「二人だけの世界とは同一体に限りなく近い」
ベン図書こうぜベン図な前置き。
えー、今回は和製オフィーリアさんところのフリーゲーム「rainline」「夢の通い路」「或いはアイラブユー」「黒猫know」「黒猫芝居」「dogs.1」「dogs.2」「カムパネルラ」「lima」「崩壊LSD」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。
で、以前こちらのサイトの感想記事を上げた時も書きましたが、どうもこちらのサイト様は移転(閉鎖?)されたようです。
この記事の原本を書いたのがなにせ一年前なので、DLをちょこちょこ推奨したり熱く語ったりしていますが、現在はおそらくDLできません……。
以上ご了承のうえでお読みいただければ幸いです。
『rainline』
[概要]
私がプレイしたのはver2.1です。readmeの履歴を見たところ、どうやら前のバージョンだと色々システムが異なっていたらしいんですが、このバージョンでは選択肢ありのビジュアルノベルと捉えて良さそうです。ドロドロ心理描写が魅力のBLものでした!
[ストーリー]
Sの自殺に関わっていた可能性のある5人が、2日間の軟禁生活を送ることになる……と、あらすじはこんな感じになるかなあ。サイトの紹介文的にサスペンスな犯人当てものが来るかと思いきや、心理描写を中心に彼らの関係性の謎が解き明かされるような展開になってました。が、それが悪いかと言えば全然そんなことはありません。
ピュアな恋心とドロドロした嫉妬、その他いろんな感情が一人称で綴られていくのは読んでいてとてもぞくぞくしました。
[キャラクター]
単体だと花村君がお気に入り。なんというか、表面上まともそうに見えて実は不器用な生き方してるようなキャラクターが好きなのです。
Sの奇行自体は噂で語られることが多くて、メインとして彼が動く時はしっかりしてる描写が多かったので、どうしても正気の時の印象が強いです。でも、こうしてまともな状態をたくさん見られるほうが「なのにどうして」といった感情が芽生えて良いのかもしれません。
で、BLゲーなのでせっかくですしカプ萌えもしたいところ。ビビっと来たのは見崎×本庄ですね!!執着エンドにはやられました……誰も報われなさそうな展開がとても好き……。
エンディングでは凛のエンドが好きです。ラストの台詞がずるい。あれは惚れざるを得ない。本庄の心情を考えると実に複雑ですが、それもそれでぐっときます。また、おまけでの、身体とこころについての独白も印象的でした。
[システム・グラフィック]
シンプルなカットインが入ったり、キャラ名が章名になっていたりして、視点変更はあるものの読みやすくなるよう配慮がしてあります。おかげですんなり読み進められました。
周回するとOPがスキップできるのもありがたいですねー。内容は前述の通り心理描写メインですが、群像劇に近い構成も楽しめるかと思います!
拝見したところ、一部でかの有名作『こころ』をモチーフにしているようなのですが、いかんせん私はあの作品を理解しきれていないので……好きな方が読めばさらに魅力が増すのかもしれません。
[一言]
複数人の想いが絡み合うようなドロドロストーリー好きな方にオススメ。
『夢の通い路』
[概要]
ラストに分岐があるものの基本一本道なBLノベルゲー。絶望して身を投げかけた小説家志望の主人公と、不思議な少年が出会うお話です。切なくて儚い雰囲気が印象的な一作でした。
[ストーリー]
挫折や落ち込みがリアルで、けっこう身につまされるところがあります。あはは……。
この手の話は結局夢を取り戻したよやったー、な展開になりがちですが、この作品はそこを軽視せずにきっちり一度落としてくれるのが好印象でした。また、選択によってはどちらとも取れる帰結をしてくれるので、現実はシビアだよ派も夢を見たいよ派も満足のいく内容だったなあと思います。
初めてあの鶴を知ったのですが、いやー、ロマンがあって良いですねぇ。テーマがわかりやすく、読みやすい短編でした。
[グラフィック]
攻略対象、と言っていいのかわかりませんが、相手は少年ということで可愛らしい雰囲気の絵柄がよく似合ってます。うっかり手を出すと(年齢的な意味で)危ない感じもあって実に良いです。
[一言]
はかない幻想系がお好きな人向け。
『或いはアイラブユー』
[概要]
ver1.0をプレイ。分岐選択一切無しの一本道BLノベルです。属性としてはヤンデレ×クーデレ、な印象を受けましたがどうなんでしょう。とにかくヤンデレがいます。やったね!
