うそうさ〜第二号室〜

フリゲ・鬱展開・ヤンデレ 万歳!

フリーゲーム「欲とふたり連れ」感想

「たった一つくらい自由にしたっていいだろうがよ」

どうせ最後にはそれすらゼロになる前置き。

 

 

 

えー、今回は露骨さんところのフリーゲーム欲とふたり連れ」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

 

ピュアとダークがそれぞれ純度高く成り立っている短編ノベルゲーム。

ヌシアルハナ・ハルノヨ』と世界観は共通ですが、キャラは別。

事前知識としては「不思議な力を持つ一族が居る」「一族は閉鎖的で怪しい慣習がある」あたり? そこも本編をプレイしていたら普通に文脈で理解できる内容なので、単品でも遊べるのではないかなー、なんて。

 

 

 

というわけで、良かった点など。

以下、キャラ設定など一部のネタバレを含みます。ご留意を。

 

 

 

かわいそうなのだーれだ?

 

メインキャラ3人はみんな、「可哀想」です。

被差別奴隷のオキ、男でありながら女として育てられたミヤコ、呪術の一族の重荷を背負わされたサトリ。それぞれがそれぞれの苦悩を持っています。

 

さて一方で、それぞれが難も抱えています。

オキは無知で愚かミヤコはワガママで暴力的サトリは人間不審で陰湿。……いやもう人様のキャラにこう評するのは失礼でしょうが、この二面性が魅力だと思っているので、許してつかあさい!

 

可哀想だけでは終わらない、苦しいことがあるからこそ歪んでいる、この人間らしい生々しさが好きでした。こういう、誰もに同情の余地がありつつも非もあるような展開、大好きです。

 

 

 

依存と献身

 

どのエンドもそれぞれの良さがあったんですが、中でも好きなのはやっぱりミヤコ様エンドですね~!! 自然とこのエンドに辿り着いたというのもありますが。

オキとミヤコの関係性がルートに寄って少しずつ違って見えるのもポイントだなあと思います。オキはただ流れに従うだけの奴隷なのか、それとも献身を捧げようと思う純愛なのか。

ダイレクトなネタバレはちょろっと追記にて。

性的な話も、醜い心の話も出てくるのに、何故かどこまでもピュアを感じる作品だったのはきっとこのオキとミヤコの関係性があるからなのかなあと思います。溶けかけてぐじゅぐじゅになった泥道に、唯一まっしろの雪が残っていると、他よりいっそう尊く見える現象。

 

 

 

蝶と黄が彩る画面

 

関連作の『ヌシアルハナ・ハルノヨ』が赤、『ヤミノウツツ』が青と来て、本作は黄色がベースの画面構成になっています。好きな色だったので嬉しい!

タイトルと蝶の動きの親和性もまたいいんですよね~! ひらりと舞う蝶がそれぞれ何を指しているのか、シーンチェンジの合間にふと思わされるのが良き演出でした。ルートによってはゾワッとさせられることも……。この味わいが好き。

 

 

 

えげつない人権損害

 

公式サイトで厳重に管理されている通り、本作のストーリーにはかなり危うい要素も含みます。冒頭でネタバレ注意しておいたので書いてしまいますが、DV、異性装強要、切断など。

この作品のすごいところは、これらを初見インパクト作りの道具としてではなく、きちんと彼らの生活に根付く因習または個人の性質として誠実に描き切っているところです。

オキがミヤコを「刺激しないように」動こうとしているところに、思わず息を飲んだんですよ……。いやあ、DV被害者として実に、生々しい動き方だなあという……。

ここ以外にもあちこち、ハッとさせられたり顔を覆いたくなったりするシーンがあって、ものすごく素敵でした。倫理観を持った方による倫理が壊れたお話、とても信頼がおけて良い……。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

けっこう精神的にグロい展開であるはずなんですが、不思議と綺麗で、ぼんやりと魅入ってしまうようなお話でした。

 

 

 

追記ではネタバレ感想。

 

 

 

同作者様の他フリーゲーム感想記事↓

shiki3.hatenablog.com

 

 

ネタバレ注意!

 

 

 

名前の話

 

 

まず何より、

ミヤコ様のお名前はどうあがいてもミヤコ

 

ここがもうエッグイなとずっと思ってます。好きです。本名が他にある、とかいった話もなく一貫してずっとミヤコなんだもんな……。産まれた時からってことだもんな……。

 

 

 

 

エンドの話

 

ミヤコ様エンドがやっぱり好きです~!!

なんだろう、やりきってくれて本当に良かったなあってほっとしてしまったんですよね。凄惨な結末のはずなのに。

初め、ミヤコ様は連れて行ってはくれないつもりなのかなと思ったんですよ。その時に感じたのが「不安」だったんですよね。だからなおさら。

ミヤコ様とオキの、どうしようもなく入り込みようのない二人だけの、信頼。それを感じるエンドでした。きっとこんな関係性はこの作品でしか感じられないんだろうな……。とても好きです。

 

 

 

ノーマルエンドはなんだか、一番納得があったように思います。そうだよなあ、だって私自身が「オキはミヤコに盲目的であってほしい」って思っちゃってたもん。

 

 

 

サトリ様エンドは、どうしても私がミヤコ様に寄っているので、NTRエンドという印象が否めず。ある意味ミヤコ様にとってのワーストエンド。

よくここまで心身ともに痛めつける方法を思いつけるもんだなあと感心したエンドでもあります。ミヤコ様自身も、ミヤコ様の持ち物も、全部全部盗っちゃった。

オキの無垢ミヤコルートでは従順サトリルートでは言いなりという形で表出しているのかなあと思います。どっちにしろきっと愚か。だから綺麗。

 

 

 

 

首輪の話

 

いやあそれにしても……。

オキの首輪に「楽になる手段」「所有者の象徴」「無知の証明手段」という複数の意味が組み込まれてるの、マジですごくないですか!?

 

この作者様は、人間関係や各種舞台背景の設定の仕方が本当に上手いなあとしみじみします……。込み入ってるはずなのにすっと頭に入ってくるし、色んな意味が含まれてるから読みごたえがあって楽しいんだよな……。

 

 

 

 

 

まとめると、この暗がりが心地よい……。

メンタル抉られる展開も確かにあるんですが、不思議とものすごく息のしやすさを感じました。