うそうさ〜第二号室〜

フリゲ・鬱展開・ヤンデレ 万歳!

フリーゲーム「舐犢の玉座」ネタバレ感想編

さて、本記事は前回の続き!

フリーゲーム「舐犢の玉座」のネタバレ感想編となっております。

前回、未プレイの方向けの紹介記事はこちら↓

shiki3.hatenablog.com

 

 

 

 

念を押しての前置き

 

未プレイの方は絶対に興が冷めてしまうので、そんなもったいないことはせずどうか!プレイし終わってからご覧ください。

 

いやあ、だってさあ! 探ってほしい~……!

この絶対階級社会な舞台にいきなり立たされるところからこの作品の面白さがあると思うんですよ~……。手探りでこのスカロなる人を知って輪郭を掴んでいってほしいし、そのために白紙の状態からこの混沌をぶち込まれて欲しい~……!

 

というわけで、以下は既プレイの方のみ!お頼み申し上げます!

 

 

 

ちなみに私のエンド到達順は、

マジョラムA→ヒメノA→アルベルA→TRUE→マジョラムB→ヒメノB→アルベルB

でした。こうして見ると綺麗に折り返してるな……。

 

下記の感想は、

アルベル→ヒメノ→マジョラム→TRUE

で行きますね。あいうえお順で。

 

エンド一覧の表現の仕方もものすごくグロオシャレで好きなんだよな……。

ゲストブックではなくあえて「芳名帳」なところも、重々しくて好きです。連ねてしまったな……この物語に……ふふ……。

 

 

 

 

 

 

よし! ここからはもう遠慮なく、全力でネタバレをぶちかましていく記事になりますので、ご注意ください!

 

 

 

 

 

 

 

 

アルベル

 

アルベルA

 

純情恋愛ルートだ~~~……!

特に序盤の憎悪や見下すなという感情が一貫していただけに、それが恋へ移る流れはまるで反転スイッチを押されたかのようでした。この人に褒められたい、のなんていじらしいこと。スカロが牙を抜かれたエンドのような、しなやかな強さを手に入れたエンドのような、不思議な気持ちです。

ただ、彼の精神が安定はしたんだろうな、きっと……。惚れたら負けとはよく言うものですよね……。

 

 

私はアルベルの表面にころっと騙されていたクチだったので、お父様の語る事実に震えました。なんならクーデターにしても、なんか裏にいるもっとヤバイ人がアルベルを騙してるとか、そういうのかと思ってしまっていました……。ピュアなので、アルベル……。でもピュアの方向性が違う、と、今になればわかるんですが……。

 

このルートがスカロの苛立ちから始まったところが私はすごく好きで。

なんだろうな、すんなりとお話に入れたんですよね。あのアルベルの善性って、言ってしまえば、「鼻につく」ので。

だから、エンドでまたこの「鼻につくお綺麗さ」に戻ってきたところがすごく、上手い。

 

ロマンティックで、恋物語で、お綺麗で、せせら笑って汚したくなるような、ずいぶんと作り物染みてカンに障るような……でも美しさを信じたくなるような……味わい深いルートでした。

 

 

 

アルベルB

 

あのラスト、読みながら皆なんとなく察しはつくと思うんですよ。そして、プレイヤーが察しているならば対面しているスカロはなおのこと気づいているに決まっているんですよ。

「そう信じていようそうすれば生きていける」

もうね。ここに極まれりですよね。

 

気づく一番のポイントが「愛している」なの、たまらなく残酷で好きです。マジでもうアルベルくんさあ~~~~~~~~……ああ~~~~~~…………。

 

別にアルベルって冷たい人でもないしただただ「富む人」ってだけなんですよね。

奔放な性生活も、時間と余裕がなきゃできないことだと思ってますし。自分に余裕があるから相手にも手を伸ばす余裕があって、周りに目を向ける暇があるから理想論を掲げることができて、迷子だったり腕っぷしが弱かったりしてもそれをなんとかしてくれる人が周りにいるから直す必要がない。

 

理想的な優しい善人ですよ。間違っちゃいない。

でも、だからこそ、ああ~~~~~(羨望?嫉妬?うさん臭さ?薄っぺらさ?愛憎?)となってしまいます。

 

いやいや、好きなんですよアルベル。好きだし、キャラ造形が上手いし。でも、近くにはいられるとたぶんシンプルに怖い

なんだろうな、これはこの作品の感想というより私の感覚になるんですが……、

与えてくれるばかりのはずなのになんか搾取されてるような気になってしまいます。こういう方。

 

話を戻して!

