うそうさ〜第二号室〜

フリゲ・鬱展開・ヤンデレ 万歳!

フリーゲーム「深雪に咲く」感想

新雪に足跡をつける楽しさは、汚す罪悪感に勝るものか?」

もとより罪悪感がない子どものままでいたかったな前置き。

 

 

 

えー、今回はThunderSonia さんところのフリーゲーム深雪に咲く」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

ルート分岐有、公式サイトに完全攻略ありの乙女向けノベル。異種族恋愛もの。

 

というわけで、良かった点など。

 

 

人間と妖怪と妖怪の話

 

 

攻略対象は二人。片や時折言動の不穏な妖怪、片や敵対心剥き出しの人間。主人公が人懐こく他者を疑わないからこそ、攻略対象側の方にうかつに近寄れない要因が用意されていたように思います。六花の本心は? 千景の警戒は? などなど、先を読みたくなる関係性を見せて頂けました。

千景はツンツンした態度の裏に痛々しさがあり、そのうえで見せてくれる包容力や男らしさにグッときましたし。

六花は飄々とした態度の裏に、どこか危うげな、傍にいたいと思わせるところがあって、これまた魅力的でしたね~。

 

ヒロイン兼主人公は、人間に嫌われた雪女。彼女の性格付けも大好きです! 人間と妖怪、あるいは同じ妖怪でも違う種族という設定を上手く活用することで、自然と無知シチュを生み出しているという。思わず拍手喝采

中でも、照れても言うべきことはちゃんと言う、ここが何より彼女の推しポイントです! そう、恥ずかしがって黙り込む性格だったら多分この話はどっちのルートも破滅一直線だったはず! 

内気な愛されヒロインですが、前に出る時はきちんと出てきて、身を呈すところもあるのが好きでした。

 

 

 

どちらも一歩踏み越えると危うい攻略対象

 

さて本作はR15作品。成人向けに踏み越えないからこその絶妙なギリギリ・ドキドキを味わえたように思います! 攻略対象が双方、それぞれの理由で「堕ちる」感じを見せてくれたところがすごくツボでした。きちんとバックボーンがあって、病む過程に納得があるところも好ましかったですね~。

特にバッドエンドの後日談は、蠱惑的という表現がしっくりくる展開でした。直接的な描写はないのに、ものすごく雰囲気が濃密で、色っぽいんですよね……。理性がグラっと来る描写の仕方がとても上手だなあと思います。

ハッピーエンドはしっかり明るい円満エンドですが、ヤンデレ好きの自分からするとつい深読みして、「これからもひと悶着ありそうだな……」とニヤニヤできるシーンもありました。ふへへ。とはいえ、あっちのルートの椿ならなんとかできちゃうんだろうなあと思うので、ハピエン主義の方もご安心くださいね!

 

 

 

 

分岐先でも聞けるパートボイス

 

攻略対象はボイス有り。さすがにフルではありませんが、重要なパートにもおまけにも声が収録されていて、ボリュームはしっかりあります。

ありがたいな~と思ったのが、共通パートだけでなく選択肢の細かい分岐にも声が入っていること! 私の勘違いでなければ、好感度に影響しない選択肢にも声が収録されていた、はず……?

乙女ゲーって、まあ言ってしまえば全正解の攻略見てささっと回収するタイプの方もいると思うんですよね。そんな中で、聞き逃されてしまう可能性の高い場所にもきちんと声を当ててくださっているところに丁寧さを感じました。

 

なお、どちらの声も(実際の性別は存じ上げませんが)女性声優によるショタボイスに近い印象です。私的な好みを言えば、一部ねっとりしすぎてたり無理してたり感はありましたが……もちろん刺さる人は刺さる声質だとも思います。何より、最後まで聞けるクオリティは確保してくださっていて助かりました。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

登場人物全員が孤独感を抱えているのも、人肌恋しい冬や雪のイメージとぴったりなんですよね……。病みエンドもハッピーエンドも、お互いに暖め合いたいという気持ちに変わりはないように思うので、そういう雰囲気が好きな方にオススメです。

 

 

 

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フリーゲーム「Phan Somunia」感想

「未完成は悪じゃない、可能性の塊だ!」

あなたの世界はいずれ誰かとの世界になる前置き。

 

 

 

えー、今回はおにぎりと四葉のクローバーさんところのフリーゲームPhan Somunia」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

 

プレイは数時間、ただしやり込んだり詰まったりしたらもっともっと時間のかかる、ボスラッシュゲーです。選択肢はありますが、おそらくは一本道? のはず。

 

 

というわけで、良かった点など。

 

 

仲間を召喚して世界を救え!

