うそうさ〜第二号室〜

フリゲ・鬱展開・ヤンデレ 万歳!

フリーゲーム「芥花」感想

「妬み嫉みも明るみに出れば消えるもの」

恥じて消えるか叩かれ消えるかは存じ上げない前置き。

 

 

えー、今回はCUNERIAさんところのフリーゲーム芥花」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

 

少女達が拷問し合って秘密と未来の命を勝ち取るRPG。3つの編に分かれており、それぞれプレイ感が異なるため、本記事も各編に分けて語っていこうと思います。

というわけで、共通して良かった点から。

 

 

 

殺すも潰すもあなた次第

 

まずは共通システムかつ一番に目を引く、「拷問バトル」から。ここで即DLを決めました。発想からして絶対楽しい(心が辛い)やつじゃないですか、そりゃDLします。

システム的に言えば、通常のデフォ戦に使い切っちゃいけないリソースが付与されたバトルです。伝わるかなあ……? いかに削りきらないようにするか気を遣いつつ、自分も死なないよう立ち回る戦いが独特で楽しかったです。

まさに拷問、ストーリーとシステムが合致するゲームは癖になりますね。

 

ゲームにおけるバトルといえば大半が「勝ち・負け」の2種類のみですが、本作は「拷問成功・拷問失敗・負け」の3種類存在するのが特徴です。

で、何が嬉しいって全パターンで異なる反応が見られることなんですよ! 負けた時だけ見せてくれる顔があったり、心が折れた時と殺した時とで台詞が違ったり。セリフ回収大好きプレイヤーとしては実に捗りました!

 

また、ボスに位置づけられるバトルでは、処刑技という確定即死技が飛んできます。必殺技がしっかり必殺してる技は今日日なかなかお目にかかれませんよ。貴重。

処刑技の条件はボスによって異なり、HP以外にも目を配るトリッキーなバトルが展開されることもあります。作品の性質上なんどもボスバトルが起こるので、飽きないような工夫がされていた印象。実に腕が鳴りました。バケツ組のことは絶対に忘れないからな……。

 

 

 

キャラクターの精神面を揺さぶっていく展開

 

さて生き生きと拷問バトルについて語りましたが、拷問といってもグロ描写はマイルドにぼかしてくださっています。例えば死体にはぼんやりと黒い雲がかかるなど、説明文で想像できる残酷描写はあっても、グラフィック自体は血飛沫程度で留められています。

しかし、当然ながら拷問です。手心は皆無です。むしろ、精神的リョナと呼べそうなくらいに、心的には容赦がありません。ここがいい。見ていて心底苦しい、そんなふうに感情移入できるシーンを作れるのがもう素晴らしいです。

 

戦闘中も、キャラクター同士の掛け合いが挟まったり、それぞれモチーフとする拷問にちなんだ前口上が挟まったりと、心と心のぶつかり合いを感じさせてくれました。

 

  • 誰かの秘密を暴く、という後ろめたい喜びを知っている方
  • さらには自分より大切なものをぐちゃぐちゃにする展開が気になる方
  • 仲の良い女の子同士が疑心暗鬼に陥る様に愉悦を覚える方
  • あるいは、共に心を痛め、キャラクターに寄り添って真実を掴んでいくのが好きな方

そういう方々(私)にはもうこれ以上ないって程にグッとくる作品です。

 

 

 

異界を感じる不穏で美しい世界観

 

世界観としても一級、グラフィックやBGMも必見です。

浮遊する草花、ガレキばかりの不安定な領域、視界の端に映る拷問道具等々、マップはどれも不穏さと幻想的な美しさが味わえます。中でもテレジア治療院の不気味さと逆さ倫敦塔のTHE拷問館って感じが大好き。

新しい地域へ足を踏み入れた時の、マップ名表示の仕方もすごく好きです。思わず手を止めて見入ってしまう、良い演出でした。

 

BGMはなんと驚き全てが自作。ゴシックな曲からJAZZ寄りだったり和風だったりの曲まで、幅広く見どころ(聴きどころ?)のある曲ばかりです。

バトルのスキル名も凝っていて、実在する処刑方法や拷問術に沿ったものがほとんど。気になるキャラの元ネタ探しも楽しめます。アウト・デ・フェの説明文と演出が本当好き……。使うだけでプレイヤーの気分まで高揚しちゃいました。

 

 

 

 

と、共通要素の語りはここまで。

ここからは各編の特徴や感想になります!

 

 

 

ユウアイ編

 

やっとこさ各編の語りです。作中の順番通り、ユウアイ編から。

この編は一言でまさにデスゲームです。7人の参加者が穏健派と過激派でざっくりと別れ、互いにけん制し合いつつ、拷問バトルが始まります。プレイ感としては観測者寄りでしょうか。

ある程度自動進行で、右も左もわからないプレイヤーを導きつつ、キャラクター同士の関係や個性を見せていくような構成でした。個人的にもプレイしやすく、2周目以降で彼女達の真相を知るとなおさら台詞が心に突き刺さるところもニクイ演出だと思います。

 

また、ルート分岐が存在するところもポイント。

お話の大筋は固定して理解しやすくしている一方、選択肢は多く、ルート分岐すると中盤から各キャラの役割がガラッと変化していきます。これによってプレイヤーが盤面を動かす、ゲーム的な楽しみも増え、単純な導入編に留まらない魅せ方をしている点がグッドでした。

 

 

 

ビヨウドウ編

 