プレイヤーがアルベルは「愛してる」なんて絶対に言わないとわかるようになるの、今までの物語の積み重ねがあってこそのものなので、やっぱりここまで読んできてよかったなあとしみじみしました。

 

信じるとは目を背けるということでもある。

ロマンティックな展開に反して、シビアでリアルなエンドでした。

 

 

 

 

ヒメノ

 

ヒメノA

 

まさか彼女とのエンドがあるとは思わず驚きました。ハプニングな初対面といい、ストーリーを転がすためのサブキャラかとばかり……。

それでも読んでいくともう、彼女しかいないと思えるくらいに対等さの説得力が感じられました。

 

「絆」っていうのは簡単だけど信じさせるのはすごく難しいじゃないですか。

それをね、確かにこの二人は壊れないなと思わせてくれるところが良い。

雑に表面だけなぞると「ケンカップル」っていう枠組みに入っちゃいそうなところを、恋人とも友人とも言わない、言わせないストーリーラインなのがすごく圧倒的でした。勘違いしようがないもんな、この語り口。

そのうえでほぼ強制的に二人の絆へ揺さぶりをかけるあの終盤の展開も好き……!力関係が変わっても対等さが変わらない、この揺ぎ無さが素晴らしかったです。

 

ヒメノ、失礼ながら実は初対面の時、けっこう苦手意識があったんですよ。

でも、エンドを迎えるころにはすっかり好きになってました。

 

印象が変わったきっかけとして一番のシーンがありまして。

>>>素っ裸で普通に会話して普通に寝るシーン!<<<

あれで急に好きになりました。なんでだろう……?甘えのなさ?初対面でのかしましい印象が強かったのが、さっぱりきっぱりしている印象に切り替わったからかもです。

 

 

 

ヒメノB

 

「助けて」を選んでこの展開か~~~~!!!

分岐の仕方までもがニクい演出で好きです。

もう、放棄して甘えちゃったらそれはスカロじゃないんだな。そうか。プライドだけで生きてる。対等であるヒメノに助けを求めた時点で、そりゃ、ああ~……。

納得がすさまじいエンドでした……。

いやそれはどのエンドにも言えるんですが……。

 

この後のマジョラムが気になりますね~。抜け出すくらいまではできるかもだけど車で数時間の道のりは無理だろうなあ。アルベルに言って連れてきてもらってスカロが忘れててさらに絶望する流れか……?

このルートでのマジョラムのその後が描かれないのはスカロ視点なので当然と言えば当然なんですが、「マジョラムを捨てた」実感もひとしおでしたね。

 

覚えていないと言いながら最後の最後に「ヒメノ」を出すの、本当にシナリオがさりげなく巧みで大好きです。

 

 

 

 

マジョラム

 

マジョラムA

 

初めて到達したエンド。

前作『恋と罪』からプレイしていたので、初見でこのエンドに辿り着けたのは感慨深かったですね~。

マジョラム自身の成長があるのも良いし、スカロが自分のエゴをきちんと自覚しているのも良い

 

「あれほど言ったんだからマジョラムは私を嫌っているに決まっている」みたいなモノローグがそのまま、スカロの根っこの臆病さを示していて、頭抱えました。

プレイヤー視点だと「そんなわけないじゃん……!」となるけど、マジョラムをある意味信じ切れないところが、スカロらしさでもあるんだろうな……。こういう描写の仕方ができるのは一人称視点の強み。

 

