うそうさ〜第二号室〜

フリゲ・鬱展開・ヤンデレ 万歳!

フリーゲーム「シガイタチ」感想

「人なんてみんな皮を剥げば化け物じみているものよ」

得体の知れない神様よりずっと単純で強烈な前置き。

 

 

えー、今回はさんところのフリーゲームシガイタチ」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

分岐とエンドが莫大なほど豊富な選択式ノベルゲーム。探索パート有り。15禁。

明記はありませんが全体的に女性向けな作品かなーと感じます。愛されたり愛でられたりするシーンが多めなので……殺されたり殺したりもしますが。

 

なお、あまりに好きすぎるためネタバレせずに語れませんでした。

一応ぼかしているつもりではありますが、念のためご注意ください。

 

 

というわけで良かった点など。

 

 

何度も周回と分岐を繰り返すプレイ感

 

まず、本作は周回プレイが前提の構成がされています。おそらく一周だけでは、このゲームのシステムも世界の法則もわからないまま終わることでしょう。

一方で、いわゆるトゥルーエンド(エンドリストの色文字エンド)には、運と勘が良ければおそらく1周目でもたどり着けます。さらにコンプまでの難易度はかなり高い、というか、そもそもコンプは前提となっていないような感じ。フラグがランダムで決まるところもあり、私も217週くらいは粘ってみたのですが90%が限界でした。100%行った方いるのかしら。

 

でも、不満じゃないんですよ。そりゃ全部楽しんでありとあらゆる皆を堪能したい気持ちは強くありますが、それ以上にいつまでも終わらず噛み続けられるプレイ感が楽しくって。

だって、同じゲームを100週してまだ新しい展開や文章に出会えるって、すごくないですか!? 

エンドだけでもあんなに数がありますが、同じエンド名でも過程が違っているときは文が追加されたり変更されたりして、もう本当、どこまでも楽しめるんです。

真相は用意されているけれど語り過ぎず、辞め時もプレイヤーにゆだねられている感じでした。

 

 

 

無口ではなく喋れない主人公

 

豊富な分岐の第一手となる主人公について。

性別、一人称、名前の変更ができるうえ、一人称は自分で入力することもできます。無口主人公自体はよくあるテイストですが、本作は「喋れない」という設定でキッパリ決められているところが好きでした。

 

他キャラも「あなたが喋れなくてよかった」「おまえ喋れないもんなあ」「何か言ってみせなさいよ」等々、色々な形で喋れないことを強調してくれます。なんかこの直球さとか、無理に気遣わない感じが好きだったんですよね。あと単純にこういう設定のキャラが好き。

基本的に動かされるキャラクターで、こちらが選択肢を選ばない限り自発的に動くのはトコロの某エンドくらい。この、無味に消してある塩梅も好きでした。

 

 

 

魅力と歪みが詰まったキャラクター

 

そして何より一番好きなのはキャラクターの性格、歪み、世界線が変われば立場も変わるところです!

多少周回してもらえば伝わるかと思いますが、このゲームのメインキャラ4人って、キャストなんですよね。周回するたびに立場が変わり、好悪が変わり、1周前は好きだと言ってくれたその口で今度はバクリと食べに来る――――でも決して別人になるわけじゃなくてそのキャラらしい理由付けで動いてくれるんですよ。しっかりと根幹ができてるなあと思います。

 

特に好きなのはケシ関係の選択肢の反転具合ですね。

素直にあの子に従うような奴をケシちゃんが構ってくれるわけがなく、信者になってはいけない、手に入れたいのに手に入れられないものにならないといけない。この具合がほんっっっとケシの性格をよくよく表してて大好きです。

 

そう、いわゆるテンプレな善人がいないんですよこのゲーム。

逆に根っからの極悪も……いやある意味ケシはちょっとそうかもしれないけど……いないと思います。

各々、コンプレックスがあったり後悔があったり難点があったりするんだけど、それだけで暴走するのではなくて、ほどよく隙やブレが見える感じ。で、共感しかけたり好感を持ちかけたりしたところでふっと、急に理解できない怪物になってしまう感じ。字義通りの意味でも比喩的な意味でもね。

とにかく、人間が描いてあるなあと思います。

 

 

 

グロテスクで鬱で圧倒的なグラフィック

 

あと、好きなのがグラフィック関係。

特に異形が出てくるスチルは総じて大好きです。本当、えげつないくらい“バケモノ”してるんですよね。素晴らしいなあ。特にあの、四人全員が倒れ伏している、エンドの一枚絵が好きです。あれほど退廃を感じさせてくれる一枚絵に出会えたことが嬉しい。