こちらは一風変わって探索ノベル風。

いわゆる嵐の山荘編です。皆が立てこもり、デスゲームが息を潜める代わりに連続事件の幕が上がります。エンド分岐はあるもののラストまでは一本道、こちらは読み物として楽しい感じ。

ミステリの醍醐味である犯人当てパートがあるのも美味しいですね。犯人はゲーム参加者のうちの誰かか、姿なき亡霊か、はたまた心優しき使用人達か――。

 

思考整理、および前提条件の確認として用意されている「ペネトレイター」も面白い試みだと思います。推理が苦手な人でもなんとなく絞れるようにイングリドからヒントがもらえますし、なによりあの空間をうろうろして色んな仮説を聞くのが楽しいんですよね。

なんかそれっぽく聞こえる無茶な推理とかいうミステリミスリードあるあるが好きな人も楽しめると思います。

犯人当てに失敗しても、バッドエンドまでしっかりストーリーとして演出されているので、むしろ良いものを見れたなあという気になれちゃいます。真相がわかっても先にバッドを回収しにいってしまうゲーム好きのサガが大いに発現しました。

 

また、一見して大筋はミステリとして幕を閉じますが、裏に仕込まれた意味を考えるとかーなーり心がしんどくなります。こちらも、色々わかった後に刺さってくる良構成でした。

 

 

 

ジユウ編

 

そしてついに本領発揮、フリーシナリオRPGとなるジユウ編です。

一言でいえばマーダー編。プレイヤーが能動的にキャラクターへ会いに行くことができます。親睦を深めるもよし、拷問するもよし、さっさとクリアしてしまうもよし。行先も他2編と比べればかなり多く、本当にタイトル通りの編です。

 

フリーシナリオが苦手な私としては戸惑いもありましたが、色んなキャラと戦えてセリフ分岐が回収出来たり、人探しといった探索要素があったりしたのは嬉しい点でした。公式攻略もかなり充実しているので、おろおろした時はカンニングさせて頂いたり。

あとこの編で嬉しいのは、戦いさえしなければ時限イベントを気にせずに済むことですね! 自分のペースで探索し、自分の好きなキャラのところへ行ける、自然とプレイ時間も一番長くなる編だと思います。

 

色んなマップが見れて、辺獄の世界観をより深く知れるのも楽しいところ。世界観がきっちりしてる作品はうろつくだけでもウキウキしますよねえ。

位置づけとしては回答編に近く、色々な疑問が氷解していくのも気持ち良かったです。

 

 

 

惜しい点

 

これだけ絶賛している中でそれでも個人的にかなり引っかかった点もあります。あえてそういうシステムにされていると思われる箇所がほとんどなので、列挙だけで。

  • 微妙に行き来しづらい位置のセーブポイント
  • ワープが一方通行(ワープがあること自体は嬉しい)
  • 通常移動速度が遅い(ダッシュをデフォルトにしたい)

辺り。戦闘難易度もそこそこ高めなので、この辺りのシステム面で間延びしちゃうところは合わないなーと感じました。

でも逆に言えば、あげられる場所がそれしかないくらいどこもかしこもぴったり好みに合う作品です。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

デスゲームもの、百合、鬱展開エピソードなどが好きな人は是非とも。

 

追記ではネタバレたっぷりの感想です。

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フリーゲーム「バッドウェディングクラッシャー」感想

「全員が幸せになるなんてのは絵空事だと常識を語って楽しいか」

周りが笑顔ならそれでよしな前置き。

 

 

えー、今回はことりさんところのフリーゲームバッドウェディングクラッシャー」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

エンド分岐あり、ティラノビルダー製の恋愛ノベルゲー。ギャグと鬱が休む間もなく舞い降りてくる民族ものです。20190923現在は公開停止中のようですので悪しからず。

 

 

 

良かった点 

 

ハッピーエンドを掴み取れ!

 

今回はちょっと変則的に、私の攻略順から話していきます。

ふりーむ説明文に勢いよく書かれている通り、本作はバッドエンド回収後のハッピーエンドを推奨されています。が、私は鬱展開好きでしててっきり本作も、私の好きな展開を最後に見て終わりたいなーと思って、先にハッピーエンドの回収をしちゃったんですね。

もうね、実にもったいないプレイをしてしまいました! 人の言うことを聞きなさい私!

本作のハッピーエンドはつまるところ、トゥルーエンド的な立ち位置なんですよ。バッドで躓いたところがしっかり解決されていって、しこりが残るけど今までの道のりが報われる――みたいな、あれです。なので私のような嗜好の方も是非、好きなものを先に食べに行ってください…。

公式説明文にネタゲーバカゲーと書かれまくっていたので、ここまできっちりまとめてくれるとは思わなかったですね。良い意味で。

 

 

 

草原の風を感じる異民族描写

 

本作の魅力の一つが溢れる異民族描写。

民族模様の布が敷かれ、弓が飛び馬が駆け月が満ち、豊かな自然の中で血肉を争う部族間のやり取りがあり――――等々。ファンタジー世界でもこういう草原の民的な部族を主とする作品は個人的になかなか出会えていないので、とても新鮮でした。猛禽が止まり木にできるよう腕にカバーがつけてあるなど、随所に「わかってるぅ!」とお囃子を入れたくなる描写がいっぱいです。

民族織物、部族の因習婚姻儀礼、男の三つ編み、などなど私自身好きなところも多くて楽しかったです。誘拐婚という文化を知れたのも嬉しい。冒頭とエンドのムービーが、民話・絵巻物風に描かれているのもすごく雰囲気が出て素敵でした。

