うそうさ〜第二号室〜

フリゲ・鬱展開・ヤンデレ 万歳!

短編ノベルフリゲ5作感想

「人ひとり感動させるために果たして何分必要か?」

きっと刹那で十分な前置き。

 

えー、今回は、短い中にぎゅぎゅっと良さの詰まったノベルゲーを5作取り上げて感想文を書いていきますね。一部レビューっぽいかも。相互に関係性はなく、作品の雰囲気も別々です。

ではさっそく。

()内は作品傾向等々です。

 

 

 

『虹のくじら』(暗め・メルヘン・学生)

https://www.freem.ne.jp/win/game/11996

 

女学校に押し込められた、クラスで浮いている二人の話。

ジャンルはノベル、プレイ時間は30分くらいの短編。

淡いタッチで描かれた立ち絵と、澱んだ色のメッセージウィンドウ、きらきら綺麗な虹色。ぱっと見で物語の雰囲気が伝わってくるグラフィックです。

 

ストーリー、かなり痛いところを突くリアルさがあります。

嫌われているわけではないけれどどことなく浮いている主人公と、明らかに嘲笑の対象になっているちょっとズレた不器用な子。意地悪なシーンもありはするのですが、「絶対許せない!」と義憤にかられるよりも「こういうこと、あるよなあ……」としみじみ諦めてしまうような方向性です。それでも“どこか”を探さずにはいられない。なんともいえない気持ちです。

ただ暗いだけで終わらず、救いのような何かをちらりと見せてくれるのもまた、魅力的な点でした。プレイ後の感覚が真っ黒でもなく、虹色でもなく、もうあのメッセージウィンドウみたいな雰囲気なんですよね。既プレイの方には伝わって欲しい……!

 

ラストの匙加減が本当に好きなんです。

彼女たちの問題自体が解決したわけではないし、その後に起こるであろう噂話や彼女の境遇を考えると暗く陰鬱な気持ちにもなります。でも、そこは主題ではなくて、ただ虹のくじらでお話は終わる……ワンシーンはどれもリアルな一方で絵本のように幕を閉じるのが、苦しくも大好きでした。

 

余韻たっぷりであとがきをクリックしたところ、作者様からのコメントでさらにじんわりと込み上げるものを感じました。私は、佐々木さんが心底羨ましいと強く感じる一方で、小杉さんがこれからどうすればいいのかと途方に暮れてしまったところもあったので……。改めて自分がどう感じたのかを実感させられた思いです。

最後に雰囲気ブレイクしてくれるのも、悲しくなりすぎずちょうど良いところ。あとがきまでを含めて一作だと思います。

 

閉塞感を書き上げている一作。息苦しさ、輝く虹と絵本の世界、いじめ、女学校、などが気になる方向けです。

同じ作者様の他フリーゲーム感想記事

  →(多すぎるので「晴れ時々グラタン」で検索どうぞ!)

 

 

 

『ピーピングプール』(暗め、現代もの、学生)

http://knr.webcrow.jp/

 

現代モノの一本道ノベル。百合未満、男女恋愛の要素もありはするのですが、なんだかとても気になってしまうあの子という概念はまさに百合だなーと感じます。

まるで空気みたいだったあの子は、知らないうちに私より先を行っていた――――そんな妬み交じりの作品です。

スクールカーストまではいかないものの、一段下の立場だからこそ庇護欲を掻き立てられるみたいな、いやーな感情が終始作品を取り巻いている感じでした。

鬱鬱ではないんですよね。生々しい? お風呂に浮く毛の話とか。覗いておきながら正面からぶつかることはしないところといい、なんというかじっとりとした視線を感じます。

キャラクターの反応自体はけっこうさっぱりしてて、オチも彼らの中では一区切りついたことになっているのがまた、独特ですよね。読後感も全体的な作品の雰囲気も爽やかなはずなのに、ざりざりと舌に残る砂が忘れられない。なんともいえない後味でした。

 

スチルや背景画像はどれも透明感があって綺麗なんですよねぇ。だからこそまた、話が映えること映えること。むっちゃんのキャラデザが、今まで気づかなかったけどよく見ればかわいい女の子って感じで素敵です。

きっとむっちゃんも、話してみれば想像以上に普通の子で、ただ誰もそこまで近寄ろうと思わなかっただけなんだろうなーなんて。

 

私の環境のせいか、exeファイルとreadmeが文字化けしてたのには驚いたかな? でもティラノ製だとよくあることなのでまあまあ。

こういう、しこりの残る話が好きです。

 

 

 

『ヴァンパイア・アンダーザムーン』(秘密)

https://www.freem.ne.jp/win/game/11552

 

スッと読み終えれる、けれども衝撃度はなかなかのノベルゲー。

監禁状態から始まるけれどもとにかく主人公が饒舌なので陰鬱さは少なく、流れるように読みやすい文に乗りながら展開に翻弄されているうち、「ああ!?」と驚かされる一作でした。なるほどエイプリルフール作品。

ギャグと見せかけて人外の恐ろしさも感じられる、いやあ吸血鬼って深みがあっていいですよね。

あっさりした後味ながらも鈍器で殴られる味わいがある一作でした。

同作者様の他フリーゲーム感想記事↓

shiki3.hatenablog.com

 

 

 

『六姉妹の華麗なる埋葬譜』(ミステリ)

https://www.freem.ne.jp/win/game/11658

 

タイトル最高じゃありません?

起動画面からも察せられる通り、オシャレなビジュアルノベル

実写を上手く絡めつつ赤と黒で構成されている画面構成や、犠牲者を花弁で隠す演出、ぱっと状況が察せられるシルエットなど、あちこちにハイセンスで上品な趣が漂います。

 

一方で文体はかなり軽やかに、姉妹たちが淡々と貶し合う、このギャップも愉快なところ。軽い気持ちで読み進め、拍手で終わる気持ち良さがありました。

 

特に着目したいのは作中要素の徹底した無駄の無さです。立ち絵は猫が代理し、名前は全て番号、死因はどちらがどちらでも、等々。どこまでも個性を殺したうえで「犬みたいな顔」という強烈な個性を叩きつけてくるのが本当、よく効くんですよね! 予想できるというより、予想がつくように作られている印象です。

 

先が読めるという意味ではミステリらしからざる構成ですが、むしろわかりやすくして起承転結+一転くらいを狙っているのではないかなあと感じます。種のわかっている手品をいかに楽しく読ませるか、という感じ。猫たちの写真のトリミングがきっちり良い演出になっているところもグッド。

 

情報の濃淡の付け方が上手ですよ、本当!

