「同じサイクルの繰り返し、掃除も食事も生き死にも」
ずっと回り続けるなら永遠と呼んでも良いかもしれない前置き。
えー、今回はうきうき雨季(6月)さんところのフリーゲーム「ナイナイ」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。
ウディタ製、短編、アプリゲームでよくある放置&タップゲー。難しい操作はありませんが、放置時間の関係で、全クリまではだいたい1時間半くらいかかります。
というわけで、良かった点など。
ほどよいゆるゆる感の放置ゲー
横長画面をひたすら左右に行き来してお掃除!
これだけだと単調な作業ゲーに見える書き方になってしまいますが、とんでもない。お掃除するステージする場所・お話相手・BGMがゲーム進行に応じて変化するので、最後までじっくりゆったりと楽しめました。
序盤はかなりスピーディに感じていたゴミの出現も、終盤になるとのんびりペースに感じられるほどに。魔女との話や可愛いグラフィックを咀嚼する間があってちょうどよかったです。
後半になればなるほど必要なゴミ処理の数が増えるのは、それだけ魔女がナイナイを手放したくないと思う気持ちが強いからなのかなー……なんて。
もしかすると、緊張感に耐え切れなくて早く終わらせたいと思ってたプレイヤーさんもいたりするのかな……?
私はヤンデレも鬱設定も大好きなので、どのステージもしっとりと味わえて最高でした!
魔女という名の病みショタ
乙女ゲーと銘打たれているわけではないんですが、登場人物は(おそらく彼という呼び方からして)みんなショタ。見た目は性別不祥な子も多いですが、一人称は俺・僕といった感じでしっかり男の子です。
そんな中で嬉しかったのが、魔女達がみんな、主人公ナイナイへの執着を見せてくれるところ!
従業員としてであったり、友人としてであったり……。それぞれ形は違えど、「傍にいて」と言ってもらえるのは単純に、すごくときめきました。
だからこそ、自分の声を持たないナイナイがどういう道を選ぶのか気になって、先が見たくなるんですよね~。
無限の虚しさを感じさせるストーリー
ナイナイの出会う魔女たちはみんな、致命的な問題を抱えています。そして、ナイナイがそれらを華麗に解決──なんてこともありません。
ただ、掃除をするだけ。
ただ、話を聞くだけ。
それでも、彼らの境遇やこれからに思いを馳せたくなる、切なさやどうしようもなさが垣間見えます。
この仄暗さがもうね、大好きですね~! ところどころでコミカルな会話も混ざるので、ほどよい緩急があるのも素晴らしい。短い間に色々な感情を揺さぶられる、良質な鬱設定が多かったです。
かわいさたっぷりのグラフィック
好きなのが、画面内のあちこちで見れるアイコン!
タイトルロゴには箒、魔女のセリフにはそれぞれのイメージカラーな三角帽子、文字送りにはネズミ。ちらちらと潜むアイコンがどれもかわいいこと!
また、キャラデザも前述のとおり中性的でキュートな子が多くてとっても好みでした~! みんな印象に残るしハマる見た目してるのがすごい……。
一方、マップでは人間?がシルエット表示だったり、彩度抑え目でリアル写真とコラージュしてある雰囲気があったり。デフォルメなかわいさだけでなく、魔女たちの居所の閉塞的な質感も味わえます。
この背景画像だけでも本当、良いんだよなあ……。正直壁紙にしたくらいなんですよね。この退廃っぽい雰囲気が好きで……。
マップ上でのキャラ操作は左右の動きのみですが、ちゃんとナイナイのグラフィックが四方位で設定されていたのも嬉しかったです。前も後ろも堪能できる……。ぴこぴこ動く尻尾がかわいい!
とまあ、こんな感じで。
仄暗い設定や、キュートなグラフィックが好きな方、ちまちまこつこつミニゲームが好きな方にオススメ。
まったり作業の合間に、あるいは寝付けぬ夜に、ナイナイと魔女達の出会いを見届けてあげてください。
追記ではネタバレ感想。
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ネタバレ注意!
レストランの魔女
THEカリスマ。
暴食の魔女とかじゃなくてあくまで場所名なのがなんだか気になるところ。食べ続けるにしてもただ腹を満たすだけではいけない、美食は捨ててはならない、みたいな高潔さから来てるのかな……。
従業員のこともナイナイのことも見てるエピソード、すごい良いですよね。
身なりにも気を使って、勤務態度も良くて、厳しすぎず甘すぎずで理想の上司っぽい。なのに、食欲に振り回されている。
こういう理性的な人が本能に振り回されるの、なんか、えっぐいほどの皮肉を感じませんか? 初めのステージということもあってプレイ初めはスッと通りすがっていたんですが、後になってじわじわと後ろ暗い興奮が立ち上ってきました。良い設定を作られますよね、本当に……。
古書店の魔女
一番好きです!!!!!!!!!!