 

本作はガチャゲーです!

……と、言うと絶対語弊があるので補足すると、ゲーム内のアイテムでガチャを引いてキャラクターを集め、そのキャラでパーティを組んでボスを倒していくゲームになります。

 

まず着目したいのが、このキャラクターの出典について。なんと登場するのは、「他世界の創作キャラ」達です。同作者様の他フリーゲーム作品のキャラはもちろんのこと、別作者様のフリーゲーム、さらにゲームの垣根を超えて創作漫画のキャラクターまで。とにかく色んなオリキャラたちがここぞとばかりに飛び出してきます。

 

といっても、作中で特段セリフがあるわけではなく、個性として用意されているのは外見とスキル名くらいです。なので、他登場作の履修は不要! 中にはそもそも元となる作品がない子もいるので、前提知識はいりません。そのぶんお手軽に触れる、はず。

「このキャラ知ってる!使いたい!」の流れもあれば、「このキャラかわいい~!使いたい!原作はどんなだろう?」の流れもあり、あちこちへ派生していく楽しみが感じられるゲームでした。

 

 

 

自動進行のオートバトル

 

斬新さはキャラのみに留まらず、バトルにも及びます。

なんと本作、全ての戦闘は自動的に進行。RPGにおけるコマンド入力などはなく、事前にセットしておいたAIに応じてキャラクターが勝手に戦闘をしていくシステムです。

このAIの調整がたーのしいんだこれが!

 

私はAIを組むゲームって一つ二つしかプレイしたこと無かったので、困惑することもありましたが、やっぱり楽しかったです。「思い通りにいかない→弄ってみる→微調整する→動いたー!」この流れ自体がおそらくは、ゲーム制作の楽しみにも通じてるんじゃないかなあ。ひいては、本作の舞台の根幹にも。

AIに〇%の確率で行動というランダム行動が入っているところも面白いんですよね! クリティカルなどもそうですが、ガッチガチの詰将棋じゃなくてあくまで色んな戦法があるという幅で留められているところも、遊びやすくて良かったです。

 

と、AI調整の楽しさを熱く語ってしまいましたが、デフォルトでスキルが組まれているので、一応はキャラを入れ替えるだけでも進められるはず?

ちなみに、自分のオリキャラを作中に取り込んで、カスタムAIで味方キャラとして活躍させることも可能です。私は創作をしないタイプなのでやりませんでしたが、それこそ「うちの子」を使いたい方には朗報ではないかなー、なんて。

 

 

 

腕の鳴る強敵たち

 

雑魚戦やレベル上げの概念はなく、ひたすらボスを倒していくだけのシンプルシステム。だからこそ、熱くガチのバトルが楽しめます!

状態異常、物理連撃、HP半分削れたら発狂、などなど敵の行動パターンも多種多様。ボスをあっさり1ターンで倒せたはずのパーティが、別ボスだと全く通じないことも多くて、頭を使う楽しさを味わえました。

あれこれ組み直す必要があるのも、ガチャで色んなキャラが手に入る多様性と噛み合ってて好きです。

 

そのぶん、システムを読み流しちゃうとちょっと辛いかも。かくいう私も、セット変更でアイテムの変更もできることや、アイテムは毎戦闘で補充されることをまったく気づいていなかったので、道中かーなーり苦労しました。さすがにヴァンはアイテム抜きだと倒せなかったな……。

逆に言えば、こちらができることは全てやりきって死闘を繰り広げる熱いバトルが楽しめます!

 

 

 

あなたの選択に合わせた温度感

 

さて、本作の主人公であるプロトですが、実は私達プレイヤーの選択肢によってだいぶ態度が変わります。

私はこれを知らなくて初回は普通にプレイしていたのですが、後でネタ選択肢を選んだところ「ええ!?」となりました。ははは。プレイヤーへの呼び方自体が変わってしまうところも面白くて好きです。

他にも、ラスボスを倒す・一体だけボスを残したうえで倒す、等々ちょっとした分岐もあります。エンド数や分岐については全然必読に書いてなかったので、危うく見逃すところだったんですが……。まあそもそもがオートセーブですし、分岐を全回収するよりプレイヤーに合ったエンドに辿り着いて欲しいって感じなのかな。

おそらくはシステム外で一度セーブデータを消さないと、周回プレイはできない、はず……? 気になる人は見て見るのも一興かと。

 

 

 

夢と可能性が現実を貫くストーリー

 

システムに注目したくなってしまうところですが、ストーリーもなかなか、心の柔らかいところに刺さります。中でも、ラスボス前の会話がすごく好きでした!