[感想]
ラストの陰鬱な雰囲気がとても良い! とにかく一番はこれです。
他に向けて開いていた朔多が、物語が進むにつれてどんどん司と二人きりの方向へ閉じていくのもたまりませんでした。破滅しか予想できない二人ボッチいいよいいよ~。
気になったところとしては、回想シーンが地続きなので過去形に見えなくて違和感があるくらいでしょうか。背景画像とか画面の色味を変えると良さそう。
日常パートの、だらっと軽薄に見えて実は凄いことを喋っている、あの何ともいえない雰囲気も良かったですねぇ。独特な淡々感というか。これはやっぱり司のキャラによるところが大きいんだろうなー。
案の定、司がすごくお気に入りです。
何回も読み返したくなる一作でした。
[一言]
鬱展開やヤンデレ、暗い雰囲気が好きな方にオススメ。
『黒猫know』
[概要]
過去作品を2作まとめたシリーズもの、とのこと。愛され主人公のBLもので、ゆるーい日常と意外な真相が楽しめます。
[黒猫歌舞伎1]
こちらは中学生編。初めは、今までの作者様の作品と違ってほのぼのな雰囲気だなーと思っていたのですが、真相の毒にやっぱりなと頷かされました。欲を言うなら、飛鳥の蝶よ花よな扱いに異常なものを感じるので、彼が人間らしく見えるようにもうちょっと敵対して欲しかったなあというところ。自然と庇いたい・守りたい体質に見せたいのはわかるんですが、うーん。
それでもストーリーはやはりビターに良くて、真相とサブタイトルががっちり嵌まって思わず膝を叩きました。上手い!
[黒猫歌舞伎2]
一方小学生編。1のほうで気になっていた事故の話かと思いきや、まったく別の方向でトラウマを受け付けられる話でした。事故自体はおまけの後日談として収録されているので、気になっていた分嬉しかったです。本編とおまけを合わせるとなかなかのボリュームかと。
通常ルートはリアルにありそうな学級騒動で、当時を思い出してしみじみしました。八戸さんみたいな子、本当いますよねぇ。あるある。そしてトゥルーエンドでは、ちょっと置いてけぼりになったのは確か。どうも兄サイドのお話が別作品としてあるようなので、その伏線と思っておいたほうが良さそうな感じでした。
[キャラクター]
飛鳥:
総受け主人公の中でも姫扱いされるタイプ。態度だけは徹底して自己犠牲に走っていて、思考も極端にお人よしなのが気になります。事故のせいかと思いきや、おまけエピソード後編を読む限りけっこう最初っからこんな感じのご様子? 色々ルーツが気になるキャラですねぇ。
水島:
一推しキャラ。長髪の理由がたまらんかわいいです。
田中:
唯一の癒し。あほのこ設定なりにけっこう難しい言葉も知ってるのがまた、漫画の知識からっぽくて面白い。
中尾:
共感したくなるキャラ。前述しましたが、やっぱり憎悪に振りきれてほしいです。けど葛藤する君が一番輝いてる気もする。
栃:
対飛鳥のみ姫キャラ化するツンツンさん。生きにくかろうなあと思います。
兄:
溢れ出るラスボスオーラ。こちらも弟同様態度が極端なので、サイドストーリーが気になるところ。
橘先生:
初めは「あの言動で先生ってのは無理がある」と失礼ながら思っていたのですが、ラストで見事にこの不満が回収されて土下座しました。甘かったです。申し訳ない。これまた過去の色々が気になるキャラ。
他、サブキャラモブキャラにも皆立ち絵がついているのに驚かされました。丁寧だー。
[一言]
主人公総受けやほのぼのとシリアス両方楽しめる方向け。
『黒猫芝居』
[概要]
『黒猫know』の次作、高校生になった飛鳥達の話。今回はなんと3つもの事件を解決に導くということで、長さも重みもたっぷりな一作になっていました。個人的には、一つ一つの事件で良い具合に一区切り入れられてプレイしやすかったです。
[ストーリー]
まず、見どころとして挙げたいのがミステリ研の暗号!
