「妬み嫉みも明るみに出れば消えるもの」
恥じて消えるか叩かれ消えるかは存じ上げない前置き。
えー、今回はCUNERIAさんところのフリーゲーム「芥花」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。
少女達が拷問し合って秘密と未来の命を勝ち取るRPG。3つの編に分かれており、それぞれプレイ感が異なるため、本記事も各編に分けて語っていこうと思います。
というわけで、共通して良かった点から。
殺すも潰すもあなた次第
まずは共通システムかつ一番に目を引く、「拷問バトル」から。ここで即DLを決めました。発想からして絶対楽しい(心が辛い)やつじゃないですか、そりゃDLします。
システム的に言えば、通常のデフォ戦に使い切っちゃいけないリソースが付与されたバトルです。伝わるかなあ……? いかに削りきらないようにするか気を遣いつつ、自分も死なないよう立ち回る戦いが独特で楽しかったです。
まさに拷問、ストーリーとシステムが合致するゲームは癖になりますね。
ゲームにおけるバトルといえば大半が「勝ち・負け」の2種類のみですが、本作は「拷問成功・拷問失敗・負け」の3種類存在するのが特徴です。
で、何が嬉しいって全パターンで異なる反応が見られることなんですよ! 負けた時だけ見せてくれる顔があったり、心が折れた時と殺した時とで台詞が違ったり。セリフ回収大好きプレイヤーとしては実に捗りました!
また、ボスに位置づけられるバトルでは、処刑技という確定即死技が飛んできます。必殺技がしっかり必殺してる技は今日日なかなかお目にかかれませんよ。貴重。
処刑技の条件はボスによって異なり、HP以外にも目を配るトリッキーなバトルが展開されることもあります。作品の性質上なんどもボスバトルが起こるので、飽きないような工夫がされていた印象。実に腕が鳴りました。バケツ組のことは絶対に忘れないからな……。
キャラクターの精神面を揺さぶっていく展開
さて生き生きと拷問バトルについて語りましたが、拷問といってもグロ描写はマイルドにぼかしてくださっています。例えば死体にはぼんやりと黒い雲がかかるなど、説明文で想像できる残酷描写はあっても、グラフィック自体は血飛沫程度で留められています。
しかし、当然ながら拷問です。手心は皆無です。むしろ、精神的リョナと呼べそうなくらいに、心的には容赦がありません。ここがいい。見ていて心底苦しい、そんなふうに感情移入できるシーンを作れるのがもう素晴らしいです。
戦闘中も、キャラクター同士の掛け合いが挟まったり、それぞれモチーフとする拷問にちなんだ前口上が挟まったりと、心と心のぶつかり合いを感じさせてくれました。
- 誰かの秘密を暴く、という後ろめたい喜びを知っている方
- さらには自分より大切なものをぐちゃぐちゃにする展開が気になる方
- 仲の良い女の子同士が疑心暗鬼に陥る様に愉悦を覚える方
- あるいは、共に心を痛め、キャラクターに寄り添って真実を掴んでいくのが好きな方
そういう方々(私)にはもうこれ以上ないって程にグッとくる作品です。
異界を感じる不穏で美しい世界観
世界観としても一級、グラフィックやBGMも必見です。
浮遊する草花、ガレキばかりの不安定な領域、視界の端に映る拷問道具等々、マップはどれも不穏さと幻想的な美しさが味わえます。中でもテレジア治療院の不気味さと逆さ倫敦塔のTHE拷問館って感じが大好き。
新しい地域へ足を踏み入れた時の、マップ名表示の仕方もすごく好きです。思わず手を止めて見入ってしまう、良い演出でした。
BGMはなんと驚き全てが自作。ゴシックな曲からJAZZ寄りだったり和風だったりの曲まで、幅広く見どころ(聴きどころ?)のある曲ばかりです。
バトルのスキル名も凝っていて、実在する処刑方法や拷問術に沿ったものがほとんど。気になるキャラの元ネタ探しも楽しめます。アウト・デ・フェの説明文と演出が本当好き……。使うだけでプレイヤーの気分まで高揚しちゃいました。
と、共通要素の語りはここまで。
ここからは各編の特徴や感想になります!
