うそうさ〜第二号室〜

フリゲ・鬱展開・ヤンデレ 万歳!

フリーゲーム「ゾンビユリコ」感想

「簡単お手軽レシピで君だけの不死の軍勢をつくろう!」

終末世界が訪れ間際な前置き。

 

 

えー、今回はシニカルとレトリックさんところのフリーゲームゾンビユリコ」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

一本道の短編SRPG(FEタイプ)。タイトルや注意書きからわかる通り、下ネタとグロが混ざり合うハイスピードギャグな一作です。紹介ページの犬でまず吹き出しましたので、興味があってゾンビネタが平気な方は是非ともご確認ください。

 

 

というわけで良かった点など。

 

 

シリアスになりようがない一直線ギャグストーリー

 

記憶喪失でゾンビとして目覚めた主人公が自らの身体と記憶を取り戻すため悪のネクロマンサーを倒しに行く――という、あらすじ自体は青年漫画だといくらでも熱く暗くできそうなものになっています。

が、この作品はとにかくギャグ一直線!

おいおいと突っ込む間を与えてくれないくらいハイスピードで畳みかけるようにギャグが繰り出されます。スタッフロールにすらオチを混ぜ込むこのセンスに始終にやにやしてました。

突飛な設定で笑わせてくるのもさることながら、テキストセンスが類稀なる出来なのも追い打ちをかけてくるんですよねぇ。「孔明の元のIQ」とかいうパワーワードどっから出てくるんですか。大好きです。各章タイトルも好きです。第四章のがめっちゃ好きです。

 

 

濃すぎるキャラ設定と覗きたくない深淵

 

そしてまた、ストーリーがギャグであるからにはキャラもギャグです。数々の色濃く出オチな設定がプレイヤーを襲います。

下ネタ注意の設定もわりあいここにかかってきますが、エログロではなくあくまで下ネタ。深みにハマるとどえらく生々しくなりそうな設定も、主にユリコがかっ飛ばしてさくさく次へパスしてくれるのでカラッとマイルド(濃い)味付けで楽しめました。

わりと悲壮なキャラ背景もなんだかせせら笑えてしまうこの不思議。最終章のロクシーとユリコの会話がめちゃくちゃ好きです。

 

 

FEライクな面クリシステム

 

システム自体は作者様の有名な他作「グレイメルカ」の流用ということで、FEちっくな仕上がりです。グレイメルカがなかなかてごわい難易度だったのに比べて、こちらのゾンビユリコはさらっとプレイできるイージーモードなイメージでした。

操作方法が独自なので、慣れない人は慣れないかも。全力移動などの使用スキルはいったんその場で待機すると発動選択肢が出てくる、というのを失念していて村人を見殺し掛けました。すまんすまん。

とはいえ、会話イベントのあるキャラは緑のマークが出たり、マウス操作のコンフィグが細かく調整出来たりと、ユーザビリティはかなり高めです。セーブのタイミングも区切りを入れやすくてちょうどよい感じ!

この手のSRPG慣れしてない人でも、クリアまではきちんとたどり着けるんじゃないかなー、なんて。うっかりシンジを事故死させかけましたが愛ゆえです!w

 

余談ですが、グレイメルカの重厚なストーリーと各キャラの強い想いに惹かれたクチなので、ゾンビユリコをプレイして「芸風が幅広いな!?」と心底驚かされましたね……! 引き出しの多い作者様は素晴らしい。

 

 

 

 難点

 

一方、難点も挙げるとするなら、

 

・プレイヤー不利になる会話イベント

・弓不足

 

あたりでしょうか。

前者は会話自体楽しいけれどゲームプレイヤーとしては会話させるのにためらいが出てしまうという点から(ギャグ演出だとわかってはいますが)。

後者はぶっちゃけ私がシンジ好きすぎて使いすぎたせいというのもあるんですが、ヤケ撃ちと興奮スキルの消費量を考えるともうちょっと欲しかったなあというところです。

けれども繰り返すようにゆるい難易度でできてはいるので、攻略に支障はないです。欲を言えば、というくらい。

 

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

フリゲならではの尖ったセンス、濃厚なキャラクター、ゾンビもの、お手軽SPRGなどにピンとくる方向けの一作でした。

 

 

 

 

追記ではキャラクターについて語り切れなかったネタバレ込みの感想など。

 

 

