「巻きつくと抱きつくの違いって何?」
相手を潰してしまうかどうかなのかな前置き。
えー、今回はKIJI-N-CHI(きじんち)(kiji)さんところのフリーゲーム「私は蛇の餌を辞めた」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。
全エンドを見て30分強ほどの、恋愛ノベルゲー。
個人的には乙女向けの印象。舞台はほんの少し不思議要素が混ぜ込まれた、現代学園もの。攻略対象は、蛇です。
というわけで、良かった点など。
擬人化ではなくガチの蛇
人間は蛇の餌とされている似非現代で、蛇と共に冬を越す物語。
擬人化とかでなく普通に蛇なのが見どころ!
異種族恋愛というと、なんだかんだで擬人化されてたり相手がこっちの価値観に寄せられたりするイメージがあったので、本作は逆にしっかりと蛇が主体で興味深かったです。
脱皮、丸呑みといったメジャーな要素を、乙女ゲーによくある相手をお世話してあげるであるとか食べられるといった表現と上手に噛み合わせてあるところがさすが。ちょっと変わった、しかしときめきは得られる恋愛ノベルだったように思います。
直接的ではないからこそ濃密で淫靡な空気
そもそもの世界観として、蛇が人間を食べる世界です。
つまりヒロインは常に攻略対象から食べられる(グロとして)危険があります。そして恋仲であるからには、性描写に近いシーンもあります。
つまりは、エログロ!
なのに不思議と下品に見えない、どころか、別世界に誘惑されて堕とされるかのような濃密さを感じるんですよねえ。
もちろん苦手な方が無理するのは望ましからぬところですが、興味があって二の足踏んでいる方がいらっしゃるなら、是非その目で読んでみて頂きたい気持ちです。
蛇ならではの描写
私が人外×人間を読む時に好きなポイント、それは「異文化」。
本作はファンタジーな世界観のはずなんですが、それでも現実にこの世界が持ち込まれても納得してしまえそうな、リアリティのある描写が多かったです。
例えば、人間が呑まれる時に呼吸用のホースが用意されていたり、蛇に噛まれてピアス穴を作らされたり。ありそう~!と盛り上がりたくなるのが面白いところ。
冬眠という大イベント抜きにしての日常などももっと詳細に見てみたかったように思いますが……。この世界観で言うところの「食べる」がどの程度のものなのかも結局わかりかねて、惜しまれましたし。
でも、この淡々と綴られる風変わりさによって、本作の空気感が出来上がっているんだろうなあとも思いました。
攻略対象は三人(匹?)
繰り返しになりますが、擬人化ではないのでキャラグラフィックは常に蛇です。立ち絵のようなものもなく、とぐろを巻く姿が背景兼キャラ姿として登場します。
なので、画面はすごくシンプル。
でもこのうねうねと動く緑のラインが、読み進めていくうちに、なんだかすごく雄弁に感じらてしまうんですよね……。不思議だあ。
文字表示と蛇のレイアウトが凝っているというのもありそうです。
ちなみに、蛇たちの中で好きなのは冬牙。
なんか、一生懸命で一途な感じがほのぼのとします。甘えたがりだけど肝心な時にちょっと一歩引いちゃう童貞感あって好きです。ヒロインがサバサバしてるからすごく良いカップルだなーって思うんですよね~。
まさかのポリスピカデリー氏
ちなみに本作驚かされたのが、本作のBGMが超有名ボカロ曲のoffボーカル版だったこと。元々フリー素材として公開されてるボカロ曲を使用するフリゲは見たことあるんですが、既存曲のoffボーカル版は歌ってみた用に使われる印象が強かったので、かなり驚かされました。こういうの規約的にアリなんだなあ……。
私はこの作品からRumorと出会ったので、ボカロ版を聞いてもついこの作品を思い出してしまいます。耳の記憶ってすごい!
とまあ、こんな感じで。
少し不思議で、蠱惑的で、でもどこかひんやりとしている良作でした!
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