うそうさ〜第二号室〜

フリゲ・鬱展開・ヤンデレ 万歳!

フリーゲーム「流れよ我が涙、と魔法使いは言った。」感想

「いつの間にか皆が君の墓の前を通り過ぎている」

なぜ立ち止まらずにいられるんだ、の前置き。

 

 

えー、今回は時雨屋本店さんところのフリーゲーム「流れよ我が涙、と魔法使いは言った。」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

www.freem.ne.jp

 

作者様自身がウィザードリィを意識したと公言されている、ローグライクRPG

ラスボスに到達するだけなら1時間くらいじゃないかな? 私はマップ全踏破したかったので3時間くらいかかりました。

難易度はウィザードリィリスペクトかやや高め、かつ大味。3層目あたりからガッと手強くなります。逆に言えば序盤でレベリングしてなんとか押し通せる、はずなので、ゲームスキル自信ない方もご安心。

 

 

というわけで、良かった点など。

 

 

 

細かく行き届いたシステム

 

おそらくクリアだけなら1時間程度。ただ、私はきっちりマップを全て埋めたいタイプだったので、3時間ほどかかりました。

 

そう、本作はなんとマップが自動で作成されるんです。

RPGツクール”製であっても!

しかも、全体マップを見たいならキーひとつ押すだけ。

正方形が綺麗にきっちり埋まってる姿は見てて気持ち良いですよ~。

 

他にも、戦闘の高速化、メッセージログ、宝箱のオート罠解除チャレンジ、世界樹で言うFOEのように強敵のみシンボルエンカウントでマップ表示あり、等々システム面では至れりつくせり。

さらに、物語不要な方向けのノーストーリーモードや、立ち絵が欲しくない方向けの切り替え機能などもあり、硬派に遊びたい方も楽しめます。

 

個人的に嬉しかったのは、音楽室と回想部屋ですね!

回想は単純に、ストーリーの読み返しができて嬉しい。セーブデータが1つで済む。

音楽室には意外な演出があってびっくりしました。こういう、プレイヤーによってはずっと訪れないかもしれない場所に細かいギミックを入れてるの、丁寧な作りで好きです……。

 

 

 

珍しい性能の種族たち

 

さて、ローグライクといえばやっぱりキャラメイク!

特徴的なのはヒュイルや吸血鬼などの珍しい種族も並ぶところ。「戦闘後MP回復、ただし特定の属性攻撃はダメージ増」「不死身、ただし聖属性魔法はほぼ即死」など、性能もけっこう尖っています。こういうピーキーなキャラって使ってて楽しいですよね・うへへ……。

種族が多様な一方で、職業は4つと絞ってあるのもグッド。

使用感などは追記で熱く語るとして。

 

ちなみに、パーティメンバーの顔グラフィックも、素材さえ自分で用意しておけば簡単に差し替えができます。いわゆるうちの子みたいなキャラをお持ちの方や、推しキャラを二次創作パロディ世界に放り込みたい方も、楽しめるのではないでしょうか。

 

 

 

ファンだと嬉しい小ネタ

 

前述のヒュイルからしてそうなんですが、本作は同作者様の他作ネタが盛りだくさんです。武器防具、NPCキャラ、ランダム命名表、などなど……。

それこそ、全部わかった人は作者!と言いたくなる詰め込み具合です。

もちろんフレーバー要素に過ぎないので、知らなくてもプレイややストーリー理解に全く問題はありません。

ただ、私はこの作者様のフリゲがとっても大好きなので、町の建物名を見た時にニヤニヤが止まりませんでした。あちこちに出会ったことのある彼らがいて嬉しかったです!

吸血鬼キャラ作ってシャンにするのはきっとファンだとあるある……なはず。

 

 

 

生々しい人間ドラマ

 

ストーリーモードにすると、ダンジョン探索の進行度とは別で、宿屋に泊まるごとに話が進みます。

ここの語り口がね、ほんっとうに“読ませる”文章なんですよ!!!!

