「ご都合主義を少し損じるくらいの奇跡がちょうどよい」
欠けてる部分に魅力を見出す前置き。
えー、今回はecoddrさんところのフリーゲーム「ひびかけ色のキセキ」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。
ポータブルやブラウザ版としてのリメイクがあるようですが、私がプレイしたのはDL版ver2.14です。やっぱりPCに保存できる形式が安心するんですよねぇ……。
中身としては、ステージクリア型でバトルと会話が交互に進行する感じ。こういうのもローグライクって言っていいのかな。
なお少し変則的ですが私は、
『ひびかけ色のキセキ(以下、今作)』のストーリークリア
↓
前作『Test of Magic(以下、前作)』をクリア
↓
今作のおまけモードをクリア
という経緯があります。そんなわけで多少前作のプレイ感が前提となっている感想になってます。気になる方はそちらも併せてどうぞ。
なお、公式には作品双方に関係性はありませんので、今作単品でしっかりがっつり楽しめます。
というわけで良かった点など。
手持無沙汰はあり得ない、洗練されたバトルデザイン
前作とバトルシステムはだいたい共通ですが、大きく注目したいのは「Linkage」コマンドです。ざっくり書くと他キャラのMP回復ができるコマンドなんですが、これ一個あるだけでかなり戦略に幅が持たせられました。
よくあるRPGってたまに“待ち”のターンができると思うんですよ。例えば敵が無敵ガードスキルを使ったとして、バフデバフと回復でのんびりターンを進めたり、たまに手持無沙汰で無駄に防御してターンを消費したり。あるいは回復役が雑魚戦でターンを持て余して無駄に素殴り1ダメージを繰り出したり。
そういう“待ち”の状況が、このコマンド一つでまるっと解決してしまっているんです。上手い!
キャラによって性能が異なる他、特殊効果は1ターンで切れるため「誰を」「誰に」「どのタイミングで」回復させるかというところでも試行錯誤の楽しみがありました。
快適さをこだわり抜いたコンフィグ
画面サイズや音量はもちろんのこと、難易度調整からSEのオンオフに至るまで、ツクール製では珍しい細やかさがありました。
あえて上げるなら拡大するとピンボケっぽくなってしまうところは惜しくもありましたが、あるだけでありがたいのでそこを突っ込むのは厳しすぎかもとも。
実績要素のおかげでバトルの楽しみも加熱されます。
解除100%の実績がなぜか解放されなかったのは切なかったですが……どうやら既存の原因不明なバグのようですし、コンプ特典等があるわけではないようだったので致し方なし。
エレクトロチェーンなど、少なくとも私の脳筋な戦闘スタイルでは使う機会のなかったであろう技は実績あってこそでした。ややこしげな技のチュートリアル代わりにもなっているのかなー、なんて。
付け替え・固有で好きキャラをよりお気に入りに
かなり戦略バトルに重きを置かれているこの作品ですが、嬉しかったのはスキル付け替えができる点でした。ノーコストで色んなスキルをお試しできるうえに、スキルレベルの上げ下げも自由にできるのが本当にありがたかったです!
どのスキルでも使えるというわけではなく、キャラによって使える使えないの差があるのもポイント。使いたいスキルと愛着あるキャラとで脳内会議をしつつ、パーティ構成のバランスを考えるのも楽しみの一つでした。
また一方で、一切付け替えができない固有スキルがあったり、キャラによって覚えるステータス上昇スキルが変わっていたりするのも見どころです。
何よりこういう固有スキルって“キャラらしさ”が感じられていいですよねぇ。Linkageに追加される効果も併せて、誰とどれを組み合わせるかの幅がかなり広がって楽しかったです。
属性幅の広いルネは、ローバッテリーも併せて補助キャラなんだろうなあとわかりますし。エリシャは強気な姉御肌と思いきや、例のスキル名でニヤニヤしますし。ヒーラーらしいミシェルが水属性使えないのも良い縛りになってますし。
私は特にソラが好きだったので、スキルポイントをつぎ込めばつぎ込むほど強くなってくれるのがすごく嬉しかったですねぇ。
シリアスとほのぼの両方が楽しめるストーリー
バトルのみならず、ストーリーもなかなかのボリュームがあり見どころたっぷりです。
状況としてはかなりシリアスで陰鬱。危ない魔物や怪しい薬、陰謀うかがえる情勢と戦争など、私好み――もとい、ちらりとハイライトが消える展開もありはします。が、キャラ同士の掛け合いが明るく前向きなので、鬱展開というよりは困難に立ち向かう女の子たちの友情物語という印象でした。暗い話が好きな人にもハッピーエンド至上主義の人にも、おススメできる内容だったと思います。
区切りごとに会話シーンが入るので、お話が飲み込みやすかったのも良かったですねぇ。さらには細かな回想機能のおかげで、読み終わったストーリーを一通り全部見返すこともできます。これは本当にうれしい!二次創作が捗りますね!待ってます!!
