから難しいね。

モナーに拘らず~の台詞はぐさっときました。そこが肝心かなめだろうに。

 


[戦闘]


状態異常やバステが重要なのは前作同様。敵をスルーできるポイントが多々あるので、アクションテクを披露しすぎるとレベルが足りなくなるかも?  ちょこっと難易度高め。

今回はしっかり情報を集めればボスの対策とかも丸わかりなので、その辺ちゃんとしてれば難易度はそこそこになる。

私のメンバーはしぃ、モナー、ネーノ、ギコのだいたいひたすら殴るチーム。しぃ魔法、ギコ物理、モナー回復、ネーノステータス上昇でけっこうバランス良かった。

 


[探索]


マップチップとギミックが一体化してる感じ。仕掛けはマップ見たらすぐ察しがつくようわかりやすく作られてるし、宝箱のためにちょっと頭をひねらすところもあって、攻略が楽しかった。アクションも冷静に見極めたらなんとかなる。なった。

 


[その他]


地獄のまっただ中やってると嬉しい仕掛けやダンジョンがちらほら。しょっぱなから地面に説明書きが出るというインパクトのある展開で、それがラストに帰結するのも良い。やっぱりベレー帽の子は台詞が染みるなあ。
ゲーム作ってる人は特に身につまされるところがあるんじゃないかと。

 

 

 

 

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乙女向け短編ノベルフリーゲーム9作品感想

 「長編疲れのお供に短編はいかがですか!」

隙を余さず需要に訴えかけていく前置き。

 

 

 

えー、今回は短編の乙女向けノベル(だと当方が感じるもの)を複数作まとめて、感想を述べていきますね。

作者様はそれぞれ別々だったり同じだったり。基本的にはヤンデレ多め。タイトルをクリックしたら本家に飛べますので、公式説明文などもご覧ください。

作品は下記の目次の通り。

 

 

 

 

夕明かりの下で』(公開停止中)

 

なろう小説を通じて双子が出会う、現代もの恋愛ノベル。策略系ヤンデレ×頭お花畑系ヒロインで、一応社会人もの。ただヤンデレといっても、演出はホラーに近いかな。

 

スマホのスマートな登場の仕方や、ドアノブをアップにする構図など、さりげなく飽きさせない見せ方をされていたように思います。

気になる点としては、立ち絵変更のテンポがずれてるように思えたところですね。ティラノさんの問題かもしれませんが。あと、私服のセンス。特に攻略対象のほうはいっそ無地でもいいのでもうちょっと年に合う服装をさせてあげて欲しかったかなーと思います。

といっても、日によって着る服がきちんと変わっていること自体は細やかで好きです。立ち絵の数増やすだけでも大変ですよねえ。

起動画面の構図もオシャレで好きですが、「つづきから」の「つ」の部分以外はエンディング回想ページへ飛ぶような当たり判定になっているのがネックでした。

 

ストーリーとしては、3種どのエンドも心理描写をしっかりしてくれていた印象です。双子ならではの運命論を感じさせる展開は思わずなるほどなあと思わされました。

ヤンデレと聞いてイメージしやすい、安定のヤンデレを楽しめた一作でした。

 

 

 

縁的生活』(期間限定公開)

 

お人よしすぎる女子高生が色んな人と縁を繋いでいく、現代もの乙女向け恋愛ノベル。

攻略対象は二人で、近所に住んでる少年と、雨の中で出会った社会人。二人とも知的で安心できて少しばかり不穏なところがあるんですが、こうやって属性だけ取り出してみると共通点はあれど、全く毛色が異なっていたように思います。

 

私は断然はじめくんが好きです! 敬語だし! 見た目オラオラ系だし! しれっと需要にお応えするワードをぶっこんでくるところや、甲斐性が全面に見えるところ、彼女のためにガチで怒ってくれるところにとってもときめきました~!

