「あなただけの色があるから、揃って輝くことができる」
透明もまた綺麗な前置き。
えー、今回はPixel_Note(三條)さんところのフリーゲーム「ナントカ三術将3」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。
3と銘打たれているとおり、『ナントカ三術将』シリーズの番外編を含めて4作目となります。いつもの既プレイヤー特典もあるので、シリーズ通してのプレイを推奨。
過去作と比べるとガチャ要素がなくなったぶん、テンポの良くノベル中心に楽しめるようになりました。
というわけで、良かった点など。
ミステリもドラマも見られるストーリー
いや~、相変わらずテンポがいい!
チャプターごとに謎やドラマを見せてくれるので、読む手が止まらなくなりました。特に今作はメアト回って感じかな? キャラが好きな身としては皆のつまずきや成長にドキドキしましたし、きっちりストーリー自体も起承転結あってアツイ展開でした。
今作はガチャや探索が廃止されたため、エレメント関係はシンプルな進行になっています。これもテンポの良さを感じる理由の一つでしょうね~。そのぶん、外出や着せ替えでプレイヤーの「ゲーム感」はしっかり残してくれたような印象。
何より嬉しいのが、チャプター見返し機能! メインストーリーの好きなシーンをいつでも読み返すことができます。助かる~……!! こういうの、全フリゲに搭載して欲しいくらいにはありがたいです。
ネタバレなので追記に格納しますが、今作のエンディングが自分は一番好きです。
夢中になって読んで、でも余韻はいつまでも残ってくれる感じのお話でした。
プレイヤーは神視点
この「ナントカ三術将」シリーズ、ナンバリング全てを通しプレイして、ここでようやく気付いたことがあります。
あんまりこういう言葉選びをしたくないんですが、このシリーズって巷で言うところの「ストレスが溜まる展開」がわりとある作品でもあるんですよ。一回はジーンが何かやらかすか、暴走しちゃう。
でも、誤解しないでほしい、そこが好きなんです! そういうシーンがあるからこそ、彼らが“三”術将である意味があるわけですから。
メンタル強い人ばかりじゃなくて、弱いところ、苦手な物事があって、だからこそ手を取り合って奮い立てるという。あらすじだけ羅列すると中身が全然伝わらなさそうでもどかしいですが……。こう、弱い人の気持ちも汲み取ってくれているところが好きなんです。
で、本題に戻りますが。
他のナンバリングと比べると、今作は特に「明確な敵」が「手の届かない位置」にいるため、前述の要素が少し強めだったかな、と思います。主人公はジーンでも、ストーリー自体は神視点で見れるからなおさら、全て知っているプレイヤーこと私としてはやきもきするところもありましたね……。
もちろん、ナントカシリーズであるからにはもちろん、最後には圧倒的な熱さと彼ららしさでハッピーエンドをもぎ取りにいってくれるわけですが! グッと唇を噛み締めざるを得ないシーンがあることは、誤解なく書いておきたいなあという気持ちはあります。
オシャレな掲示板とかわいい雑談
シリーズ恒例、SHIFTキーを押すとジーンの独り言が聞けるシステム。今回はなんとボリュームアップして、ジーン以外のキャラの一言も見られるようになりました! 意外なキャラの本音が聞けたり、ストーリー進行にのっとったニクイ一言にグッときたり。
中でも街の張り紙は、都の人達の生活と、そこに根差すジーンの日常が垣間見えてすごく好きでした。こういうテキストがあると、ゲーム世界への愛着や没入感が変わりますよね……。
さりげないところだと、キャラの出し方の演出も好きでした! カードを繰るみたいにパッと広がる感じのあの演出。ここだけじゃなく、あちこちの演出がテンポ良くてかっこいいんですよね~。ユニの術の発動エフェクトかっこよくて好き……。
特に、2.5のクリアデータを引き継ぐと増えるキャラクターとの掛け合いは良い癒しでした! 既プレイの方は是非。
いつでも楽しいカスタマイズ!
今作でついに! ゲームを終了させることなく、即時反映の形でオプションを弄れるようになりました! プレイ専の私でも諸々の設定周りが難しそうだなあと思っていたので、これをぬるっと切り替えられるの本当にすごいなと……。
着せ替え出来るお部屋の中がこれまた可愛いんですよ! いや研究室なんですけど、和むのでお部屋と言わせてほしい。あくまで本筋に関係がないという意味ではおまけ要素ですが、そんな範囲で語るのはもったいないくらい、プレイ中ずっと楽しかったです!
