「本当のおまえは本能のおまえとどう違うんだ?」
見たいところだけ見たものを本当って呼んでいないかな前置き。
えー、今回は丸得基地(旨味まづ)さんところのフリーゲーム「ZENOリメイク版」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。
15歳以上推奨、グロとリョナとカニバあり。男性キャラ同士で相手に強く執着していたり、発狂・興奮・恍惚シーンが含まれたりします。やったね!
免責事項
定義はさておきBLやブロマンスに近い見え方はしました。よって、本記事にはBLタグを追加させて頂いております。その方がプレイヤーさんの需要にも届きやすいかと……(作者様からのご指示があればもちろん外します)。
なお、本ブログはグロ・病み・鬱展開のゲームを支持するスタンスです。
というわけで、良かった点など。
手錠で繋がれるW主人公
真っ先に目に入りオオッと良さを感じたのが、メニュー画面!
失った記憶、見知らぬ男、怪しげな施設……。ゲーム開始時の緊張がそのままメニューにも反映しているかのようなグラフィックにとてもときめきました。
本作はメインキャラ二人が手錠に繋がれたまま行動します。歩行グラフィックもちゃんと片手が浮いていて、物理的繋がりを感じられます。
しかも、物語が進むとメニュー画面にも変化が! この細やかな作りには惚れ惚れです……。
ちなみに、イベントに合わせて操作キャラが切り替わることも。
探索ホラゲでの操作キャラ変更はよくある演出ですが、本作はこの切り替わりが自然でして。しかも「なるほどここでね!?」と声をあげたくなるタイミングで、ニヤニヤしました。先の気になるヒキが巧い!
というわけで、実質はW主人公。ゲームを進めれば進めるほど、キャラクター全員、見え方が変わってきます。詳細は追記にて……。
心身ともに損壊しよう!
驚かされるのが、猟奇展開の多様さ!
シンプルに肉体を損壊するものから、良心の呵責を逆手にとって追い詰めるものまで、バリエーション豊かなリョナ(男)を楽しめます。やったー!!
ゲームオーバーはもはや特殊エンドと言っても良いくらいのクオリティ。絶望顔グラや、加害者側のキマってるモノローグなど、そのゲームオーバーでしか見れないようなレア演出もあります。死に方を探すのがとても愉しかったです!
メインコンテンツはカニバリズム(人肉食)ですが、それ以外の追い詰め方も見どころたっぷり。あくまで主観ですが、リョナもまだまだ女性主人公が多い中、こういう作品はとてもありがたいばかりです。
細やかなグラフィック
メニュー画面だけでなく、マップに置いてある小物や装飾なども細やかで驚かされました。食堂の机に薬味瓶セットが設置してあるの、さりげなくすごくないですか?
顔グラもかなり差分が多く、特に驚愕や絶望の顔のバリエーションには目を瞠るものがあります。ちょっと顔色が変わるだけで没入度がグッと変わるんですよね……。素晴らしい……。単純に目や口を動かすだけでなく、一から描かれているであろう顔グラ差分も多く、目でも楽しめるゲームでした。
ただちょっとだけ難点もあり。
基本的にフラグを立ててからじゃないとアイテム回収してくれないので、けっこう見逃しが発生しやすいんですよね……。私みたいにグラフィックへの関心が低めのタイプからすると探索難易度は高かったです。
キーアイテムが光ったり光らなかったり、決定キーが必要だったり不要だったりで、操作が一貫していないのもややこしいポイント。
とはいえ、公式に攻略がご用意されておりますのでね! 有名な作品なので実況プレイヤーさんもいらっしゃいますし、少なくとも詰む心配はないと思われます。
多様に分岐するルートとエンディング
圧倒的なエンド数と終盤でルート分岐する仕様も注目したいところ。エンド1つ辿りつくまでに1時間ほどかかり、それだけでも十分満足感のあるエンディングでした。ですが、それでも完全クリアした後だと「初めのエンディングはある意味序章だったな……」と感じるほど。
鬱展開だけを詰め込んだリョナラー大歓喜のルートや、爽やかに一区切りのつくエンディングなど、読後感も多様です。
ちなみにエンド回収をスムーズに行うための公式完全攻略ページも存在します。ありがてぇー!