ユウアイ編
やっとこさ各編の語りです。作中の順番通り、ユウアイ編から。
この編は一言でまさにデスゲームです。7人の参加者が穏健派と過激派でざっくりと別れ、互いにけん制し合いつつ、拷問バトルが始まります。プレイ感としては観測者寄りでしょうか。
ある程度自動進行で、右も左もわからないプレイヤーを導きつつ、キャラクター同士の関係や個性を見せていくような構成でした。個人的にもプレイしやすく、2周目以降で彼女達の真相を知るとなおさら台詞が心に突き刺さるところもニクイ演出だと思います。
また、ルート分岐が存在するところもポイント。
お話の大筋は固定して理解しやすくしている一方、選択肢は多く、ルート分岐すると中盤から各キャラの役割がガラッと変化していきます。これによってプレイヤーが盤面を動かす、ゲーム的な楽しみも増え、単純な導入編に留まらない魅せ方をしている点がグッドでした。
ビヨウドウ編
こちらは一風変わって探索ノベル風。
いわゆる嵐の山荘編です。皆が立てこもり、デスゲームが息を潜める代わりに連続事件の幕が上がります。エンド分岐はあるもののラストまでは一本道、こちらは読み物として楽しい感じ。
ミステリの醍醐味である犯人当てパートがあるのも美味しいですね。犯人はゲーム参加者のうちの誰かか、姿なき亡霊か、はたまた心優しき使用人達か――。
思考整理、および前提条件の確認として用意されている「ペネトレイター」も面白い試みだと思います。推理が苦手な人でもなんとなく絞れるようにイングリドからヒントがもらえますし、なによりあの空間をうろうろして色んな仮説を聞くのが楽しいんですよね。
なんかそれっぽく聞こえる無茶な推理とかいうミステリミスリードあるあるが好きな人も楽しめると思います。
犯人当てに失敗しても、バッドエンドまでしっかりストーリーとして演出されているので、むしろ良いものを見れたなあという気になれちゃいます。真相がわかっても先にバッドを回収しにいってしまうゲーム好きのサガが大いに発現しました。
また、一見して大筋はミステリとして幕を閉じますが、裏に仕込まれた意味を考えるとかーなーり心がしんどくなります。こちらも、色々わかった後に刺さってくる良構成でした。
ジユウ編
そしてついに本領発揮、フリーシナリオRPGとなるジユウ編です。
一言でいえばマーダー編。プレイヤーが能動的にキャラクターへ会いに行くことができます。親睦を深めるもよし、拷問するもよし、さっさとクリアしてしまうもよし。行先も他2編と比べればかなり多く、本当にタイトル通りの編です。
フリーシナリオが苦手な私としては戸惑いもありましたが、色んなキャラと戦えてセリフ分岐が回収出来たり、人探しといった探索要素があったりしたのは嬉しい点でした。公式攻略もかなり充実しているので、おろおろした時はカンニングさせて頂いたり。
あとこの編で嬉しいのは、戦いさえしなければ時限イベントを気にせずに済むことですね! 自分のペースで探索し、自分の好きなキャラのところへ行ける、自然とプレイ時間も一番長くなる編だと思います。
色んなマップが見れて、辺獄の世界観をより深く知れるのも楽しいところ。世界観がきっちりしてる作品はうろつくだけでもウキウキしますよねえ。
位置づけとしては回答編に近く、色々な疑問が氷解していくのも気持ち良かったです。
惜しい点
これだけ絶賛している中でそれでも個人的にかなり引っかかった点もあります。あえてそういうシステムにされていると思われる箇所がほとんどなので、列挙だけで。
辺り。戦闘難易度もそこそこ高めなので、この辺りのシステム面で間延びしちゃうところは合わないなーと感じました。
でも逆に言えば、あげられる場所がそれしかないくらいどこもかしこもぴったり好みに合う作品です。
とまあ、こんな感じで。
デスゲームもの、百合、鬱展開エピソードなどが好きな人は是非とも。
追記ではネタバレたっぷりの感想です。
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