 

あと斬新で面白かったのは、ヒロインのキャラ付け。単純に善人っていうだけなら乙女ゲーヒロインあるあるだと思うのですが、変わった味付けが一点。

それはヒロイン自身が「ヤンデレ好き」なところです。ヤンデレweb小説を読んでは潤う姿に、同意と共感性羞恥を抱きつつ楽しみました。人の悪意に鈍感すぎる共感をしづらいヒロインに、上手いこと親近感を抱けるような設定が付与されていたと思います。

 

エンドは二つ、でいいのかな? よくよく考えればうすら寒い結末でありつつも、ハッピー()エンド。実にヤンデレらしい良作でした。

 

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フリーゲーム「腐った世界の庭、美しきルネス」感想

 

 

 

さよならフリル

 

日常寄りの現代もの恋愛未満ノベル。

なんとなく出会った二人だからこそ、ふっと関係も終わってしまうんじゃないか? そういう、ぼんやりとした不安を書いてあるお話でした。どちらかと言えば淡々としていて静かな印象の文体ですが、メイン二人の掛け合いは自然体で、不思議とあったかい雰囲気を感じます。

readmeのキャッチコピーみたいなのも、すとんと印象に残って、好きです。

 

タイトルのフリルの理由が分かった時はなんだかにこにこしてしまったり。システム画面のゆるさに気付いてくすくす笑ってしまったり。「卒業したらに~」とか「呼ばなかっただな」とか、ふいに方言が出てくるところも、なんだかきゅんときました。

ふと素敵なものを見つけて、こっそり秘密にしておきたいような読了感です。

下記『必要不可欠の君』と同じ作者様の作品。

 

 

 

必要不可欠の君

 

現代もの、一本道数分、あっさり味。

無駄なことをしない人がお相手ということで、どことなーく好みの変人(と呼ばれがちなしごく真面目な人)に会えるかなと思いDL。

それこそ本人が無駄をそぎ落とすタイプの人なので、淡々とした味わいではあります。プレイし終わって、一体何だったんだ、と思ったのが正直な感想です。

ですが、この印象がまるっと稲生君の人柄そのものを表しているんだろうなあとも思うんですよ。無駄なことをしない彼が、唯一起こしてしまう変なこと、みたいな。

クリア後に出てくる「資料」を見るところまでが本作だと思います。資料の、クールな顔をしながら脳内で「わーい」を想像してるところが微笑ましくて、和みました。

上記『さよならフリル』と同じ作者様の作品。

 

 

 

おべんとゴーゴー

 

1000文字でゲームを作ろう、な企画「千文字喫茶」参加作ということで、かなり短めの一本道ノベル。

お弁当作ったから持ってってね、から始まるほのぼの男女姉弟の朝のお話です。冗談交じりの掛け合いが微笑ましいし、仲の良さが随所に感じられてほのぼのと……ほのぼのでした。はにかみ顔の弟君の立ち絵もかわいい。癒されます。

初めプレイ時間を見ていなかったので、終わりにはおっと驚かされましたが、この短さの中にしっかり裏を仕込んでいく手腕はさすがの一言でした。

 

 

 

 

アリバイ ‐ゆうべ誰とどこにいたか千文字で答えよ

 

こちらも上記同様、1000文字がキーワードのゲーム制作企画「千文字喫茶」参加作。全ルート確認まで10分もかからない、お手軽な分ゲです。

内容もまさにタイトル通り、千文字で浮気の理由を回答するノベルゲーム。回答はあくまで選択肢で決めるので、エンド全てを見るには総当たりになります。個人的には、コンプ後の何か、あるいは出オチ気味の掴みから最後に一手押すギミックがあればより良かったかなー、なんて。

 

といっても、上手いと思わされる点も多くあります。具体的には左上へさりげなく表示されている残り文字数や、某エンドの「そっち!?」というツッコミどころ、粘性が高くてリアルさを感じられる例の飛沫など。数分の中に楽しい発想が詰まった作品でした。

ひたすら言い訳を重ねていくクズなイケメンが見たいあなたに。

 

 

 

 

おやすみ、ねんね

 

10分~30分くらいのお手軽短編。弟×姉、一本道。

ゆるーく始まる会話劇が次第に色を変えていく、この質感の出し方が大変上手な作品でした。序盤のぽんぽん別の話題に飛んでいくテンポの良さ、終盤の言葉にならない気持ちがぼとぼと零れ落ちていく感じ、どちらの雰囲気も好きです。

一言でいうなら「甘えさせてもらえるゲー」。甘やかしてくれるゲーじゃなくて、甘えさせてくれるっていうのが私的なポイントです。ほどよくいつも通りの態度で、言葉上は突き放してくれるところがすごく優しいんですよね……。惨めさが悔しい、素直に相手が悪いと言ってやれない、不器用な姉のことをそっと癒してくれます。