ただ、いったんは自分でプレイしてみるのを推奨します。初めから攻略ガン見で最も効率よくエンド回収をしていくと、逆に何が何だかよくわからないまま終わってしまう可能性があるので……。
分岐がかなり後半で起こるので、エンディング回収をしやすいのも助かるポイントでした。エンド回想のためのセーブスロットもギリギリで収まって安心。
とまあ、こんな感じで。
性癖にぶっ刺さったのが嬉しくてついその面ばかり取り上げてしまいましたが、
- 追いかけっこ難易度設定あり
- ストーリーのどんでん返し
などなど、リョナ部分だけではない面白さもしっかりある作品です。
グロ鬱ホラー好きさんは是非。
追記ではネタバレ感想。
キャラ語りやエンド感想などがまだまだ続きますので、是非お付き合いください~!
ネタバレ注意!
名前で呼ぶと誤解が起きそうなので、前野と継乃は髪色で「赤」「黒」と呼ばせて頂きます。ご了承くださいませ!
いきなり余談ですが、名前が春夏秋冬だったり、「の」が全部違う漢字だったりするの、気づくと面白くていいですよね。前中後ではなく前次後なのがひねっててまた興味深い。
ご機嫌斜め赤
初めにちょっとだけ、プレイしていてモヤった点を述べさせてください!
マイナス意見を目にしたくない方は、次の見出しまで飛ばしてくださいませね。
プレイ中一番引っかかってたのが実はイライラしてる時の赤でした。
「ZENOの発作が出てイライラしてる……?」と理屈をこじつけて納得させようとしていたんですが、実際は赤のZENOは治癒済みだったので、ただ八つ当たりしただけになっていたという。
これがあったので、どうにも赤には苦手意識がありました。ごめんね……。
ただ擁護しておくと、あれらのシーンをあえて入れる意図も複数考えられるんですよ。
1.怒涛のリョナエンドを受け入れやすくするための演出
2.赤がZENO患者という疑いの目を向けさせる演出
(食堂で赤だけが料理を食べたのも、「あそこで肉を食べたから発作が起こらなかったんだ!」とプレイヤーに思わせるためのミスリード伏線かも)
3.黒の異常性の表現
(あのないがしろな扱いを受け入れてしまう黒もおかしいなという視点。実際、トゥルールートに入って「何をされても受け入れるのが愛」は赤から手酷く扱われても健気に応答していたこととリンクして納得がありました)
などなど。
まあなので、せめてちょっと八つ当たり回数が少なかったらな、というところで。
そもそも本来なら殺人鬼の黒のほうがもっとヤベーことしてるんですよね? それなのに私が引っかかっちゃったのは赤なの、なんでなんだろうなー。身近なもやもやは認識できるが遠い世界の悪は他人事のように感じるというアレかな……。
エンディング
エンド数もゲームオーバー差分もかなり多い作品ですので、なるべく短めで失礼します。
AENDとBEND
手錠で繋がれていた二人の片割れだけが残る──
対比が趣深いエンドでしたね~! 赤は絶対黒が来ると信じているのもまた、彼らしくて良い……。他エンドでもそうですが、赤って生存に対してポジティブ(救えるもんは絶対救いてぇ)精神ですよね。
同じ成り代わりのままエンドではあれど、あえて前野アキを手放したつみAエンドとは全く異なる形になるのも興味深いです。
0END
ある意味ここが一番辿り着きやすいハッピーエンドなんじゃないかと思っています。無知は強い。
ゲームオーバー終わらないエンド
ゲームオーバーの中で一番と言っても良いくらい大好きです!!!!!!!!!!!!