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フリゲサイト「alalaka」6作品感想

「私達だけに通じる世界こそが崇高なの」
たった二人分の異世界な前置き。

 

えー、今回は、alalakaさんところのフリーゲーム「くるみ」「シルバーフープ」「disenchanter」「ラヴ・クンティナ・ラヴ」「セレナイトの孤独」「SWEET+NEXT+DOOR」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。


どれも短編ノベルゲー、相互の関連性はなく、それぞれ短編で楽しめます。

 

特に「くるみ」と「シルバーフープ」がお気に入りかつ推しです。依存愛や独特の執着が楽しめるヤンデレ好きに嬉しい良作でした!
王道で人に勧めやすいのは「SWEET+NEXT+DOOR」かも。

(と、書いていますが案の定、記事を執筆してから公開するまでの間が長いせいで一部非公開になっています。すみません! 一部は手に入らないことをご了承のうえ、感想お読みいただけると幸いです。)

 

 

というわけで、個別に感想書いていきますね。

 

 

『くるみ』

 

[概要]
ジャンルはどろどろ百合の一本道ノベル。背徳感や、どことなく官能的な雰囲気がたっぷりと楽しめる一作でした!

 

 

[ストーリー]


百合に求めるこの、二人だけの世界観やどろっとした雰囲気がものすごく色濃く出ている作品でした。二人だけにしかわからない、異常なほど深い愛。萌えます。こっそり二人だけの約束をしたり秘密があったりするのも、女学生あるあるで良いですよねぇ。


ふんわりした甘い雰囲気だけでなく、急にどかんと落とされるのもどきっとします。常に緊張感を持って読めたのはこのおかげかと。そして緊張感が危ない行為に繋がると途端に色っぽい空間ができあがるというか。プール上がりの展開はとてもフェチな興奮があってどきどきしました。


読んでいる時は、くるみ→主人公への感情が読めなくって、くるみを悪女的に感じていたのですが。ラストまで読んでようやく、狂信者と女王様とで互いが満たし合える関係なのだと解釈しました。
ある意味このうえないハッピーエンド、しかしどろどろ依存症、魔性の女に狂わされる感じ……好き……。

 

 

[グラフィック・雰囲気]


とにかく雰囲気がよくできてて、デザインにすごく丁寧さが見られる画面構成だなーと思います。シンプルなんだけど濃厚な感じというか。うーん、こういうのは言葉で書いても駄目ですね。

いつもフリゲをプレイする時は他ウィンドウも色々開いてるんですが、この作品に関しては起動画面からのめり込みたくなる雰囲気を感じたのでそっと他ウィンドウを縮めてゲーム画面のみに集中してプレイしてしまいました。何なんだろうね、ああいう雰囲気作りってね。
独特のウィンドウサイズも読みやすいし、短編にぴったりで好きです。そして何より、シーン変更でさりげなく変わる上部のアイコンがお気に入り。

 

 

[一言]
どろどろした百合がお好きな方は是非とも!

 

 

 

『シルバーフープ』

 

[概要]


双子の男女が互いへの執着を見せながらもほのぼの過ごしていく一本道ノベル。さくっと読めて、ぞくっと一味楽しめる面白い作品でした。
余談。注意事項のところに書いていた単語から、そういう特殊プレイがあるのかと思いしばらく読むのをためらっていたのですが、実際のところそんなことは全然なく、問題の単語も数行出てくるだけでした。セーフ! 本当は嫌な予感するならやめたほうが良いと思うんですが、好きなフリゲ作者さんだったのでどうしてもやりたくって。地雷要素が私の早とちりで良かったです。

 

 

[ストーリー]


要素からして私の好きな双子もの。しかも、互いに向ける感情がそれぞれちょっと異なるように見えて、最終的に一つへ収束するのが気持ち良かったです。


スタンプの比喩やへその緒のイメージなど、喩えの表現がものすごく印象的だな~と思っていたらあとがきであえて入れられていることが発覚。こういうところからキャラ性を伝える構成もあるのか、と目から鱗な気分でした。


さらにこの作品でびっくりしたのはキャラの自然体っぷり。極端な思考をするキャラって、なんだか作為的だったり露悪的だったりすることが多いですが、このノベルはそういういやらしいところがなくて、純然と彼らはそう思ってるんだなあと信じさせられました。なんでだろう、台詞部分がナチュラルだからかなあ。ああいうキャラつくりは感動します。
ほのぼのと続く日常や、同居状態で行われる文通、あの空気感がとても好きでつい一気読みしてしまいました。