それこそどこかで短編小説として出されていそうな感じ。文章もサウンドノベルみたいな形式で表示されますしね。

でも、ゲームならではの演出もあるんです!

BGMが切り替わるの好きすぎる……。表現としてシステムを使ってくる演出に弱いですよ自分は。

内容はけっこうドロッとしているところもあるので、少し腰を据えて読むのがオススメ。静かな語り口の中に、ものすごい濃厚な描写が詰まってて、なんかもう文章として愛してます。

 

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

終わってしまった物語に、始末と終いをつけに行く作品でした。

 

 

追記ではがっつりネタバレ感想!

 

 

 

同作者様の他フリーゲーム感想記事↓

 

 

 

 

ネタバレ注意!

 

 

戦闘・キャラメイク

 

ここでは実際に私が使用した職業や種族などの所感を書いていきますね。

パーティ構成は下記の通り。 

 

  • 人間(戦)
  • 獣人(戦)
  • ヒュイル(僧)
  • ギグノス(魔)

そしてメインキャラの、ローランド(盗)とランタナ(魔)。

 

キャラクリはステータスを極端にしてなんぼだと思っているので、攻撃・知恵・信仰、辺りに特化させました。 戦士をドワーフにしようか悩んだんですが、素早さ↓ってことは攻撃が当たらない可能性があるなと断念。

 

ヒュイル僧侶はハマり役でした!

戦闘後MP回復、状態異常になりづらい、とヒーラーに欲しい特性がたっぷり。まあ、ヒュイルの血を引く優秀な剣士も存じ上げてはいるけれども。

炎と水が弱点ではありますが、敵の技でそこまで多用されることはなかった、かな? 何ならローランドより生き残っていた印象。

 

ギグノスは聞いたことがなかったんですが、説明文を読んで「陰キャのオタクくんだ!!」と思ったので登用。種族補正でMPと知恵にプラス、さらにキャラクリで知恵にブーストをかけて、火力砲台を作りました。

おかげでいやあ、死にやすい! 俺が死ぬかお前が死ぬか!

このギリギリな感じが楽しかったです。へっへっへ。

 

ちなみに、ギグノスの元ネタ?と思われるのはこの辺りの概念のようです。https://www.pixiv.net/artworks/32966000

『ノームの語源となったのは、ギリシャ語で「理解」を意味するギグノスコ。それをそのまま種族名にしたものです。』 とのこと。

 

実は吸血鬼も使ってはみたんですよ。

お約束のように、名前も「シャン」にしてね。僧侶にして。

いかんせん、神聖魔法が多すぎる!

でも、この無敵に見えて弱弱なところもあるピーキーさはまさにこの作者様の描く吸血鬼って感じがして大好きです。

 

フェニックスメイジも使ってみてあげたかったんだけど、どの職業にしたらいいのか結局ピンとこなくてやめちゃったんですよね~。メイジだし原作的にもやっぱ魔術師なのかな。

 

 

 

 

自分の金は自分で出せ!

 

ストーリー上必ず宿屋に1度泊まらなければいけないんですが、この時のランタナが大好きなんですよ!

まさかの、割り勘って!!!!

なんだかこの演出、むちゃくちゃ“粋”じゃないですか? あえてこういうシーンを挟むことで、ランタナとローランドはベタベタに引っ付いた仲良しさんじゃない、自立した大人として手を組んでいる関係なんだなと伝わってくる……。かっこいい……。

この演出をストーリー上で必要な1回のみにとどめることで、メタ視点だと毎回別勘定はプレイヤーにイージーモードすぎる、という感覚も兼ねているのがまた良き。

 

 

 

ストーリー・ランタナ

 

言ってしまえばパーティ内の三角関係恋愛ドロドロなんですが。

面白かったのが、ランタナがあくまで「傍観者」の立場にいること!