まさにタイトル通り、「華麗」な作品でした。

余談、後で作者様の名前見て椅子から転げ落ちました。プロの犯行だった! B.A.D.好きです!

 

 

 

『perception』(哲学・アート)

https://www.freem.ne.jp/win/game/2368

 

作者様が「ノベルアートシアター」を名乗っている通り、スタートすると自動的に文字と音楽と絵が再生される、不思議なプレイ感のノベルゲーム。ノベルゲーと称されることは作者様としては遺憾かもですが、わかりやすく俗化させて頂きます。

 

文章はとにかくリズムと字体重視。テンポが合うとより楽しめるはずですが、私はつんのめる時もありちょっとズレてしまったかなー、なんて。この話は何だったの、と問われると答えに窮すところもあり。

しかし、解答を出したり感想を捻りだしたりするものではなく、正しく字義通りの意味で考えるな感じろ系のゲームなのだろうと強く主張いたします。

 

個人的な話ですが、私は幼少期に植物図鑑を黙々と舐めるように眺めていた(読んではいない)時期がありまして。なんだかその頃の気持ちを思い出しました。考えることすらせずにぼんやりと眺めて、でも無為ではなくてどこか遠くへ入り込んでいる感じ。何だったんだろう、と感じつつも時折開きたくなるゲームだなあと思います。

呪文のように繰り返される印象的なセンテンスや、静かに閉じる二人の世界、花畑を眺める静かな気持ち、等々にピンとくるのなら合うはずです。

 

同作者様の他フリーゲーム感想記事↓

フリーゲーム「だれかのかがみ」感想

フリーゲーム「だれかのよどみ」感想

 

 

 

 

以上5作品!

どれもかなり印象に残る、世界観や雰囲気の構築が上手い作品でした。

フリーゲーム「スレガル」「縛り神父」「SAGO」感想

「にゃんこと甘いものは心のいやしです!」

お願いだからせめてこれだけは取り上げないでほしい前置き。

 

 

えー、今回は禁飼育さんところのフリーゲームスレガル」「縛り神父」「SAGO」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

どちらも無垢な少女(ゲス顔はする)と糸目の悪い大人が恋愛する、一本道ノベルです。

キャラクターは共通していますが、世界観や基本的なあらすじは全く異なるパラレルワールド系なので単品でも大丈夫。ただ、特に「スレガル」と「縛り神父」はセットでプレイすると面白いギミックを味わえるとは思います。

 

「スレガル」のほうがR18えろげなのですが、自分のプレイ順がスレガル→縛り神父→SAGOだったので、記事もその流れで書きますね。公開順と逆回りにプレイしてるのでこれからプレイ予定の方は要注意。

 

 

 

『スレガル』

 

[概要]

魔法学校に通う少女このりが糸目教師ジドノと出会い、余計なところへ引きずり込まれてしまうお話。後味は明るいけど人によってはかなり痛むタイプ。鬱展開、ヤンデレ、他。

 

[キャラクター]

ヒロインは禁飼育ゲーだとおなじみ、冷めた心境も吐露しつつ恋に恋するノリ良き少女。顔芸有りぼっち有り。

自分が性的な搾取の目に合うとは一切思っていないヒロインっていいですよね。

 

ジドノ先生は笑顔が気持ち悪くて最高です。失礼で申し訳ないんですが、このりと並ぶと性根がにじみ出るかのような笑顔だなあと思います。

あと、追い込み方が上手ですよね。回復というより言葉の魔術師というか。悩む間も見せずにああいった的確な言葉がポンポンと出せる辺り、頭の回転がめちゃくちゃ良いんでしょうね。なぜその才をこんな方面に使ってしまうのか……だからこそ培われたのか……うっうっ。

 

校長先生は空回りっぷりがこう、虚しさを抱かせる人でした。もっと明確に敵と敵とみなせる人だったら良かったんだろうなー、なんて。でも根が優しすぎるほどだからだろうとも思います。

 

[世界観]

のりを見てぼんやり現代日本な世界観なのかなーと思っていたのですが、ふたを開けてみるとびっくりハリポタ世界でした。

きらきらした画面効果や、画面を彩るメルヘンなフレームなど、魔法と聞いて思い浮かぶハッピーでロマンティックな演出が輝きます。

 

一方で、儀式で開く扉や不気味な呪い、妖精さんの差別的な扱い、地下牢と人外化、等々。魔術と呼ぶべき仄暗さがあるのもこの作品の特徴です。

メイン二人の交流だけでなく、サブキャラを通じて世界観を感じさせてくれるのが素敵でした。これぞファンタジーですね!

 

[ストーリー・演出]

不穏な予感からドンと突き落す、この展開が絶妙です。

「怪しい行為だと思うんだけど、もしかすると考えすぎかもしれないし、いやそれって現実逃避だけどさ……」みたいな、ぐるぐるしつつ身体も動かせないし嫌とも言えないこの混乱具合が大好きです。生理的嫌悪感みたいなものがひしひし伝わります。

乙女的な幼稚で色っぽい妄想を男が生々しかったり汚れたりするものでグジュグジュにぶっ壊す流れがとても好きです。一方で、序盤と終盤は糖度が高くなるので、乙女ゲーとしても味わえます。

 

演出としては、あの猫さんマジカル発表会ですね。既プレイの方には伝わりますかね。初めて見て驚き、二度目のあまりの直球さにぎょっとしました。ああいう、ポップに背筋の冷えるもの大好きです。

画面装飾は控えめですが、渦巻く画面演出と蛇のモチーフが噛み合っているなど、こちらに「想像させる」怖さやえげつなさがあるなあと思います。

 

[一言]

まさにここでしか味わえない作風、明暗が一貫した雰囲気の中で成り立っている一作でした。

 

 

 

『縛り神父』

 

[概要]

ドット絵可愛いミニキャラたちが、西洋な雰囲気の世界観の中で、呻いたり嘆いたりニートしたりしながら少女を救おうとする話。

 

[キャラクター]