 

 

[グラフィック・BGM]


こちらの作品はとっても横長な画面で初めは驚きました。けど文字のサイズは絶妙で、意外にも読みやすい! いやー、二度驚きです。
画面も、滲んで独特の模様に見えるあのタイトル画像がシーン切り替えのたびに出てきて、なんだかじりっと心に焼きつきました。一区切りがわかりやすくて、実用面でもナイス。
そして今回思ったのは、BGMのチョイスが絶妙だなーという点。終盤に流れる、綺麗なのにところどころで軋むような音の入る曲が、展開も相まってぴったりでたまりませんでした。

 

 

[一言]
双子、依存、執着、日常話などにピンとくる方へオススメです。

 

 

 

『disenchanter』

[概要]
1周目は一本道、2周目から各キャラのルートに入れるプチノベル。ハロウィンな雰囲気と愉快なイケメンとの会話が楽しめます。

 

 

[ストーリー]


続編見たいなあ!というのが一番の感想です。
解呪師という設定がまず独特で良いなあと思いまして。毒にも薬にもできそうな無限の可能性を感じます。そこにあの、魅力的なキャラデザのお兄さん達が出てきたらそりゃまあ、「もっと!」とついねだりたくなるのは自然の摂理ってものです、はい。
あと、情報屋さんにはうっかり惚れそうになりました。弱みを握られたうえで紳士的に脅されたいです。とかいいつつ、別の彼の「だっこ」にもすっかりやられたんですけどね!
魔法使いの彼はどちらかというと役者さんなイメージが強かったので、魔法使いらしいところも見たかったなーと思ったり。

 

 

[一言]
5分あればプレイできる短編、ファンタジー好きな人向け。

 

 

 

『ラヴ・クンティナ・ラヴ』


[概要]
身分差と許婚がルールの村で育った幼馴染4人組の話。乙女ゲーだけど糖度よりは悪友なノリがメインかも。

 

 

[ストーリー]


視点主がクンティナっていうのが良いですよねぇ。
とっても仲良しなはずなのに周りが見えてなくって、でも周りを動かすパワーは人一倍。彼のおかげで読みやすく、自然な流れで4人の関係性やキャラもわかって楽しかったです。
会話劇の要素が強くて、自然な流れでふっと吹き出すようなセリフが飛び出してくるのも印象的でした。「急にバカになってどうした」がツボですw


まさか最後に男女論の定説に行き着くとは思わず、あの脱力感も含めて本音をぶつけ合える仲良しって印象が強まりました。いいなあ。ヒロインの強気さには驚かされましたが、親や身分の言いなりになりがちなあの場所だと輝いてみえるのかも。
イセベルが、メンタルやや弱い・知的・病むとやばそう、というたいへん好みなコンボなのでいつかまた会いたいです。

 

 

[一言]
10分あればプレイできる短編、恋愛未満友情以上が好きな人向け。

 

 

 

『セレナイトの孤独』


[概要]
水族館で正体不明の彼とゆるやかにお話する一本道ノベル。短編。

 

 

[ストーリー]


現職に悩みを抱える自分としては「うっ」と思わされるところもありつつ。
不思議な雰囲気とゆるやかな会話とに引きこまれながら読み進めていました。展開としてはゆったりとしていますが、きちんと物語の起承転結もあるので読後の満足感もあります。
何より舞台が美しいんですよね……。
まさに浸りたくなる作品です。

 

 

[グラフィック・BGM等]


透き通る色遣いとデザインがとても魅力的でした!
プレイしている自分も水族館に居るように感じられるほど。タイトル画面のBGMもなんだか心地よくて、クリア後も起動しっぱなしでぼんやりと余韻を感じていました。

 

 

[一言]
ちょっと一息つきたいときや疲れた時の清涼剤的に楽しめる一作。

 

 

 

『SWEET+NEXT+DOOR』


[概要]
同じ店で別のものを作り売りしている恋人未満な二人の大告白物語。ハロウィン、人外×人外、ほんのりヤンデレ

 

 

[ストーリー]


お互いの想いが見ているこっちからでもよくよくわかるのに、なかなか素直になれない、この両片思いな状態が本当にやにやしましたねぇ。
世界観的にはdisenchanterとちょっと繋がっているところもあるんでしょうか。だと嬉しいなあ。石を“飲む”ってのには痛そうでびっくりしましたが、結晶みたいなのを舌に乗せると考えると絵になって素敵かも。


そして、明るめの作品だろうなと思い油断していたのですが。ありました不穏な展開。ありがとうヤンデレエンド。大好きです。これだからこの作者様のファンなのです。

 

 

[キャラクター]


イケメンにホイホイ釣られてしまう私にしては珍しく、今作ではヒロインにぐっと心をわし掴まれました!


