~「静かな夜に読んだ話を翌朝もまだ思い出す」
余韻が残る作品ラブな前置き。
えー、今回はフリーゲーム「こちら、XXXXサービス」「アイビー」「画家オリフィエルの娘」「sister in the xxx」「ゆたかな暮らしの屑かごは」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。
10分前後でクリア・コンプできそうなノベルゲーをチョイス。相互に関係性はありませんが、あえて挙げるなら、女性向け寄りかな……? 乙女ゲーや女性向けノベルゲーに慣れている方が作成しているゲームが多いかも。
なお、DLできる作品は全てDL版でプレイしています。
どれもさくっとプレイできるので、少しでも気になる作品があればぜひ!
『こちら、XXXXサービス』
10分ほどで全クリ可能、ティラノ製ノベルゲー。2周前提。
プレイ時間こそ短いものの、細やかなタイトル画面の変化や、イラストの構図を生かした演出などが光ります。ヤンデレらしいヤンデレの作品ですが、演出自体はミステリ?サスペンス?っぽいかも。
セーブデータが無い仕様で、全クリしても起動し直すとクレジットや後書が全部消えてしまうので、ここだけ注意。またティラノ製のお約束の通り、オート・文章スピード調整などの機能は一切ありません。分ゲーだから問題はないかな。
彼女が彼に言ってくれた言葉、良いですよねえ。
ここ上手くネタバレ伏せながら書くの難しいな。ええと、彼の異常性を誰一人として指摘しないまま終わる、真実は闇の中な雰囲気も好きです。
設定自体は、オムニバスな形式でいくらでも使いまわせそうな、汎用性のある内容なんですよね。だからこそ、この短さで多くを語らずブツンと終わらせるところが良い判断だなーと思います。
ミステリアスはベールの内側でこそ。
種明かしはないほうが、興奮するってもんですよね。
同作者様の他フリーゲーム感想記事↓
『アイビー』
https://www.freem.ne.jp/win/game/16917(現在は非公開)
10分ほどで全クリ可能、ティラノ製ノベルゲー。2周前提。
ティラノ製のお約束の通り、オート・文章スピード調整などの機能は一切ありません。セーブはできますが、再起動するとクリア状態がリセットされる?らしいのも注意。といってもスキップ機能はついているので、見直そうと思えば楽々です。
面白いなと思ったのは、ノベルゲーからシームレスにクリックADVのようなシステムに変化する点です。
えっ、と一瞬手を止めてから、恐る恐る手を動かして少しずつストーリーの断片を拾っていき、全て理解してしまう──。このプレイ感がまさに本編中の主人公の戸惑いや驚きを追体験しているようでした。
一方で惜しいのはストーリー。これ、冒頭の注意書きと台詞である程度先が読めてしまうんですね。もちろん先が読めても期待通りの楽しみはありますが、本作は別。演出を思い返すに、1周目の意外性と2周目の答え合わせを狙っている作品のように感じられるので、先が読めることがマイナスに働いてしまっているように感じます。
いやあでもやっぱり、凝ったギミックや彼女の仕草など、演出の効果が高いからこそとも思えますね。
決して夢作品というわけではないのですが、視点主の姿や反応が明記されず全てプレイヤーにゆだねられている点は夢やシチュエーションCDに通ずるものを感じます。この手のやり方をこういうタイプのお話に入れ込んでくるのは斬新だなあ。
斬新といえば、作品の色使いがビビッドカラー?なのも意外性がありました。お話自体はメランコリックだったりダウナーだったりな内容だと思うのでなおさら印象に残りますね。
そんなわけで、グラフィックと演出は満点です。
斬新な雰囲気ゲーをやりたい方は是非。
『画家オリフィエルの娘』
こちらも10分足らずで全クリ可能、ティラノ製ノベルゲー。ティラノ製のお約束の通り、システムは(中略)。
起動して、読み始めた瞬間のあの空気が忘れられません。
まさに美術館、展示のルートへ一歩踏み入れた時の感覚。扉が開けた、って感じがしたんですよね。すごく良かった。
全体的にグラフィックは絵画めいた雰囲気で、萌え系アニメ系とは一線を画しています。一方、途中でコミカルな絵柄やコマ割りを交えた演出で、取っつきやすさも出してくれていました。
間口を広く持ちつつ、自身の世界観へそっと連れ出してくれるようなプレイ感です。
特徴的なのが時代考証について。
いや、恥ずかしながら自分はあの時代のことも美術のこともさっぱり何一つ知らない人間なので、あとがきの諸々がとてもためになりました。そして何も知らなくても、あの短いプレイ時間の中でしっかりとあの地に立っているような感覚になれたのは、やっぱり土台がしっかりしているからなんだろうなあと思います。知識がある方はもっと細部に注目してテンションが上がったのかも。
お話は、うんと、伝記風と言っていいのかな……?
途中でふっとプレイヤーと距離が取られてしまうんですけど、その、空白の中で何があってどんな時が過ごされたのか、想いを馳せたくなる感じが素敵でした。欲を言えばもちろん、クリア後おまけや後日談などにもっと切り込んで長く楽しみたかった気持ちはありますが……。後書の裏事情など踏まえても、良い具合に想像の余地が残る作品だったと感じます。
彼女が“画家の娘”ではなく“彼女”の評価で大成したように、彼も肩書ではなく彼を誰かに伝えたかったのかなー、なんて。
『sister in the xxx』
さらっと数分で終わる、一本道ノベルゲー。兄妹愛、鬱展開。
本作、とある企画の参加作品であり、なんと一週間で制作されたとのこと。その短期間でこんなに体裁の整ったゲームができるのは、いやはや、すごいの一言ですよね……。
同じ語りがA→B→Cと続き、視点主のみが変わることで真相が明かされるタイプの作品。Aですでに察しはついてしまいましたが、それでも演出や見え方の変化は細やかで、丁寧な作りでした。
キャラクターはシルエット表示ですが、それでも背景画像に自然と馴染んでおり、作中の雰囲気はしっかりと感じるものがあります。
独特の絵の塗り?タッチ?が好みでした!
じっとりと陰惨な気持ちになりたい方向け。
「ゆたかな暮らしの屑かごは」
http://knr.webcrow.jp/(アップローダーにて配布)
一本道、短編。個人的に一気読みするには少し長い話だったように思うので、セーブロードがなかったのは残念。でもそれ以外の機能は充実していて、画面の色合いもメランコリックな雰囲気が魅力的です。
お話としては、惨めで哀れでかわいそうな子が報われたり騙されたりする話。
生活水準の違いで友人についていけなくなる、という設定と、そこからいじめに発展する流れの自然さがとてもしっくりきました。ストーリーの構成が違和感なく、主人公のすさまじい卑屈さにもそうなるだけの土壌があるので、すんなり飲み込めたように思います。
色々わかった後だと、やっぱりゴミ箱はゴミ箱だから輝けないんだな、と思わされるところもあり、こう、えげつなくてニヤニヤしました。仁科くんがヤり手で若干無自覚ヤンデレを見え隠れさせてくれるところも好き……。
何より、終盤にめちゃくちゃ良い情景描写がありまして!
一部分だけ引用してしまいますが、「けれど静かな夜なのだ」と続くあの段落、ものすごくグッとくるものがありました……! あの文章を読むためにプレイしたんだな、と思えるくらいの響きっぷりです。
暗い話が好きで、じっとりとした感情に浸りたい方にオススメ。
とまあ、こんな感じで。
どれも独特の余韻があって、短いながらも心に残る作品でした!