某キャラの設定が、スレガルをプレイしていたからこそ驚きでした。こういうトリックは本当、「やられたー!」ってなって楽しいですね。ああいう、隣人な展開大好きなので嬉しかったです。

 

スレガルでは見られなかった新キャラ、マリくんも魅力的です。朴訥とした良い子は愛でたいですよね。初めは青年だと思っていましたが、話慣れてくると意外と中学生くらいに思えてきました。

 

あと、このりはこちら側のほうがこう、洗脳されきってる感じがして、しみじみと痛々しさがあります。健気さも光りますが。自己嫌悪の理論を叩きこまれているのがあまりにも辛いです。好きです。

 

ジドノさんについては、個人的には同情の余地が無いと思うのであの終わり方はちょっと悔しくもあるのですが、それでも背負わずに済むと考えれば良かったのかなあとも思います。

 

[世界観]

この作品は「スレガル」のみならず、まったくの別作品も絡んできているようで、全ての謎は明らかにされません。ですが、関連作は予告宣伝されているので追うのは楽です。本筋であるマリカボルトやこのりのお話としては綺麗に完結しているのでご安心。

魔女狩り、神父、異端者と信仰者などなどにピンとくるならこの世界観はグッとくるはずです。

 

[ストーリー・演出]

何よりもまず、起動画面ですよね。

開始ボタンの意味が分かった時は鳥肌がすごかったです。あまりに熱い展開のストーリーと、あの選択肢の意味がかっちり噛み合ってゾクゾクしました。

グラフィックとしては、“可愛い”印象が強いドット絵をホラーな展開でもシリアスな展開でもよくぞここまで使いこなしてるなあとしみじみ。

 

また、お話としては主人公がマリカボルトというある意味で異物なのが効いてるなあと思いました。良い歳した大人であっても、頑張りたい・救いたい・変わりたいと思えてそれを許されるストーリー。大人のための少年漫画な展開だなあと感じました。

保護者という存在の明暗両面が感じられたのも良かったです。頼もしさ、身近さ、傲慢さ、管理される気持ち悪さ、等々。断罪とまではいかないし、片方が完璧にできた善人というわけでもないのがまた、いい塩梅です……。

 

印象的だったシーンはやっぱりこのりがバレたときのあのセリフです。もう呆然とするしかないですよね。マリカボルト側が下手に叫んだり連れ出したりするのではなく、まず絶句するというあの反応がすごく真に迫っていました。ああいう場面に出くわすと、どうしようもなさが真っ先に来ると思うんですよね……。

展開としてインモラルなのは「スレガル」だと思うんですが、心のダメージや鬱展開の衝撃という意味なら、こっちの方が闇は濃い気がしています。

  

[一言]

鬱展開を乗り越えるニートを応援したい人向け。

 

 

 

『SAGO』

[概要]

幼女がうっかり先生とサービスエリアへ行くことになった話。純愛100%。ほのぼの年の差。

 

[キャラクター]

禁飼育ゲーのキャラクターって皆、かなり多面的なんですよね。なんだろうな、鬼畜王子がスーパーでカレー粉買ってるの想像すると笑っちゃうみたいな……? どこかにいそうな人間味を出しつつ、異様な展開へ持っていくのがすごく良いなあと思っていまして。

で、上記二作がキャラの黒い面や弱い面を出しているとするなら、この『SAGO』は善人な面や人間らしい面を出しているなあと思いました。

 

疲れてると失敗しがち、わかるわかる!

まずいとわかっててもうっかり甘い言葉にノリがち、わかるわかる!

共感しやすく甘酸っぱい、幼い恋とおじさんの躊躇いを感じられるお話でした。

あとこの作品のジドノ先生はまだ衣装がまし。

 

[世界観]

サービスエリアの存在の通り、現代日本な世界観。うっかり高速に乗ってしまった際の回避術も学べます。

特に、遊園地とか公園とかじゃなくて、中継地であるサービスエリアに行きたいって言うところがすごく良いなあって思うんですよねぇ。場所は重要じゃなくて、ただ誰かと楽しくおでかけしたいっていう気持ちが出てると思うんですよ。すごく、すごく良い。

サービスエリアってなんか本当楽しいんですよね、すごくわかる、楽しかった……。お飲み物サーバーとかね、なんとも気の抜けた感じの漂う休憩所とかね、好きなんですよ。なんだかすごく懐かしい気持ちにもなれる作品でした。

 

[ストーリー]

ワガママは言えないけどやっぱりちょっと寂しい女の子が、大人の男の人に少し気分を軽くしてもらえるお話。……かと思っていたのですが。よくよく見ると、疲れた大人が子どもの幼くも懸命な励ましに心を救われるお話でもあると思うんですよねぇ。

このりとジドノ先生が相互に心をちょっと楽にしてあげてる関係性が素敵でした。子どもの背だと見れないところを見せてあげる代わりに、大人になって気づけなくなってたことを教えてもらえる感じ?

 

他作品の関係でジドノ先生にハラハラする気持ちが全くないと言えば嘘かもしれませんが……無理に黒く塗りたくらなくても、この話はこの話。子どもの頃のわくわくを大事にしてくれるお話として素直に受け取りたいなあと感じました。

 

[一言]

どっしり感あふれる牛乳ソフト、万歳!

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

 

「スレガル」がジドノバッドルート、「SAGO」がジドノグッドルート、「縛り神父」はマリカボルトルートという印象が強いです。

 

子どもに対してずるい言い回しをする大人と、子どものためにずるい言い回しをする大人、両方楽しめました!