誰でもあると思うんですよね、何か作ろうとしてすぐやめてしまったり、一次創作をやりかけて手前でどうしたらいいのかわからなってしまったり。そういう創作者あるあるの挫折と、しっかり向き合ったうえで、ハッピーエンドを見せてくれます。

優等生的と言えるかもしれませんが……それでも希望を手に取リたい!という熱い感情は伝わりました。ハッピーエンドと呼ぶ以上に、“祈り”を感じるストーリーラインです。

 

トゥルー……と言って良いのかな、一番長くプレイできるエンディングが初見で見れたエンドです。そして、クリア後コンテンツを超えた向こうにまた希望が待ってくれているところも、なんだか元気をもらえて好きです。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

 

追記ではキャラの使用感など。

 

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フリーゲーム「UnderGarden chronicle」感想

「私にはまだ私がないから、私を知るあなたを導きたい」

そしていつか掌の間で私を作っていきたい前置き。

 

 

 

えー、今回はYellowline(さふらん)さんところのフリーゲームUnderGarden chronicle 」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

ラスト直前にエンド分岐ありの、基本は一本道なRPG。ほんのり百合含む。大筋だけだと1時間弱、おまけ要素やクリア後イベントなどを含めると3時間くらいかかりました。

 

 

というわけで、良かった点など。

 

 

外を目指す彼女たちの話

 

たった一人で目覚めた少女、アシュレイ。進むうちに色んな女の子たちと出会いながら、外を目指していく……というのがざっくりとしたあらすじ。

この「外を見たい」の動機付けがいい! というのも、まず何より「エリオットに見せてあげたいから」が先立つんですよ。アシュレイは記憶がないと諸々の展開上、アシュレイ自身が強く外を求めるっていうのはまた少し違う気がするので、そうでなくて、エリオットが理由になっているところがすごくしっくり来て好きでした!

 

初めて出会った子という愛着もありますし、そこから流れるように百合へ展開できる点も絶妙。そこからさらに、途中の闇堕ちや覚醒イベントにもつながっていく、実に導線の綺麗なストーリーラインでした。

 

他にも、ヴァディスのマスターに対する強い情念や、イゾルデがラストで叩きつけてくる想いなど、あちこちに「想い」を強く感じられる作品だったように思います。

ノローグ自体は淡々としているので、ドラマティックというよりは静かに燃える炎といった感じかな?

 

 

 

 

コンセプトがしっかりしたマップ

 

どの階層も統一感があって、決まったコンセプトを感じられます。下水道から始まり、岩窟を越えて草原へ、屋内を経てさらには……といった具合。上に行けば行くほど変貌していくマップに、次はどのテーマかとわくわくしました。

 

そして注目したいのが、テーマはマップの外観だけでなくギミックにも及ぶところ! 謎解きの手法が階層によってがらりと変わります。特に淑女のマップが楽しかったな~!

『箱』という異空間だからこそできる表現でもありますよね。

 

各マップ名がどれもすごくカッコイイ!! ここも推しポイントです!

セーブする時にマップ名が表示されるので、それでより印象に残るというのもありますね。しかもフロアごとにマップ名が違うので、そういう細やかなテキスト差分が好きな私、大歓喜でした。

 

 

 

使えるスキルも変わる装備品:換装

 

グラフィック面で言うと、戦闘中の味方キャラのグラフィック! こちらも、等身高め?なミニキャラで可愛かったです。普段のメニュー画面ではきりりとした立ち絵が見れるので、ギャップがまた良き。

しかも物語を進めていくと、「換装」とつくアイテムが手に入ります。これはなんと戦闘中のグラフィックまで変わってくれるという、着せ替え要素有りな装備品! もちろん、使えるスキルが増えたりパラメータがぐんと上がったり、ステータスとしてもしっかり良点があります。

1周目では一種類くらいですが、やり込み要素をクリアしていくとかなり色んな立ち絵とスキルが見られました! どの衣装もすごくかわいいし、意外性のあるお洋服もあって、雑魚戦やレベリングも楽しかったです。

 

 

 

ここが本番ハードモード

 

前述の通り、本作のエンドは3種類。一応最終戦前の選択肢をロードすればすぐに回収できはしますが、個人的には2周目のプレイを推奨します。

というのも、クリア後に開放されるハードモード限定イベントのボリュームがめちゃくちゃたっぷりあるからです!!

