「目を背けるも向き合うも、幸せであればどちらでも」
だからこれは必ずハッピーエンドな前置き。
えー、今回はSEECアプリのところのスマホゲーム「籠庭のクックロビン」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。
選択肢で分岐する、ゴシックホラーノベル。鬱展開も病みもヤンデレもガッツリありますが、そのぶん、あたたかくて繊細な優しさも見られる作品です。
遊べる場所が二つあるので、まずはそちらの解説から。
どっちのデバイスで遊ぶ?
用意されているのはアプリ版と、スイッチ版。
switch版は有料ですが、その分ブラッシュアップしています。リンクも貼っておきますね!
公式サイト(switch版)
アプリ版は無料ですが、広告が入ります。また、課金で後日談や軽い短編集が読める仕様です。
どちらでもお好みのプラットフォームで是非。
なお、私がプレイしたのはアプリ版ですので、以下はアプリ版前提の感想を書いていきますね。
というわけで、良かった点など。
登場人物はフリークス!
斜視のメイドさん、片腕のないお針子さん、小人病と思しきお医者様、etc.
登場するキャラクターのほとんどが、身体的に、または精神的に特徴を持っています。
舞台となるお屋敷では人体実験を行なっているという噂まで立つほど。サーカスものに近い雰囲気も味わえる気がします。
こういった類のキャラを「フリークス(奇形)」と呼んでしまうのも、正直、ためらわれる気持ちはあります……。でも私みたいにこの手のキャラが好きな方には是非出会って欲しいんですよ。なのでこう言います。うぅ。
もうちょっとわかりやすくて広まった、優しい言い方が欲しいですねぇ。
個人的にすごく好きなのは、作中にリアルな病名や症例名が出ないところ。
説明のために私は前述で小人症等々書きましたが、そういう部分はむしろ、メインじゃないんです。皆の外見に驚いたり怯えたりするような描写もありません。
本作において重要なテーマは「幸せであること」。
この、特別さが特別と見られない感じ。それぞれの個性として触れる必要すらなく流れていく感じが、優しくて好きでした。
こういうキャラが好きな方々に、こういう部分が目立たないからこその良さを感じてほしいなあとも思います。二律背反っぽさがありますけどもね!
真と狂で揺れる天秤
選択肢によって変動する「真狂ゲージ」!
ホラーならではの疑心暗鬼を巧みに表現している、最高のシステムだと思っています……。どちらにも増減しない選択肢がまた、不安を掻き立ててくれて、良い演出なんですよねぇ。
目に見えて数値が変動することで、後戻りできない緊張感が出るのも好きです。
なまじどのキャラもロビンに優しくて、やりとりはほのぼのとするので、なおさらホラーシーンのぞくぞくが効くんですよ~……!
選択肢が多いおかげで、周回プレイがはかどるのも嬉しい点。
初見時は不可解で恐ろしかった反応も、真相を知ってからだと見え方が変わったり。あるいは何でもないちょっとした一言が、真相を知るとぞくっとしたり。さりげない伏線の多さにも気づけて楽しかったです。
終盤はじっくりと読み進められるシステム
本作はポイント制で読み進めることができます。
ポイントは時間が経てば自動で溜まる他、課金でチャージも可能。無課金であれば広告を見れば補充アイテムが手に入る仕様。
さて、気になる点は「結局無課金で全部読み切れるの?」だと思うのですが……。
結論から言うと、無課金でも全く問題ないです!
なのでお手軽に手を付けてみて頂きたい!
布教したい、この素敵な作品を!!
あえて挙げるなら、終盤は読み進めるコストが少々重くなります。作品に没頭したままでラストスパートを一気読みしたい方は、事前に課金の検討をするか、広告閲覧でアイテムをためておくのがオススメです。
可愛くて和む広告機能
さて、アプリ版の広告についてもう少し。
欠点は正直、あります。
文字送りの反応範囲がメッセージボックスだけで誤タップしやすかったり、時間差表示があったり、おまけページにも広告が挟まるのでせっかくの雰囲気が壊れたり……。
でもこれをやらないと開発元さんがゲーム作れなくなっちゃうのでね。あくまでこれからプレイする方はこれだけ事前に知っとくと、心構えができるかなと思います。
で、良いところもあってですね!
アイテムや攻略ヒントをもらうために自分から広告を開くと、ちょっとした1コマかけ合いセリフが見れます。もちろんどれもアプリの宣伝を含んではいますが、ちょっとした言い方にキャラの個性が見れて楽しかったです!
登場キャラが多めな本作。一言二言程度ではあるんですが、意外なペアや珍しい関係性も見れてニコニコしました。
とまあ、こんな感じで。
ゲームのチャプター選択がそのまま攻略ヒントにもなっているので、全クリアもしやすいと思います。ゴシックホラー、狂気と愛、優しいフリークスたちなどが気になる方は是非!
追記ではエンディングや真相を含む、ネタバレ感想。
同開発元の他無料アプリゲーム感想記事↓
ネタバレ注意!
