「床の埃にドラマと根拠を見出していく」
名探偵は手抜き掃除も見逃さない前置き。
えー、今回はこっそり森(Tokusaka)さんところのフリーゲーム「ゆうしゃロジック」「ゆうしゃロジック2」「ゆうしゃロジック3」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。
どれも勇者魔王ものの世界観を舞台にした推理ゲー。うろうろ探索するシーンもあるツクール製。難易度はどれも簡単です。
3に1・2と関連しているキャラクターが登場するので、せっかくなら通しでプレイするのがオススメ。
というわけでさっそく一覧から。
『ゆうしゃロジック』
[概要]
難易度簡単、ゲームオーバーは狙わないとみられないくらい。王道の流れをきっちりこなしていくような印象。シリアス寄り。
[良かった点]
冒頭失礼な書き方をしますが、セリフに「><」「;」などの懐かしい記号文字が入っていたので初めは正直ちょっと斜に構えて始めたんですよ。
ですが、いやこれが、ストーリーがしっかりしていまして。単純に犯人当てするだけじゃなくて情念が入り混じっているところとか、推理ドラマあるあると言いつつ楽しく読み進めてしまいました。
本作だけじゃなくて全般的に私、犯人の自供シーンとか好きなんですよね。取っつきやすくもドラマがあって、推理ものの王道的な良さが味わえました。
そしてノベル形式ではなく、戦闘画面を推理シーンに使用するという発想が素晴らしい。この発想はもう手放しで拍手喝采です。いいですよねえこういうRPGじゃなくてもRPGをうまく利用してるシステム。
また、選択肢をうっかり連打しないようにキー配置を整えてあったり、詰まった人用にヒントが見れるようになっていたりと、工夫も見られます。
[惜しい点]
短めの作品なので、思考整理のシーンは不要だったかな、と感じました。ただ整理など要らぬとばかりに水晶へ直行してお話を進められる(らしい)点はグッド。
他、フラグを満たして進めるのに動けるところなど、一部冗長だったのが惜しく思われます。
例えば戦闘前セーブなどの良いところを生かして、全編でセーブを制限する代わりにシーンの切り替わり時にセーブを挟むなどのシステムにする等々。プレイヤー側としても操作のメリハリがあると良かったなー、なんて。
[一言]
さくっと暇つぶしにプレイするのがオススメな感じの作品。
『ゆうしゃロジック2』
[概要]
難易度は無印よりちょっと上、一応キャラクターは皆初出なので、ここからでも楽しめます。
[良かった点]
前作をプレイしたならどことなく見覚えのある展開────から、どんどん独自のお話につながっていく流れがとても楽しかったです!
相手の発言から矛盾を見つけ出す「欺影」や、ダミー選択肢、前作より減少したHPなど、難易度も上がってより推理している感が楽しめます。途中で手番が交代するところなんて特に演出としても熱くてかっこよかったですねぇ。
前作を受けて、正統に進化している印象でした。
顔グラの使用方法や、真犯人の動機もものすごく好き。人のドロドロした感情を見たくて推理ものやってる節がある自分です。
推理自体は、ラストなどヒントが映像で示される時はやや頭を捻ったものの、やはり難易度としては簡単寄り。一筋縄でいかないところも面白かったですし、推理ものとしても正統派です。
もしかすると頭が回り過ぎるタイプの方は、発展して次の問題になる証魔を先に出そうとして詰まるところもあるかも、くらい。
文章をきっちり読むタイプならたぶん簡単です。
ネタバレになりますが、途中でふと違和感を覚えた点が最後につながってものすごい納得感がありました。なーんで得意な事しなかったのか疑問だったんですよね。ふふふ。
魔法が絡むファンタジー世界でしっかり推理が成り立ってるのってすごいなーと思います。
[惜しい点]
前作のとおり、フラグを満たした後でも動ける冗長さはやはり感じます。あと、最後の最後で犯人を追い詰めるシーンは長丁場になるので、証拠を突きつけるシーンの前に分割して間にセーブを挟んでも良かったかも。
でも今作は熱い演出もあって終盤は特にテンポが良かったですし、この面でも進化を感じました。
[一言]
前作よりボリュームもシステムもグレードアップで満足な一作。
『ゆうしゃロジック3』
[概要]
2を受けてか今度は難易度が軟化した印象。ですが1・2に関係するキャラクターが登場する他、グラフィックが全てオリジナルになってより独自性が強くなっています。
[良かった点]
オリジナルグラフィック!
まずここが嬉しかったです!
もちろん、万人向けの綺麗なグラフィックである素材も素敵なんですが、本作はオリジナルだからこその使い方が良かったんですよね。
一番好きなのは2回目に証魔バトル(と勝手に呼んでいる)を行う彼の顔グラの変化です! はっと気づいて真顔になるあの演出がすごくかっこよすぎるんですよ~!
自作ということでスチルが多めなのも嬉しい。上手い下手ではなく自作のストーリーや表現にしっかり合うものを組み込んでいるところが好きです。間違っている選択肢をあえて選んでみたらそこにもスチルがあって笑ってしまいました。凝ってる!
また、これまであげてきた冗長さについて。
今作はデートという口実があったり、関係ないところを調べるとおじさんの思わぬ反応があったり、探索自体が伏線になっていたりして、改良の意思を感じました。
さらには意欲的な演出もあって、ああいうメタい演出大好きなのですっごくテンションが上がりました。最高!
過去作関係キャラが出てきたのも嬉しいところ。キャラクターを深めるシーンが多く、演出も強化されたおかげで、よりドラマシーンも光りましたねぇ。他、おっとりしつつもシレをいじりたおすハクツのシーンも微笑ましくて好きです。
[惜しい点]
語るとネタバレになるので、これからプレイ予定の方は要注意でお願いします。
一応数行明けますね。PC閲覧の方にはちょっと不親切かもですが……。
惜しいなあと思ったのが、過去作と比べて犯人がわかりやすい点です。
発想自体はとても良いと思うんですよ。今までシリーズ化しているからこそ斬新ですし、意外性がドラマに続くところも素晴らしい。
で、なのにどうして犯人が透けているのかなあと考えたところ、やっぱり視点主の変化が一番大きい要因なのかなあと。
私の経験では序盤でヒューンの心情描写がキーだったんですよ。一人称視点なのにわざわざ彼だけ内心が書かれるのってすごく違和感があって、そこからずるずると。あそこをあくまでハクツから見た彼として描写してあったら、かなり「信頼できない語り手」として効果が出ていたんじゃないかなー、と思います。素人考えですけどね。
最終的に彼が一番の見せ場を作ってくれるので、きちんと表現できるうちに彼の人となりを描写しておきたいというジレンマもあったのかも。
また、犯人が透けるということは裏を返せば伏線がしっかり巻かれているということにも繋がります。トリックに関係する描写が丁寧なのは何度も絶賛させて頂いているとおりですし、プレイヤー視点でわかっているからこそのドラマ性を楽しめると言えるかもしれません。
あと、ラストはふっと終わってしまった印象が強かったので、最後の一押しが欲しかったかな。
[一言]
正当に進化した、シリーズの集大成。
とまあ、こんな感じで。
ただでさえ丁寧で良い作りなうえに、シリーズを重ねるごとにどんどん改良されていくのがプレイしていて伝わってきて、とても好印象の持てる作品でした。