 

 

同作者様の他フリーゲーム感想記事↓

フリーゲーム「昭和シンデレラ」「煮込みシンデレラ」「残業シンデレラ」感想

フリーゲーム「ちぎみちゃん」「処女失格」感想

フリーゲーム「キナナキノ森」感想

フリーゲーム「この世で最も残酷なキス」「家畜おじさん」「枯れぬ黒薔薇」感想

 

フリーゲーム「フライ・ド・チキン」感想

「冷たいくらいが飲みやすく、ぬるま湯よりもよく沁みる」

冷製スープは味による前置き。

 

 

えー、今回はGrrrrrrrrさんところのフリーゲームフライ・ド・チキン」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

ツクール製のRPG、そこそこうろつき回って全クリまで10時間。

PCによってはプレイできない現象が起きているようですが、私のPCでは公式サイトの掲示板の参照通り、Game.iniをメモ帳で開いてLibrary=RGSS103J.dllに書き換えるだけでプレイできるようになりました。

 

というわけで良かった点など。

 

どうしても語りたい点の関係により、一部おまけ要素やセリフのネタバレを含みます。ご容赦ください。核心的なものについては追記にて。

 

 

飛べないコカトリスとその他異種族のシニカルな会話

 

主人公は飛べないコカトリス、仲間の面々はハーピーコボルトリザードマンなど。スタート地点となる村では様々な種族がうろついており、初プレイでは動物系ほのぼのストーリーという印象を受けます。

が、実際のところはあっと驚くドシリアスです。

このシリアスさの片鱗は次項目で述べるとして、キャラ面で語りたいのはところどころで飛び出す西部劇映画もびっくりのセリフ群です。

 

特に主人公テン・ピンの口調がかっこいい!

進行フラグ的にこの先は行けないと言う時でも、無理だとかこの先に用は無いだとかではなく「よせよせ、テン・ピン」なんですよ。よせよせ。めちゃくちゃかっこよくないですか! この感覚伝わって欲しい!

掛け合いにもシニカルな言い回しが多く、引用したり口ずさんでみたりしたくなる一節がたくさんあります。某シーンのヒルダの朝とスープの比喩話とか、ハピリュリタルのボスの戦闘前口上とか。あとどこだったかな、ヘビメの部屋かどこかの鏡を調べた時の掛け合いが好きです。

 

チャーミングな見た目のキャラから飛び出す、大人っぽく物分かりのよいセリフ。このギャップがまずプレイヤーの心をがっと掴む点だなあと感じました。

 

 

絶望と鬱に距離を置いて触れるストーリー

 

動物達が空の欠片を求めて世界中を旅する――というのがざっくりとしたあらすじにはなるのですが。ここから想起される絵本のような世界とは一線を画する展開が多いです。

つまり、シビアでダークな展開です。

クリア後コメントで作者様が「いつの間にか花が枯れ草がしおれ」と仰っているだけはありますね! あの言い回しすらもセンスがあふれていて好きです。

 

個人的に水が合うなと思ったのは、主人公たちが鬱展開からほどよく距離を取ってくれるところでした。流れで訪れる街の事情に介入することはあっても、ほどよくドライだったりどさくさ紛れで逃げ出したり。少なくとも、俺達がこの街を救うんだ!的な押しつけがましさはありません。

でも、怒るところはきっちり怒る……ここもプレイヤーとしてはすっきりできるポイントでしたねぇ。

即時解決はしないけれど、引っかかりを残して後の展開はお任せする、みたいな。DQ7やニーアオートマタ等々のしこりの残るサブクエストとか好きな人はこのスタイル合いそうな気がします。勝手ながら。

ハピリュリタルの後味の悪さが大好きです。

 

 

キャラごとに仕様の異なる特殊技

 

形式自体はオーソドックスなコマンドバトルですが、キャラごとのスキルに一捻り加えられています。

 

例えば主人公テン・ピンの上段・中段・下段。

背の低い敵に上段を当てると飛び越えて0ダメージ、というのが妙にリアルで好きでした。チュートリアルはそれっぽい雰囲気を出すために格闘技な説明がされていますが、技の属性が上中下になっているだけと考えると取っつきやすいかも。

他にも、ハーピーズの技は使いまくるとレベルアップしたり、ヘビメの銃は弾とリロードが肝だったり。

 

バトル自体がオリジナルというのは数あれど、キャラごとにスキルの仕様が異なるというのは初めてな気がします。複雑すぎず、個性を楽しめるバトルでした。

 

 

お得な探索ポイントと見つけて嬉しい会話分岐

 

重要なのは拾い食いです。キノコ、草花、タンスの奥の救急キット、なんでも拝借してガンガン使っちゃいましょう。

テンピンが小柄なぶんマップがかなり広いんですが、随所にこういった探索ポイントがあるので飽きずにうろうろできました。思わぬところでキノコを見つけた時のラッキー感。回復アイテムを収集できるRPGって良いですよね。併せてキャラの掛け合い台詞が見れるのも嬉しいところ。

通貨がかなりカツカツで売り物がどれも高価な設定ですが、これは落ちているものを拾う前提の調整なんだろうなー、なんて。

 

見つけた時だけでなく、一部のアイテムは使用時にミニ会話を聞くことができるものもあります。それを聞きたくて売買専用アイテムもつい1つは持ちっぱなしにしてました。

 

さらには宿屋イベント、泊まると実際に室内をうろついて皆のくつろぐ姿を楽しむことができます。しかもどの宿屋も内容が違っているというこの細かさ! いやあ感服です。ルームサービスを食券で楽しめたり、お弁当の中身に言及してくれたり、なんだか本当にあの世界で生活してる感じがありました。

私なんかは会話分岐や差分を回収したくなるタイプなので実に燃えましたね!

あるかな、と思ったところでミニイベントが始まるとガッツポーズです。

 

 

 

 

惜しかった点

 

一方、難点として挙げたいのはこんな感じ。

 

 

・ストーリー進行のフラグがわかりづらい

 

次のステージとなる街にあっさり行けたり、キーとなるキャラが街を回った後に登場したりして、ちょこちょこ何がフラグかわからないままうろつくところがありました。砂漠が特に顕著。

前述の通り、テンピンたちが深入りしないタイプだからこそ、誘導も控えめなんでしょうねぇ。といっても有志による詳細なwikiがあるので、攻略を見る派の人は問題なく進めるはず。

 

 

・取り逃すと補給が進行が厳しくなるアイテムがある

 

筆頭は船に設置できる回復樽ですね。アイテムをじゃんじゃん使うタイプなら気兼ねなく進めるかとは思いますが、私のようにどうしても躊躇いがちなタイプは取り損ねると道中がけっこう厳しいと思います。また、過去訪れたマップに戻れるのは終盤も終盤になるので、うっかり耐性防具を買い損ねると後で苦労するかも。

逆に言えば出会って即買いできるタイプの人はお得な感じです。

 

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

他、ちょっとしたところとしては、船から降りると乗った地点から旅を再開できるのが嬉しかったです。さりげなく探索が捗るシステム。

 