 

 

 

勢いよく世界観をぶち壊すメタギャグ

 

さて、そのように誇り高く脈々と受け継がれる草原の民を土台として――

勢いよく自らの世界観に殴りかかりブッ壊していくのが本作です。

 

いやだってふりーむのキャッチコピー引用しますが、「幼馴染みの絆を守り抜く為にマッチョが花嫁姿になって奔走するハートフルボッコバカゲーですよ。雄大な自然もはだしで逃げますよそりゃ。いやさすがに本編中で大自然が逃げることはないんですけど。

本作は一人称視点のノベルなんですが、遠慮なくRPGのパロディ的なギャグが入ったり、今をときめくギャル用語がぶち込まれたりと、バッドウェディングのみならず世界観も盛大にクラッシュしていきます。

 

普段であれば私はこういうメタギャグにかなり否定的なのですが……こと本作においてはここが良いなと強く思いまして。それは笑えたからという意味だけではなく、後述する「素の感覚」に近いものを感じるからなんですよね。

また、異国の民族もの、という私から離れて見える世界観の中で置いてけぼりにならずキャラ達を身近に感じたのは、こういった容赦ないメタギャグ部分があったからなのかなとも思います。

 

 

 

素の言葉で想いを語るシナリオ

 

さて、最もよいと感じた点が、先にも上げた「素の感覚」、ナチュラルな語り口です。

実は本作、鬱展開はとことん重く、血も情念も呪いも飛び交います。そんな状況だと人ってこう……普通ならカッコつけたり誤魔化したりして、凄惨な展開に何か意味を肉付けしようとしがちだと思うんですよね。そういう気負いみたいなのが本作にはなくて、「彼らの言葉がここにある」と感じられる語り口だったんです。伝わるかなあ、これ。固定観念的な台詞も多く出てきますが、あれは反論として意図して描かれているものでしょう。

 

具体的に言うと、ハッピーエンドルートでカルタルが覚醒した後のトールの口調がすっごい好きだったんですよ。正しいとかわかんねーよ俺、でも見たくねーもん、みたいなあれ。もう完全に感覚が一般市民なんですよね。この素の感じがすっごい好きなんです。そうだよなあそうだよなあと頷きたくなる。

バッドエンドのゲルダの「一人だけに」って部分も好きですねえ。なんだろうなー、人それぞれの気持ちが、変な装飾無しに生の声でぶつかってくる感じがしました。

カルタルが最後にてんやわんやしながら幸せなキスをするところもすんげぇ好き。ああいう慌てふためき方とかが、作りものじゃなく、素で見られそうな感じが好きです。

 

 

 

 

合わなかった点

 

システム周り

これはティラノビルダー自体の問題かもしれませんが列挙します。

①オートモードがない。

②セーブロードの時の確認ボタンがない。分岐が多くこまめなセーブを推奨されているのにも関わらず、上書き事故が多発しやすくなっています。

③セーブロード画面が見づらい。黒背景に黒字なので時刻表示やメッセージが一部見えません。

④起動するたびにOPが始まる。エンドの演出的に意図はわかるんですが、物語の途中で区切りたい時に不便。

⑤重い。上記に付随して、他ノベルゲーと比べて.exeが起動するまでかなりかかります。ざっくり換算で3倍くらい。

⑥メッセージ表示速度の調整がない。デフォルトの文字表示はかなり遅め。

⑦選択肢でスキップが止まってくれない、バックログがない。周回プレイで油断するとテキストを読み飛ばす。

などなど。

あとあとがきで著作権に触れられていましたが、そこ気にするならヤラナ・・は大丈夫なのかなー、なんて。ググってみたけどニコニコモンズしかヒットしなかったんですよね。気になるき。

 

 

立ち絵表示の仕方

 

ちょくちょくキャラの立ち絵表示がバストアップ超えてもはや顔だけに見えることがありまして。ゲルダが多かったかなあ。この方のお目目の描き方がすごく好きなので、ドアップで見れるのは嬉しいんですが。

プレイヤーの目線的にはメッセージウィンドウから上が立ち絵に見えている気がしてまして。つまり現在はデフォルトがすでにバストアップに見えてる状態なので、立ち絵表示をもっと小さくする?引きで置く?などしたら良いんじゃないかなーと思います。

 

 

地の文の説明感

 

セリフだけで状況がわかるのに地の文で過剰に説明しているところがちらほらあり、テンポが悪かったです。特に本作は勢いで魅せるところもあろうかと思うので惜しまれます。ハッピーエンドルートで特に多かったかな。

 

 

 

 

最後に熱く主張しておきたいこと

 

 

本作の圧倒的な独創性

 

最後にちょっとえらそうに語らせてください。

本作の長所だと私が感じている、「ギャグと鬱の紙一重」「雄大な民族的世界観」「メタメタ超展開」は並みの作品であればマイナスとして取られてしまう点だと思います。

とにかく相互の食い合わせが悪すぎる。ただでさえ鬱展開には煽りの風が吹きやすいうえ、ギャグゲーという看板や、何一つ暗い要素の無いお気楽ハッピーエンドが来るかの様に読めてしまう説明文などを含め、何かと危うい因子を持っています。それに勢いがあるということは人を振り落とす可能性も勿論あるわけで、はっきり言って人を選ぶゲームだと強く感じます。

 