初めて到達したのがEND4だったからというのもあるかもしれませんが、自力でなんとかしてやるという前向きさといい、腹を括ると頑張れちゃうガッツの強さといい、たまりません。強いヒロインはいいものだ! そしてそんなヒロインがどうしようもなく追いつめられるのもいいものだ!


基本的にはわかりやすいツンデレさんで、言い過ぎたことを反省したりやきもち焼いたり、女の子らしさがあちこちに垣間見えて可愛かったですねぇ。ついつい「しょうがないなあ」って許したくなっちゃうくらい、内面の乙女さにときめきました。これは彼も惚れますわ。

 

 

[グラフィック]


シンプルに可愛いハロウィン背景と、読みやすい縦長文章。こういう広範囲に文章をベタ貼りするノベルゲーは時に読みづらくなるイメージなんですが、この作品は改行や文字の色変えのおかげで読みやすかったです。
二人のグルグル目な絵柄も好き。人外っぽさとポップな可愛さが出てていいな~と思います。ミミが腕組してほっぺたふくらましてツンとしてる表情が一番好きです。伝わるかなあ。

 

 

[一言]
両片思い、ロールキャベツ男子、ハロウィン、ヤンデレ等にピンとくる方へオススメ。

 

 

 

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(他作者様との合作)

明るめヤンデレノベルフリゲ感想  (『バレンタインの正しいしつけ』)

フリーゲーム「うつむき少女~みんなまとめて病みなさい~」感想 

フリーゲーム「病名・チュパカブラシンドロームサエジマ」感想

「精一杯がんばろう、というと途端に嘘くさくなる」

転びかけたら立て直すくらいが自然な前置き。

 

 

えー、今回はみずのみばさんところのフリーゲーム病名・チュパカブラシンドロームサエジマ」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

 

ぼかそうと頑張ったんですがどうしても書きたいところが多くて、記事全体がネタバレっぽくなりました。伏字もないので、未プレイの方は注意です。

 

というわけで良かった点など。

 

 

尖りまくった道化なセリフ集

 

物語は終始、チアキちゃんの妄想の中の一人芝居で進んでいきます。その妄想がまた奇天烈で、飛び出るセリフもそれこそパワーワードと言わんばかりの魅力と勢いに溢れた文ばかりです。美術1の闇、わかるぞ……!

ところで響きと勢いとセンスに溢れるセリフってついスクショしたり口ずさんだり写経したりしたくなるの何故なんでしょうね。余談。

そして、カオスなセリフでギャグゲー電波ゲーかと思いきや、根幹のストーリーはかなり重たいです。シリアスだからこそ、道化になって誤魔化すしかない悲壮さも見え隠れしてきます。そこがいい。

 

 

一人の世界で一人が動くストーリー

 

世界の危機っぽいことが起こりはしますが、奇跡は起きませんし魔法はありませんしオーディエンスも使えません。もっと言えば主人公の状況はプレイ初めからクリアまで何一つ変わりません。

でも、「プレイしてよかった」と思える感動が確かにあります。

なんというか、絶対にあり得ない理想論な展開じゃなくて、信じれる範囲の中での少し変化した未来って感じが等身大で好きです。どちらのエンドにおいても。

 

 

 

説明なしでもなんとなくわかるルール

 

りーどみーに書かれている操作方法は最小限で、けっこう手探りで進んでいくところもあります。が、システム自体は単純明快なので、試していくとなんとなく察せられるような作りです。

私はやってわからせるゲー(と勝手に呼んでいる)に少し抵抗があるほうなのですが、ことこの作品においては短編でとっつきやすいこともあり、するする進むことができました。

ラストのあれはやっぱりちょっと詰まったものの、あの手ごたえがあるからこそクリアが輝いて見えて好きです。

 

そして、ルールを掴んできたところでこのシステムの演出面が生きるんですよね!!!