シビアでギャップのある展開・皮肉っぽくも味のある言い回しなどにピンとくる方や、オブジェクトはとりあえず調べちゃうRPGプレイヤーさんへオススメです。

 

番外編↓

shiki3.hatenablog.com

 

追記ではネタバレ込みの感想など。

 

 

 

 

核心に触れるネタバレあり

 

 

 

見逃しそうな小ネタ

一部は有志の方のwikiにも記載があります。中でも好きなものや注意が必要そうなものを取り上げますね。

 

・序盤、一部の逃げ腰な選択肢でイベント付きのバッドエンドが見られる

・序盤、土のエレメンタルに話しかけるとちょっと切ない会話

 →次作の『ゼン・ザイ』の理解が進むかも

・転送エネルギー石を使うようになってからビリュータウンの温泉でクサマの持ち物を調べた後、夜の屋上で聞き耳を立てるとギシアン

・ビリュータウンの女湯は粘ると漢を見せれる

・ラスダンに入る前のボス二人を倒し、手に入れた帽子やヤリを装備せずに引き返してしまうと所持アイテムから消失する(バグ? そのままラスダンに入れば回避可能)

・おまけダンジョンのコンに挑んだ後即逃げると全回復状態になる(1回だけ?)

・コンから逃げた/負けた後に挑み直すとセリフが変わる

・パスワードは開発室の煙(余談ですがあかんぼうとおせんべいを一生懸命入力しようとしてました。HAHAHA)

・二週目にパス入りで、ハシモト本気で殺す/3匹を加勢前に倒す、と特殊エンド

 

中でも最後のネタはくすくす笑ってしまいました。負けイベントにごり押しで勝つ展開、好きです。

 

 

ストーリー

 

各所にシナリオのテーマを滲ませておいて、終盤ではプレイヤーにも仲間にもなんとなくこの世界の真実が察せられる、気づいてしまう作りだったなあと思います。街の人がさりげなく夢幻について語ってたりするんですよね。

だからこそ、ラスダンのイベント会話がいっそう沁みました。「知ってる」「知ってるわ」。知ったうえで、許しも言い合いもなく進むことができる――本当しびれますよね。

オープニングと終盤の真相がカチリと噛み合う展開大好きなので、そういう意味でもテンション上がりました。青いコボルトだったのは、あの立ち絵を見る限り今にも死にそうな青白い顔だったからなのかなー、なんて。

 

各街のイベントだとやっぱり衝撃的だったのは砂漠の街でしょうか。なまじ全く予想していなかっただけあって、呆然としました。言葉を失うってのはああいうことですね……。

ああでも、ビリュータウンの、徐々に信じている世界がバグっていく感じも好きだったなあ。自分を喪う怖さや夢の世界などなど、疑似的に本編の真相にも触れてますよね。この入れ子構造も好きです。

 

細かいシーンだと、ペルテローテ取得イベントが好きです。青白狐が言っていた「愛しの恋人にキスをしてから~」っていうのも大きなヒントですよね? こういうヒントをこうやって出すセンスが好きなんですよもう。冷めた世界観かと思いきや、熱い展開は外さないところも好きでした。

あと、フェルの湯が乾いていたところも細かくて丁寧だなーと思います。

 

 

キャラクター

 

中でも特別好きな、ヘビメとイマラについて。

 

 

ヘビメ

 

まずあの目つきが大好きです。

テンさんが「嫁の貰い手は無かろう」みたいなことを言ってましたが、できましたね。おめでとう! ああいう嫁に貰うか貰わないかってセリフはそのキャラの持つ女の美醜の価値観をなんとなく感じさせてくれるので良いよなと思います。間接的に好みのタイプがわかるというか。あっでもフェミの人には爆裂拳で叩かれそうな気もしてきた、許してください。

 

閑話休題

お人形さんな設定や、アイデンティティがどこにあるのかわからなくなりそうな誕生秘話など、あちこちで闇深く萌えるキャラでもありました。過去話を唐突に始めた時にはそれこそテンさん達同様の感じ方をしてしまいましたが、気づけば愛着のあるキャラだったように思います。やっぱり外見が好みってのは大きなアドバンテージですね。

ストーリー上でも固有イベントがあったり、何かと優遇されているポジションでした。クサマより主人公してたかも。

 

と、書いていて気づいたんですが、どのキャラもしっかりドラマになるシーンはあって、平均的にスポットが当てられてはいるんですよね。その中でもヘビメは尺が長かったというだけなのかも。

 

彼との云々は、CP脳がそうだったら萌えるなと妄想しつつも公式で起こるとはまったく予想していなかったので、たいそう動揺しました。いやほんとうに。そうくるとは。ひゃっふう。

ここを踏まえると、フェルが教えてくれた「ヘビメはたたかれてどっか行っちゃったし」のセリフに重みが出ていいですよね。好きな男にそんなされたらね。自己嫌悪がそりゃね。ああーーかわいいなあ!

 

銃屋さんとのアダルティな会話も好き。ビショヌレな銃器はしっかり全部お買い上げさせていただきました。使ってたのはもっぱらルング弾ばっかりでしたけども! コレクターとしてな。

コン戦は彼女がいないと耐えられなかったと思います。命中ダウン的な意味で。

 

端的に書くと萌えるキャラでした。

 

 

 

 

イマラ

 

初めはヘビメが推しだったんですが、クリアしてみるとイマラもかなりお気に入りだったのかもしれないなあと思いました。なんでクリア後になってからなんだろうね?

 

ええと、プレイしながら好きなシーンのスクショとか撮ってたんですが、響いたセリフの多くがイマラのセリフなんですよね。「友達はまた」とか「私の名前が出てこない」とか。あと宿屋でせっせと掃除してる姿がすごくなんか印象的だったんです。

根っこのところを共感しやすいキャラなのかもしれません。フェルと比べると真面目で損ばっかだけど、同情できるほどイマラ自身が周りに優しいわけでもない、みたいなところ。

 

そもそもイマラはパーティ加入した時にお試しで使ってみたスキルが想像以上に破壊力高くて、以来ずっとスタメンだったという事情もありまして。いやあ、気づかなかったけど好きだったんだなあって感じでした。

 

あと呪文の響きがかっこよくて好きです。元ネタあるんでしょうかね?