が、こと本作においてはこの路線を貫いてくれてよかったと心から言いたい。

これね、他の人の視線とか意識しだしたら絶対このゲームの最大長所である「素」の感じが薄れちゃうと思うんですよ。

なんか、本当、不思議な感覚の余韻が残るゲームです。リアルなキャラがいるのではなくフィクションのキャラの声が生で聞こえる感じ……。

このゲームだけでしか味わえない良さはあります。過剰にも過小にもならずマイウェイを走り続けてほしい……。ほしかった……。作者様の情報は集めていなかったので公開停止のご事情はわからないんですが、気が向いたらまた創作活動してくださったら嬉しいなあという気持ちです。

 

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

なんか、こう、すごい。鬱があるからとかギャグがやばいからとかそういう意味ではなく、独自性をすさまじく感じるゲームでした。うん。カルタルがとても好き。

暴風雨を感じたいあなたに。

 

 

同作者様の他フリーゲーム感想記事↓

ホラー・ダークなノベルフリーゲーム5作品感想(この世で一番重要な『カネ』について)

フリーゲーム「Reincarnation」感想

「本当のことはすでに知ってる、だから気づかせるだけでいい」

脳内会議は行う前に答えが出ている前置き。

 

 

えー、今回はRabbit☆Potion(らびっと☆ぽーしょん)さんところのフリーゲームReincarnation」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

仲間選択の分岐はあるものの、お話は一本道で周回必須なRPGキャラゲー寄りで、戦闘難易度はたぶんそこそこ、レベリングしてのゴリ押しは可能。

 

 

というわけでまずは良かった点から

 

 

水彩のようなグラデーションの美しさ

 

推したいのはグラフィック面。かなり多くの少女達が登場しますが、どの子もかわいく、立ち絵が魅力的です。敵ボスには複数の立ち絵を持つ子がいる他、公式サイトでクリア後限定頁として立ち絵が公開されています。

どの子もキャラデザがいいんですよね!

中でも、リオの†漆黒†な感じと、黄うさぎのもっふもっふ具合、アポロンヌのパンツルック、ヴァルネの道化師っぽい雰囲気が好きです。ヴァルネはマエストロだけど、まあまあ。

なお百合ゲーというわけではなく、基本はキャラ単体で完結しています。短い会話が二言三言ある程度。でもやっぱり分類するならキャラゲーになるかなあ。

 

 

 

固有の詩とBGM

 

ゲームを進めるごとに一人ずつ少女が仲間になり、それぞれの宝石に応じた詩とBGMが楽しめます。この詩がまた、こう、心をくすぐるんですよねぇ。そのキャラの性格や背景事情もぼんやりと伝わってくるし、言い回しが響くんです。それぞれテーマが設定されていそうなところも興味深いですね。

本編のテキストまでポエム調で真相が伝わりづらいのは難点でもありますが……統一感はありますし。人魚の2周目の戦闘前口上が好きです。

宝石ごとに背景やBGMが異なるのも凝っていて素敵。

ダンジョンでのBGMも特徴的で、戦闘に入っても雑魚戦ではBGMが継続し、地続きの世界観を感じられます。ボス戦はきっちり専用BGMになるところも良い盛り上がりでした。

 

 

 

皆の一言がじんわりと沁みるエンディング

 

具体的にはエンド後のクリア部屋ですが、ここが実に良かったです。

詳しくは語りませんが、創作活動に関わったことのある人なら特にグッとくるんじゃないかな。暗い要素もありますが、優しさに溢れているお話でした。

周回が想定されているつくりなだけあって、二周目以降でセリフが少し変わるところも見どころです。

 

 

 

 

続いて合わなかった点について。

 

 

多さに比べて一辺倒な仲間たち

 

仲間になるキャラは2周目以降のキャラも併せてなんと驚き24人。

これだけいれば戦略も自由自在――となりそうなところなんですが、実際にキャラを入れ替えながら使うことはほとんどありませんでした。

 

まず、どのキャラも加入した段階ではレベル1。仲間の加入は一人ずつ。初期スキルがない子もいて、試しに使ってみようという気になりづらかったのが一番の難点です。

経験値を多く持つボーナス敵がいたり、経験値増加アイテムがあったりしたら、もう少し印象は変わったんですが……これだとインフレも起こしてしまうので悩ましい。加入時のレベルをパーティメンバーと同レベルにしてもらえたら嬉しかったですね。

 

続いて、キャラのスキルの差別化が少ない、ギミック性のあるボスがいない点。

基本的に攻撃技と全体回復を放っているだけで戦闘が終わるので、そもそもキャラを入れ替えて試行錯誤しよう、という気が起こりませんでした。

キャラの技も共通しているものが多く、牡丹<エーリエルなど上位互換キャラがいることもしばしば。このキャラならではの戦い方! というのをあまり感じられなかったのも要因だと思います。それ以前にキャラ独自の戦い方を知るところまで至れなかったというべきかな……。

 

あと単純に、スキルの説明が少なめ。

例えば「おうえん」は選択した対象に何が起こるのかわかりませんし、カウンターが魔法攻撃に効かないなんて書いていない、そもそもどれが魔法でどれが物理かすら明記されていない。世界観を重視して説明を減らしているのかもしれませんが、うーん。

 

これらの要素は本来、バトルメインの作品に求めるべきだと感じています。そしてこの作品はキャラゲーだと思うので、バトルバランスを要求するのはちょっとお門違いな気もしています。

でも、これを書かずにいられない理由が次に繋がりまして。メインディッシュがあまりに遠すぎるのでその繋ぎとしてバトルを改善して欲しいんですよねぇ。

 

 

 

1周目の無味乾燥さ

 

真相がわかるようになるのは1周目クリア後から。

その前菜となる1周目がとにかく単調でした!