造り物じゃなくて、生々しく自然で優しい独白が素敵でした。

クリア後の印象はカウンセリング。苦しくて眠れない方に。

 

 

 

 

おにいちゃんホワイトデー

 

前作『いもうとバレンタイン』の番外編。前作の完全ネタバレとなるため、続編というべきかもしれません。

元々ヤンデレ大暴走ないもうとちゃんですが、今作は兄視点というのもあってか、一途でいじらしくてかわいい面のほうがより際立っていたように思います。すがりついて涙目になってくれるところなんてもう、かわいいやらいじらしいやら!

 

また、注意書きに性的表現とありますが、この出し方がものすごく清楚でお上品です。どことなく怪しい雰囲気が漂いつつも、そうとは言い切れないこの絶妙さ。その予感が「本番」の一言で明確になってくれるところも、すごくこう、不気味と爽快のスイッチが同時押しされた感じでした。“答え”をもらえた感じがすごい気持ち良かったです……。

そんなわけで、短編でも読後の満足感はがっつりの一作でした!

 

 

 

 

アネモネとメルヘン

 

数分~10分程度の短編。女性向けとあるので一応この枠で紹介しますが、想い合うというよりは情念や執着のほうが強い気もします。ゾンビメイドと攻略対象二人。

公式の紹介文は「みんな身勝手」。まさにそこが好きな作品でした。

死人還りというと、感動ネタ等に流れる気がしますが、本作は容赦なくバッドあるいはメリバへと舵が取られます。

死んでもなお蘇ってくるメイドの執着はひどく異様。その彼女が視点主というのもまた興味深い構成です。理解できそうでできない、静かに狂った方へと当然の足取りで歩いていくような作品でした。

とても穏やかな雰囲気で、落ち着かない気持ちにさせられる良作です。

 

 

 

 

とまあ、こんな感じで!

どれも数分でプレイできるので、お手軽に満足感を味わいたい方は是非。

フリーゲーム「ファインダー越しの空」感想

「キミの見たままの世界をそのまま切り取れる」
あなたのすてきな見方だって現像したい前置き。

 

 


えー、今回はぷらねたりうむさんところのフリーゲーム「ファインダー越しの空」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。


選択肢分岐ありの男女恋愛ノベルゲー。年齢差あり、現代学生、全体的に前向きで綺麗な雰囲気です。
記事を書いている201906現在は公開停止中なのでご了承を。


というわけで、良かった点など。

 

 


忘れられないあの空

 

あとがきにもありましたが、何よりもまず主張しておきたいのが背景画像の美しさ! タイトル画面を見た時点でハッとさせられました。
この背景画像のおかげで、ストーリー上の、忘れられない空の写真というキーワードにすごく説得力があるんですよね。

 

他にも、放課後の旧校舎の、あの郷愁を掻き立てられるような独特の雰囲気とか。夕日だけじゃなくて、こう、画面上のデザイン全部がすごくマッチしてていいんですよ……。
立ち絵が少女漫画っぽい、線の柔らかそうな絵だからなおさら感じるのかも。


潮谷と河辺君で主線の色が違うのも上手いですよね。絵だけ見るとヒロインのほうが繊細で、彼女の方がどこかへ行ってしまいそうな雰囲気なんだなあとしみじみしました。世界観にとても合う絵柄です。

 

 

 

メッセージウィンドウの配置

 

メッセージウィンドウが細かく変化していくところも素敵。吹き出しとモノローグ的な四角いウィンドウを使い分けているうえに、その位置にまで気が配られているんですよ。どこで切り取っても絵になるし、自然とプレイヤー側の目線も物語の奥へと通されているような感じがしました。

 

 

 

苦手意識が好意に変わっていく過程

 

心理描写が丁寧なところも本作の魅力です。
どうにも苦手な先生、という印象がゆっくりと変わっていく様が順を追って描かれていて、すんなりと読み進めることができました。お話自体は一貫して潮谷視点ですが、先生側も口調が軽く砕けてて、お互いの歩み寄りがしっかりと感じられます。