 

 

 

他にもまあ、クサマが怒ってますって言うシーンとか、ヒルダが本当に知識を得てしまうシーンとか、ナオのキュートな喋り方とか、色々印象に残ったところはあるのですが。

 

とにかく、世界観やキャラの反応のほどよいシビアさがしっくりくる、とても好みな作品でした。

フリーゲーム「ドブネズミアクターズ」感想

「罵倒暴言ブーイング、親指落としてフィナーレへ」

拍手喝采より馴染みの良い前置き。

 

 

えー、今回はSuGicomさんところのフリーゲームドブネズミアクターズ」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

ちょっとしたアクションと謎解きを含む、選択肢ありエンド1つADV。登場人物全員が悪役という、イリーガルアンダーグラウンド万歳な一作です。

 

というわけで良かった点など。

 

スタイリッシュなカットイン

 

語るべき筆頭は演出・ビジュアル面!

とにかくやることなすこと全てがスタイリッシュなこのゲーム。

ボタンを押せばカットイン、

一枚絵はセンスの塊、

セーブ画面すらオシャレに決める!

どこをとってもクールでした!

この演出の凄まじさ、ゲーム開始30秒ですでに味わえます。はんぱない。あまりにかっこよすぎて一度セーブして息を整えて起動し直したくらいにはハイクオリティです。

 

初見の驚きだけでなく、後々こう、ものすごく、痛いくらいの演出として襲い掛かってくるのも素晴らしいところですね……。好きです。

 

条件を満たす必要はありますが、クリア後にスチルや立ち絵の見直しができるところも嬉しいポイント。特に各キャラのアイキャッチは並べるとキャラの魅力倍増です。

 

 

悪が悪を討ち悪が謳歌するゲー

 

前述の通り悪役が全員悪という徹底っぷりも必見です。

それもいわゆる御伽噺的なダークヒーローではなくて、チンピラ盗人噛ませ役夜の蝶等々、サツの目を盗んでチャカ持ってカチコミかけるような世界観での悪役です。

ヤクザ! ドラッグ! 悪は悪! クズはクズ! 他人の命は無関係! この思い切った突き抜けっぷりが非常に斬新で楽しかったです。

 

いやもうあのOPからしてフルスロットルなんですよね。初見プレイヤーはきっと置いてけぼりになることでしょう。でも、この勢いがまた良いんですよね! 

マイペースに進むキャラ、淡々と流れていく(わりにウィットに富んだ言い回しをする)チュートリアル、そして勢いに飲まれながらおもむろに操作を始める私。初めの第一歩から「合う奴だけがついてきな!」という熱いメッセージ性を感じました。好きだぜ。

 

 

過去を臭わせつつさらりと終わるコンパクトさ

 

さて、かなり濃密なこのゲームですが、実際のプレイ時間は1時間弱でした。それでも彼ら、印象は強烈です。

 

本当ありがちな書き方になっちゃうけども、個性的でキャラが立ってるんですよね!

暗い過去を明かして深まりを出してくれるキャラも居れば、説明無しで有無を言わさず魅せてくれるキャラもあり。作中で全てを語り切るのではなく、本筋に関わらないところは雑談としてバッサリ斬り落とされている潔さも良かったです。

いっそ続編、あるいは同キャラのスピンオフとか期待したいなあ。

 

言ってしまえば暴走機関車めいたキャラクターばかりなんですが、それでもすっきり楽しくプレイできたのは、キャラの動き方が爽快だからかもしれません。

確かにどのキャラも一枚剥ぐとかなりどろどろしていそうなんですが……。皆、めちゃくちゃやって誰かが死のうが誰かが倒れようが、マイペースに“やりたいように生きる”で一貫しているところが本当、素晴らしかったです。

 

わざわざ肯定する必要もなく彼らは彼らとして生きているだけなので、悪人賛歌ですらないんですよねぇ。間接的に大事件が起こったとして、キャラ達の人生や考え方は一切変わらない、非日常に見えるけどあくまで日常の一ページ……そんな感じ。

 

そんなわけで、キャラクターが生き生きしているゲームをやりたい!という方には全力でおススメしたいです。

 

 

ウィットに富むパワーワードの住人達

 

見どころはキャラにとどまらず、システムメッセージからアイテム欄、モブの皆さんの会話に至るまで、とにかくそこかしこ至るところに小ネタが仕込まれています。

 

モブの皆さんのセリフに名言が多すぎるんですよ……! 何度噴き出したことか。

どのセリフもTwitterでバズりそうという印象が強かったので、たぶんパワーワードの類なのだと思います。これらがただの賑やかしで終わるのではなく、天使パートできちんと鍵になるのも面白いところ。

 

物語の構成もそうなんですが、無駄が一つもないんですよねこのゲーム。実装されているからにはどこかで使える、出てくるからにはどこかで役割を持ってる、そんな感じ。

アクタがコンテナで八つ当たりするシーンが自然と、物を押すと動かせる説明およびチュートリアルになっている流れに感服しました。

どこをとっても綺麗にまとまってるなあとしみじみ思います。

 

 

さくっとアクション、お手軽コンティニュー

 

スリや倉庫整理パズル、やくざの目を盗んで行動などなど、随所でミニゲームっぽいアクション要素が挟まれます。特に隠れて進むシーンは、相手の探知範囲がかなり広めなので、油断してるとうっかりゲームオーバーになるかも。

といっても、ゲームオーバーでのデメリットはほぼほぼありません。即コンテニューができるので、ストレスも無くさくさくリトライができます。

私はアクションかなり苦手なのですが、アクタ特有のコマンド「スリの集中力」が時止め機能にもなっていることに気づいてからはまあまあ余裕をもってクリア。なのでアクション要素で躊躇っている方も、ちょっと軽くやってみたら案外すんなりいけちゃうかもしれません。お試しあれ。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

 

伏線が綺麗に繋がる群像劇を楽しみたい方、

ヤクザや誘拐事件などのサスペンス要素も好きな方、

細かいことは置いておいてタイトル画面の悪役たちにぐっときた方、

とりあえず短編なのでさくっと手をつけてみることをおススメします。

 

 

 

追記では軽いネタバレ感想をちょこっと。

 

 

同作者様の他フリーゲーム感想記事↓

shiki3.hatenablog.com

 

続きを読む

フリーゲームアプリ「大繁盛!まんぷくマルシェ」感想

「未知を探求するのが人気への第一歩」

とんでも展開も意外と慣れてこれる前置き。

 

 

えー、今回はアソボックスさんところのフリーアプリゲーム「大繁盛!まんぷくマルシェ」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

やっとスマホにしたんです!(記事を書いているのは2017年現在)

これでアプリゲーもソシャゲも自由自在、そんなわけで以前からTwitterのTLで話題になっていたこのゲームにチャレンジしてみました。

 

舞台やストーリーはお店経営型ですが、小難しい数値管理などはなく、中身としては育成放置ゲーに近いかも。

 

 

というわけで良かった点など。

 

 

主人公はシェフじゃない料理ゲー?