伏線や謎というよりは思わせぶりなポエムが置いてあるだけで、目立ったイベントも演出もなく、淡々とダンジョンに潜り適当に少女を選んで帰るだけ。ならストーリー以外がメインかと思いきや、戦闘も探索もシンプル過ぎる構成。

ここ、本当惜しかったです。

 

いっそバトルに全振りして色んな少女を使うような作りになっていれば、もっともっと少女達に愛着が持てたでしょうし。過去話や各少女の世界に触れるダンジョンやイベントがあれば、もっと彼女たちの物語を知りたいという原動力になったでしょう。

「先が気になる!」というよりは「何をしたいのかわからないまま進んでいる」印象でした。クリア後の部屋が実に良かっただけに、そこに至るまでの道のりが淡々とし過ぎているのがあまりにもったいなくてなりません。

 

 

 

移動の手間

 

終盤はダンジョンがかなり奥地まで広がるのに対して、ボス前ワープや便利スキップは一切なし。帰還アイテムはありますが、行きは徒歩なので有用性は半減します。せめて攻略済みのダンジョンは一発ワープさせて欲しかったなあ。

ボス前回復が置いてある辺りは優しいんですけどね。

 

 

 

どこまでが完全クリアかわからない

 

3周目になると隠しダンジョン等はどっと増えますが、メインダンジョンをクリアし切るといつでもエンドに行ける分、逆に「これでコンプした」という確信が持ちづらいです。あの短い会話のキラキラを全部集めれば完了だと思うのですが、その集まり具合を本編で確かめられないのがどうにも。ボスを倒して見逃しを確認してはロードして戻ってきてもう一度ボスを倒すというちょっと感動が台無しな事態になってしまいました。

 

でも、皆の会話を集めきって周回プレイをせず終わった時の、あの演出は、心から愛しています。

 

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

グラフィックはとても良い、キャラクターもかわいい、でも肝心の中身に辿り着くまでが遠く味気ない。そんな、一歩惜しい印象がある作品でした。

 

追記では軽くネタバレ感想など。

 

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フリーゲーム「カボチャ男爵とハロウィン」「Cat×Cage」「私の勇者ちゃんが!」感想

「暗黒魔術師風のイケメンにほのぼのと愛でられたい!」

見た目の好みと中身の好みは異なる前置き。

 

 

えー、今回はbabycastさんところのフリーゲーム「カボチャ男爵とハロウィン」「Cat×Cage」「私の勇者ちゃんが!」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

相互に関係性はありませんが、同じ作者様ということで一気にまとめてしまいます。どれも短編乙女向けノベルゲーム、ハイレベルなイケメンを全力で摂取できるグラフィックが魅力。

お目当てがある方は下記の目次からどうぞ。

核心部分は明言しませんが、ぼかして書きはするので、プレイ予定の方は要注意。

 

 

 

 

 

 

『カボチャ男爵とハロウィン』

http://1094mill.wixsite.com/babycast/pumpkin

 

[概要]

御贔屓客の男爵様の頭はなんとカボチャ! しっかり口説いてくれるタイプのハロウィンゲー。ミニゲームあり。

 

 

[良かった点]

何よりもまずやっぱりグラフィックですよね!

カボチャ頭の時点で掴みはばっちり。登場するイケメンも、片や優しい良家のお坊ちゃん、片やミステリアスで褐色な悪魔様と、相反するキャラ性で乙女心をくすぐるセットでした。

あとがきで見られる一枚絵が特に好きなんですよ。あれポスカとかであったら飾りたいなあ。飛びぬけてハイクオリティですし、乙女ゲーによく合う絵柄だと思います。

 

内容としても、ミニゲームや選択肢分岐が凝っていた印象です。システム自体は簡易ですが、あえて間違った時の反応が用意されているのは好印象。やっぱり選択肢があるからにはきっちり反応を返して欲しいので、ここは嬉しかったです。ヒントを選びすぎて例のエンドに直行したのもご愛敬。

また、選ぶお菓子もエンドにこそ関係しないものの、それぞれの反応がきちんと違っていて細やかさを感じました。

 

あと、個人的には、敬語!!

某キャラのコンプおまけでの敬語変化が萌えました。敬語口調→素口調はよく見かけても逆はめったにないんですよ、ありがたい……!

 

 

[惜しい点]

 

起動するたびに音量がリセットされてしまう、オートモードを起動したままだとあとがきやキャラ紹介のページまで自動送りされてしまってまともに読めない、辺りの不便さは残念でした。

また、主人公が攻略対象たち(特にジャック)へ向ける想いの描写が薄く、「客先で異様に好かれたと思ったらゴールインしてた……」という置いてけぼり感はありました。まあ、余計な描写がなく万人受けするとも言えるのかも。

主人公の素朴で物おじせず優しい子、という雰囲気自体は好きですしね。

 

 

[一言]

ハロウィンにぴったりの、乙女ゲーらしい乙女ゲーでした。

 

 

 

『Cat×Cage』

http://1094mill.wixsite.com/babycast/catcage

 

[概要]

猫耳と魔法と軟禁。攻略対象1人で監禁もの、と公式にはありますが、厳密には単一カプではないので注意。探索ミニゲームあり。

 

 

[良かった点・グラフィック]

起動画面やおまけページなど、システムグラフィックのセンスが好きです!