この、文字や色の使い方、引き返せないところ、コマンド名の変化等々、あちこちにストーリーを示唆するニクイ演出が仕込まれていて震えました。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

 

あえて書くなら、セーブ不可かつ各章構成というのが戸惑ったかなー、なんて。とはいえ短編ゲーですし、ある意味よい区切りができているので、構成としては文句なしの満足です。

 

 

演出重視の方、照れ屋でちょいと愉快な女の子を応援したい方、フリゲならではの尖った作品と聞いてピンとくる方へ強くおススメします。

追記ではネタバレ込みの感想など。

 

同作者様の他フリーゲーム感想記事↓

 

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フリーゲーム「Wish Disproportionate」感想

「魔王別に本気じゃないし!勇者とか一捻りだし!お情けだし!」

よしよししてやりたくなる前置き。

 

 

えー、今回はみずのみばさんところのフリーゲームWish Disproportionate」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

実は先に同作者様の次作「キャンディリミット」のほうをクリアしていまして。そちらのあとがきにこの作品のことがちらっと語られていたのでプレイしてみました。結果、もちろん知らなくても支障はないけれど、知ってるとネタが1cm補完できるくらいな割合かなと思います。

 

ジャンルはRPGとありますが、私のプレイ感覚だとADVな印象。さくっと一本道な短編です。

 

 

というわけで良かった点など。

ぼかしてはいるつもりですがネタバレ注意です。

 

 

味のあるランダムコマンドバトル

 

戦闘のチュートリアルは一切なし、回復すらなし、やってわからせる脳筋仕様のなかなかに尖ったシステムです。

といっても、雑魚敵全てを倒そうとしない限りは詰まない難易度のはずなので、ある程度試行錯誤して慣れる余地もきちんと残してあります。画面もシンプルなのである程度ルールも察せれるつくりです。

そして、ある程度わかってきたところで挑みかかるラスボス戦がまた熱いこと! キー操作も合わせて盛り上がりがすさまじかったですねぇ。

 

いかんせん難点もあって、バトルに時間がかかるところは気になりました。キックや敵モーションなど、近距離系の技はもうちょっと移動を早くしてさくさくバトル感を出して欲しかったかなという気持ちです。ランダムコマンドの関係で待ちターンも出てきがちですし。

 

といってもやっぱり短編なので、序盤は気になるかな、くらいのもの。

強技は演出もド派手ですし、ドット絵のマオウちゃんが動き回るので見ていて楽しかったです。パートナーがいる時といない時とで会話にバリエーションがあるのもにこにこしました。

 

バトルコマンドの名前も良いんですよねぇ。

「カッコイイポーズ」「マオウ☆パンチ」「そして、宇宙へ……」などなど。見ただけで納得いくものから、なんぞこれと思わず手が伸びてしまうものまで多種多様です。

おそらく殺る気の%で発生率が変わってるんですよね。個人的に「おひるね」はレアな気がします。癒されました。

 

 

 

 一本筋でまとまりのよいストーリー

 

クリアして真っ先に感じたのは、このお話の主人公は二人なんだなあということです。

ファンタジーな世界観を構築しつつも設定は最低限に抑えて、ラストに向けて必要な情報が全て回収できるストーリー構成だったように思います。飲み込みやすく、のめり込みやすく、そして驚きもあって熱い。短編らしい良いまとまり具合でした。

おしまいがすっきり爽やかなのも、作品全体の明るい雰囲気に合ってて良い感じ。

 

 

 

思い悩みをぶっ飛ばすな脳筋マオウちゃん

 

魔王様を名乗りはするものの、つい「ちゃん」付けで呼びたくなる主人公です。コミカルな会話がまたかわいい!スカッと明るい主人公ってやっぱり元気が出ますよね。

 

 

とまあ、こんな感じで。

 

普通にプレイすればシリアスと笑いとが交錯する友情物語なんですが、ついつい百合として見たくもなる、かわいい女の子二人の世界征服ゲーでした。陰陽CPはいいものだ!