 

材料を調達してレシピを考案して売りまくる、という流れ自体はよくあるお店経営ゲー。ですが、このゲームを独自のものとして色付けしているのが主人公の立場です。

主人公はシェフではなく、料理アドバイザー。

彼女のアドバイスを通じてシェフたちの、個性たっぷりで意外性のあるストーリーも楽しめる構成です。こういう、自分一人でガツガツお金を稼ぐんじゃなくて、お互いお手伝いし合いながらマルシェを盛り上げるぞ!っていう仲良し感がすごく素敵でした!

 

初めの内は皆噛み合うとは思えないくらいてんでバラッバラ。そこもご愛敬。

主人公は主人公なんだけど主役ではなくて、それでもみんなの中心。この意外な切り口がまず新鮮で、それこそ良い具合にトッピングの効いた設定でした。

 

 

フツーの料理じゃやってけない、はちゃめちゃネオ料理

 

意外性といえば、料理のレシピ自体もそう。

例えば食パンがそこにあったとして、そこに併せるならレタスとトマトかな?

……なんて無難な組み合わせは存在しません!

 

意外なものが組み合わさって、案外イケる味にな……いや本当に美味しいのかこれ!?と一瞬引いてしまう流れがすごく楽しかったです。出来上がりを見ると確かにおいしそうなんですよ不思議と。

レシピ考案の際のヒント文で材料を当てる、ほんのり謎解き(?)要素が入っているのも楽しいところですね。ぽかぽかあたたかい~の文言によく騙されていた覚えがあります。

 

ご自宅のキッチンで作ろうと思えば作れそうなのも好奇心が湧きました。

深淵を除く時また深淵もこちらを……。

ドリンクバー全混ぜ派の方や、給食の食パンにみかんとマヨネーズを乗せた経験のある方などは感覚としてもしっくりくるのかもしれません。

 

 

リアクションたっぷりの食レポシーン

 

とんでも料理が出てくるからには、食べた時の反応だって気になるところ。

レシピを思いつくとシェフたちが食レポしてくれるんですが、この反応がまた面白いんですよ。何故泣く何故脱ぐ何故跳ねる! キラキラが飛び交い食べれば汗と涙が止まらず思わず駆け出したくなる、そんな反応が如実に伝わってくる食レポがたくさん。まさに必見ものです。

 

反応によってシェフのキャラがより詳しくわかるのも良いところなんですよねぇ。

軽いところだけ書いちゃうと、フェンネルお酒飲めないんだー!とか、ブーケガルニって小学生男子っぽいけど女の人に興味はあるんだー!とか。良いギャップ萌えでした。

 

 

タップで簡単食材集め

 

いわゆるAPに当たる体力を消費しておでかけして、タップしながら進んで食材を集めるのが基本システムです。簡単操作で隙間時間に、と思いきや熱中しちゃう感じでした。

このAPの量がちょうどいいんですよね。無くなったと思ったらイベントが進んだり、レシピを思いつく間に溜まっていたり。料理を食べると回復するだけでなく実績も埋まっていくので、いっぱい食べるのを推奨されているのがシステムとしても伝わってきました。

どんどん進んでどんどん食べてイベントが進んでいく、ゲームのテンポの良さがハマる秘訣だったのかなーと思います。

 

またグラフィック面として、ウディタ改変(と思われる)キャラチップがぴこぴこ動きながら進む姿は見ていてとってもかわいかったですし、行く場所によって変わる背景や画面フレームも綺麗。時々起こるレアなイベントもわくわくでした。

 

 

 

その他、

お店の品物切れが目に見えてわかったり、

お客さんの人数や稼いだお金が記録されたり、

シェフたちとの会話や過去のストーリーが見返せたりと、

プレイヤーの欲しい機能が全部搭載されている辺りもすっごくありがたかったです。

 

無料アプリゲで言われる広告についても、この作品ではきちんとメリットのあるシステムとして組み込んであったので好印象でした。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

 

意外性のあるキャラ達、スカッと明るくて笑える展開や、奇妙奇天烈おいしそうな料理の数々など興味がある方におススメです。

 

追記にはキャラクターについてちょこっと。

続きを読む

フリーゲーム「くものいと-雪割草外伝-」感想

「あなたの善意は本当に優しさ?」

言い訳させず捕らえたいだけの前置き。

 

 

えー、今回は猪鹿蝶さんところのフリーゲームくものいと-雪割草外伝-」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

一本道、ドロドロ愛憎百合ノベルゲー。和風の短編柵です。

一時期公開されていた『雪割草』というゲームの番外編とのこと。公式サイトが縮小運営になった際にDLしたゲームなので、『雪割草』のほうもご縁を逃してしまいプレイはできていなかったのですが、紹介文どおり単品でも楽しめる一作でした。

 

一部ネタバレというかシーンバレしているので注意。

 というわけで良かった点など。

 

 

平安時代をどっぷりと感じられる世界観

 

登場人物の衣装や背景などのグラフィック面はもちろんのこと、テキストの端々に出てくる用語や主人公の口調から和風ものの世界観を濃厚に感じました。

和風ファンタジーではなく、がっつりと和風もの。それでいて読みやすく、難しい用語はさらりと流されていたり、状況で判断出来るように描写されていたりします。

あの、どうしても語りたくて書いてしまうんですが、文を書こうとしてぼとりと墨が零れ落ちるあのシーン! あそこがめちゃくちゃ好きでした。拭い切れない何か、語り切れない情感を、小道具の妙で表現している名シーンだと思います……!

