うそうさ〜第二号室〜

フリゲ・鬱展開・ヤンデレ 万歳!

フリーゲーム「暴君フィアンセ」感想

「大好きだから言うこときくし、大好きだから言うこときかす」

素直な恋愛の仕方がよくわからない前置き。

 

 

えー、今回はNeruna.(ねくん)さんところのフリーゲーム「暴君フィアンセ」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

novelgame.jp

 

エンド分岐あり、全クリまで10分強くらいの短編乙女ゲー。

暴言、モラハラ表現はありますが、暴力や流血はありません。また、愛はしっかりあるので、暗すぎる話は苦手という方もご安心。

雰囲気としては女性向けなろう小説に近いかも?

ブラウザ版もありますが、私はDL版でプレイしました。

 

 

というわけで、良かった点など。

 

 

 

きちんと暴君、しっかりと愛

 

身体的な暴力こそないもののの、タイトル通り。許嫁のディル君からヒロインのルリカは様々な難癖をつけられ、暴言を吐かれます

 

が、ここで上手いのが冒頭、プロローグのシーン!

ディル君がルリカを一心に好いている幼少期のシーンから物語が始まるので、プレイヤーの私側からは、まず愛があることは確認できるんですよね。

乙女ゲーの中にはM向けの、ただ理不尽に暴力を振るわれるだけのタイプのものもありますが(それもそれで趣深いですが)、本作は毛色が違うと上手く説明されていたように思います。

 

また、背景設定として、ルリカの家はディルに金銭的な支援を受けている身。病弱な弟、ハゼリのためにも、婚約解消はできません。

この辺りも、プレイヤーの「どうして別れないの?」という疑問に先んじて回答してあって、読み進めやすかったです。

 

 

 

貴族ならではラブコメ、庶民であってもプライド

 

上手いのはストーリー展開もそう。

暴言で虐げられるシーンだけでなく、コメディシーンもあります。「札束投げて~♡」系の大金持ちジョークが見られるのも、この舞台設定ならではですね~。

 

一方で、登場人物のメンタルというか……価値観? 人間としての考え方みたいなのはすごくリアリスティックなんですよ。シビアと言っても良い。

貴族と病弱な弟、と言うとすごくフィクション然としてるんですが、お金が絡む恋愛、と考えると話は近くなります。言ってしまえば、ごはんおごるおごらないにも通じますからね……。

男尊女卑を打ち出しているタイトルからこそ、見え隠れする女性の扱われ方や尊厳についての考えがきちんとしているのは、逆に説得力がすごくあって好きでした。

 

ハゼリの「侮辱されてるんだよ」から続く一連のセリフがこの作品で一番好きです。

 

 

 

ちょろくてダメダメな暴君様

 

ディルにとってルリカは所有物。

そしてルリカはそれを甘んじて受け入れています。

冒頭の「彼のいうことはすべて正しい」がもう示している通りですね~。この掟みたいな言い聞かせも好きでした。

 

加えて、モラハラっぷりがものすごく生々しいところもポイントです。

セリフがすごい上手いんですよ~。じっとり追い詰める系じゃなくて「言うことを聞いて当然だろう!?」系なんですが、この理不尽さの表現が素晴らしい!

無茶を言ってるセリフを書くのって意外と難しいんですよね。やりすぎるとちょっと笑ってしまうし、理屈が通っているとハラスメントっぽさは薄れてしまうし。

 

その点、ディル君は年齢的にもワガママ言うのにちょうどいいんですよね~。ちょうどいいって言い方も、ちょっと違うかもなんですが。すんなり物語に入り込める……?

ディル君自身が完璧なわけじゃなくて、隙やちょろさが見え隠れしているのもポイント。

かわいげがある暴君様。矛盾してるようだけど、むしろ良いギャップを感じました。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

許嫁と婚約解消、DV、ツンデレやクーデレなどにピンと来る方へおススメです。

 

追記ではネタバレ感想。

 

同作者様の他フリーゲーム感想記事↓

shiki3.hatenablog.com

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ネタバレ注意!

 

 

 

 

 

 

ルリカ

 

おとなしくて気弱で言い返せないヒロイン……ではないところが斬新だし面白かったです!!

事情を知ってみると、例えばヒビネへの受け答えも礼儀正しいながら頼るところは頼ってて、テンプレな気弱っ子とは全然違うんですよね。ハゼリにも冷静に家の事情を諭してて、しっかり者な印象。

むしろ、ディル君が大好きで一番が明確、だからこそそれ以外に対してはすごくフラットに相対してるのかな?

こういう、よくある展開と見せながら一味違う感じがすごくやってて楽しかったです。

 

 

 

ディル

 

ディル君の言葉の裏を察すると、色々可愛らしくて良かったですねぇ……。

木苺じゃないと嫌だったのは、「自分に言ってくればすぐ調達できるし話もできるし恩も着せれるし頼りにしてもらえてるって思えるのに!!」ってことなのかなあとか。

あとは大体ヒビネに嫉妬してたんだろうなあとか。

ディル君からの好感度はがっつりあるのに、選択肢をしっかり選ばないと彼のエンドには行けないところも、彼らしくて好きです。どうせ捨てられるんだ、っていう弱気が感じられる気がして……。

 

 

 

ヒビネ

 

ほのぼのとしたエンドではありますが、後々を考えると怖いエンドでもある気がしています。可哀そうは可愛いに目覚めてるタイプ……。

ルリカが明朗快活として社交的で女の子になっちゃったらどうなるんだろう……。

見捨てはしないだろうけど、執着もなくなりそう。透明な壁を感じる日々になりそう。

 

 

 

ハゼリ

 

二人でどこまでも行ってやろうよ!

……が、夢で終わっちゃうところが誠実で大好きです。お互いがそんな夢物語難しいって察してて、おしまいもきちんとわかってはいる感じ……。

スチルのおかげかな、なんだか、こう、退廃的な色気……? 全然えっちなことはしてないんですが! どことなく、二人きりで世界崩壊、みたいな仄暗さを感じて好きでした。

終わりが見えてる恋って、いいですよね。