私は周回要素があると聞いていたので、道中にあるやり込みダンジョンも2周目のためにとっていたのですが、レベリングや難易度的にもこのやり方で進めてよかったな~としみじみしています。そんなわけで、未プレイの方はおまけダンジョンも後回しにしちゃっていいんじゃないかと。

 

ハードモードは、最序盤だけかなりきついかな……。でもそこで死をかいくぐり回復しながら壁を乗り越えられさえすれば、あとはとんとん拍子に進められるかと思います。仲間が増える=楽になる、ですしね!

 

ちなみに、クリア後は「全て引き継ぎ」できる簡単2周目モードと、「引継ぎは図鑑のみ&EXP倍&敵強化」のハードモードと、まるっと一からやり直す通常モードがあります。特に簡単2周目ことリターンモードは、分岐でセーブし忘れたり、魔物図鑑をどうしても埋めたかったりする方にも優しい仕様です。これがあるの嬉しいですよね~!

 

 

 

がっつりやり込み裏ダンジョン!

 

さて、一周目でも突入はできる裏ダンジョンについて。

こちらもかーなーり腕の鳴る難易度でした~! 特にメインストーリーの方は比較的進めやすい難易度だったので、ガラッと雰囲気が変わって驚かされましたねえ。「ここの敵は強いぞ!」と警告メッセージが出てくるあたり、納得の“ガチ”です。

 

一方で、中に仕込んであるイベントはどれもお祭り騒ぎで楽しいものばかり。キャラ崩壊と取るか意外な一面と取るかはプレイヤー次第ということで……。

とにかくひたすらに強きを求め、ボスラッシュにうきうきと胸が躍るプレイヤーの方には是非チャレンジして欲しい所存です。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

 

RPGとしても百合としてもストーリーとしても、どこか納得感のある一作でした。

 

追記ではネタバレ感想や攻略など。ちょっと長め。

 

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フリーゲーム「ばつえいビルッテ」感想

「絡んだ糸は厄介だが解けばそこには簡明が残る」

あなたと君が笑い合いたかっただけの前置き。

 

 

 

えー、今回はTeToriapotさんところのフリーゲーム「ばつえいビルッテ」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

www.freem.ne.jp

 

エンド分岐はあるものの、ラスト少し前の選択一つだけで分かれるので回収しやすいです。ただ、物語理解をしっかりしていきたいなら、セーブは定期的に分けることをおススメ。

 

 

さらに前置きとして。私はこの作品大好きです。たまらん大好きです!! ただし、序盤はかーなーり思うところもあった作品でした。なので、全肯定ではないことだけご承知おきください。

 

というわけで、特徴的な点など。

 

 

キャラ同士の関係性が鍵を握るストーリー

 

本作は、神殺し・創世記・英雄譚・あるいは上位存在の意思にあらがうキャラクターたちの物語です。一方でその根幹は、キャラ同士の憎悪・友情・慈愛・あるいはそれに類する複雑激重感情を巡る関係性です。

要は、「悪いやつ倒しましたバコーン!」とか「○○と××仲良しでよかったね!」とか、そういう明確でわかりやすいストーリーではありません。いや、ストーリー自体は簡明なんですが、その簡明さを理解するまでの工程が複雑。伝わるかなあこれで。

 

このストーリーの魅力を理解するには、キャラの想いに焦点を当てる必要がある……一方でキャラの背景事情を理解するにはストーリーや舞台設定の咀嚼が必要……。双方が絡み合っているので、ちゃんと全貌を理解しようと思うと、かーなーり難しく感じた作品でした。自分用の箇条書きメモがテキストだけで25KB。しかもまだわからんことだらけ。ははは。

 

