「どうか世界をより善きものに」
しかし我と手段と力が問題である前置き。
えー、今回は池田(たんち)さんところのフリーゲーム「EpinephrineDrive!シリーズ」(「EpinephrineDrive!」
「UGO」「傷だらけの蝶が飛ぶとき」「気狂い風船 -CRAZY BALOON-」「デリカテッセン-窓から見る戦争について-」「魂心裁判」)の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。
VIPRPG、見るゲ・読むゲのシリーズもの。時系列はそれぞれ同梱テキストにありますが、公開順でプレイする方がすんなりわかりやすい気がします。
共通して登場するのはセイントⅡですが、多くのキャラが登場します。
というわけで各作感想。
元々メモで終わらせるつもりだったので、いつもの記事と比べて文体などなどフランクですがご了承ください。
『EpinephrineDrive!』
全ての始まり。30分くらい。世紀末世界で光を伝播させていく二重人格記憶喪失少女セイントⅡの話。アクションシーンかっけ~!
『UGO』
5分くらい。ト書き文台本。モンスターも人間も同じで悪い奴は悪いし良い奴は良いぜ~的な流れをやりたかったのかなって思う。「傷だらけの蝶が飛ぶとき」にある要約セリフ見とけばOK。
『傷だらけの蝶が飛ぶとき』
[概要]
1時間くらい。魔法具現化が俘虜となって、理不尽に処刑されたり暴力を振るわれたりする世界。
[感想]
男女カプ厨私大歓喜。ノックアウト×ウィンドⅠが展開もキャラもめちゃくちゃ良かった……。絶望も希望も両方受け取れるCPだった。
王様という巨悪は確かにいるんだけれども、ソイツさえ倒しときゃよい問題ではなく、過去の恩や国家という信仰を持ち込んでるのが上手いなと思った。Epinephrineの時から、死が問題なのではなく「その人が何を託すか」「誰の心を動かせるか」を重要視しているのがこの一連のシリーズなのかなと思う。
ダークネスⅠの動機、魔-ミンというわかりやすい過去エピソードをしっかり尺取って語る一方で、お姉ちゃんとお兄ちゃんに関してはたった一言で終わらせてるのがものすんごい痺れた。
行をする皆に食べ物持ってくるくだりもそう。ヘラヘラ馬鹿なことばっか言うのに、肝心要はがんと口を噤んで、必要なたった一つの覚悟だけきっぱりと言うのがすごく良い。特にブライアンの前で茶番をしてた時の、「なんだこいつ」になってから、直後のハッとする瞬間がたまらん。あのワンシーンのために読み進めていたと言ってもいいかもしれない。
[一言]
起こった事実だけを見ればバッドエンドだし報われないキャラも多々いるんだけど、ハートの部分はなんだか爽やかになれる、不思議な読了感だった。
『気狂い風船 -CRAZY BALOON-』
[概要]
30分くらい。悪の道化師ブロウと、歌姫妖精さんと、ヒーロークロの演劇。
[感想]
なるほど私は中華丼。30分くらいのはずなのに、ものすごい濃厚だった。シラノ履修済で良かった~と思ったけど、知らなかったらもっと「???」ってなってたのかなと思う。でも最後のアーディスの優しい嘘の話もあるから、やっぱり大筋はわかるようにはなってるのか。
悪役を謳うブロウとヒーローに憧れるクロが交差する展開、やっぱり熱かったなあ……。最後にシロが覚悟について語ってくれたからなんとかついていけたようなところもあった。ブロウ側に当てはめると、「誘拐」「脅迫」「暴力」っていう悪らしいことはやってるんだけど、それすらも「笑われる」に収まってしまう彼の天性がようやく最後の最後になって、覚悟と魂をかけたものに成った、悪のガワを被ったただ一生懸命の男が誕生したということなのかなあと思う。
真と偽、善と悪の対比とモチーフについて。初めはピエロとブロウなのかなと思っていたんだけど、シラノの演劇が始まってやっと、今までのブロウ≒ピエロみたいなもんで、どっちかというとピエロとシラノが対比だったのかなあと……? で、シラノもこれまた影役者なキャラなわけで、だからブロウは悪役として輝きたかっただけではないというエピローグに繋がるのかなと……。
なんかとんちんかんなことを書いてそうでやだなあ。
各視点ごとの展開もしっかりしていて、混乱せず先が読めるような構成にもなっているのになお、混沌と爆発を感じた。
[一言]
魂が燃えている話。
『デリカテッセン-窓から見る戦争について-』
[概要]
時間を忘れて読み切ったのでプレイ時間覚えていない。今までの集大成および結論って感じ。
[感想]
区切りながらやろうと思っていたのに気づけば一気に駆け抜けてしまった。
群像劇なのに見やすいのすごい。たぶん、シーンごとにメインとして登場するキャラがそう多くないから、くるくる入れ替わっても見やすかったのかなーと思う。
みんながみんな「わからない」と言うのがなんだか印象的だった。平和とは強さとはって正解がない問題だとは感じるんだけど、この話の各々キャラ達は各々の答えや信念を持って進んでいるとも思っていて……。だから、答えが「わからない」というより、最善なのか全員が取るべき最適解なのか相手の葛藤を切り捨ててなお選ぶべきものなのかが「わからない」なのかなあとか。最期に自分が納得できるかどうかがその「わからない」を明かすキーで、それって極論人生を歩むことと同じだよなあとか。つまりデリカテッセンは人生。うーん?