ランダム変化するタイトル画面も、模しているキャラクターはわかるんですが、ぱっと見ではまるで別物の様に見えてなんだか味わい深かったです。アーティスティック? って言うのかなあ。色んな絵柄で、皆好き。

一方で、探索で見つかるアイテムのゆるゆるした絵柄も好きです。飴ちゃんとかお守りとか。

 

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

分岐も探索も鬼のように広々としていますが、だからこそ楽しい、世界観もキャラも私にぴったりの大好きな作品でした。

 

あと、せっかくなので昔書いた攻略も載せますね。一部未完ですが……。

shiki3.hatenablog.com

 

 

繰り返すけれど、コンプを目指すのではなく、楽しめるだけ楽しむのがオススメなプレイ方法かな、なんて。

 

追記ではもうちょっとキャラに突っ込んだ感想など。

 

同作者様の他フリーゲーム関係記事↓

フリーゲーム「千枚皮-Allerleirauh-」感想 

フリーゲーム「千枚皮-Allerleirauh-」攻略

 

 

 

 

ネタバレ込みキャラクター感想

 

 

 

 

 

オトギリ

 

さりげないボディタッチがあまりにずるすぎやしませんか。惚れます。

よくもわるくも軟派な人なんだろうなあ。

いざって時にオトギリから裏切られたり殺されたりすることが多くて好きでした。なんだろう、ああ君はこうするよね知ってた、みたいな。自分が可愛い一心で動く臆病な人って正直な感じがして、逆に安心するんですよね。

トコロが神様化するルートだとけっこう神経やられちゃうところも、一般人で好きだなあと思います。これがケシなら平然と……いやそもそもお世話をしないかな。

そんな一般人らしい感覚を持っていて逃避しがちなオトギリさんだからこそ、自力でシガイタチ様を討伐(というか自殺)するシーンはとても輝いてて深みがありました。

 

 

 

イチイ

 

他3人が一般人枠よりやや強い・強い・誰も敵わないというのもありますが、一見して彼女はかなりカモなネギなんですよね。被害者ポジションになると特にそれが際立つけれど、じゃあ加害者ポジになった時どうなるかっていう、ここの演出が素敵でした。阿鼻叫喚のあれ。

そりゃね、味方を無理やりつけるしかないよねっていう。ケシとトコロなら流されないだろうけどオトギリさんが流されちゃうところも好きなんだな。

彼女のルートに入るための書庫の選択肢がえらく回りくどくて面倒なところも、こういう、女としてこじらせてる感じがよく出てて素敵でした。選択肢で表現するキャラ性、大好きだなあ。

 

 

 

トコロ

 

牢屋イベントで惚れる人は絶対いるでしょ。私もです。

いや、オトギリさんじゃないけど私もまさか見つめる、本当に見つめるだけで終わるとは思わなかったんですよ。常識人枠と見せかけての狂信者だよ。ある意味誰よりも底がしれませんよね。すごく上手いキャラづくりされてるなあと思います。

そういうものすごく重くてピュアな感情を見せておいて、ドッロドロの嫉妬も魅せてくれますしね。万歳。ケシ関係のイベントや会話で時々さりげなく庇ってくれるところも好きでした。良い人だなあ。とよく言われてきたんだろうなあ。

私は奇形関係だと断然目玉が好きなので、目玉増殖系の異形化をしてくれた点もポイントが高かったです。彼の神様化イベントになかなか当たることができず苦労したのも良い思い出。

 

 

 

ケシ

 

はいラスボス。大本命。

大好きなんですよ。こういう魔性で無邪気で理解できそうで理解できなくて翻弄するだけして嵐のように去っていく少女が大好きなんですよ。お風呂場でのデートがものすごく、たまらなくて、あの文章全部がもう好きです。単なるワガママ姫ではなく魔性として産まれた感じというか、ケシの思考の一端に触れかけて、ケシを理解した瞬間に堕ちるんだろうなあという感じが。

なんでケシを選ばないの? という圧力も好きです。めちゃくちゃ愛してくれる時と、かなりの憎悪を向けてくれる時の落差が凄くて、もういつまでもときめき続けられるキャラでした。

ケシにあまりにも重すぎる感情を与えられて延々と好き放題に愛されて腐り落ちたら捨てられたい気持ちがあります。でも心酔したらこっちを見てくれないだろうしジレンマだな…………大好きだよ……。

 

 

 

 

というわけで!

 

何回プレイしても分岐が見れるし、プレイすればするほどキャラの知らない面が見れるし、でもそれは辿っていけば彼女たちの根幹に関わる自然な言動で、なんかもうとにかくすごく味わい深くて楽しかったです。