章ごとのタイトルもひそやかにツボでした。クリア後のソラリジェ会話のタイトルがたまらん……!
キャラ同士の関係性が深まっていく展開
また上記と重なるところもありますが、キャラ同士が少しずつ形を変えて成長していくのを見守れるのもストーリーの良点でした。
リジェの方向性、シイナの気持ちの在り方、ソラの自暴自棄、ルネの無感動、などなど。どの面を切り取ってもそれぞれに成長があって、ああこの子たちを応援できて良かったなあと思わされます。出番や見せ場に差はあれど、どの子も主人公、と言えるかもしれません。
キャラとキャラの関係も良いですよね。言ってしまえば百合ですよね。ブラボー。
ある程度組み合わせは固定化されていますが、ステージによっては意外なキャラ同士で進むことになることもあり、全員がきっちりストーリーに組み込まれているところも好感が持てました。置いてけぼりがいないって大事。
ここらは詳しく語りすぎるとCP萌えが過ぎそうなので、詳しくは追記にて。
とまあ、こんな感じで。
ここまで見返すと、本当前作で物足りなかった部分が順当に進化してるんですよねぇ。しみじみ。前述のとおりスマホ版も出ていますし、さらなる進化を応援したいところです。
シリアスでほのぼのな友情物語、百合、魔法、戦略バトルなどにピンとくる方向け。
追記ではネタバレ全開の各キャラへの所感など。
興味ある方は下へどうぞ。
同作者様の他フリーゲーム感想記事↓
ネタバレ注意。
設定他
設定面でやっぱりいいなーと思うのが、前作感想記事でも書きましたが各属性の持つイメージなんですよねぇ。
黒が単純な破壊じゃなくて自己犠牲っていう、序盤のリジェの講義にまず惹かれるものを感じまして。青が流動と抑圧両方併せ持つっていうのも、ぱっと見は正反対なんですが、リジェを見るとなるほどわかるなあと。
あと、本編では語られませんでしたが、炎属性はなんとなく調和や守護というイメージがあります。誰かの掌、暖炉の明かり……。よくあるファンタジーだと炎属性って苛烈で元気なイメージが強いんですが、そっち面はむしろソラが担っている気がします。で、じゃあエリシャってどういう感じかなと考えた時に、皆で仲良く友達は護る、みたいなところが強いのかなーと。
やっぱり全属性の単語イメージみたいなの知りたかったですねー!
何十回同じこと言ってるんだって感じですが、水見式みたいなノリでひびかけ属性チャートみたいなのも見てみたい気がしました。
キャラクター
めちゃくちゃ使ったキャラとほとんど使ってないキャラの差が激しいので、文章量のムラがあるのはご容赦を。
・リジェ
清濁併せ吞む、っていうのはまさに彼女なんだろうなあと思います。
ラストの吹っ切れ方がすごい好きなんですよ。うじうじちゃんと言われた時の反応も。にこにこ聖人ってわけではなく内気なわけでもなく、どこにでもいそうでどこにもいなさそうな人って感じがしました。
バトルではもう彼女が必須。エデュケーターのスキルも併せて、常にスタメンでした。
[私のバトル運用]
LxMAXウォーターヒール・フロストシールド・リフレッシュ
開幕シールド、余裕が無ければヒール、あとはひたすらMP補充要員。
・シイナ
最初から最後までブレずに好きなキャラ。爆発力のある見習いっていいですよね。
黒属性のスキルの使い勝手のピーキーさや、火力全振りなキャラ性能も私のプレイングに合っていて、最後の最後まで連れ歩いてました。レベルカンストが一番早かったのも彼女。
手数も火力もある一方、終盤は攻撃がちっとも当たらなくて悩まされましたねぇ。ヒットコードを最後に覚えるのがまた上手い調整だと思います。
[私のバトル運用]
Lv3くらい ウォーターヒール(リジェがいなければLvMAX)
基本ブラックホール、敵が黒耐性ならアタックアップ。トドメはクリスタリウム。
リジェがシールドでガス欠した時のカバー要因としても使ったけど、他の味方も回復技が使えるなら火力特化で回したかも。
・ソラ
パーティに入ったとたんに好きになったキャラです。火力キャラは好きなんだって。
リジェへの開幕毒舌に惚れこみ、自暴自棄な生き様に刹那の輝きを見出し、ラストの主人公っぷりに惚れ直し――等々、すっかり心酔する勢いで惚れました。本人に言うと鬱陶しがられそうだけども!