こういう、論としては通ってるんだけど感覚がバグってる感じのキャラ大好きなんですよ……。あと、この手のSAN値ゼロ風な狂人セリフを、演技臭さなしに書けるのもすごい。
本棚が増えるくだりがむちゃくちゃ刺さったんですよ……!! あの、通じそうなのに通じなくてふっと離れていく感じが。
脳内に管理人を生み出したのも、ぐちゃぐちゃの脳内を管理してもらえるという以上に一人が寂しかったからなんじゃないかなあ。
ナイナイに戻ってくるなと言うのも、自ら未練を切り離すかのようないじらしさを感じて、好きです。
余談ですが、幼稚園児の名札を付けてたりベレー帽だったり言動が幼げだったりするのを思うと、もしかしてかなり幼い頃から狂った状態に陥ってるんでしょうかね……? バッジも未成熟を表すかのような双葉だし……。
さすがにこじつけかな。
でも、こうして色々と妄想したくなるくらいには、彼らのことが知りたくなる作品です。
発明の魔女
明るく振舞っているというより、もはや笑うしかねえみたいな印象でした。
無くしたことすらわからないのって、なんだか、一番空しいですよね……。見てる側からすると痛ましいけど本人はその痛ましさすらわからないから、なおさら。
自分は機械だと言ってるし表情固定とも言っているけど、果たして本体はどっちなのかな、とか。人間っぽい見た目のあの子も中身はケーブルやコードでできてるとか? あるいは、昔はモニタ持ってる側が本人だったけど、そのことを忘れちゃって、今は自分が四角いモニタだと思い込んでるだけなのかな、とか。
訊いてもわからないだろうからなお空しい。
だからこそ、写真という明確に手元へ残るものが用意されていてなんだかほっとしました。
落ちていく歯車について。単に作ってるロボットの部品かもしれませんが、なんだか、発明の魔女から零れ落ちていくものの多さを象徴しているようでもあって、切なかったですね……。
画廊の魔女
物腰柔らかに見えて、絶対に自らの主張を崩さない態度がすさまじかったです。圧。支配者。静かな暴力。怖ぁ……。
一見ヤンデレなんだけどその実メンヘラと言いますか。「ナイナイじゃなくても良いし、だからずっと満たされないんだろうな」という気持ちになりました。寂しいと言って執着しつつ自分しか見えていない。かなしいひとだ……。
そのぶん、一番わかりやすくもある気がします。
このステージだけゴミの種類というか、意味合いが違って見えるのもまた、恐ろしくて良いですよね~……。
羽根と鍵。ここから出たいという叫びが聞こえるかのよう。ひぃ……。
病の魔女
じゅ、重症!!
初登場時の叫びがこれでした。見るからに重症……。さすが病……。
そして、背景にご用意されている不吉な暗示フルコースっぷりにもはや笑いました。病床、点滴、逆十字架。
病とネズミという時点で初めから嫌な予感はしていたんですが、医療廃棄物の掃除ということでもうヤバさはMAXに。どんなエンディングになるものだろうかと怯え慄いていたので、思いのほか明るい方向性でほっとしました……。
病の魔女にとってはこれ以上ないハッピーエンド。
ただ、他の魔女達との交流もあるはず?なので、彼の今後の不安は残りそうですね。ナイナイが自発的にどこかへ行く不安はなくなっただろうけど、今度は盗られちゃう心配が発生しそう。
こういう、今度に向けての妄想がはかどるのも楽しかったです。
ナイナイ
クリアしてやっとわかるナイナイの意思。
もう、エンディングの衝撃がたまらん~~~!!
こういう無口主人公が喋りだす展開って、本当、素晴らしいものですね!! プレイヤーの手を離れるというか……。今作はナイナイの本当にやりたいことが最後まで隠されていたおかげで、かなり「突き放された」感がありました。正直、怖かったと言っても良いくらい。
他の魔女達にあれほど褒められたり縋られたりして、なお迷いなくあの道を選べるの、ナイナイちゃん自身もかなり、狂気を感じますよね……。
本作で一番のヤンデレかもしれない!
プレイヤー私としては、やっぱ第二の魔女が好きだったので、彼らのうちのいずれかの元へ行くエンドも見たかった気持ちは正直あります。あります……。
が!
ナイナイがどこまでも病の魔女に一途だからこそ、この世界観が成り立ってるんだろうなとも思います。
だって、魔女のところに行きたいって思う私の感情は、なんか、こう、あの世界観に合わない気がする……? なんだか、ナイナイの選んだ道と比べて、私の望む道……他の魔女のところで落ち着く結末ってすっごいフツーすぎませんか。自分の感情を自分で否定するのわりとむなしいけれども!
登場人物全員が狂気じみてるから、魔女の物語として成り立つ気がするんです。なので、あのエンディング自体は納得が強いです。
何より、この作品ならではの結末で好き!
ずっと噛み締めたくなるし、これからの妄想をたくさんしたくなる、素敵な作品でした!