単純にアナグラムだったり人から話を聞いたらすぐわかったりするパターンではなく、実際にメモなり何なりに書かないと解けない暗号です。資料を見比べて推理していくのもまた、ミステリって感じで燃えましたね~。
ちなみに私は中尾君の力を借りました。ありがとう、君がいたから解けた。
さて、心理描写のほうも良い具合に愛と執着と依存がどろどろと詰まっていて大変萌えました。特殊エンドの、明らかに闇の方向へ突き進む感じがとても好き……! 主人公の飛鳥や栃だけでなく、サブキャラ同士の因縁があったり、逆に後日談でのほっこりエピソードがあったりするのも良かったですねぇ。登場キャラが多いぶん、色んなところにドラマを感じられました。
これに限らず、三つの事件が一つの点に収束していくストーリー構成も実に良かったです。BLでメインとされる心理描写だけじゃなくて、大元の物語もきちんとしているのが好印象でした!
[キャラクター]
今回は登場キャラが多いので、気になった子だけ。好きな部分も批判もごたまぜなので、ネガティブな感想見たくない人はスルー推奨。
青戸:
淡野先輩は飛鳥よりむしろ村上のほうに頼ってるみたいだし、攻撃するなら村上に対してじゃないと筋が通らないのでは……? と、思っていたのですが。あくまで自分の手を汚したくはないタイプに見えるし、柊を動かすためなら多少対象がずれても飛鳥に行かざるを得なかったのかなあ。というかミス研さえ壊れれば別にいいやって感じ…?うーん。行動思考はちょっと理解しきれていないんですが、表飄々裏どろどろなキャラは好きです。あと立ち絵の隙のない笑顔が良い!
柊:
前作ですごく好みなタイプだなと気になってはいたのですが、いやはやここまで大活躍してくれるとは。とても嬉しかったです。青戸と話してる時は気を許してる感じというか、ちょっと口調が砕けてるのも良いですねぇ。前日談のねちこい感じもたまらんです!
飛鳥:
自立する、一人でやっていく、と言っている割にやっぱり相変わらず周りの気を引いてばかり。何かとトラウマが多い子ですが、無理とわかっているくせにむやみにぶつかって人を気遣わせるくらいなら、きっぱり無理・駄目と諦めて別の手段に移るほうがよっぽど自立してるよなあと思うのですがいかがなものか。一人でやらなきゃ!が空回りしてる未熟さを書きたかったのかなあ。ほっとけない危なっかしさが飛鳥の可愛さってつもりで描写されてるのはわかるんですが、飛鳥の優しさや可愛さを表現するシーンが何かとカマトトで当てつけがましく見えてしまうので、色々と打算的に感じてしまいます。構成や描写として感じざるをえないというか。萩原先輩がその辺ガツンと言ってくれるかと思ったけど消化不良。持ちあげられ損するキャラだよなあと思います。
栃:
前までは頭脳面で役に立ちつつも飛鳥に守られる側という印象が抜けなかったんですが、夜間部や律さんなど彼だけで築いた世界がいつの間にかできていて驚きました。知らぬ間に巣立っていた……。純粋に栃の成長は嬉しいです、めでたやめでたや。ちょっとずつ栃なりの人間関係を広げてってくれるといいなあ。
水島:
特殊エンドおめでとう。時が経つごとに彼氏力を増していく感じがしてどきどきします。努力家な面も描写されてはいたけどやっぱり元々ハイスペックでもあるよなあと思ったり。特定力がすんげぇ。
律さん:
何故かさんづけしてしまう。一・二を争うくらい好きです。あの物静かな雰囲気も良いですし、それに反してわりとおちゃめだったり、苦手な物から逃げる子どもっぽさがあったりするのが可愛くて、グッときます。栃に勉強教わってるシーンがさりげなくお気に入り。
[一言]
栃・水島推しはとにかくやって損無し、それ以外の方も惹かれるところがあるなら試しに一つの事件だけでも解決してみてはいかがでしょう。
『dogs.1』
[概要]
上記で取り上げた黒猫シリーズの、サイドストーリー的なシリーズ。黒猫シリーズと違って読むだけのノベルなので、初めてでもとっつきやすいかと思われます。たぶんこっち先でもすんなり読めるはず。
[ストーリー]
黒猫のほうからミステリ要素が薄まってどろどろ心理描写要素が濃くなった印象です。閉じた関係に亀裂が走る様な感じ。事件そのものはとりあえず収束するものの、随所に見られる綻びや不穏な伏線に心躍る一作でした。次作に絡む伏線があるのも、またシリーズものならではですね。
弟側と人数や構成は似ていながら、しっかり別の関係性を作り上げているのが良かったです!