また、ゲームシステムとして語りたいのが、メニューデザインを変えられるタイミング。ちょうどゲームにこなれてきたなと感じるところで新メニューが増えるの、思わず拍手しそうになりました。いつまでも新鮮味と共に遊べる演出~……! 最高~……!
デザインもお洒落で好きなんですよね! ああいう模様って、やりようによってはすごく見づらくなっちゃうと思ってるんですが、本作はそこもきっちり調整されてて素敵でした!
手に汗握るバトルシーン!
ノベルパートでこれほどまでに動き回るバトルシーンを!?
というのが一番の驚きでした。奥行きと高低があるんですよ!! カメラが動くんですよ、マントが翻り砂塵が舞う様が見えるし実際に行われるんですよ目の前で!
いったい何枚描いたんだろう~……。元々よく動くシリーズではあるんですが、それでもですよ。ナンバリングを重ねるごとに演出が前作を超えていく、天井知らずなのがすさまじいなあとしみじみします……。
また、盛り上がるのは演出だけでなくその内容もそう!
まずは熱さ。前述の通りプレイヤーは神視点でも言えるんですが、それでも盛り上がる、拳をぎゅっと握りしめて「勝ってくれ!」と叫びたくなる熱さがありました~……!
続いて戦術と奇策。「そう来たか!」と思わされるシーンが多く、白熱でした……。ユニという新キャラが生まれたことで術技の幅も広がったのも大きい。やはりあらゆる面で発想が面白い作品だなあと思います。
そして最後に何より、いわゆる“イイ”性格してるキャラが、敵にも味方にもいるところが好きです。戦闘中の掛け合いが、いやあ実に盛り上がりました!
新キャラ・ユニ
多数新キャラがいる中でも特に推して参りたい。
敬語です。登場BGMが最高です。よろしくお願いします。
とまあ、こんな感じで。
既存キャラのエピソードはより濃く、新キャラの魅力もたっぷりと、ボリュームいっぱいの嬉しい新作でした!
追記ではネタバレ感想。
同作者様の他フリーゲーム感想記事↓
ネタバレ注意!
色の数と属性について
クオリア、クーと続いた関係でなんとなく「紫」を四色目だと感じていたんですが、今作の四属性に「なるほど!!」と叫んでしましました。システムとして存在していて、今まで見逃がしていたものに、今回ハッと気づかされた感じです。
このシリーズ、いつも新しい切り口が増えていくからすごいんですよねえ……。
好きなサブイベントや外出の話
ジャック! 今回もジャック、君よ!!
2での彼のエピソードが大好きだったので、後日談が見れて安心しました。それにこの話での、ジーン様のクーへの芯のある褒め方が大好き! 慰めるためとかじゃなくて本気で心から「すごいぞクー!」って言ってくれてるのが伝わるから、我が事のように嬉しくなってしまいますね……。
それに、このエピソードはメインテーマにも絡んでくるなあと思っており。作品通して、特に後半は「視野狭窄」が何度も繰り返されていたと思うんだけども、クーはここで真っ先に視野狭窄から抜け出して、広い世界を見れるようになったんだなあと感じました。
ヤークのイベントは泣きましたね~。
レベータの性格の悪さが全面に出てて良かったですね~……。「このぉ!」と思わせてくれる敵役は良いものだ。ジーンもヤークも同じ成長途中で、だからこそ見えて学べるものがお互いにあるんだろうなあと思えました。
ちょっとしたところだと、2.5からの引継ぎで会えるあの子。
話せないのつまんないよね、みたいなセリフが好きだったんですよ~。ケンカばっかりで、でも二人っきりで過ごしているあの子だからこそ言えるセリフですよね。なんだか実感を伴っていて、じんと来ました。
各キャラの話
もちろん全員は難しい、でも全員取り上げたい気持ちがあることだけはわかってほしい!
というわけで中でもプレイしていて泣いた・叫んだ人たちについて。
メアト
やっとか~!という気持ちです。過去についても、彼女の成長についても。
無印の時からずっと「メアトってやり方が分からないだけの子なんだろうなあ」と感じてたんですよ。根っこが悪い子なんじゃなくて、ただ戸惑っているだけみたいな感じ。好きとか嫌いとか以前に、見守りたくなるキャラなんですよねえ。
それが今作でね! ついにね!!
ラストがもうボロボロ泣いたんですよ~……。ただただ不安を紛らわせるために寝ていただけの子が、笑顔で素敵な将来を「夢見れる」ようになったの、たまりませんよね。やっと居所が、アイデンティティが、在り様が、落ち着いてくれたんだなあとしみじみしました。ここまで見守って来れて良かったなあ。
ヘリオール
魔王様の外見がついに出てきたのはこういうことか!