きっかけはこう、潮谷の生活からするとかなり劇的なイベントなんですが、先生にとっては日常の一つでもあるんですよね。この自然さもすごく好きで……なんだろうな、人の見え方って、驚天動地までせずとも、「いつもと少し違うことが起こった」くらいでもきっかけになると思うんですよ。で、さらにそこで一転するんじゃないんですよね。ここが上手い。
じわじわと好意へ色を変えていく過程がとても丁寧で素敵でした。

 

 


とまあ、こんな感じで。
本当に夕暮れのような繊細な雰囲気の恋愛物語でした。

 

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「雨雲が僕らを覆い、雨音が僕らを閉ざす」

早く、逃げ出さなくては沈んでしまう前置き。

 

 

えー、今回はハラワリさんところのフリーゲーム雨を破って」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

選択肢一つでエンド分岐あり、BL、少年同士。恋愛感情というよりは、周囲のどろりとした感情から抜け出す、互いを拠り所とするような印象が強いです。

 

……結論から言うと私この作品大好きでして!!!

公式の注意書きは一見厳ついんですが、プレイ後はこの厳重さも納得の出来だと感じました。ですので、あくまでごくごく厳選した合いそうな方に対してのみ全力で勧めたい気持ちがあります。

 

 

というわけで、良かった点など。

 

 

閉塞的な田舎が舞台

 

じっとりとしたとある田舎が舞台です。権力に肩をいからせる大人達の寄合があり、狭いからこそ澱む陰口があり、内の結束が強く排他的。この描き方がかなり印象的でしたね……。誰かの視線や湿度がひしひしと伝わってくるような書き心地で、とても筆力を感じました。

イズルサイドはこうした大勢の息苦しさを感じる一方で、さとサイドは親という個室に押し込められるような息苦しさを感じます。こちらもこちらで、優しく物腰柔らかに否を許さない雰囲気、圧のかけ方が非常に上手かったです。もう本当に……身に詰まされる感じが……。

過剰に書くんじゃなくて、あくまで等身大の無神経なところが好きなんです。ちょっとした小言やからかいが降り積もるあの厭さ。ミートボールといったささやかだからこそ感じられるリアルさ。作品全体に、じわじわと呼吸がしにくくなるような雰囲気が忍び寄っていて、とても印象深かったです。

 

 

 

鬱であり闇であり解放である話

 

陰鬱なBLと言いたいんですが、私が仮にこう言われてぱっと連想するとしたら、愛憎カプとかいじめとかなんですよね。そうじゃないんだよな……。ほんとうに言葉で言えないくらい絶妙な機微と深い澱を感じる作品です。

鬱ゲーかと言われればそうだと言いたくなる気持ちがあるんですが、それ以上に、読後の開放感がすさまじくて! 「助かった」より「やりきった」、そんな印象が強いです。盛り上がりが最高なんですよね……。苛烈で、なりふり構えなくて、もう、もう、そうしてしまっていたんだっていう行き詰った感じが最高でした。

タイトル回収の仕方があまりにも、あまりにもピタリとハマり、唸らされました。エンドロール見た後も起動画面をじっと見つめて余韻に浸ってしまうなど……。

ふわふわしたことしか書けなくて恐縮ですが、とにかく、ズガンと大穴を開けられるような衝撃がありました。心を、震わせる。

 

 

 

対照的だけど凸凹ではないCP

 

メインキャラ二人はどちらも対照的です。

華奢で色白、親の言うことをよく聞き、物腰柔らかに喋る少年、さと。

健康的な見た目で、家族と不仲、荒っぽい言葉遣いもする少年、イズル。

 

で、こう来ると対比カプというか、ケンカップル系の凸凹コンビなのかなーと思いがちなんですが……そうじゃないところがポイントなんですよねえ!

羨ましいとか憧れるとかそういうワードがほとんど出てこないんですよ。無理に比較させるんじゃなくて、さともイズルもただ互いの環境や生き方が違ってきただけなんだなあという、それだけのフラットさ。お互い悩みも行き詰まりもあるんだけど、じゃあ取り替えようって話にはならないところ。家庭は人の数だけある感じが好きです。

 

最後の最後で二人がくっつく後押しになる台詞が、ああいう言葉だったのも好きです。本当に生きてる声が聞こえた気がしたんですよ。気取った言葉じゃなくて、心の底からの生々しい声って感じが好きでした。

 

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

 

いつも以上に観念的な感想ばかり書いてしまいましたが、とにかく、心を揺さぶられるお話でした。先が気になって一気に読んでしまった……!

