「愛は押し付けるものではなく与えるものとよく言うが」
けれども一方通行に変わりない気はする前置き。
えー、今回はトゥールモンド(うにか)さんところのフリーゲーム「恋と罪」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。
R18、エログロありのノベルゲー。こだわりがあってのことだろうなと思うので、次のように書くのはためらわれますが、私は広義のBLだと感じました。
というわけで、良かった点など。
告解を聞くようなテキスト
「カワイソウ」の定義を語るところから始まる本作。
全体的に、語り口がすごく特殊……? なんだか他に類を見ないテキストで、ものすごく惹かれるなと感じます。
全てはマジョラムの話でありながら、マジョラムの根本の歪みは中盤までずっと明確に明かされることはありません。主人公でありながら、この子はいったい何者なんだろう、という得体のしれない不気味さを感じながら読み進めました。こういう感情移入から遠い感じが新鮮だったのかなー、なんて。
プロローグとエピローグの繋がり方も大好きでした~!
家畜になるにはどうすれば?
そうして、マジョラムについてわかったところで押し寄せる、葛藤の波。根本的に、どうしようもないほど分かり合えない。この絶望の過程がすごく丁寧で素敵でした……。
舞台はほぼ常にアングラワールド。娼館、更生施設、奴隷と檻、などなど世界観だけでもグッとくる方は多いんじゃないかなと思います。
色々なところを巡ってはにこやかに接し、しかしどこであっても受け入れられない、あるいは手を取れないマジョラム。
攻撃性が思わぬところから飛び出てくるのも上手かったですね~……。にこにこ笑って、ざっくり刺して、善悪を頭で認識しても心では感じられない。
優しく包もうとしてくれる人もいるからこそ、下手に拒絶されるよりもずっと「孤独」を感じる作品でした。
汚らわしく美麗なスチル
マジョラム以外、立ち絵の顔はみんな極彩色に塗り潰されています。初めはモブをオシャレに表現していたのかなーと思っていたんですが、ラストでハッとさせられました。
これはもちろん本作を受けての想像の話ですが……あの顔塗りつぶしは、隔絶の表現なのかなー……。絶対分かり合えない証明、みたいな……。
なんかとりあえず感情だけで述べると、オシャレに雰囲気出てて好きです。
回想シーンのカットインが万華鏡みたいなのも、色彩センス溢れ出てましたね~……。
そして、着目したいのが決して綺麗なだけではないところ。血や身体の傷など、痛々しさもしっかりとあるがままに汚らしく映してくれます。
いや、言葉選びが褒められたものではないのは承知の上なんですが、これをどう言えばいいのか……! なんだろうな、残虐表現を綺麗にデコレーションしてファッション鬱っぽくするのではなく、きっちり酸化した血の赤黒さや膿の潰れを見せてくれるみたいな、そんな感じです。
マジョラムが中性的に描かれていて、きっちり肉や婀娜を感じさせるようなイラストであるぶん、エログロシーンでスチルの迫力を感じました。
とまあ、こんな感じで。
あの後どうなったのか……と考えたくなるエンディングでもありましたが、なんと続編があるとのこと。というわけで、この後は自作の記事にて!
虐げられる少年、倫理観の崩壊、アングラワールド、愛と孤独などにピンとくる方にオススメです。