まあ、本作の必読や紹介文のあちこちにある通り、ストーリーや細かいキャラクターの思惑などはぜーんぶ無視して突き進むこともできはします。

でもやっぱり、ポルペロの思惑とかマティーニャの葛藤とかビルッテの役割に付与されたおぞましさとか、知った上でプレイする方が絶対楽しい……! 読み流すのはもったいない、でも、いや読み流すプレイヤーがいてしまうのもわかる気はするという、1ファンとして勝手ながらジレンマも感じてしまう作品です。

 

 

 

彼と彼女と彼と彼

 

ここは合わなかった点なのでバッサリ切っていきますが……。

セリフや文章回しにかなり癖があり、匂わせを含め、曖昧な物言いが多用されます。さらにはキャラが誰かを呼ぶときに「あれこれそれ」「彼」「彼女」「種族名」「役職名」「二つ名」などが入り混じるので、セリフは一個一個丁寧に追って行かないと後々パンクします。しました。

あとテキストボックスの広さの関係か演出か、目的語が飛ばされてたり主語が省略されてたりすることもあるので、現状を把握しようと思うだけでもめちゃ難しいです。この既視感はあれだ、古文の授業。

 

そして情報開示が基本的に遅い。カルーア家とドランティア家の家系図が後出しされた時はブチギレました。オープニングで出してくれ!っていう。まあこのタイミング問題は伏線を読み解いた後の答え合わせを意識されているのかもしれませんし、自分で物語を考察していく楽しさも1プレイヤーとして理解はできるので、突き過ぎたくはないのですが……。

なんだろう、用語辞典等もありキャラが真相を語ってくれるシーンもありはするんですけど、その親切さが絶妙に噛み合っていないというか、プレイヤーが無知であることをそもそも想定されていない感じがしました。

 

ただですね!

これは裏を返せば良点でもあります。文化や宗教に至るまでとても細やかな世界観が構築されていること。モブキャラがモブとして登場せず、どの子にも大なり小なりのドラマがきっちり用意されていること。ただ眺めるだけでなく、プレイヤーが能動的に物語を解釈して行こうと思える余地があること。エトセトラエトセトラ。

実際、私もメモ書いたりスクショ撮ったりしながらああかなこうかなって考えつつ進めたあの時間は、めちゃくちゃ楽しくもあったんですよ……!

なので結局は、合う人ならとことん合うし合わない人は読み流せばよし、という冒頭に繋がるのだろうと思います。

 

 

 

独特の絵柄と多様なスチルが織り成す表現

 

ついテキストに着目してしまいますが、グラフィックも両手を挙げて賞賛したい点の一つです!

まずシンプルに、使用されているスチルの枚数がこれでもかというほど多い! 決めどころのシーンからちょっとした説明の補足まで、あらゆるところで使用されます。独自の良さが光る絵柄なので、これだけでもかなり世界観を濃厚に感じられました……!

一方で戦闘時の味方キャラや起動画面などは、デザイン性の高いアイコンで表現。こちらもまた色使いや形にセンスがあり、その裏に含んでいる意味合いなどの深読みもできて楽しかったです。

街のマップがうろつく形式ではなく気になる箇所を選択するという、ADV形式?なのも斬新でしたね~。場所の全景がぱっと見で確認できて、地図としての役割もはたしている感じでした。

 

 

 

 

イベント戦であり演出でもあるボス戦

 

バトルはシンボルエンカウントどの敵にもテンションブチ上がるセンスの良さがあるので、つい全撃破してしまいました。

レベルは上限が設定されているので、ゴリ押しはできない仕様です。頭を一捻りする必要のあるボスもいるので、脳筋だとクリアできないバランスかと。たたかう連打で終わらない、味のある戦闘が好きな方向けです。

逆に終盤のボスはイベント要素が強め。やるべきことは事前に提示されるので、詰まることはないはずです。こういうゲーム性は親切。

 

そして何より! ボスキャラの敵グラフィックがこれまたすっごい良いんですよ!!! ポルペロルート(と勝手に呼んでいる)とかもうマジでドラマティックで!!! BGMの踊るような雰囲気もあいまって、見ててめちゃくちゃ良かったですね……。

難しい敵については攻略テキストも同梱されています。おのれ盤上の狙撃手。

狂信者に混乱がぶっ刺さる、等々、バトルでの攻略方法にもキャラクター性が重視されていて萌えました。こういうシステムで見るキャラの個性っていいよなあ……!