 

熱い友情物語、オリジナル戦闘などにピンとくる方向けの一作です。

 

 

同作者様の他フリーゲーム感想記事↓

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フリーゲーム「キャンディリミット」感想

「たとえ刷り込みでもやりたいことはやりたい!」

中身は本気な前置き。

 

 

えー、今回はみずのみばさんところのフリーゲームキャンディリミット」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

お店を開いてお菓子を売りまくる育成ゲー。経営要素は少なく、どちらかというと作業ゲー寄りのプレイ感です。

 

そして、これを言うことで既にバレるような気もしますが、とにかくネタバレがもったいない作品でもあります。なので、少しでも気になっている方は一度自分でプレイしてみることを強く強くオススメします。

 

記事内でもぼかすつもりではあるのですが、やはりバレの部分が魅力でもあるのに加え得て私が書きたがりなので、未プレイの方はご注意ください。

 

 

というわけで良かった点など。

 

 

使い分けの妙が見えるフォントとグラフィック

 

フォントは手書き文字風、主人公キャンディの顔グラは大口開けた笑顔、背景は手描き感満載のゆるゆる具合。全体的に、小さな子がクレヨンで描いたみたいな雰囲気の画面構成になってます。このゆるゆるさがすごく作品の雰囲気に合ってるんですよねぇ。

で、それだけじゃないからこそ話題になるものでして。

途中からパッと雰囲気が変わるんですが、そこにきてやっとこのゆるい雰囲気の神髄に気付きました。フォントや画風の使い分け、さらには文字表示のやり方や、シルエット表示や暗転で黙して語らせる等々、とにかく視覚的な演出がばつぐんです。

 

 

 

作業ゲーと戦略ゲーのほどよい配分

 

前述の通り、序盤はゆるゆる作業ゲー、途中からけっこうピーキーに戦略を練るゲーに様変わりします。

狙った素材が手に入らないのは商売ものあるあるですね。とはいえ、終盤ではちょこっとブーストがかかるので、レシピが全く埋まらないということはないはず。

序盤余りがちな素材がきちんと後で使えることもあり、上位互換な探索ポイントが無いので最後まで初期の探索場所へ通えるところも良いなあと思いました。始まりの思い出を大事にできる感じ。

 

緊張感あふれる展開のあと、ゆるっと進み、そしてまた引き締まる。物語の展開に合わせてプレイ感覚もほどよい緩急がありました。

 

 

 

タイトルの意味に痺れるドキドキ感

 

明確なタイトルコールこそありませんが、プレイしていくうち、このタイトルがザックリと刺さってきます。

多少の無理は効くような難易度になっていると思われますが、ある程度「やってわからせる」雰囲気があるので、ゲーム慣れしてない人にはきついかも。

とはいえ、説明書きはしっかりしているので、チュートリアルが無いと足踏みしがちな私でも無事覚悟を決めてプレイできました。なのでやっぱり、「とりあえずやってみる」が一番合う作品だと思います。

 

 

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

あっと驚く展開や、ほのぼのとシリアスの混在、前向きに頑張る女の子が好きな方向け。

 

追記ではネタバレ込みの感想など。

 

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フリーゲーム「金リカ2」感想

「元を生かしてこそのアレンジ料理」

暗黒料理は冒涜的な前置き。

 

 

えー、今回はVIPRPG紅白(イグサ様)のフリーゲーム金リカ2」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

正式名称、というかタイトル画面の作品名は「金髪リカバーちゃんがダンジョンに潜るゲーム2~はい設の物語~」。2と書かれていますが実質1のリメイク作のため単品で遊べるとのこと。

実際私はこの作品から入ったんですが、目立つ前作ネタも無くすんなりと最後まで楽しめました。

 

まず前提として、VIPRPGのため独特のノリと効果音が多いこと。もしもシリーズや魔法具現化の設定にも触れているため、ある程度VIPRPGを遊んでキャラの設定を知っておいてからのほうが楽しめるかと思われます。

 

さらにもう一つ、最重要な前提としてこの作品には元ネタがあります

フリゲ好きなら一度は名前を聞くであろう名作、『Ruina ~廃都の物語~』です。

こちらもある程度、中盤くらいまで進めておくと味わい深くなる――というよりもどうしても構造上原作のネタバレを含んでしまうので、未プレイで金リカが気になってる方はこれを機に遊んでみることをおススメしたいです。

 

 

 

と、紹介が長くなりましたが、以下良かった点など。

軽いネタバレもありますので察しの良い方は注意。

また、Ruinaのほうのネタバレも一部含まれますのでご注意ください。

 

 

 

これでもかと仕込んである原作リスペクト

 

かくいう私はVIP版Ruinaと聞いたからこそDLしたクチなのですが。

基本システムのみでなく、ボスの攻略方法やダンジョンの小ネタなど、あちこちに原作リスペクトが感じられ、まさに愛がなければ作れないであろう一作でした! 