性癖にぶっ刺さりました。エンドレス拷問。
間接的に人質を取られている状況なのもえぐくて好きです。黒を見捨てて良いなら力尽きてもいいし逃げても良いよ、みたいな。
前述した、他人が生きられるように頑張りつくす赤の性質が、見事に最悪の噛み合い方をしていて大好きです。
CEND
一生満たされないエンド。後之と黒で赤を取り合う構図になっていて、わあハーレムだあ……と現実逃避していました。取り合い(命の)。
命を捧げてもいいという力強い彼女の愛と比べて、このエンドの赤の想いは真逆だったからなんだろうとも思っています。黒もね、ほんとに欲しいのは命じゃくて、手段と目的を取り違えちゃったんだよね……。
DENDとEEND
DとEの違いは後之のモノローグがあるかどうかなので、実質差分のような扱い。しこりは残るけどそれでもハッピーエンド。
海の青が美しく、脱出できたなあと実感ができるエンドでした。
細かいですが、二人とも自室にエアコンが設置してあって驚きました。マップグラフィックがマジで丁寧……。
ゲームオーバー夢エンド
好き~~~!!
お兄ちゃんキャラが好きなのできゅんきゅんしながら拝見しました。この後サクッと処分されるんだろうな……。
トゥルールートで5Fのゲームオーバー部屋
本編の補足と言っても良いくらいに、黒の内心の矛盾が際立って描写されているエンド。性癖抜きにするとこのエンドが一番切なくて好きかもしれません。
殺されていいと思えるほど受け入れてほしい、でも、優しくされるのは怖い。殺す=能動、優しくされる=受動というのも重要そうな気がします。受動、つまりコントロールできないことはね、怖いよね。コントロールできない理不尽ばかり受けてきたもんね……。
つみAEND
ここで「友達」かあ~~~と頭を抱えました。
特に、トゥルーのDエンドやEエンドは、以前までの黒の性格も出ているのがあいまって、赤が保護者っぽくも感じていたので……対等になれるエンドはここなんだなあと……。
黒が治療を受けるというところは同じでも、役割が違うだけでずいぶんと違って感じます。友達にね、なれたらよかったよね……。
つみBEND
これまた性癖ぶっ刺さりエンド~~~!!
強制カニバ! 介護! うおおおおおおお!!!!
いやあ素晴らしかったですね。誰のを食べているか明言されていないのに、キャラのグラフィックが全てを物語っているという。赤は自分がなくなっちゃうまで食べさせるつもりなんだろうなあ……。
はたして黒が食べ切るまで持つのか、途中で黒自身が精神崩壊して先に逝ってしまうような展開になっちゃう可能性もあるのでは、などなど後日談を妄想するのが捗るエンドでもありました。感謝……。
つみCEND
赤独りぼっちエンド。
赤の絶望顔がすごく好きです。瞳孔ガン開きでメンタルぐらぐらになってる感じがね……。良いですよね……。
つみDEND
黒独りぼっちエンド。
いやでもこれ案外黒が生き延びれるからワンチャンと思ったら無理でした。たはー。
あれでも黒のZENOが治らなかったっていうのは、治したいという強い意志が黒になかった(絶望しきっていた)というのもあるんでしょうかね……。
ゲームオーバー溶けるエンド
赤のブーイングに爆笑しました。ごめんて。
赤のZENO発症はさすが天才様と言うべきか、テンションもやることも規模もぶっ飛んでて楽しかったです。ここまでくるとエンターテイメントにも見える。そして頬染め顔グラがかわいい!!
FEND
“僕”でお兄ちゃんな後之にときめきましたが現実は非常でした。
黒に押し付ける形になったエンドでしたね……。いや押し付ける選択をしたのは私なのですが!
ZENOを治すことが幸せに直結するのではないと思い知らされました。赤が黒を恨んだのも、明るいエンドではどちらも黒として受け入れていた流れと対称的ですよね……。
GEND
綺麗なエンディングだなあ、と、感じてしまいました。
やっと本音を聞かせてくれたね後之!みたいな……。妹のためだけに生きる、逆に言えば生きる屍状態だった彼がようやく自分と向き合えたなあと。
あとは永遠の夢の中……ということで、某ゲームオーバーと状態こそ似てはいますが。こっちの方が「やることをやり終えてもう絶望しかない」という点で、いきつくところにたどり着いたなあという気持ちです。
このエンド後の黒ってどうなるのかなあ。
なんだかんだで器用に生き延びてあっちこっちでサクサク殺しまくってそうな気がします。おそらくZENOは治ってないもんね……。
HEND
ナツ、あなたもヤンデレか……!!