 

純・欺・策という三属性も新鮮でしたし、それがそのままキャラクターの個性や分類に繋がっているところも魅力的でした。属性名がもうロマンあふれる。

 

 

 

 

韻律重視のフレーバーテキスト

 

装備品の説明文、新マップ突入時の説明、マップ内の零れ話、戦闘前の口上文! 

どこをとっても耳に心地よい名文の嵐です!! 

文だけなのに「耳に心地よい」とはこれいかに、と思われるかもしれませんが、いやもう目で追うだけでもめちゃくちゃ気持ち良くなれるテキストが盛沢山なんですよ……。詠唱とか呪文にも似た感じ。

敵が使うスキルや使用時のセリフも要注目です。アシレトダンジョンの敵は特に不気味で底知れなくてめっちゃ良かったなあ……。

 

特に装備品は全て敵からのドロップアイテムになるので、「あの敵がこれを落とすのか……」という深読みもできてよりおいしいです。

何よりポルペロルートのラスボスの戦闘前口上が大好き!!! エンドごとで対比されてるのもいいんですよ……! クリアした後も脳内でずっとリフレインしてました。もう言葉遣いが美しいんだこれが……。

 

余談ですが、作者様が定期ゲー界隈の方と知ってかなり納得してしまうなど。定期ゲープレイヤーさんって決めセリフやフレーバーテキスト上手な方多いですよね。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

熱いロマンと美しい物語とドロドロした人間模様が描かれる、ハイセンスなRPGでした。こういうのが味わえるからフリゲはやめられねえ!

 

 

追記ではネタバレ感想。

 

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フリーゲーム「ものやみジャック」感想

「鬼火はゆらりと揺らめくもので、もちろん誰にも捕らわれない」

他を翻弄するほど愉しいものはない前置き。

 

 

 

えー、今回はTeToriapotさんところのフリーゲーム「ものやみジャック」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

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進行は一本道、要所の選択でエンド分岐するADV。操作有りのウディタゲー。短編。

好きなところとちょっと……なところと両方あるので、包み隠さず書きます。が、やっぱり好きな作品ですし、この作品を起点とするシリーズ一連全部大好きです! そこだけは事前に主張させてください。

 

というわけで、特徴的な点など。

 

 

 

設定用語と独自世界観がガッツリ

 

正直、初回プレイの時はかーなーり困惑しました。

まず設定用語がかなり多い! 病名・キャラ名・家名が混ざり合うので、用語集があってもなお把握にかなり苦労しました。

また、(これはストーリーのギミック上仕方がないのですが)重要なシーンでのセリフは「こいつ」「それ」「これ」といった指示語が飛び交うので、今誰が視点主で誰のことを喋っているのかを常に強く意識する必要がありました。

もっと言えば、舞台は狭い病棟だけであるのに、作中で設定されてる東西南北全ての世界が物語に絡むので、そこも辛かったです。

 

要は、説明役の無知なキャラが一人もいなくてプレイヤー私は置いてけぼりになりがちでした。

まあ、メモ取りながらでもなおエンドに行くまでストーリーを全く理解できなかったのは私の読解力の乏しさのせいなんですが……。

 

 

 

 

どこを読んでも心地よいテキスト

 

それでもですね!!

本作で魅力として推したいのもやっぱりテキストなんですよ。

というのも、セリフの一つ一つ、メニュー画面のちょっとした説明書き、一つ一つがものすごく語感の良い響きばかり組み合わさっていいまして。要は読んでいてすごく心地良いテキストがそろい踏みなんです!

演劇とか詩とか、音の響きを重視するテキストが好きな方には特に刺さるんじゃないかなあ。

毎週のジャックの紹介文も好きですし、エンド2での役職名を羅列するあの表現も大好きです。

 

 

 

 

最後は綺麗に全貌が見える仕様

 

冒頭でさんざん書いてしまいましたが、全エンドさえ見てしまえば、ストーリーのネタバラシもおまけ部屋で確認できるのでご安心。

設定が多くあることは世界観が濃厚とも言い変えられますし、用語集や各チャプターの見返し機能はとても便利でさっと見返せるありがたい仕様でした。

なにより、この物語を起点として始まるこの作者様の一連のシリーズ、ゲームの一言で済ませるには惜しまれるこの世界・文化・宗教・伝記・民話・etc.……

これらが大好きなんですよ!!! 