素人考えだとそれこそ、あの三角関係三人のうちの誰かが主人公をしちゃいそうな気がするんですよ。でも、あえてローゼではなくて、ランタナっていう。

 

単純に、私、ランタナが好きなんですよね!

三人の誰かに特別肩入れするのではなくて、彼らの個性から来る長所と短所が認識できる。相手の感情と自分の感情を混同しない。

ランタナは本質が見れるから、こうしてローゼのことも深く考えられたんだろうけど。正直、そこまで慧眼を持ってる人っていないんだろうなあ……。

すごく考え方が大人で好きです。

 

でもなあ。

一方で、ローゼのことをずっと切り分けきれなかったランタナは、人によっては子どもだと言われてしまうのもわかるんですよ。

それこそ、「終わったこと考えてる暇ある?」「別にお前あいつらのいざこざに関係なかったじゃん」みたいなさ。痴話げんかだったってとっとと切って、未来のことを考えるのが大人。みたいな。言われちゃうの目に見えるもん。妄想だけど。

こう感じさせられるところがもう、なんだか生々しくて良かったな~……。

ピュアじゃないし、むしろ俯瞰したドライな視点を持ってるんだけど、なんかピュアに誤解されちゃう感じ……。話してるステージが違う……。

 

幼馴染に本音をぶつけた時の回想がすごく好きなんですよ~!

相手方の、言ってることよくわかんないけど謝っとこ、みたいなアレ。

自分にとって大切だったり当然だったりする感覚が通じなかった時の絶望って、けっこう辛くないですか? 同じ人間なのに言葉が通じない、ってよく言うけども。

 

「ローゼのことは残念だった」

この言い方がとても、断絶を感じて好きです。

残念だったの一言で、終わらせられる人たちと、終わらせられなかった彼女の断絶を。

 

 

 

 

いいえ。あなたは泣いているの。

 

細かい言い回し等々は違うかもしれないんですが……。

「悲しむために、前に進まなくては」

ここが本当に刺さりました。

 

世では「悲しまずに前へ進もう」じゃないですか。違うんですよね、違ったんですよね、ランタナは、ローゼは。

悲しみを正面から受け止めて、昇華して、その儀式として涙を流して、区切りをつけないと。あるべき起承転結を、自分で作り上げなければ。

 

色々崩壊してしまった後とか、誰かがいなくなってしまった後にくる特有の感覚が、すごく丁寧に切り出されている作品だなあと感じました……。

 

 

 

小ネタ

 

てっきり別作キャラは街中だけだと思っていたので、クオン(『母なる湖は城を抱き』)の登場にワッと湧きました。しっかり口調切り替えが搭載されてるのも嬉しい。

 

城下町内の会話は、RPGのお約束あるあるの宝庫でもあって楽しかったです。ウィットに富んだメタネタ、好き……。

アイテム各種の説明文もそうなんですが、テキストがとにかく小粋で良いですよね!

 

ノーストーリーモードへの移行方法もえげつなくて好きです。

「それをするなんてとんでもない!」じゃないところが、なんだか一本取られた感じがしていいんですよね~。

 

 

 

 

その他こまごまとしたところ

 

音楽室のN09好き。

好きすぎてつい実際の素材配布先まで飛んでしまいました。へへ。

main-sildra.ssl-lolipop.jp

ここの89.midnight highwayです。

こういう系統の曲を、ああいう暗く決意の戦闘シーンにぶち込めるセンスが惚れ惚れします……。

 

ヤエルギス側やローランド側にも物語を断片を感じるの、良いですよね~。

詳細が知りたい! もっと読みたい! でも、ここが不透明なことで古き良き時代のダンジョン小説っぽさや、多くを語らない硬派ローグライクっぽさを感じるのも確か!

 

 

 

語りたいところはこのくらい。

 

プレイヤーがまず操作するのはローランド。

そして、主人公はランタナ

紹介文に偽りのない、最高の物語でした。