 

閉塞感、等身大の友達、優しさの形をした虐待、じっとりとした雨の雰囲気などがお好きな方にオススメしたい作品です。

 

 

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フリーゲーム「魔導箱のグリモワール」感想

「緻密な解法であれ手慰みの開放であれ、通ずる回答はただ一つ」

開けてしまったね、な前置き。

 

 

えー、今回は鳥小屋ポータRuさんところのフリーゲーム魔導箱のグリモワール」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

1プレイ数分、実績全解除は私の場合30分くらいの短編パズルゲー。

スマホ操作推奨ですが、私はDLしてプレイするのが好きなのでマウス操作でやりました。両方試してみた感じ、圧倒的にプレイしやすいのはスマホですが、PCでも問題なく全クリまでたどり着けるのでご安心ください。

 

というわけで、良かった点など。

 

 

さくっと1分、長くて5分のお手軽ゲー

 

1プレイ数分のお手軽さがまずポイント!

シンプルモードでは1プレイ1分制限。チャレンジモードでは時間無制限ですが、私の初見プレイ時を考えると長くて5分くらいかなと思います。この、気づいたら終わっちゃう時間間隔がすごく良いんですよ。あともうちょっと遊びたい!という気持ちが膨らんで、気づけば数十分過ぎちゃうなど。

パズルゲーなので集中力的な意味でも、ちょうどよい時間感覚でした。

 

 

 

手のひらでパズルに触れているようなプレイ感

 

本作はマッチ3という、縦横3つ同じ駒を並べると消えるタイプのパズルゲーです。

その中でも大きく、そして大好きな要素として挙げたいのが、プレイ感! 列をずるずると縦横にずらして盤面を消していくんですが、この感覚がまさに、リアルでパズルを手に持っているような感触なんです。

列をするする滑らす時のカシャッっていうSEや、止めた時の抵抗感、カチッとハマり込む感じがホントまさにそれなんですよねえ。リアルでも、解けないなりになんとなくカチャカチャしてるだけでパズルを楽しめる自分としては、最高にしっくりくるプレイ感でした。

 

あと私、この手のパズルゲームは1マス分だけ入れ替えるタイプのものばかりプレイしてきたので、列を長々ずるずるっと移動できるパズルはかなり新鮮でした。

こう……私はズーキーパーとかかしわもちに慣れていたのでヨッシーのクッキーは初めてみたいな……通じるかな……。いやでもヨッシーとも違って、本当に体感ルービックキューブなんですよ。列を移動させた後、勝手に戻っていかずに移動させたままにできる、っていうのが他にないルールで面白かったです。

 

 

 

運要素強めで大連鎖

 

画面構成が斜めなのがまずもう大胆ですよね!

この傾いでる感じも、パズルを手に持ってる時のバランスが感じられて好きなんです。ふふふ。

パズルを消した後、落ちる方向も独特。通常なら盤面が上から下へと詰まっていくものかと思うのですが、画面が斜めになっている関係で、落ちていく方向に右下か左下というランダム性が生まれます。連鎖の条件、というか次に装てんされるパズルの条件?も緩めで、意図せず大連鎖が起こることもしばしば。

カチャカチャ回してて気づいたらカラッとほどけていく感じも、どことなく知恵の輪らしさがあって好きです。

 

 

 

時にはのんびりお喋り

 

ストーリーはおまけ程度、でも断片で想像を膨らませれる方には嬉しいボリュームでした。

シンプルなシステムをお話として際立たせてくれるのが、画面上でずっとそばにいてくれる可愛い魔導士、レヤックの存在です。パズルを解く間も頻繁にプレイヤーへ話しかけてくれるのが嬉しいんですよねえ。吹き出しの位置も良い具合にちらっと視界の端に入るポジションなので、プレイしながらでも読みやすかったです。

会話パターンもかなり豊富。ちょっとした日常話から箱にまつわる話、彼女の人間関係に至るまで、色々なお話を聞くことができます。そこから広い世界へ想いを馳せるもよし、彼女の時々おとぼけながら常に探究と共に生きる姿勢に感服するもよし。

プレイヤーの属性が透明なのも良いんですよー。彼女の友人でも恋人でも弟子でも通りすがりの見物人でも、どうとでも取れるおしゃべりなところが好きです。

 

 

 

実績解除にもさりげないパズル要素

 

実績解除の為にもすこーし頭を捻る必要があります。ここがミソ、隅から隅までパズルゲーな作りに脱帽しました!