なので、刺さる人にはめちゃくちゃぶっ刺さる作品だとはやっぱり主張しておきます。

あの、ざわざわした余韻のあるエンドが大好きなんだ~……! ウオオ……。

ちなみに既プレイの方は、クリア後のRead meネタバレ部分は必見です。

 

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

色んな人外や奇病が見れて、各キャラの思惑や関係が複雑に絡み合ってる感じも、噛み応えばっちり。何よりこういうダークな言い回しがガツンとハマる方は絶対多いと思うので! 

気になった方は一度手を伸ばしてみることをおススメします。

 

むしろ本編は次作『ばつえいビルッテ』といっても過言。

というわけで下記も合わせて是非どうぞ!

 

 

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フリーゲーム「天使と悪魔の旗印」感想

「君は信念を、僕は成長を、二つ合わせて理想を」

掲げて今日もここに立つ前置き。

 

 

 

えー、今回はレパートリーの少ない喫茶店(アルス)さんところのフリーゲーム「天使と悪魔の旗印」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

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一本道、バトルとストーリーを交互に繰り返すタイプのRPG。短編ファンタジー。天使と悪魔の半端者の話。

 

 

 

というわけで、特徴など。

 

 

 

旗印に通じるストーリー

 

タイトル、初めはすごくシンプルだなーと思ってたんですよ。どういうゲームなのかが読めなくて、なんだろう、どこかに置いてある小説のタイトルみたいな感じを受けてたんですよね。

これがプレイし終わった後は、この「旗印」がこれ以上ないってくらいしっくりくるものになりました。

 

主人公は二人、どちらも天使であり悪魔である半端者です。ここと定められない心細さ、劣等感、奇異を見る人の目。そういう居場所のなさとどう立ち向かっていくか……そんな感じのストーリーでした。

精神的に強い子と弱い子、どちらのお話も見れるからすごくすんなり心に届いたように思います。片方だけだったら、失礼ながらたぶんちょっとばかりは反感を持ってしまったんではないかなあ。両方の考え方が見れたから良いなあと感じられたし、二人が二人であるからこその作品というのが本当に心で実感できたように思います。

 

 

 

オッと思わされるキャラデザ

 

天使と悪魔。と言うと、西洋なイメージはもちろん根強いかと思いますが、本作のキャラデザは細部がかなり異色です。特にルーンは、なんていうのかな、民族調な感じ?

元々この作者様は絵師さんとして知っていて、キャラデザ自体いつも好みだなあと思っていたんですが、本作でもそのセンスは遺憾なく発揮されていました。

全身画で隅々まで装飾等々が見れるのも嬉しい! 腰羽根良いですよね~。

 

欲を言えば、全身になると立ち絵の距離が離れてしまうので、バンと思い切り画面半分浸食する勢いで出してしまうか、バストアップでの差分が欲しかったなあと思いはしましたが……。サイドビューでデフォルメ版の立ち絵も見れるし、絵の種類自体はかなり多いので多くをねだりすぎかなー、なんて。

 

嬉しかったのは、仮要員で仲間にできるモブキャラにもしっかり立ち絵があるところ! てっきりちょっとしたセリフだけだと思っていたので、思わぬところでも登場してくれてとっても嬉しかったです!

 

 

 

シンプルなゲーム制

 

ダンジョン攻略などはなく、ゲーム性はシンプル。バトルの場は同じワンマップの繰り返し、道中のクレセントの反応などもほぼ同じで、敵の特徴解説も意味があるのは前半の2回ほど。若干の作業ゲー感は否めません。

それでも多少なりの工夫は認められます。サイドビュー形式自体がまず斬新ですね! どうしても自分はフリゲ慣れしてしまっているので、ウディタですっかり見慣れた画面とは異なっていて目新しかったです。

バトルの難易度はちょうどいい感じかな? MP管理が若干シビアで、レベル上げは必要な感じ。閃きシステムなども搭載されており、通常攻撃の連打だけにはならないような調整がされています。

ゲーム性をお求めの方とはミスマッチを起こしそうな気もしますが、ゲームらしさ、独自要素はきちんと持っている作品だと感じました。

 

 

 

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

 

こじらせた男の子と優等生の女の子、「太陽と月」と見せかけた「月と太陽」、男女バディものなどがピンとくる方に。

 

 

本作品のキャラがゲスト出演する別ゲー↓

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フリーゲーム「白緋ト云フ名ノ傾城」感想

「洞は底がないから虚と呼ぶのです」

支えて下さい、なければ穴ごと落ちて下さいな前置き。

 

