「いつか必ず救われる、そうだろう救いのあなた」
汚れたこの手は精一杯ぬぐっておくね、の前置き。
えー、今回は花房夜空さんところのフリーゲーム「Angelic Syndrome」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。
簡単な追いかけっこあり、鬱エンドあり、ハッピーエンドもありの探索ホラゲー。全編通してざっくり3時間強くらい。ターゲット層は特に、フリゲ男女カプに飢えてる方だと思ってます。
ちなみに本作、公式サイトでは英語表記なんですが、ふりーむの方では「エンジェリックシンドローム」とカタカナ表記になってます。なので表記揺れについてはご容赦を。
というわけで、良かった点など。
2部構成
本編と外伝と位置付けられてはいるものの、実質2部構成です。
初めからプレイできるのは、羽根の生える病気になった少女アンジェルと、施設で出会うハカナの物語。今やホラーフリゲのテンプレとなりつつある、青年×少女&脱出&善人主人公愛され物語、の様式美を綺麗に踏襲しています。
続いて、クリアすると、対立勢力として描かれていたリッキーたちを中心とする物語が見られます。こちらは本作の世界観説明や人間ドラマの要素が多く、別作かと思うほどかなり毛色の違う展開です。お話のボリュームも体感、こっちのほうが多い気がします。
謎と謎が繋がるというよりは、この話の裏側はこんなに広かったのか!と感じたかな。
どちらにも刺さるシーンがあったので、これから遊ぶ予定の方には是非両方見届けて頂きたいです。
ゴシックなグラフィック
魅力的なのは、マップの美しさ!
ゴシックホラーファンタジーと言えば良いのか、施設内の雰囲気が重厚で良いんですよ~。光量が抑えられて、黒ずみや見えてはいけないシミが視界の端に見え隠れする感じ? どことなく落ち着けない緊張感がずっと漂ってて好きでした。
廃墟っぽいマップの朽ちてひび割れた床の趣や、鳥籠の名を冠するにふさわしい金属の質感などもグッド。ついスクショを取りたくなる場所が多かったです!
一方で、外伝で主にみられる施設の外はとても明るくて開放感がすごい!
あと、さりげなく反応ポイントが多いのも嬉しかったです。キーアイテムはきらきらマークがついてるけど、そこ以外にもけっこうポイントがあって面白かったんですよね。ハカナの本棚とか、レイの私室とか、皆の遊び場とか。
さらっとした一文にそのキャラらしさを感じるの、良い……。
ストーリー進行に合わせてメッセージが変わる箇所もいくつかあって、丁寧さに拍手したくなりました。
探索ホラゲあるあるとして、本作は言われた箇所を行き来するだけのおつかいっぽい要素も多いんですが……。マップの綺麗さを堪能する時間をもらえたと思えば、むしろ楽しめました。
男女カプ、フリゲCPにドハマりしたいあなたに
真っ白な少女と真っ黒な青年。
この二人のキャラデザだけでもうぶっ刺さる方は多いのではないでしょうか! シンメトリーなデザインって良いですよね~……。
アンジェルとハカナのみでなく、外伝のリッキーとレイ、サブキャラのルーニーとロゼッタ等々、恋愛フラグを感じる男女ペアが多かったように思います。カプ厨我万歳!
ほんのり匂わせる関係から、がっつり告白してお付き合いに至る関係まで、色んな形のカプを味わえます。
キャラ数はかなり多いですが、そのぶんサブキャラにも立ち絵が多くついているので、まだ覚えられる範疇かな。
キャラが登場した時のカットインみたいな一枚絵が好きなんですよ~! 全身図も見れるし、名前が表示されるから覚えやすいし。セリフの中でさらっと流されるよりも記憶に残りやすいので、プレイヤーとしてもありがたい演出でした。
闇の深い男が光属性の女に救済される関係性
そして何より一番主張したいのはここなんですが……。
この作者様は聖女(概念)にすがるメンタル不安定な男を表現するのが上手い!!!!!!!!
もっと穏便な言い方もあるかもしれないんですが、ごめんなさい。この言い方が一番刺さると思ったのでこの単語選びをさせてください!
救済関係の男女、みんな好きでしょ!?
君に出会って俺の世界は変わった、のやつ好きでしょ!
あなたが道を踏み外すなら私が何度だって教えてあげるの関係、刺さるでしょ!!
私は好きです! いえーい!!
本作はホラーゲームということもあり、キャラが精神的に不安定になったり、SAN値の減るシーンがあったり、ショッキングなマップに放り込まれたりします。
鬱展開やヤンデレが好きな身としてはまずこの時点でテンション上がるんですよ。好き!!
そしてそこからのバッドエンドも、バッド回避して立ち上がる展開も、どちらもおいしかったです。ゾクゾクした~……。
どこら辺が性癖に刺さったかは追記に隠して語らせて頂きますね。
シナリオ構成が説明的
さて、ここは合わなかった点。
ずばり本編終盤の駆け足っぷりです。真相がわかるキャラが出てきて、色々な謎をバーッとテキスト表示で説明しておしまいになってしまうので、正直物足りなさはありました。
この描写や演出の薄さを、外伝で補足しているのかなとも思いはしますが……。
あちらはあちらで、各組織の事情等々は説明的。設定資料をそのまま流し込んだかのようなシナリオには感じました。
でもですね、やっぱりキャラの個性を立てる演出は上手いんですよ!!