起動してダンジョン潜って、BGMでまずもうにやけますもんね。夜種王等のインパクトあるネタのみでなく、細かい探索ポイントやのっぺりと動くカーソルの速度、料理・生存術のコスパの良さなどあちこちに原作らしさが伺えて、「分かる人にはわかる」ファンならではの楽しさがありました。

 

 

分岐する世界とオリジナルな味付け

 

さて、上記のように原作愛が多々感じられる一方で、リスペクト元へおんぶにだっこではないところもこの作品の良いところです。

原作おなじみの流れが続く中、中盤になると少し雰囲気が変わります。一部の要素には既視感があるけれど、おや?という感じ。そこからどんどんお話は「Ruina」ワールドではなく「リカバーⅠ」のワールドへ移っていくわけです。この切り替え方が自然で良かったですねぇ。さらにはこうして原作から分岐してしまうことで、元のネタバレも防止できるという。まさに一石二鳥ってやつです。

オリジナルストーリーの部分は特にボス戦前の勢いと戦闘前口上が熱くて、こちらも負けじと片手を握りしめながら全滅しました。楽しかったです。

 

本筋以外のところで言うと、ダンジョンやボスの攻略で一部、オリジナリティある味付けをされている展開があって、ここも思わず舌を巻きました。

例えば序盤なんで書いてしまいますが、魔将ナムリスの攻略。言われてみるとそりゃそうだなんですが、バトルが始まるまではまったく思い当たらなかったので、「ああー!なるほど!!」とつい声に出してしまいました。

みているよネタや暗号文がVIPな変換されてるのもくすっときます。

特にラストのマップが幻想的で、それまでの雰囲気にしっくり噛み合っているのもグッド。

 

TTEXPや休息ポイントがけっこうゆるめに設定されていたり、やろうと思えば中盤でSP全回収出来たりと、難易度が本家と比べてやや易し目なのでとっつきやすいのもありがたかったです。序盤の厳しさは通過儀礼

 

 

 

豊富なキャラと会話分岐の多さ

 

原作でも会話分岐はかなり細かくありましたが、こちらも負けず劣らずな設定ぶりです。

終盤で街の人の会話やパーティの話が変わるのも好印象。さすがにSHIFT会話はないものの、ダンジョン内の探索セリフも種類が豊富で、キャラ選択をする探索ポイントではついわくわくしてしまいました。「ほめてほめて!」がかわいすぎる。

キャラによっては意外な解法をやってのける子もいて、キャラ萌えの面でも楽しめたように思います。

 

 

 

惜しいところ

 

一方、難点としては仲間加入に関するバグ関係でしょうか。

  • 具現化錬成のサポートキャラが死ぬと再召喚できなくなる
  • 町に帰ってきて酒場に行かず再びダンジョンへ潜ると、戦闘やメニューは仲間がいるが探索ポイントでリカバーⅠだけの判定になってしまう

一度パーティを解散すればいいだけの話なので軽微ではありますが、惜しかった点です。

 

あと、上位職の証が2つしか手に入らなかったのは仕様なのかな? SP余っちゃったのでどーんと使いたかったところでした。

 

 

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

 

Ruinaが好きな方、探索重視のダンジョン探索ゲーが好きな方向けの一作でした。

 

追記ではガッツリネタバレ込みの感想など。

 

 

 

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フリーゲーム「Merry X'mas you, for your closed world, and you...」の感想

「現実からの逃避としてフィクションを使うのであればゲームは絶滅してしまう」

プレイヤーを想定しなければゲームは動かない前置き。

 

 

えー、今回は喘葉の森さんところのフリーゲームMerry X'mas you, for your closed world, and you...」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

まず、問題作です。

いや駄目だとかアンチだとかじゃなくて、すごくこの作品は誠実で真摯にできてるんです。“ギャルゲ”を求めてプレイすると後悔しますがギャルゲ慣れしているプレイヤーにプレイしてほしい作品でもあります。なんだこれ。