マジョラムがお父様に貸し出されてMに目覚め出した辺りから少しついていき損ねたかな……。ただ、『恋と罪』自体がそういう「人間視点:好きとは相手を大事にするもの」「マジョラム視点:酷いことをされるのが愛でしょ?」という葛藤を踏まえた話ではあったように思うので、それを思うとこうならざるをえない……ある意味マジョラムという子ともっとも誠実に向き合ってると言える……のかも。(※この部分は下記項目でさらに加筆有り※)

あと、このルート入った時はまだ玉座の概念やお父様の呪いなどについて何もわかっていなかったので、それもあるかもしれません。後になってみると、お父様に二人そろって飼われるしかないよねというのは、避けられない事実なので……。

 

 

 

マジョラムAとBの間(TRUEルート道中)

 

マジョラムAより先にこっちのルートを通っておくべきだった!

いやでもルート制限かかってるか。

ともあれ、ここで改めてマジョラムについて。

 

恋と罪』から元々私はマジョラムのことを、愛は虐げるものと”覚えさせられた”子、と認識していたんですよ。あくまでマジョラムの被虐体質や愛の定義は人外世界で生きるうえで学ばされた後天的なもの。ただ、もう根付いたものは変えられないよね、みたいな。後天的な学びを後天的に矯正することってできない、焼き鏝付けられたらもうおしまいですよみたいな話なのかと。んでもってもっと言えば、その後天的な学びを与えたのはスカロだろうなと。そんな気持ちで本作を始めていたんです。

だから、本作をプレイして意外とスカロがマジョラムを調教はしていないことに驚いたんですが……。

 

このルートをプレイしてやっっっっと私の勘違いに気付きました。

先天的だ……なんならもっと救いようがない……。

これを見て、マジョラムAエンドを見ると、なるほどこれ以上のハッピー(にデコレーションした)エンドはないなとしみじみしました……。

私の読解力をさておくと、スカロ視点だからなおさら、マジョラムの持つ歪みに気づけなかったのかなという気もします。そう思うと一貫しててなお、本作の完成度が際立ちますね……。

精神面でも肉体面でもしっかりきっちりNTRてしまうの、説得力と絶望がすごい。

 

そしてこの後また、『恋と罪』をプレイし直したんですが、奴隷の子のセリフにニヤ~っとしました。「ぼくが死んだらおまえを呪い殺してやる」、なるほどね。お父さんとそっくりだ。

恋と罪』のエピローグの「ぼくは生まれたときから虐待されて心が歪み、大勢の人間を殺す極悪人になった」という解釈を、私はそのまんま受け取って、その”人間的な”解釈でマジョラムを今まで見てたんだなあと改めて感じました。

うーん、なんか、読み解けていなかったな。反省。

 

 

 

マジョラムB

 

ヤンデレエンドだ~~~! 王道のヤンデレエンドだ~~~~!!

ああ~~~~~………………。

大好きな展開にテンションがあがりつつも、苦しさや虚しさはもちろんあり、もう、なんか、諸感情。諸感情でした。

 

マジョラムAエンドで感じていた、「嫌っているに決まっている」「マジョラムをある意味信じ切れない」辺りが、見事に負の連鎖を生みだしていてしみじみ。

この作品、本当に一貫してるから説得力があるんだよなあ……。

 

確か、キレる時に言う言葉は自分が一番傷つく言葉だ、みたいな言説ってあるじゃないですか。

どこにもいかないでと言い聞かせる姿はまさに、それを感じましたね~……。マジョラムからそう言って欲しかった以上に、スカロがマジョラムに対してそう思っているんだろうな……。

この構図を「お互い同じ言葉を」っていう表現だけで察させるのがまーた上手いんだよなこれがな。自分で気づいた方が、愛も痛みも沁みるものですからね。うぅ……。

 

余談ですが、呪いのかけ方がロボトミーじみてるのもエグくて好きです。

 

 

 

 

TRUE

 

スカロと伯爵

 