すっごいシンプルなのにとってもオシャレなんですよね。高級品のパッケージにありそうな感じ……。公式サイトの、ドアップなイラストでぐっと興味を引っ張る画力も素晴らしいです。

さりげなく嬉しかったのは手袋のデザイン。手首が出る手袋って最高ですよね。

ちなみに私はもう一人のほうのデザインが好み過ぎて卒倒しました。髪型、装飾、人好きされなさそうな目つき、どこをとっても素晴らしい……!

 

また、コンプ後には猫耳off機能も搭載され、心行くまで立ち絵を堪能できます。

彼の絵のサイズ感や目線の感じも、色々プレイした後だと納得できて、この辺りの「見る伏線」な感じも楽しかったですねぇ。

 

 

[良かった点・内容]

つい前作と比べてしまいますが、今作では主人公のちょっとしたエピソードなどが盛り込まれているところが良かったです。探索を通じて背景事情や二人の距離感がわかるのもゲームらしくて良い感じ。

また、シナリオとしてはエンド3が印象的です。軟禁しつつも、主人公の気持ちを聞いたらすっと引くところに健気さを感じますし、あっさりした態度の裏を想えば切なさもあって、なんだかとても胸に来ました。

確かに公式サイトにある通り、ヤンデレを求めに求めて手をつけるとちょっとズレるかも? でもこのくらいの、どうしても好きすぎてつい、くらいの塩梅は好きです。ヤンデレ一歩手前な感じかなー、なんて。

 

 

[惜しい点]

欲を言えば、この設定で長編もしくは中編を見たい気持ちがありました。背景画像の小物が色々散らばってるわくわく感とか、お師匠様の装飾のマジックアイテム感とか、色々と想像が膨らむ舞台なんですよねぇ。弟子になる経緯といい、ちょっと濁された部分がとっても気になりました。

 

 

[一言]

フルコンプで10分程度、公式のイラストを見てときめいたなら是非。

 

 

 

『私の勇者ちゃんが!』

http://1094mill.wixsite.com/babycast/my-sweet-brave

 

[概要]

勇者魔王もの、周回前提、一周数分。全開ギャグゲー。一週間ゲ制に6日遅刻、つまり10日前後で作られたとのこと。

 

 

[良かった点]

選択肢にカーソル合わせた瞬間のあの演出ずるくないですか!

笑うわ!! 好きです。

 

1周目の、美しい日の光と共に映る例の顔グラも大好きです。

前述の2作では、こう、無難に楽しめる乙女ゲーらしいものを作られる印象が強かったので、なおさら衝撃でした。ギャグ全開のネタゲーもできるとはなあ。ゲームシステムと絡むメタネタ大好きなので大いに笑わせて頂きました。

こういうノリのゲームでも相変わらずタイトル画面やシステム系のデザインはセンスありまくりなところも素敵です。

セーブロード無しというのも、一気プレイして勢いと共に駆け抜けるプレイ感にぴったり合ってました。

 

 

[一言]

力強い笑顔をあなたに。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

どのゲームも攻略が同梱されている、あるいは紹介ページにヒントが書いてある優しい仕様でした。さくっとプレイできるので、気になるゲームがあればお気軽に。

フリーゲーム「はろーウオーン!」感想

「自己ツッコミはぼっちの基本スキル!」

()と矢印で無限に自分と会話していきたい前置き。

 

 

えー、今回はkaze-t+さんところのフリーゲームはろーウオーン!」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

R-18一本道ノベルゲーム、愛あるセッ…というよりは下ネタ・お下品・抜きゲーっぽい要素が強めです。性別で分けるのも野暮ですが、まあ雑に言うなら女性向けのストーリーで男性向けの描写が入っている感じ、かな。攻略対象はケモミミなマゾです。

 

 

というわけで良かった点など。

一部のシーンは伏字ながらネタバレするのでご注意ください。

 

 

あちこちで良く動くイラスト類

 

例えば起動画面でふよふよ飛んでいるコウモリ(ヴァイパイパイ?)や、ページ送りの時に成長していっている謎植物など。ご本人様があとがきで「目パチも作りたかった~」的なことを仰っているように、よく動きます。戦闘画面等もあって、ゲームらしい演出がされている感じ。

あ、戦闘自体はぽちぽち適当にコマンドを選べば進行するので苦手な方も安心してくださいね。

ともあれ、ちょっとしたところでぴこぴこ色々なものが動くのは見てて楽しかったです。ヨミが一生懸命壁を這い上がっているシーンは思わず感涙ものでしたね! いや涙は嘘だけど。かわいかったです。

 

 

 

小物もばっちりな立ち絵

 

加えて、グラフィック面で挙げておきたいのは立ち絵の豊富さです。

単純に差分が多いのもありますし、主人公兼ヒロインのめーしぃ様の立ち絵変化が好きなんですよね。小物が豊富なんですよ! 本持って、辞典持って、取ってきた獲物もって、等々。色んな小物をわさわさ持ち換えて百面相してるところが、本編のドタバタラブコメな雰囲気にとても合ってました。

かなり顔芸もあるので、ギャグシーンで変顔するのが好きな方はそこも合うかも。

 

顔グラはキュートな雰囲気なのに対して、スチルや裸体はかなり肉欲的です。ばいんばいんのぽいんぽいんの汁ダクじゅるじゅるって感じ。公式の注意書きにもあるので問題はないだろうと思いますが、念のためそういう表現が苦手な方は注意。逆に男性向け描写だから良いんだよわかってるなあ、って方にはベストマッチです。

私は合うとこ合わないところ半々な感じ。でも、頂点は見せず乳輪は見えてる塩梅は最高でした!