 

 

寵愛、帝、没落、振り回されるしかない女の姿

 

主人公である常磐も丁寧に、平安時代らしい女性として描かれています。

帝の寵愛が得られない嘆き、それでも自分から会いに行くなんてことは露ほども思えないこの徹底ぶり。うっかり現代の感覚で書いてしまいそうなところを省いて、当時らしい、ぎちぎちに縛られて動きの取れない女性像を見事描ききっています。

ただ“可哀想な女”で留まらないところも構成の上手いところでして。子が権力を持つことで成り行かなかった自分の居場所を得ることに固執するなど、当時のドロドロした女性の生き方もがっつり書かれています。

まさに鳥籠の中、澱んだ空気が溜まっては人の裏でひしめく空気が素敵でした。

 

 

善意と悪意が交差する愛憎劇

 

さて、前述した通りこの作品は百合です。愛憎劇です。

この愛憎を深く深く味のあるものにしているのが楓の存在。彼女がいるからこそ常磐の生活は揺らがされ、狂わされ、しかしいなければよかったと簡単には思えない複雑さが込み上げるわけですが……。

 

なんだろう、楓のやっていること自体は善人・善行の気遣いなんですよね。黒さが出ているのはむしろ常磐のほう、だというのに、不思議と楓のほうがずれているように感じてしまうこの構成。一人称視点というのもあるでしょうが、愛憎どちらとも振り切れず葛藤する常磐のほうに感情移入しがちなのでなおさら、楓の人柄が強調されるストーリーでした。

「良い人だし優しいし悪いのは私ばかりなのに、」の「なのに」に隠れた寒気というか。帝との子、寵愛、後ろ盾、常磐の価値観を通して読み進めるプレイヤーからしたら何よりも重要なはずのそれら全てを手にしている楓の強さと、注意深く見なければ気づかずに終わってしまうであろう、一匙の妙がとても刺さりました。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

 

憎いのに憎めないドロドロ百合、平安和風、足元が崩れていく展開、など聞いてピンとくる方へおススメです。

 

同作者様の他フリーゲーム感想↓

shiki3.hatenablog.com

shiki3.hatenablog.com

フリーゲーム「シェリラベット」感想

「雪に隠せば消えていく、部屋に篭ればなおのこと」

綺麗なものだけ見ていてくださいな前置き。

 

 

えー、今回はCOCOONさんところのフリーゲームシェリラベット」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

分岐ありの男女恋愛乙女向けノベルゲー。攻略対象は一人ですが、総愛されに近い描写が多めです。騎士と姫、モンスターなど、軽くRPGっぽい世界観も交えたファンタジーでした。

 

プレイ後は副読本が気になること間違いなし。勿論私もぽちる気満々なのですが、ちょっと言ってはいけないところまでぽろっと出してしまいそうな気がするので、この記事を書いている現時点は未読です!

 

 

というわけで良かった点など。

察しの良い方や、既にもうDL済みでプレイ予定の方はネタバレ注意です。

 

 

徹底した一人称視点の物語

 

初周でエンドに辿り着き、真っ先に感じたのはここです!

ノローグからワンシーンまで、語られるのは徹底してリディの視界から見えるもののみ。乙女ゲーでよくある、「一方その頃攻略対象は……」みたいな描写も本編中ではしっかりとそぎ落とされています。

この構造がね、二重の意味で上手いんですよ!

物語のオチに絡んでいるのが一つ、裏で活躍して主を立てるという従者力を大いに表現しているのが一つ。なんていえばいいのかなあ、キャラの魅力を描きながら物語のギミックにもなっていてもう、感銘を受けました。

 

シナリオだけでなく、スチルでもしっかりリディの視点を意識されているのがもう震えました。トゥルーエンドのスチルの構図、必見です。

 

 

誠実勤勉な有能騎士と、ふわふわメレンゲ繊細姫

 

普段はキャラ単体よりストーリーやキャラの関係性に注目しがちな私なんですが、この作品では二人ともが単体で私の萌えを直球に貫いてくれました。

 

まずリディから。

すごい萌えるんですよ! 時々出てくるちょっと子どもっぽい甘えや諦めも庇護欲そそられてものすごく可愛いですし、ウジウジじゃなくて反省で留まるのも好印象でした。性善説で、時々クスっとしてしまうおとぼけが出てくるのもまた面白いところ。

好感が持てるというよりは萌えるに近い、愛玩っぽいキャラだと思っていたのですが、おまけ要素云々を見て思わず唸ってしまいました。本当に上手くできてるなあ。

「~だよぉ」って口調が妙に抜けてて好きです。

 

次クワルツ、これまた萌えるんですよ。

もう萌えるとしか言ってないな!?

ええと、まず素の口調がごくごくごくごく限定的で、基本的には常に敬語なところ。従者の立場をわきまえて、どれほど自分に都合の良い展開が来ても、きっちり自省ができるところ。常に真面目で、過ぎるほど真面目で、嘘は絶対言わないところ。

「優しくて誠実な人」という乙女の理想をぎゅぎゅっと詰めて、さらに黒い差し色が入れられたような、まさにときめくキャラでした。

 

 

おつかいに始まりめでたしで終わる、幸福の物語

 

公式サイトの言を借りれば、「ほのぼの95% シリアス5%」。

確かに分量としてはそうなんです。が、個人的に濃度的には50%50%だと思います。

リディ自身はぽえぽえしつつもしっかり前向きに頑張ろうとする力もある子なので、やっぱり全体的に明るい雰囲気なのは確かです。

ただ、同じ綺麗なものであっても例えば花やお菓子ではなく、“雪”を意識させるデザインがあちこちにされているところに、この作品の本質が見えるなあと感じました。

 

 

その他、マップ選択でちょっとした寄り道ができたり、眼鏡オンオフの作者様恒例システムが搭載されていたりと、一本道にさせない工夫がみられているのも良点です。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

内気で甘いお姫様や敬語従者が好きな方、ちょっとしたギミック付きのお話が気になる方へおススメの一作でした。

 

 

追記ではネタバレガッツリ伏字無しの感想です。

 

同作者様の他フリーゲーム感想記事↓

GW・短編乙女向けフリゲ6作感想

 (『ニカ・トラジティー』)

 

続きを読む