「叶わないとわかっているこの想い、捨てられないならどうするか?」
無理に捨てたら歪んだ形で戻ってきちゃった前置き。
えー、今回はspice+さんところのフリーゲーム「シノビハリセンボ・秘」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。
姫と忍の嘘と想いを巡る、恋愛ノベルゲー。全クリアまで30分くらいの短編です。
ちなみに本作、昔は吉里吉里製のノベルゲーとして公開されたそうなのですが、私は過去作一気DLセットからDLしてきたので、リメイク版のティラノ製verをプレイしています。
というわけで、良かった点など。
テンポよく気持ち良い画面転換
ゲームを起動した時点ですでにアッと驚かされました。クリックと、画面の動きと、カカンッと鳴る拍子木の音がそりゃもう気持ち良いんですよ!
ストーリーにしても、ささっと舞台設定を示しつつ、ややこしいところはスッと省いて本題へ。とにかく読みやすくテンポ良し、短編にピッタリのプレイ感でした。
公式で「ほろ苦」とある通り、ルートによってはシリアスなムードが流れることもあるのですが……。明るいエンドへ進むと、これまたカカンッ!と小気味よい音が鳴って、雰囲気ががらりと変わります。この「ここからギャグなんだな」とパッと察せられるのも強みだな~と感じました。
しっかり和と時代を感じる文体
いやもう随所の言葉選びがすごい! 和! しかも格式高い!
ガッチガチに小難しいんじゃなくて、ちょっとした単語に教養滲み出てるところがまた良いんですよねえ……。本筋は読みやすく、でも雰囲気はしっかり和風。乱世の雰囲気や嫁入りの籠運びなど、さりげないところに時代を感じさせるエピソードもあって、舞台づくりが上手いな~と惚れ惚れしました。
グラフィックも勿論和風。あちこちの装飾や背景画像、システムグラフィック、どこを取ってもオシャレでした~……!
読み手にありがたい回想機能
このうえなく嬉しいのが、回想機能!
しかもすごいのが、エンドだけでなく共通ルートや分岐後のシナリオも見返せるところ! 表情差分が細やかな本作、ピンポイントでここを見返したい!と思うことも多かったので、すごくありがたかったです。
その他おまけ機能としては、後日談の厚みも要注目。どちらも同じ締め方で、しかしここまで対極の雰囲気を出せるものなのかと……。圧巻でした。
カラッと明るかった真エンドは、おまけで姫の覚悟がより伝わり、シリアスハッピーな味わいに。ドキッと仄暗さを感じさせた偽エンドは、よりいっそう堕ちが深まる闇深い展開に。やっぱり私はヤンデレや暗いものが好きなので、偽エンドが実に最高でした~!
ヤンデレ?いやいや忠義です!
絶妙なのが、攻略対象である狐陀の人物像。
この作者様、他ゲーでも感じるんですが、キャラの性格がいわゆるテンプレから1ミリずれて、絶妙に人間らしいリアルな性格付けをされてるんですよねえ。チャラオ(女好きと見せかけて盛り上げ上手の気遣い屋)とか、レオマサ(俺様系と思いきや王様系)とか。
本作もそのキャラ像の巧みさは健在。具体的に書くとネタバレになってしまうので避けますが、こう、そうきたかー!というもどかしさに胸をぎゅうと悶えさせつつもサムズアップしました。すごい。
主人公ことヒロインのほむら様にしても、なんだ、いじらしいんですよ!
姫という責務をしっかりと自覚していて、凛としていて。一方で、少し子どもっぽく、うっかり言いくるめられてしまうような隙の見える一面もあったりして。
メインキャラ二人ともが良い個性づけをされていて、素敵でした~!
とまあ、こんな感じで。
「基本的には元気いっぱい、でも踏み外すと……?」な味わいと深みのある良作でした! 糸目キャラ好きや開眼にときめく方は特に必見です。
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