「尻ぬぐいなら自分でできると豪語するよりは数センチまし」
すがって頼れるお得な性格も時には大事な前置き。
えー、今回はとらねこさんの小屋さんところのフリーゲーム「エインワーズ家の従僕たち」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。
コメディなノリで一本道の短編RPG。
登場するのは少年達、公式曰く「女の子いらないから、燕尾服の少年たちだけ見ていたい!という方にオススメ」とのこと。女の子も欲しい派ですが従僕(執事)と魔法使いという設定に惹かれるものを感じたのでDLしました。
というわけで良かった点など。
良点難点併せ持つキャラクター達
メインで操作できるキャラクターは4人。彼らの性格の噛み合い方、相性の良さがものすごく光る作品でした! キャラ萌えの方はしっくりくるRPGだと思います。
四人ともそれぞれ大小の違いは在れど、見せ場と魅力とおちゃめな欠点があって、完璧超人でないからこその掛け合いがすっごく楽しかったです。
特に面白みを感じたのはディーですね。あの手のプライド高いキャラって人心掌握のスキルも高いイメージがあったので、意外と欠点がボロボロ出てきて楽しかったです。三男の劣等感の裏返し~とかがあるのかもですね。
あと、レオンもヘイトを溜めやすい性格してますが、あそこまで明るく開き直ってると逆に気持ちが良いなと思いました。無駄な自信がありすぎる! きちんと報復されるシーンがあったので、なおさらバランスが取れて良く感じたのかも。
なお好きなキャラはロイです。買い出しイベントで大好きになりました。
ウィルは特殊差分と一歩引いた(引きずり出される)スタンスが好き。
全体的にセリフのテンポもよく、時に呆れ時に突き放しつつなんだかんだと連帯して仲良くやっているところが微笑ましかったです。
バトル嫌いでも好きでも楽しめる難易度
まず本作の特徴として、経験値の概念がありません。ストーリーを進めるか、探索で発見できるアイテムを使用してレベルが上がります。
雑魚敵と戦うのが嫌いな方はさっさと逃げてしまってもOKってわけですね。
私はシンボルエンカウント全部屠って進む派なのですが、きちんと戦えばそのぶんお金を溜めて武器を強化して新しいスキルが使えるようになるので、戦う派にも見返りがあるシステムでうれしかったです。
戦闘難易度自体はけっこう優しめ。
途中からレベル上げ&消費アイテム使用禁止、の縛りを進めたら手ごわく感じるくらいでした。
SP消費がピーキーで、まさにチュートリアルの説明通り、考えなしに魔法ばかり使っていたら詰んでしまうところが楽しかったですねー。回復スキルが無いのも良い塩梅。
制限をしっかりかけたうえでなお楽しめるバトルを作るのは技量を感じます。
バトルを彩るボイスとグラフィック
バトル中に必殺技! カットイン! 決め台詞!
はいもうこの時点で大好きです。ありがとう。
ボイスのオンオフは早期にとらねこさんが設定させてくれます。また、メニュー画面のグラフィックを変えられたり、街までさくっとワープシステムがあったりと、あちこち親切。起動画面がランダムで切り替わるのもわくわくして好きです。
あと、マップ作りも丁寧で好きでした。
私、ダンジョンの分かれ道が長すぎると迷子になってしまう性質でして。その点本作は行き止まりルートならすぐにマップが途切れて、一マップ戻ればすぐに正規ルートへ行けるような作り。すごく助かりました。短編というのもあってダンジョンの広さとしてもグッド。
それに、誰の魔法を使うかというギミックや、リトゥの欠片置き場などがあることで、単調にならないようにしてあるところも創意工夫が感じられて好印象です。
お約束を叶えてくれるイベント
サブイベントやミニ会話の多さ! ここも良点の一つです。
堅物キャラの意外な可愛い一面、飄々としているキャラの意外な生い立ち、知的キャラの思わぬ弱点、などなど。誰のこと言ってるか丸わかりですね。
お約束とわかっていても萌えるんですよー。ディーの特殊差分とか、ウィルの特殊差分とか。特にウィルは油断していたところで来たので思わぬご褒美にわっしょいしてしまいました。
メインストーリー中でも、大ピンチのシーンや、従僕の誇りを語るシーンなど、印象的なところが多かったです。ドラマチックな展開を作る、王道路線に強みを持ってる作者様だなーと思います。Gファンタジー辺りで連載されてそう。
余談、サブイベントのチュートリアルが起こる前に街の探索を済ませてしまっていたのと、進行度に合わせて増えるのに気づかなかったので、リトゥの欠片の数を見るにそこそこ会話イベントを見逃してしまったようです。しょんぼり。
これからプレイされる方は、こまめに街を回ってみてくださいね!
合わなかった点
一方で、合わなかった点についても少し。
話の転がし方がトラブルに偏っていること
前述でシーンの魅せ方を良点として挙げた一方で、この方のギャグの感覚は合わないなーと実感しました。なんだろう、ストーリーのためなら他の誰かを貶めても構わないように感じてもやっとするんですよね。
例えば酒場で働くイベントは、こっちが善意で助けたのに弁償を要求させられる展開にイラっと来ましたし(ディーがキレて氷漬けにしなかったのが意外)。メインストーリーのオチも、せっかく頑張ったのに全然報われない感じがして少しがっかり。
でも、あのはちゃめちゃドタバタの雰囲気自体は好きなんです!
なのでどこかで誰かの好感度を下げるぶん、別のどこかで報われるようなイベントが起こる等々、後のフォローにもう少し気を遣ってあったら良かったのになーと思いました。
どうせギャグなんだから、で鈍感になるのが一番なんだろうとわかっちゃいるんですけどねぇ。
BLではないけれど……
確かにボーイズ同士でラブをしているわけではありません。が、あとがきで女装ネタや特定キャラへのフラグネタが熱く語られていたり、触手に襲われる展開皆好きだろみたいなノリが起こったりするので、看板に偽り有りな印象です。
少年ばかりと言いつつ女の子もサブメインで出てくるところもちょっと矛盾しているような。うーん、注意書きが逆に誤解を招くなあと感じます。
私もBL自体は嗜むんですが、男受け描写は無いものだと思って進めていたので頭がバグりました。
とまあ、こんな感じで。
やや苦言も書いてしまいましたが、総括としてはバトルが楽しくキャラが生き生きしている、明るく元気なコメディRPGです。
燕尾服の少年たちが魔法を駆使して駆けまわる、これだけでも目の付け所がマーベラスな一品なので、気になった方は是非プレイしてみてください。
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