今までは、真顔でおちゃめなことするキャラなのかと思っていたので、想像以上に罪悪感と自らの至らなさを抱えているというか……ぶっちゃけ自己評価ものすごい低い人に見えてとても驚きました。メアトに対する自責の念がめっちゃ強いんだろうな……。
これまでは威厳があって頼もしくて、の面ばかりが見えていたから、ああヘリオール様も様が付く前は同じ一個人だったんだなあと。やっと魔王様じゃなくてヘリオールさんに出会えた気がしました。
メアトへ背負わなくていいと言っていましたが、今後三術将がヘリオールになるとしたら、揃って市民へお目見えする時などの見栄えがすごそうですよね。圧。表に出るかはさておき。
ユニ
ファンがめちゃくちゃ多そう~~~~!!!
そして専用BGMが良~~~~!!!!
こういうちょっとシニカルで自立心が強くて~なキャラ、元々大好きなんですが、いやあものの見事にツボでした。
ラストのチャプターの、レベータに腹立てるシーンで好きがカンストしちゃったんですよね! あの、リフレクションに対して「術撃ちましょうよ」って言うところ。スクショ撮っちゃいました。こういう、知的な物腰で苛烈な性質が見えるの好きです。
あと、メアトに素直じゃないって言われた時の「どういたしまして」。
ここが一番好きでした。まさに素直じゃない!
一言でしれっとお出ししてくるのがずるいですよね~。
と、ユニが気になり始めたのは終盤も終盤なんですが。それまでは術の発想に惚れてたんですよ。この作品ずっと思ってますが、エレメントの説明と言い活用方法と言い舞台解説と言い、発想がすごいですよねえ。
術発動時のエフェクトがかっこいいっていうのもあるんだろうなあ。
いや~、マジでRPGとしても遊びたいですねえ。味方キャラになったユニを操作したい。なんなら敵でもいい。ターンごとに戦法が変わるユニと戦いたい。イグニスで耐えたりジーンで叩き込んだりメアトでターン吹き飛ばしたりしたい。模擬戦しませんか?
クー
レベータとのバトルで何度も出たり入ったりするのがすごいかわいくて好き。挙動のかわいさのみならず、バトルでの動き方としても、ちゃんとクーが隠れてるのは有能だなあと思いました。
助手キャラとか、ああいう一途なキャラって、なんかついつい主人のためにって表に立っちゃいがちじゃないですか。クーはそういうんじゃなくて、謙虚なんですよねえ。「本当の意味で」ジーン様のために何ができるかを、一人でしっかり考えられる子だなあって思います。
クーの見つけた錬成文の発見方法にしてもそう!
これまでは助手としてジーンにくっついてたクーが、今度はクー一人で、ジーン以外にも目を向けてクーだけの交流を作って、その中で生み出した勝策。前述のジャックとのエピソードにも関わる話ですが、これこそがもう成長ですよね……。
で、クーにまつわるシーンでどこが好きかって、ラストの皆の力が集結するシーン。究極の色は美しい色で皆の力を合わせた色って言ってるのにそれでも、クーがジーンの色を「最高でかっこいい色!」って言っちゃうのがもうね、もうね、たまらん抱きしめたくなっちゃいました。だよなあ、君にとってジーン様は最高だもんな!!
エンディング
ジーンが様々な色を愛している主人公だからこそ、本作、少し杞憂もあったんですよ。
究極の色なるものが決められてしまうと、例えば私の黄色好きみたいに、単色を好きって気持ちはどうなるのかなあって。レベータの登場の頃からどことなく、茶色や黒色が好きな方は引っかかるのかなあと気になってもいました。
でも、この作品そうじゃなかった!
レベータの結晶石の色を、「黒」じゃなくて、ああいう「何色とも言えない」禍々しいぐちゃぐちゃの色味で表現してくれたのがなんか私はすごく嬉しかったんです。
もし軽率な考えでやっちゃったらさ、虹に対して黒とか、光に対して闇とか、なっちゃうと思うんですよ。でも、そうじゃなかった。
クーのセリフに戻るけど、「究極」と別で「最高」があっても良いんだなって思ったんです。そう思えるセリフを言ってくれたことが、とても嬉しかった。
本当に、優しいお話だなって思いました。それぞれの好きな色を大切にしてくれてありがとう。
と、こんな感じで!
気づいたら5000字超えててびっくり。でも、まだまだ全然語り足りないし、着目したい点はいっぱいあります。ただこれを言い出すともう、どれほど語れど語りつくせなくなってしまうので、この辺で。
とにかくすごく、すごく素敵なお話だった! ここまで通してプレイしてきてよかったです!!!