図鑑ページのヒントを元に、できることを色々試してみるのも本作の醍醐味の一つです。

こういう宝探しみたいなの大好きなんですよ! 行けるところ全部行って、遊び尽くして味わい尽くしてる感じ。とってもわくわくしました! 実績自体は易しめなのも嬉しかったです。

 

 

 

 

他にも、放置してると出てくるデモムービーはアーケードゲーみたいで楽しかったですし、ふよふよ浮くレヤックの動きは見飽きませんし、消す魔法素によって演出が違うのもさりげなくお洒落ですし、BGMチョイスもほどよく落ち着く良曲ですし……。

 

お手軽さの中に魅力がぎゅぎゅっと詰まった、宝石箱みたいな作品でした!

 

 

 

 

ちなみに私のプレイ記録はこんな感じ↓

 

 

フリーゲーム「十二月のパスカ」感想

「産声もなく断末魔もなく、ただその手の感触だけが」

君の誕生を示していた前置き。

 

 

えー、今回はFISH CAKE(フィッシュケーキ)さんところのフリーゲーム十二月のパスカ」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

全クリまで1時間強程の一本道ノベルゲーム。最後まで丁寧に鬱展開。年頃の男女が愛を求める話ではあるのですが、“恋愛”とは呼びがたい気持ちもある、独特の作品です。

 

というわけで、良かった点など。

 

 

サイコパス・ノベル

 

理解されがたい感覚を持った、男女二人がメインキャラクターです。

仮に「環境のせいで人はおかしくなるんだ」と言ってしまうのなら、この二人はまさにぴったりと当てはまります。これを言うのは本当に悔しいんだけど、二人が「サイコパス」な理由の一旦は環境、もっといえば家族と起こった過去にあって、そこは切って切り離せないんだと思います。

でも、じゃあ、倫理観ぶっ壊れたこの二人と私は、ただ環境の違いというものだけで隔てられているのかといえば、答えはノーだと言いたいんです。対岸の火事じゃないんです。感情移入してしまうんです。

サイコパス・ノベル。彼らの感覚を受け入れられないプレイヤーさんも絶対出てくるはず。尖った作品です。けれども、児童虐待に無理解をぶちまけて悲痛な設定を面白おかしく「サイコパス」と揶揄するようなお話ではありません。真っ向から彼らなりの愛を模索するお話であったと、強く感じます。

 

余談ですが、登場人物皆の名前が伏されていて、匿名性が高いところも独特で好きです。画面向こうの他人のニュースに似た、どこか遠くの事件のように錯覚してしまうところが実に巧み。

都市伝説めいた幕の閉じ方も併せて、ひと繋ぎになっていて好きです。

 

 

 

愛するということ

 

ボーイミーツガール、というとそれっぽく聞こえますが、青春や恋愛というよりは疑似家族と言うほうが個人的にはしっくりきます。わざとらしいほどに強要される家族のロールプレイ、これが和やかでもあり不気味でもあるんですよね……。

この、薄皮一枚隔てた冷たさがとても肌身に合いました。

本作は確かに鬱展開だと思うんですが、かといって悪意に塗れているわけではなくて、むしろ色んな形の愛に満ち溢れています。家族愛から始まり、施設の人達の慈愛、見知らぬ女の自己愛、二人の少年少女が掴んだ愛、などなど。

彼らの結論は、もしかすると冒頭から指し示されていれば、陳腐だと思えてしまったのかもしれません。でも、シナリオを通じて主人公の心の動きを追うように、説得力もしっかりと肉付けされていくので、納得感は強かったです。

 

 

 

孵りそこなった子どもたち

 

このゲームは卵を連想させるモチーフがいくつもあります。セーブロードなどのアイコン、卵料理、章のタイトルなど。私はDL版でプレイしたんですが、起動ファイル名を見て、おや、と思いまして……。こういったところから作品が既に始まっているのって素敵ですよね。