色々分かった後の伏線セリフ
モスカ
伏線は多々ありますが、その中でも胸が痛かったのはやっぱここ。
モスカ「あたいバカだから、気づけないから、いつでも全部ゆってね!」
これさあ、さりげなくめちゃくちゃ泣けますよね……。たぶん、過去に倒れたロビンを真っ先に見つけたから、ですよね?
ロビンのお世話係として一番近くにいたんだろうし、だったらなおさら自分が気づければよかったのにって後悔したんだろうな……。
「言って」が「ゆって」なのも、まるでモスカの声が聞こえてくるみたいで好き……。
ポワソン医師にロビン大丈夫かなあって心配してたのも、初回プレイでは優しいなあって思ってたくらいだったんですが、色々知った後だと重みが違ってて苦しかったです。そうだよね、怖いよね、大好きだもんね……。“また”あんなことになりたくないよね……!
ポワソン
ポワソン医師と言えば、ロビンがとっさの言い訳で仮病を使った時の反応もすごく好きです。大事じゃあ大変じゃあ手術じゃーーーみたいなやつ。
あれも知らないうちはただのコメディシーンですが、色々知った後だと辛くなりますよね……。
気づけたかもしれないのがモスカなら、助けられたかもしれないのはポワソン医師なわけで、そりゃそうなる! でも絶対違うんだよ、みんなは本当に頑張ってくれたんだろうなって伝わってくるシナリオなんですよ……。だから苦しくて、良い話なんですよね……。
こういう「かもしれない」って、こう、周りの人間や私みたいな第三者からしたら、「そんなことないよ大丈夫だよ」って言いたくなるんですが。当人からしたら、そうはいかないであろうところが、もどかしくも優しくて、沁みます。
ロビン
上手いなあと思ったのが、「半年経った」と表現された時。
えっ、知らんうちに思ってた以上の月日が経ってる! 数日とか数週間じゃなかったんだ!?
この、ロビンとプレイヤー私の感覚のズレが、真相と見事に繋がって震えましたね~……。
そしてリネットと思いのほか年の差がある。
リネット・モスカ・ロビンの3人で年齢を説明するシーンも、今にして思えばミスリードのための伏線の一つだったのかも……。
城主様との淡い身分差恋愛、くらいの話だと思ってもいたので、想像以上に話がヘビィだったことにも驚きました。いやあでも確かに、部屋着が意外と大人っぽいなとは思ったんだよ……。
衣装チェンジしている間は、ロビンに昔の記憶が戻りつつある、または狂気に触れつつある暗示にもなってそうですよね。
エンディング
01夜の奥の秘密
ホラゲ定番、何もわからないままエンド!
でもこのゲームのすごいところは、こういうエンドをこの1つだけに留めてるところだと思うんですよね。
あくまでホラゲーであって、死にゲーじゃない。バッドエンドであっても、ちょっとずつ情報が増えて、先が気になるようにはなっている。こういうところ好きです。
02幸せな眠り
私はエンド回収で後からこのエンドを見たんですが、初回プレイでここに入ってたらものすごい疑心暗鬼になってただろうな~と思います。にやにや。
この辺、ホラーとしての作りが巧いですよね。常にふんわりと不穏が漂ってる感じ。
03再演
最初に見たエンドでした。
いやあ、彼を信じちゃったんだよ~。せっかくジャックさんが忠告してくれてたのにすっかり忘れてたんだよ、ごめん~!
ただ、エンドの内容自体はすごく好きでした!
こういう、ループだけどループじゃないエンド好きです。それに、バッドエンドの中でもけっこう真相の中心に触れてるエンドでもあるので、これが初エンドで良かったな~と。おかげで全体像が把握できたように思います。
04羽切り
旦那様ヤンデレエンドだ~!!!
いや、まさかね、アプリゲーで四肢(一部)切断エンドが見られるとは思いもよらず!
グロな描写は控えめながら、そのぶん、ロビンの心情描写がとても生々しくて素敵でした。いきなり叫び出すんじゃなくて、順番に現状を認識して、喪失を実感して、嘔吐。ぞわぞわきちゃいましたね。ありがとう、シナリオライター様ありがとう……。旦那様が穏やかな優しさを見せてくださるところも、隔絶って感じがして、好き……。
正直これが一番好きです。
ただね、まあ、こういうのは心が傷つくからこそ良いという部分もありまして。
色々見終わってからだと、旦那様側の方に感情移入してしまって切なくもなるエンドなんですよね……。旦那様の言う「全て任せろ」って裏を返せば、大好きなロビンにすら好きを返してもらえないまま、一人でずっと真相を背負い続けるってことなわけじゃないですか。
そりゃ、こまどりを孵らせるという目標はあるかもしれないけど……。旦那様、しんどくないかい。ロビンは確かにショックだったけど、あなたも亡くされた側でしょう。周りは使用人ばかりで、つまり対等な相手はいなくて、ずっと気を張ってなきゃいけないわけでしょう。……みたいね、ね。
たぶん、旦那様はもう狂ゲージに振り切っちゃってて、かつロビンのためにゲームオーバーもできない状態なんだろうな……。
色々と旦那様側に想いを馳せてしまうエンドでした。
05歪んだ恋
リーネエンドだ~!!