「恰好つけたかった」

この言葉を。

ずっと、この数時間、このエンドに辿り着くまでの道のりでずっとずっとずっと使わずにいた、このシナリオのパワーを称えたい。温め続けたこの我慢強さに拍手したい。

ここぞという時<<だけ>>使うからこそ響くものがあるのだと、改めて実感しました。ああ……。

ここぞの使いどころと言えば、伯爵の表情差分や、髪の毛舞い上がり覚醒モードの立ち絵もそうですよね。恐ろしかったな……。

 

父上・伯爵の名前を誰も知らないというのがここで改めて示されるんですが、私はここで明かされてようやく気付きました。公式サイトに書いてはあるんですが、プレイしているとなんか、そんなことは頭の隅に追いやられていく感じがあり……。あの人の名前なんだろうとか、その発想すらなくなってた。名前がある一人の存在だとすら思えぬほどだった……?

この時点でもうなんか、私まで作中の舞台に引きずられてあの人を圧倒的な存在だと感じていたのがよくよくわかりますね……。

 

 

お仕置きシーンはやはり強烈でしたが、見ている側の感情移入にも限界があることを学ばされたといいますか……。絶望も痛みも通り越すと感受性が麻痺するんだなと。

ああこういう拷問もありなのかとか、続けるかどうかを虐げられる側に選ばせる(選べない)(自由意思まで剥奪)のはすごく効果的なんだなあとか。なんだか、数週回ってすごく冷静になってしまっていました

家畜の皆さんによる電流リズムゲームとかね。発想がすごい。

 

 

 

ラストの盛り上がり

 

印象深かったのはやっぱり、ワインセラーの秘密の扉です。

アクションホラゲー始まった!っていう。

ノベルでアクションホラーがガッツリ感じられるあの臨場感を出せるのがすさまじかったです。

 

さりげないポイントだとイザクさんが好きですね!

サーベル使う老紳士、全人類好きでしょ。アルベルに仕えることになった経緯とか色々と知りたくなる人でもありました。アルベルなら肉体関係を迫っていそうな気もするけど、イザクさんはしれっと断りそう……? うーん。

 

にしてもプレイ当初はグランがここまで活躍するとは思ってなかったし、芯を持って動いてるとも思っていなかったなあ。この辺の意外性も面白いルートでした。

グランを軽蔑しているスカロ視点でプレイヤーは見ているから、グランの知力ぶりも見えなくなっていたんだろうな。

 

 

結末まで行ってなお、伯爵の権力は変わらずあの城は続いていくんだというところも、すごく好きです……。

全部引っくり返すんじゃなくて、あの一瞬、あの伯爵の「揺らぎ」を生みだすだけというのが良い。ささやかなあれがどれだけ大きいものか、読み通した自分だからこそわかるのが、良い……。

 

 

 

 

スカロとプレイヤー

 

最後に、疑問?気づき?になるんですが。

ラストの「諦める」「諦めない」、どちらを選んでも結末に影響しないんですよね。

(追記:「ですよね?」とTwitterで不安げに呟いていたところ、作者様からあえてそうしてるとのご情報を頂けました。照れ照れ。感謝!)

 

あの最後の選択肢でどちらを選んでも結末は変わらない。

あれこそがスカロの、圧倒的上位存在(伯爵またはプレイヤー)に対してたった一度だけ貫き通した意思なんだろうなと思います。そしてそれは、痛めつけられるスカロや苦しむスカロをノベルゲーという「娯楽」として楽しんでいたプレイヤーに、スカロが唯一、一瞬だけ勝ったということ。

……なんて解釈だったら熱いなと思っちゃいました。てへへ。

 

 

 

 

総括

 

と、このような感じでじっくりと、美しく精緻に用意された針の上を歩ききったのですが。

いや~~~、出会えて、よかった~~~~~~!!!

このフリゲを読めて良かったし、彼らに出会えて良かった。

スカロの矜持を見届けられて、よかった!

どのエンドが好きとか選べないくらいに全部の結末が好きですし、どのキャラが好きとか語ろうにもみんな別のベクトルで好きですし、もう全てに感謝の気持ちばかりです。震えた。比喩でなく心が色々な感情で震えた。

 

 

 

長々と書き散らしましたが!

集約すると、好きです!!!ありがとうございました!!

 

 

 

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