さて、ここまで徹底して卵をちりばめている一方、作中において明確なキーワードとして登場人物が卵に連なるメタファーを口にすることはありません。しかしながら、プレイヤーはその意味をどことなく悟ることができます。

たぶん、解釈が分かれるところだとも思うのですが……この辺りはどうしてもネタバレになってしまうので、追記にて。

 

とにかく自分が述べたいのは、物語における主張について。

物語のテーマとかって、渦中にいるキャラクタ―達が口にした瞬間、それはキャラの言葉ではなく作者の言葉になってしまうような気がしているのですが。

そこを綺麗に切り離して、「共感されがたいサイコパス」と「理解しやすい作品のテーマ」を共存させているところが、素晴らしかったです。

 

 

 

きっちり締めるシステム

 

具体的にシステム周りにも触れておきます。

本作はティラノ製ということで、初めは偏見持ってシステム面は全く期待せずプレイしてたんですが……。蓋を開けてみればこれが見事! オートあり、文章ログあり、文章スピード調整もしっかりできて、セーブロードもバグらない!

いやこれ当たり前だと思ってるプレイヤーさんいらっしゃるかもですけど、ティラノゲーだとかなり貴重なんですよ……。ビルダーじゃなくてスクリプトだからかもしれないけども……。

システム周りもきっちり整って、安心して物語に没入できる作りです。

クリア後はチャプターごとに回想できるのも嬉しい!

 

 

とまあ、こんな感じで。

鬱展開、かつ、色々と深く考え込みたくなるノベルゲをお求めの方に強くオススメの作品です。

 

追記ではネタバレ感想や、軽い考察・解釈など。

 

 

 

続きを読む

フリーゲーム「Rene」感想

「血の跡を追ってここまで来た」

でもきっと彼だけには違う何かが見えていた前置き。

 

 

えー、今回は猪垣ハインツ(さよならメメント)さんところのフリーゲームRene」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

 

プレイ時間数分程度、クリックで読み進める探索ノベルゲ。謎解きなし、一本道、雰囲気ゲー。

関連作として『Goodbye Carol』(以下carol)というノベルゲもあります。公開順としては『Rene』のほうが後なんですが、個人的にはこの『Rene』のほうを先にプレイする方が理解が深まる気がしています。

 

というわけで、良かった点など。

 

 

もの悲しさを含むセリフ回し

 

文章量自体はかなり控えめ。しかし的確です。腕を調べた時のあの一文でガッと心を掴まれました。「どうして?」から直後に「ああ……」となる流れが好きです。

台詞もどこか詩的で、ちょっとした一言に哀愁が漂います。殺伐とした世界観に反してゆったりとした雰囲気が感じられるのも、皆に終わりが見えているからかもしれません。

 

とはいえ、舞台設定などがふわっと流されているのも確か。明確なストーリーラインに感情移入していきたいタイプのプレイヤーさんからすると、物足りなさはあるかも。

単品でもプレイできるとありますが、むしろここから続編のcarolをプレイして彼らの結末を見届けるのをオススメしたい気持ちがあります。

 

 

 

血と蝶が導く先

やっぱり好きなのはマップの描き方。

意味深なものがぽつぽつ落ちてて、その理由は自分で探っていくみたいな、静かな雰囲気が好きなんですよねえ。探索ゲーの醍醐味。

一見どこをクリックできるか悩みがちですが、マウスカーソルの変化を気にすると一目瞭然です。やろうと思えば何一つ調べずエンドへ直行できる作りも、どことなく容赦のなさというか、未練を抱くまいみたいな感情を受信できて好き。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

 

いつもだとこのくらいの短さのフリゲは複数作まとめた特集記事で一気に感想を書くんですが、本作は関連作と含めた考察解釈などを追記に長々と書いているため単記事として……。

 

と考えていたところなんと、これを書いて寝かせている間に公式から設定資料集が公開されました! やったーー!

sayomeme.booth.pm

キャラのみでなく背景や没絵などもあり、文章はもちろんのこと、ビジュアルブックとしても楽しめます。是非に!

 

 

一応、こちらが公開される前の考察もせっかく書いたので追記に残すだけ残しておきますね。

 

同作者様の他フリーゲーム感想記事↓

shiki3.hatenablog.com

 

 

 

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