ともあれ、一本道のノベルゲームです。

 

 

 

というわけで良かった点など。

 

 

徹底したメタフィクションノベル

 

公式の作品紹介文が非常に秀逸なので、もう引用してしまいますが。

「背景素材が用意されていないがために学校から出られない。

 立ち絵素材が用意されていないがために男キャラが登場しない。

 定型的な言動しかできないおよそ脳を所有しているとは思えないヒロインたち。

 あまりにも乱雑に構成された脚本。

 ご都合主義の主人公補正。恣意的な設定。

 

 そして主人公は、自分がそんな糞くだらない物語作品の主人公をやらされているのだと自覚している。」

 

これに尽きます。初めから終わりまでこの姿勢を貫きます。

つまりはメタの極致を追求した一作です。

 

ヒロインに対しても“人”として扱ってはいないので、ところどころ暴力描写があったり凌辱描写があったりとなかなかハードな展開もありはします。が、とにかく理由と検証が精緻に組まれているので、演じさせられている感じがなく素直に読めます。

暴れたり狂気したりの展開を、受け止められる文で書くのって実はめちゃくちゃすごいと思うんですよねぇ。見せつけるような露悪感もなく、わざとらしい狂いもなく(あったとしても次の検証のための一歩として繋がり)、納得感がありました。

鬱展開というよりも「これをどう転がしていくのか?」という興味で一気読みしました。

 

 

 

初手で詰んでるトライ&エラーな生活

 

学校から出れない、テンプレの会話しかできない、まともな生活が送れない。

等々、主人公はとにかく初手で詰んでます。

そこでドンヨリと無力を嘆いたり何かしらの人間的成長を育んだり仲間と共に力を合わせて立ち向かったり、を決してしないのがこの主人公の異質であり魅力でありメタなところです。とにかく終始冷静で、仮に取り乱してもその混乱に対して分析は欠かしません。

 

この作品の大きな魅力は試行! ここが最たるところだと思うんですよねぇ。

それを体現するように主人公はとにかく頭を動かします。そして実証や検証を積み重ねてトライ&エラーな日々を繰り返し続けます。この辺りはループ物の文脈にも近いかも。

ギャルゲをさせられながらもギャルゲから徹底して逃れようとする、この歪みが一部でホラーな描写になったり電波な描写になったりもします。が、それすらも手の内であり実験の一つという印象でした。

 

 

 

デッサン力のある崩壊した立ち絵

 

公式紹介ページを見て頂くと、あれっと首を傾げたくなるスチルがちらほら見れます。少なくとも立ち絵の可愛さを推すにはちょっと厳しい画力です。が、画力のガの字すら知らない私がこう言い切れるのは勿論理由があります。

 

せっかくなので公式紹介MAD↓

www.nicovideo.jp音ハメが最高ですよね。好き。

 

グラフィックそのものというよりはこの、あまりにもギャルゲらしい制服・髪型・目の描き方・全てがメタとして切り込まれていく徹底ぶりに着目したいところです。わざとデ狂い起こしてる立ち絵、ここまで狙っているとは驚きで思わず唸りました。

リアルな写真がギャルゲ画風に混在したスチルはもう、ギャップやミスマッチを通り越してグロテスクですらあります。この歪み、違和感、生々しさをとくと味わえるのもこの作品の魅力の一つです。

 

 

 

話題の引き出しだらけの濃厚なテキスト

 

言ってしまえばメタをメタとして斬り捨てる構造がどこまでも続いていくわけなんですが、それを飽きさせないのがこの主人公、通じて作者様の引き出しの多さです。

デッサン理論から哲学科学人体の云々に文学描写まで、そこにギャルゲ文脈と二次元あるあるなテンプレまでぶち込める筆力がとにかくやばいです。教養ってのはこの幅広さに出てくるものですよね……羨ましい……。

かなり噛み応えがある文かつ一部の専門用語は知っているものとして進むところも多くはあるのですが、省略される部分は枝葉がほとんどなので、根幹の部分の理解はスムーズにいくのではないかなと思います。わかった気になってるだけかもですが!

 

 

とまあ、こんな感じで。

哲学、電波ゲー(の皮をかぶった実験ゲー)、ギャルゲ、メタ展開などにピンとくる方向け。

追記では考察というか、クリアして痺れと共に書きなぐった解釈など。

 

 

 

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