 

 

 

おばか系の抜きエロ文脈と混じるときめき乙女展開

 

めーしぃ様の痴女魔女な格好といい、全体的な下ネタといい、基本的には抜きエロに近い文脈で話は進んでいきます。

新鮮だったのはおぱんつ関係の独白シーン。単純に匂い等々の実用面ばかりに注目しがちなので、ぱんつを食べるにあたる理由の心理描写は勉強になりました。……いや真顔で言うシーンじゃないのは解ってるんだけどもね?

余談。顔芸の使い方や自己ツッコミの文体、大文字テキスト演出などに他所でかなり見覚えがあったので、勝手ながらハラハラしてしまったのですが、実際進めていくとどんどん独創性が見えて安心しました。

 

一方で、ときめき展開があって糖度が高いところはしっかりがっつり乙女ゲー、看板に偽りなしって感じです。

あの戦闘シーン好きなんですよね。その後のシーンもそうですが個人的には戦闘中の、「ヨミが……する、問題ない!」のところ、すごく胸にぐっときました。

こういう、誰かの気持ちがきちんと行動に現れてるシーン好きなんですよねえ。

めーしぃ様が勇気を振り絞って「○○○インでもいい!」って開き直るところも、すごく盛り上がりを感じて素敵でした。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

 

ときめきも欲しいけどしっかりエロも欲しい、下ネタギャグ万歳なお嬢様向けの一作でした。

 

 

 

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フリーゲーム「シガイタチ」感想

「人なんてみんな皮を剥げば化け物じみているものよ」

得体の知れない神様よりずっと単純で強烈な前置き。

 

 

えー、今回はさんところのフリーゲームシガイタチ」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

分岐とエンドが莫大なほど豊富な選択式ノベルゲーム。探索パート有り。15禁。

明記はありませんが全体的に女性向けな作品かなーと感じます。愛されたり愛でられたりするシーンが多めなので……殺されたり殺したりもしますが。

 

なお、あまりに好きすぎるためネタバレせずに語れませんでした。

一応ぼかしているつもりではありますが、念のためご注意ください。

 

 

というわけで良かった点など。

 

 

何度も周回と分岐を繰り返すプレイ感

 

まず、本作は周回プレイが前提の構成がされています。おそらく一周だけでは、このゲームのシステムも世界の法則もわからないまま終わることでしょう。

一方で、いわゆるトゥルーエンド(エンドリストの色文字エンド)には、運と勘が良ければおそらく1周目でもたどり着けます。さらにコンプまでの難易度はかなり高い、というか、そもそもコンプは前提となっていないような感じ。フラグがランダムで決まるところもあり、私も217週くらいは粘ってみたのですが90%が限界でした。100%行った方いるのかしら。

 

でも、不満じゃないんですよ。そりゃ全部楽しんでありとあらゆる皆を堪能したい気持ちは強くありますが、それ以上にいつまでも終わらず噛み続けられるプレイ感が楽しくって。

だって、同じゲームを100週してまだ新しい展開や文章に出会えるって、すごくないですか!? 

エンドだけでもあんなに数がありますが、同じエンド名でも過程が違っているときは文が追加されたり変更されたりして、もう本当、どこまでも楽しめるんです。

真相は用意されているけれど語り過ぎず、辞め時もプレイヤーにゆだねられている感じでした。

 

 

 

無口ではなく喋れない主人公

 

豊富な分岐の第一手となる主人公について。

性別、一人称、名前の変更ができるうえ、一人称は自分で入力することもできます。無口主人公自体はよくあるテイストですが、本作は「喋れない」という設定でキッパリ決められているところが好きでした。

 

他キャラも「あなたが喋れなくてよかった」「おまえ喋れないもんなあ」「何か言ってみせなさいよ」等々、色々な形で喋れないことを強調してくれます。なんかこの直球さとか、無理に気遣わない感じが好きだったんですよね。あと単純にこういう設定のキャラが好き。

基本的に動かされるキャラクターで、こちらが選択肢を選ばない限り自発的に動くのはトコロの某エンドくらい。この、無味に消してある塩梅も好きでした。

 

 

 

魅力と歪みが詰まったキャラクター

 

そして何より一番好きなのはキャラクターの性格、歪み、世界線が変われば立場も変わるところです!

多少周回してもらえば伝わるかと思いますが、このゲームのメインキャラ4人って、キャストなんですよね。周回するたびに立場が変わり、好悪が変わり、1周前は好きだと言ってくれたその口で今度はバクリと食べに来る――――でも決して別人になるわけじゃなくてそのキャラらしい理由付けで動いてくれるんですよ。しっかりと根幹ができてるなあと思います。

 

特に好きなのはケシ関係の選択肢の反転具合ですね。

素直にあの子に従うような奴をケシちゃんが構ってくれるわけがなく、信者になってはいけない、手に入れたいのに手に入れられないものにならないといけない。この具合がほんっっっとケシの性格をよくよく表してて大好きです。

 

そう、いわゆるテンプレな善人がいないんですよこのゲーム。

逆に根っからの極悪も……いやある意味ケシはちょっとそうかもしれないけど……いないと思います。

各々、コンプレックスがあったり後悔があったり難点があったりするんだけど、それだけで暴走するのではなくて、ほどよく隙やブレが見える感じ。で、共感しかけたり好感を持ちかけたりしたところでふっと、急に理解できない怪物になってしまう感じ。字義通りの意味でも比喩的な意味でもね。