 

 

えー、今回はJelikoさんところのフリーゲーム白緋ト云フ名ノ傾城」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

 

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遊郭を舞台とした、和風ノベルゲー。恋愛というよりは情念。一本道、プレイ時間は数時間ですが、その濃密さや美しさは延々と脳裏に焼き付く一作。

 

 

 

というわけで、良かった点など。

 

 

 

衝撃から始まり、静かに幕を引く話

 

花魁の死、という壮絶なシーンから始まる本作。プロローグがエピローグとはよく言ったもので、この死に至るまでどのような想いがあったのか綴られていくのが本作です。

男二人の視点が交互に繰り返されながら、物語は進みます。

目を見張るのがやっぱりこの目次ですよ! 美女を美女として描けるの、心底素晴らしいと思います。アップにするのが艶やかな唇というのもまた衝撃的で良い……。

 

そしてこの男二人の対比がとても良い!

背景の使い方が上手いんですよねえ。二人をしっかり、朱と白で色分けしたうえで、要所でふっと入り混じる。この感じが、真反対のようで似ているところのある二人の人間性の表現に繋がっていたなあと……。染み入る演出でした。

あと月の描写が大好きなんですよね! 普段は鷹野に使われる月の背景が、(確か私の記憶では)一か所、弥一のシーンで使われるところがありまして。あの美しい文すらも抑え、背景画像一枚でハッと弥一の想いにも気づかされる、あの演出が最高でした……!

 

 

 

どっぷりと感じられる吉原の色

 

花魁の口調からこまごまとした描写、登場する舞台の小物に至るまで。どこもかしこも「艶」で「粋」で「宵闇」のじっとりとした雰囲気を感じさせる作品でした。

文章がとにもかくにも美しいんですよね……。こういう遊郭物はなんとなし、用語や風習が独自で小難しい印象を持ってしまっていたのですが……。本作は見慣れない単語もすっと頭に入ってくる美文ばかりで、とても読みやすかったです。「~しんせん」「~かえ?」といった花魁独特の語尾も、逆に「~ですかい」「へえ、」といった男連中の江戸喋り?も隅々まで表現されていて、かなり濃厚でした。

この世界観は本当に本作でしか味わえない、「美」だと思います。

 

 

 

圧倒的演技力で魅せるフルボイス

 

サウンドノベルと銘打たれている本作。なんと驚き、地の文も含めて全てフルボイスです。

いや、終わってから知ってびっくりしたんですよ!

全部同じ人!? って!

確かに発音の癖などよく聴けばしっかりと同一人物なのですが、それ以上に、圧倒的な別人と思わせるだけの演技力がありました……! 無理な声替えをせず、自然と聴きやすい演技に収めてくださっているのもポイント高いです。

正直に言うと、少し活舌は気になったかな? な行が弱そう、演技がたいそう良い分耳に引っかかるところはやっぱり惜しまれたなあとも思います。

しかしながら! あの圧倒的な、息の詰まるような雰囲気を出せるのはやはりこの声優さんあってこそのものです。

 

もっと言うと、このゲーム作者様はノベルゲの画面映え重視で本文のフォントがかなり小さめで読みづらいのがたまに傷だなあと感じておりまして。そこをボイスでしっかりカバーして頂けていたため、相乗効果でよりよく感じました。

 

女性の台詞ももちろん同じ男性声優さんが担当されています。変に異性ぶった声ではなく、あくまでこの方自身の声帯というか……聴き苦しいベール抜きに率直な演技力で声を届けてくれたような印象でした。何より、白緋の、あの底知れぬ雰囲気の女性を、男性の声帯であそこまで表現できるものなのかと! 驚かされるばかりです……。

あとがきもちらりと触れられますが、この声優さんの筆致自体もとても抑制が効いていて、美しかったです。このお二人だからこそあの、触れればふつりと途切れてしまいそうな、絶妙な雰囲気が生み出せたのだろうなと思います。

 

 

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

艶やかで、繊細で、苛烈で、美しい。静かにじっくりと読み進めたい。そんな物語でした。

 

 

ちなみに!

2021/11/5に『Scarlet and Blank』というタイトルでSteam英語版がリリースされるとのこと。これを機に是非原作?日本語版?も広まって欲しい気持ちです。わくわく。

 

 

 

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