どのキャラも、それこそアラマキみたいな悪のキャラも一貫してて好きだし、自らを決め切れていないザックみたいなキャラもそういう迷いを持ってるキャラとしてブレずに描かれてたのが好きだった。それぞれ個性が光る、ってやつだ。
サモンの、「俺は他者の生き死にを決めれる程偉くねーんだ」がそのまんま、アレックスの生き様に跳ね返っていくな~と思った。だからこそサモンは勇者の「補欠」なんだなあとも思った。
世界の膿を出しきって自らの信念を貫き通したという意味でアレックスの生き様は本当に、言い訳のしようなく見事なんだろうとは思うし、讃えたいんだけど、ヒーローと言い難いのもわかるし、いやでもなんか社会とか集団とかそういうもはやどうにもならないほど巨大な怪物に同化しながらも戦った孤闘の生き様を一刀で「だってあいつクズじゃん」ってなるのは違うと思ってて、あ~~~~~ってなる。
気狂い風船でのアーディスとクロの会話がめちゃくちゃ好きだったから、ぐぅう……ってなってしまったな……。
[一言]
この方の作品は、なんかもっと、こんな私みたいな回りくどい言い方じゃなくてもっと簡明で熱い言いようがあるはずなのになあ!!ってなる。私には語彙力がない。もどかしい。
『魂心裁判』
[概要]
セーブ1か所、他と比べると次セーブタイミングまでガッツリボリュームあり。腰を据えて。
デリカテッセンの前日譚だけど、文脈としてはデリカテッセンの後にプレイする方が読みやすいと思う。
[感想]
「我々の存在意義とは」「キャラクターに魂はあるのか」辺りがテーマになるのかな……。他作品よりもメタいというか、「勇者」「悪役」といった役割に殉ずるキャラクター、みたいな要素が多かった。
これまでのシリーズでは「種を蒔く」という表現が多かったように思うんだけど、この作品はそれが実るまで見届けられなかった、見届けることを目的としてはいなかった人たちの話って印象……?
今まではシロみたいに見届ける、受け止める人たちがいて、それでエピローグが成り立ってたように思うんだけど、本作は名を残されなかった勇者の話なので、今までとちょっと違った後味になってた。それでも各個人が、「ここにいる」と叫んだ、存在意義を断定されたことはやっぱり救いだし次代へ繋がれる何かだったなあ、そうであってほしいなあと思う。
ナイ軍との戦い、変則魔法との戦い、どちらも演出と戦い方がマジでかっこいい……! アーマーブレスみたいな達人の静の戦いと、ナイみたいなド派手全力闘争と、両方魅せられるのほんとすごい。惚れ惚れ。
[一言]
記載の通りデリカテッセンの補足、余韻に浸った勢いでプレイして良かった。
とまあ、こんな感じで。
元々は『魂心裁判』の名前をTwitterのTLで受動喫煙して、プレイするならシリーズ履修しておくべきだよな~と思って進めた。結論、きちんと履修してほんとに良かった、感慨深かった……!
DLできなくてプレイできてない作品もいくつかあるけど、現状でメインどころは堪能できたし、満足してるからオッケー。
思想やセリフは冷静に、演出や主張は魂を燃やして行われる、とても良いシリーズでした!