[キャラクター]
主人公の陽琴がかなり男前でしたね!
ダイレクトに犬に見立ててる文章が多いのもあいまって、トップブリーダーのような貫録でした。弟と違って自分でできる範囲で行動してるし、好感持てます。こう、ペットを飼う時には自分が面倒見切れることを保証したうえで~的な言葉が思い浮かびました。
他のメインキャラだと海野がお気に入りですねー。誰に対しても傷つける形しか取れないのが切なくも可愛いです……。
続いて久生もお好き。基本、依存体質の子に萌えます。内気なのかと思いきや、けっこうグイグイ来てくれてこれはこれでグっときました。
[一言]
犬とご主人様的なものにピンとくる方向け。
『dogs.2』
[概要]
上記のシリーズ2作目。こちらも読むだけノベル、ミステリより人間関係のごたごた中心。
[ストーリー]
今までは一応一作できちんとオチがついて完結している感じだったと思うのですが、今作だけは次回に続くって感じの終わり方でしたねー。どうやら次の3で犬シリーズは終わりだそうなので、クライマックスに向けた伏線になるのでしょう。
1のほうで仕込まれていた目戸についても回収されて、さらにこの作品で入れられて――と、かなり伏線やフラグに凝ってる印象でした。次でどう回収してどう締めるのか気になるところです。
[キャラクター]
陽琴:
な、なんだか弟化してきたような……? 1での、恩と感じさせないくらいきっぱり人助けする彼が好きだったのですが、今作ではまたあの作為的な人の良さが出てしまっていて残念でした。わざとらしい自己犠牲や鈍感っぷりがもうぶりっこ甚だしくて!もったいない!……まあ兄弟だし本質としては書かれたいのはむしろこっちなんでしょうね……。
岡本:
名実ともに彼氏ですってやったね!いや、岡本自身は飛鳥からの矢印をそこまで求めてはいなさそうに見えるので本人としては不本意かもしれませんが、でも嬉しいです。
久生:
デレ度と積極性が増して、傍に控える形からグイグイ押せ押せになった印象です。可愛い。
海野:
変わらず暗い方向に生き生きしてて好き!飛行機エピソードとても微笑ましかったです。
未影:
こういうキャラが内側のどろどろを解放する展開が大好きです。大好きです。
[一言]
どういう形に収めるのか、次が気になるシリーズです。でした……(追記)。
『カムパネルラ』
[概要]
読むだけ短編さっくりBL。幼馴染とか約束とか、少年期の成長につれて変わっていく人間関係とか、そういう感じ。
[感想]
まさにメリーバッドエンドでした。うむ。
独白で語られていく感じのストーリー、きついところもなく、前半は淡々と沈んでいける感じがします。で、ラストは今までのがぱぁっと報われて幸福感溢れてます。
状況として考えると紛れもない悲劇で切なくはあるんですが、全体的に夢見心地な雰囲気だったので、つられてふわふわとした思考になって、二人とも幸せならいいよな~と思うなど。寝る前とかに読みたい一作です。
[一言]
お前がいないと生きていけない、系が好きな方向け。
『lima』
[概要]
読むだけ短編さっくりBL。演劇、俳優、ハッピーエンドなどがたぶん反応ワード。
[感想]
少し不思議系で心温まるストーリー。もちろん読んでる途中でもあの俳優の正体は想像つきましたが、それでもつい主人公気が多いなあと思ってしまったのは許して欲しいですw
ノベルをベタ打ち移植してる感あって改行少なめ、オートモードだとちょいリズム合わなくて読みづらいかも。
終わり方が好み。同じ道を歩むわけではないけど一緒にいる、っていうのは個人的にとても好きな形なので、良い具合にまとまってくれて安心しました。
[一言]
雰囲気重視の方向け。
『崩壊LSD』
[概要]
パズルありの狂気幻想BL。考察したり、話を自分の中で組み立てたりするのが好きな人向け。
[ミニゲーム]
パズルが難しかった!です! いえ、慣れてる人や手番計算が得意な方は楽なんだと思うんですが、私はどちらかと言うと言語系のパズルのほうが得意なのでかなり時間をかけてしまいました。というか、その、恥ずかしながらこの作品全クリできていません……。おそらくLルートだと予想はつくのですが、行き方がわからない……! クリア済みの方の攻略を切実に求めてます。
(9/18追記 右柱コメントフォームより攻略情報を頂き、無事にクリアができました!嬉しい……!めちゃくちゃ嬉しい……!!!ありがとうございました!!!!