とにかく、人間が描いてあるなあと思います。

 

 

 

グロテスクで鬱で圧倒的なグラフィック

 

あと、好きなのがグラフィック関係。

特に異形が出てくるスチルは総じて大好きです。本当、えげつないくらい“バケモノ”してるんですよね。素晴らしいなあ。特にあの、四人全員が倒れ伏している、エンドの一枚絵が好きです。あれほど退廃を感じさせてくれる一枚絵に出会えたことが嬉しい。

ランダム変化するタイトル画面も、模しているキャラクターはわかるんですが、ぱっと見ではまるで別物の様に見えてなんだか味わい深かったです。アーティスティック? って言うのかなあ。色んな絵柄で、皆好き。

一方で、探索で見つかるアイテムのゆるゆるした絵柄も好きです。飴ちゃんとかお守りとか。

 

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

分岐も探索も鬼のように広々としていますが、だからこそ楽しい、世界観もキャラも私にぴったりの大好きな作品でした。

 

あと、せっかくなので昔書いた攻略も載せますね。一部未完ですが……。

shiki3.hatenablog.com

 

 

繰り返すけれど、コンプを目指すのではなく、楽しめるだけ楽しむのがオススメなプレイ方法かな、なんて。

 

追記ではもうちょっとキャラに突っ込んだ感想など。

 

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フリーゲーム「千枚皮-Allerleirauh-」感想 

フリーゲーム「千枚皮-Allerleirauh-」攻略

 

 

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フリーゲーム「バレンタイン@ビタープラス」感想

「恋人じゃなくていいから恋人と同じことをしよう」

セーフの境界をじわじわ遠ざけていく前置き。

 

 

えー、今回はkaze-t+さんところのフリーゲームバレンタイン@ビタープラス」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

本編までは年齢制限有りの乙女ゲー、クリア後要素からはしっかりエロゲーな恋愛ノベル。お目当ては先輩ですが、近親相姦もお楽しみいただけます。

本編の関係で本記事も18禁とさせていただきますね。

 

というわけで良かった点など。

 

 

ときめく心とビターな味わい

 

公式サイトの注意書きからぼんやり察せられるとおり、序盤こそときめき乙女ゲーですがふっとダークな一面が零れ出ます。序盤が丁寧で、一生懸命がんばるヒロインの可愛さが随所に出ていたからこそ、落差にとてもぞくぞくさせられました……!

容赦なく辛辣で、無遠慮に直球なところもかなりポイントが高かったです。ああいう、少女の淡くてかわいい恋心、みたいなのをグチャグチャにされるシーン大好きです。

……語弊を招いてしまいそうだ。でも好きだよね。

 

 

どろーり濃厚なアフターストーリー

 

本編および別視点を読み終わると、アフターストーリーが解放されます。このボリュームがなかなかのもので、体感では本編に匹敵する長さでした。終始いちゃいちゃドロッとほのぼのな流れなので、甘々が好きな方や両片想いが好きな方は特ににこにこできるかと。

特に私は、食べたいけどまだ食べたくないみたいな、楽しみに取っておこうとしてひたすらにたにたしてる感じの心情描写が好みなので、実に性癖にぴったりでした。

 

 

 

背徳を煽るシチュ多めのえろシーン

 

せっかくR18作品なのでえっちなシーンについても語って――おきたいのですが。ネタバレにも触れそうなので、タグ的に単語だけ。

無知シチュ、男自慰、睡姦、ぶっかけ、素股、疑似セックス(騎乗位)、断面図。

あと下着に出して履かせるシチュエーションめちゃくちゃ最高に好きなのでガッツポーズでした。きちんと塗り付けてくれそうなところも素晴らしい。そのうち上のお口くらいなら在学中に使ってくれそうだなあと思ってにこにこしました。

 

 

 

いじらしくてかわいいヒロイン

 

「怒り顔」という設定は新鮮でした。

顔グラもスチルもめっちゃかわいいので、周囲が嫉妬してそう意地悪を言っていると捉えているのですが、確かに目つき等々見てみると言われてみればむすっとしてる感じ? でもあの目つき私すごく好きです。あと、私の知人にへの字口を気にしている方がいるので、なおさら親近感というかリアルな女の子してていいなーと感じました。チャームポイントを気にしちゃうのっていいですよね。

 

ヒロインは本編だとまだ本人視点なので健気で一生懸命に見えていたんですが、アフターではもうすっかり無知系の似合う魅惑のあほのこで可愛かったですねー。

絵柄がふにゃっと可愛らしい感じなのもまた、色々と昂るものがあるなー、なんて。短編でもスチル多めで、体型がマシュマロ系なのもすっごく可愛いと思います。

 

 

 

 

 

余談ですが、先輩は元々別ゲーかどこかで登場されていたんでしょうかね?

けっこう意味深なやり取りが行われた一方で秘められたまま終わってしまったのでかなり気になったり。単に見逃しているか記事を書いている現在(201808)は公開停止されているだけかもですが……。あちらも不穏な匂いを感じるので、どこかで一本の作品として見れたら嬉しいなあと思います。

 

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

 

あとがきに「こういうのは好まれない~」的なことが書かれていたのが大変寂しかったですが、えろシーンの描写が男性向けな乙女ゲーが好きな同好の士はぜひどうぞ。

 

 

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