自壊の危うさがあるのも魅力だと思います。ネクロニカだとホリックやってる絶対。
エーテルフリークとセルフィッシュも、スキル名性能全部合わせてめっちゃソラって感じがしてものすんごい好きです。
[私のバトル運用]
LxMAX スパークショック・スピードアップ・クリスタリウム・リベリオン・ブラッドペイン
開幕スピードアップ以降は、とにかく殴る一択。MP? 他の味方がなんとかしてくれる。
敵を一撃で倒してしまう場合はスパークとブラッドのLVを適宜下げて、クリスタリウム用に調整。
・ルネ
悲しいすら感じられない虚無の子。足りない部分をたくさんのご飯で満たそうとしても埋まらないみたいな書いてて切なくなってきますねこれ。おにぎりおたべ。
ルネと言えば桜。この作品の魔法中心なファンタジック世界観に反して、起動画面が和風で桜なことが初めはとても不思議だったんですね。しかしそれがこう、あの、エンディングに繋がるとは。クリアしてからタイトル画面に戻って、ぼうっと余韻に浸っていたら画面がルネのシルエットになって泣きました。ガチ泣きしました。にくい演出だ……。
[私のバトル運用]
LvMAX バーストストライク・スピードアップ・ウォーターヒール
Lv3くらい フレアチャージ・クリスタリウム
エナジー入手を最優先したかったので、クリスタリウム覚える間では延々とリンクエージ要員でした。パーティ構成に悩んだらとりあえず入れとける安定キャラ。足りない部分を補えるキャラは強いですよねぇ。
・エリシャ
瀕死時の顔グラがひそやかに好きです。
初めて会った時はふむふむという感じだったんですが、パッシブスキル名称にやられました。かわいすぎる。
炎特化型ですが、炎スキルは補助系もいっぱいあるので、ルネに次ぐ万能タイプという印象でした。
[私のバトル運用]
LvMAX ディノブレイズ・アキュレイトアップ・クリスタリウム・バーニングエッジ
補助が足りなければフレアチャージのほうをMAXにしつつ、適宜ジャブ攻撃と補助に回る感じ。あえて言うなら火力としては手数が足りず、補助としては白青技を使えないのが心もとないですが、それを超える勢いでディノブレイズがかなりの良性能だったように思います。
・ミシェル
ストーリー上の役回りが本当に巧みに描かれており、キャラ造形としては上手いのだろうなあと思います。が、好きにはなれません。
好きになれない理由を考えて唸ってごちゃごちゃ書いたこともあるのですが、まあこれは冗長なので……。
簡潔にまとめると、ソラとミシェルの関係性が苦手なのだろうなあと思います。
妹との絡み、特にあの扱いを受け入れてミシェルはどう考えているのかみたいなところももうちょい見たかったなー。
[私のバトル運用]
LvMAX リフレッシュ・リジェネレーション・バニッシュアップ・スピードアップ
リジェネにちょっと不安が残る気がしてしまい、避け盾として運用。スピードアップをライトニングボルトに変えれば火力として使えなくもない、のかもしれませんが、無理に火力として使う必要はない気も。
・???
いやまあここまで書いといて名前を隠す必要はないのかもしれませんが!
まさか仲間になるとは思っていなかったので、どうしても他キャラと比べてゲスト感が抜けないキャラです。ジーニアス実績のもう一人がリジェというのが意外だったなあ。なぜかソラだと思い込んでいましたが、ソラは秀才ってことなんでしょうかね。
[私のバトル運用]
LvMAX クリスタリウム・ダークフォール・リフレッシュ
余裕があればリジェネレーションも。黒特化火力型かと思いきや、白属性も使えるので一応補助運用もできるキャラでした。ただバーサーカーソウルが痛すぎる……!
他にリフレッシュ使いがいるのであれば、世界で一番お姫様なスキルで自爆しては生き返るゾンビ戦法をしてもいいかもしれません。
その他おまけ要素
ミュージックルームの存在がまず嬉しい!
そして曲名と作者名がさらに嬉しい!!
フリゲ好きの気持ちをよくわかってらっしゃる、良曲に出会うと素材サイトまで巡るのが常なので本当ありがたかったです。
おまけダンジョンやチャレンジステージなど、クリア後のお楽しみが長めだったのも嬉しかったですねぇ。まだまだ遊べる!
クリスタリウムで荒稼ぎして育てすぎたところもあり、難易度ノーマルだと基本はさくさく進められたのですが。
ボーナスステージのボスだけは危うく全滅するところでした。
リジェが瀕死で持ちこたえる→リフレッシュ蘇生→殴る→殴られる→リジェが瀕死(以下ループ)という感じ。やはり速さこそ正義でした。やったね!
とまあ、こんな感じで。
キャラ面バトル面、申し分なし。
最後までがっつりたっぷり遊ばせてもらえた一作でした!