オッと思うシーンも、性癖直撃で心痺れるシーンもありましたしね。
なのでまとめると、キャラは花丸! ただ、起承転結づくりや舞台設定を物語に落とし込むのは少し苦手なのかなといった印象でした。
とまあ、こんな感じで。
本能と理性でぐらぐらするキャラや、太陽属性が闇深属性を救済する関係性、美麗なグラフィックなどにピンとくる方にオススメです。
追記ではネタバレ感想!
ネタバレ注意。
本来ならエンディング別で語る方がわかりやすいと思うんですが、キャラごとに語りたい点があるのでキャラ別で!
攻略等は公式サイトに詳細がありますので、お困りの方はご参照ください。
グロリア
まずは残念だった点から。
グロリアを信じるかハカナを信じるかのシーンで、プレイヤー視点だと悩む余地がなかったところがちょっともったいなかったですねー……。
明らかにこの子怪しいというのが一点、ハカナに比べてグロリアとアンジェルが仲良くなるシーンがさほどなく愛着を持つ時間がなかったというのが一点。
それこそハカナと同じくらいの熱量で、アンジェルとの百合が繰り広げられれば、選択肢が天秤として成り立って良い盛り上がりになったと思うんですが……。
ただねー、これができないのもわかるんですよ。
グロリアは自分の感情に正直で、策士として嘘を吐くのではなく気まぐれな子どものように嘘を吐く。要は無邪気な悪として存在していると思われるんですね。なので、アンジェルはともかくプレイヤーを騙すような動きはできないだろうし。かといって、グロリアの哀れさを出そうとするととたんに、グロリアは無邪気な悪ではなく、可哀そうなヒロイン要素のある悪役になってしまう。そうなるとグロリアの一番の魅力ともいえる、あの暴風みたいな強烈さが出せない。
なので、物語構成が惜しいとは思いつつも、キャラを優先すればこうならざるを得ないなというのも納得ができてしまいます。
グロリアがグロリアらしく在るためと思えば、やっぱりあのシナリオがベストなんだろうな……。
アンジェル
作中で担うべき役割がわかりやすく決まっている、物語のためのキャラ。
キャラに救いをもたらす善人で、プレイヤーの代弁者となるべくほどよく無知で、みんなに好かれて、あるいは求められるキャラ。
「象徴」「概念」の擬人化って印象なので、逆に言えばあんまり強い何かはなかったかなとも思います。
ハカナ
「食べたいけど食べたくない」が性癖です! えろい!! ありがとうございます!!!
エンディング4だったかな。あの、ハカナが本能をぐらぐら揺さぶられてガンガンSAN値が減るマップ。あそこ大好きなんですよ!! 「震えながら、耳たぶくらいなら、いいよって。」のいじらしさがたまんないんですよね……。
ハカナのSAN値が減るシーンもそうですが、この作者様はメンタル不安定になって縋る男を表現するのが上手いなあと感じました。後述するリッキーもそんな感じ……。
レイ
武士。ストイック。優等生。
図書館か教室だったかな、彼女の勤勉さがわかる探索ポイントがけっこうあるんですよ。チェス関係でも小ネタが確かあった、はず。この辺りでなんだかすごく好きになっちゃいました。
探索と言えば、ルーニーとレベッカもちょっとした自由行動ターンで話しかけた時の懐きっぷりが可愛かったしなあ。
レイは影で努力してるし、それを自慢しなさそうなところがかっこよくて好き。
ただ、一人でいると頑張りすぎて潰れちゃいそうだなとも思うので、その点リッキーがいてくれてよかったなあと思います。真面目な優等生ちゃんには、抜け道を教えてくれたり肩の力を抜かせてくれたりする破天荒な彼がいないとね!!
リッキー
このキャラ人気出るだろうな~!!
と、にやにやしながらプレイしました。私も例に漏れず好きです。
リッキーの「何も、知らないって……、読んでないって、言って…。」のここ! ここも好き!! ときめきすぎてギャーーーーーって叫びそうになりました。最高!
破滅がわかってるのにかりそめの平穏へ縋ってしまうの、おいしくないですか? たまらんです。
リッキーがレイを押し倒した状態で言ってるのがまた良いですよね……。体勢的には完全に脅しだしリッキーが優位なんだけど、立ち絵が泣きそうなのを堪える時の下手な笑顔なのと言いお願いのようなセリフと言い、メンタル的に優位なのはレイっていう。良い関係性だ……。
お勉強会での質疑応答シーンが実はツボです。
あの、切れ味の良いサイコパスな回答がぽこじゃか出てくるアレ。
遵法意識が強いレイと違って、リッキーはルールの範疇でいかに効率的に叩きのめすかという発想があるから面白いんですよね……。ルールの範囲内ギリギリを攻めにくる感じ。あーその発想はなかった、というか発想があってもやらないから封印してた、みたいな。
治安悪々なエピソードもそうですが、何かと闇深さを感じさせてくれるのがたまらんです。
外伝の海辺マップとBGM
あと個別に語っておきたい点として、外伝のあのマップ!
どのマップも楽しかったし探索も面白かったんですが、中でも一番を挙げるならあのマップが好きでした。
まず、BGMを変えられるのが嬉しい!
そして、屋台の選択肢がさりげなく多いし和む!
ガンドッグたちの食事会もそうでしたが、つい全選択肢を確認しました。レイとリッキーのやり取りがかわいいんじゃ……。
後でアンジェル達のやり取りが見れるのも嬉しかったです。
もうね、オタクはキャラたちがのんびりわちゃわちゃやってるシーンが見られるだけで無限大にハッピー!
いやー……語ったなー……。
まとめると、やっぱりCP萌えしやすかったですね!
病んでるワンシーンの破壊力(ときめき)がかなり高く、あれだけで好感度がカンストした作品でした。