クリア後の感想は改めて下記にて。)
[システム]
システムと世界観がかなり嚙み合っていて、まさに“ADV”だなあと感じました。ストーリー重視でもギミックに手を抜かない、そんなノベルゲームが大好きです。
夢うつつな雰囲気が終始漂い、狂った世界を二人だけで行進し続けるこの世界観がたまらなくツボなんですよねぇ。選択肢を選ぼうとすると……というギミックには本当心臓を掴まれたような思いでした。
背景画像やセーブ画面、あちこちにメッセージ性が込められていて、また章ごとに画面デザインも変わるのでどこまでも飽きません。図書室の、夢十夜めいた断片が好きでした。彼の世界には先輩しかいない……。
セーブできるシーンが限られているぶん、章ごとのスタートやリセット、クイックセーブなどの機能が充実しているのも良いところ。回想や再チャレンジがしやすいのはとても助かりました。
[ストーリー・BL面]
いじめられっ子×飄々とした先輩。狂信じみたキャラは良いものです。先輩が好きだからできない、というのと、先輩が好きだからやってみせる、というので揺れ動くさまが最高でした。人殺しの倫理的抵抗は眼中外であり先輩を害すること一点が引っかかっているというのも狂気じみていて萌えます。
私は閉鎖空間でヤンデレが延々と迷い続けるような展開が大好きなので、まさに理想でした。
時系列も夢も現実も妄想も全てがごちゃ混ぜになって断片として散りばめられているので、それらを紐づける楽しさもあります。自分がどこにいて何を読んでいるのか、混乱しつつも多幸感でいっぱいにされるこのプレイ感覚はまさに麻薬的で悪夢のよう。夢中で最後まで読みふけった一作でした。
[9/18追記 完全クリアに寄せて]
本当ね、最後の最後までシステム面とストーリー面の噛み合いに驚かされた一作でした。
エンドリストも美しすぎる……! 夢現をさまようみたいなあのプレイ感覚も楽しかったので、改めてどれがどこかわかる脳内回想機能に思わずガッツポーズしました。
「先輩のため」とかじゃなくて極論の根本は「渡したくない」なのがすごくBL的で良いですよね……。暴力から救い出すのが単純な正義となるのではなく、先輩の抜け出せない心の鎖やら葛藤やらを余すところなく書き上げたうえで、あの場所に辿り着いたという構成がもう好きです。好きです……!
虐待描写と愛情のすり替えがとても丁寧に書かれているので、手を伸ばしたいのに伸ばしきれない、この歪な感じがよく出ていたなあとしみじみ感じました。
あらすじだけ取ると知らない人からすれば手段を間違えただけの麗しい話なのですが、その裏は二人だけの愛に満ちていると言うのがこう、たまらなく、たまらなく萌えます。最高です。やはりBLは関係性が第一……。
パスワードまで凝っていて、こう、打ち込む時にひゅっと息を呑む感覚があります。あれはずるい、大好きです。
時々引っ張り出してプレイするゲーになるんだろうなあ。
[一言]
斬新で狂気的で夢見心地、二人にしか通じない世界が満ち溢れている一作。
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