ナツの印象が変わるとともにトゥルーEエンドの見え方も変わっちゃうな~! Eエンドで後之自身が「グッドエンドの先にバッドエンドがあるかも」みたいなことを言っていたように思いますが、まさにその通りだなあと感じました。
ナツの願いって正直、むちゃくちゃエゴに塗れているし怖いと思うんですよ。一見綺麗な願いに見えるよう整えてあるぶん、こっちの方が怖いなって。
ただ、その結果後之に生きるという活力が生まれるのであれば、悪い事ではないとも思うんですよね。
結局はエピローグでのセリフが全てで、絶対的なきれいごとではなく、清濁併せた感情を肯定し他人の手を取りながら生きていくことが大事、というのが本エンドのメッセージなんだろうなと……。だからこそ、ナツが善意と愛のみで生きているのではなく、身勝手な想いも持ち合わせているのだと明かされたのだろうなとも思います。
短髪後之むちゃくちゃ好きです。短髪姿もっと見たいよ~!!
その他小ネタ
・履歴書
よく見たら顔写真ってクリップ留めしてあるだけなんですね。でも普通は疑わないだろうな~……。巧い……。
・自販機
ここにもゲームオーバーエンドが含まれていることにも驚かされますが、あれほどの寮をぐびぐび飲み切れる赤にも驚かされます。
・電車
扉が開いて閉まって運行して車窓から流れる空が見える、の、グラフィックすごくないですか!?!?!?
言葉でこう書くのは簡単ですが、動く演出としてゲーム内に表現しきるのマジですごいと思います。電車の揺れまで表現されてるのあまりにも丁寧……。
キャラの感情が高ぶっているシーンの中には、強烈すぎて一周回って面白かったセリフも多かったです。溶けるゲームオーバーの赤のセリフとか、黒の親の「親戚に奴隷として売ってやったほうがよかったようだな」とか。
子を奴隷として買い取ってくれる親戚、会いてぇ~! あの世界の法律がどうなっているかは存じませんが、どれだけ使い勝手の良い駒であっても費用と手間の方が大きい気もしています。そこんとこどうなってるかが興味深いな……。いやここそんな深掘りするところじゃないとわかっちゃいるんですが……。
・ZENO発症中
黒「いいよねいいよねいいよね!?!?」
→許可を求める、他人にすがる、親の顔色をうかがう少年時代
赤「ヒャッハーーーーッ!!」
→自分の好きにやる、他人など無関係、“独り”の人生を感じる
青「~しますからねええええ??」
→わざわざ明言して圧をかける、思い知らせてやるという復讐心、普段あれだけ横柄な口調なのに発症中は敬語なの興味深い
分けるとこんな感じになるかなあと解釈しているのですが。ただ狂わせるだけじゃなくてこういうバリエーションの違いをキャラの表現として組み込んでるの素敵でした。
発狂パターンが多種多様で楽しかった!
・リメイク前
点滴で詰んだのでリメイク前のページやプレイ動画もちらちら拝見したんですが、グラフィックがまるっきり違っていてとても驚きました。ほとんど別作だあ……!
赤の顔がより凶悪でちょっと笑ってしまったのも良い思い出。患者さんに怯えられるけど話してみたら人当たり良くて懐かれた、みたいなエピソードとかありそうで好き。
リメイク前はレトロゲーに近い雰囲気でしたね~。ちまちましたかわいいグラフィックでえぐい展開が起こるギャップが売りな感じの。こっちもこっちで味があって好きですし、リメイクされても前データを残しておいてくださるのはプレイヤーとしてとてもありがたいです。大感謝!
いや~、書いた書いた!
まとめると、
・ゲームオーバー「終わらない」「夢」
・エンディングAとつみB
が特に好きです。
が、物語の深みや納得感が出るという意味ではどのエンドも本当に捨てがたく、必要な分岐であり、見たかった結末だったなあと思います。
気づけばほぼ6500文字!
ここまで読んでくださった皆様も、ありがとうございました。