それこそ涙を流しながら大喜びした方がいるだろうなー、なんて。人気投票だと絶対高順位のキャラでしょ、リネット君。わかるよ。
リネットは全て知ってるけどロビンは何も知らないというこの情報差。ここがえぐみの強い恋のスパイスになってましたね~……。
旦那様を憎く思ってるわけでもないところがまた、苦しい! 深みがある! 好き!
本編中も、ロビンが好きだけど今のロビンは彼が恋したロビンじゃない、みたいなところで葛藤してたじゃないですか。で、手を取ったと思ったら今度は旦那様を裏切ってしまったという気持ちがついて回るわけですよね。ああ~……。
リーネが報われるルートはあるんだろうか。いや、でも、報われたらそれはそれでリーネ自身が拒否しちゃいそうな気もするな。分不相応、みたいな感じで。
いずれにせよ、このエンドでもずっと罪悪感がちらつくんだろうな……と思います……。
すぐ隣にいるのに一生届かない想い人。
06夢の中にて
「ずっと一緒」を文字通り叶え続けるエンド。
現実と向き合うよりもあったかくて優しい夢のままでいるほうが、という、なんとも複雑な気持ちになるエンドですね……。ありていに言えば病みエンドなんですが……。
幸せだろうけど、でも、とつい言いたくなってしまうエンド。
ドロッセルがここまで語ってきたことが染み渡る展開でもありました。正しい間違いじゃなくて、ただ見え方が違うだけ。それだけ……。
たぶんこの夢の世界って、やろうと思えば永遠に実現できちゃうんですよね、きっと。屋敷の皆、優しくて、旦那様とロビンが大好きだから。
もしかしたら暗躍する人は出てくるかもしれないけど、ロビン自身がもうこの道を強い意志で選択してしまっているから、多少のことでは揺らがなさそう。そこがまた……。幸せ、なのかな、なんだろうけど、うぅ……。
心がぐらぐら揺れる良いエンドでした。
07愛の巣
06と同じく「ずっと一緒」を望む展開ですが、こちらは死という形。
夢を見続けようにも見られなかった、ゲージの「真」の要素がよく効いていますよね……。
ここで、ロビンが「嬉しい」と感じてしまうところが、本当に正直なストーリーでとても好きです。
メタ的な考えになってしまいますが、この話を美しく仕立てるなら、ごめんねと謝罪して終わるほうが、こう、無難じゃないですか。でもここで、「嬉しい」が出てくる。このエンドもまた、本作のキーワードとして何度も出てきた「しあわせ」の形の一つなんだと示してくれる。
ここがね、痺れました……。ほんとこのゲームのシナリオ好き……。
ちなみに、ストーリーを最後まで読めるエンドのうち、初回でたどり着いたエンドでした。素直にプレイすると大半の方がここに着くんじゃないかなー、なんて。
08葬列
これまでのエンドでずっと、「幸せ」を唱え続けられていたこのゲームでね。
「辛いかもしれないけれど」「それでも一緒にいましょう」とロビンが言うのがね。本当に、本当に心に刺さるんです……。ぼろぼろ泣いてしまった。
向き合う覚悟を持ったお母さんは、強い。
このエンドは、ずっと辛さを抱え込み続けていたであろう旦那様や、自分を責め続けていたであろう他の使用人のみんなたちも救われるだろうなと思えます。
06のようなあたたかな展開も、きっともちろん幸せなんでしょうけれど、その歪みの裏で前述のとおりロビンを心配したりしてくれてる方々がいるはずなので。ロビンがそういった今まで裏に秘されていた心配にも気づき、優しさを受け取れる状態になれたのは、なんだか報われるよなあと……思っちゃいますね……。
一貫してロビンの望みは「ずっと一緒」なのも、良い。事実は一つで、色んな側面があるだけ。本当に物語の芯がしっかりしていて、どこをとっても納得があって大好きです。
エピローグ
どういうこと!?!としばらく混乱していました。最後に見たのが06の狂エンドだったもので……。へへ……。
混乱しながら読んでしまったんですが、えと、IFってことでいいのかな? こまどりが本当に孵ったってことなら、それはそれでハピエンなんだろうけど……。
と、ここまで書いてから有料コンテンツを見てみたところ、色々書いてありました。はっは。
さすがにここで内容を明示はしませんが。
とりあえず私は、エンド08の悲壮ながらも力強い覚悟が大好きなので、このエピローグはあくまでどこかのプレイヤーさんに向けての優しい夢の話だと思っておくことにします。
ただ。
物語の構造上、どうしても意思表示が限られてしまう「ドロッセル」。彼女もまたこうして救われる展開を用意してあるのは、とても優しくて、この物語らしいなあと感じます。
はあ~、語った語った!
ヤンデレも、ホラーも、切なくて優しい繊細な物語も、全部ぎゅぎゅっと楽しめた最高ゲームでした。出会えてよかった~!