「数多くのパターンで構成されているそのキャラは私よりも雄弁である可能性がある」
現実世界なら「うん」の使用回数は決まっていない前置き。
えー、今回はめいどいんるーむ(ヨシカワ)さんところのフリーゲーム「9∀nn∃」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。
ボタンを押すだけでクリアできる、すごく難しいゲーム。私の場合はクリアまで30分強くらい。反射神経やアクションスキルは不要ですが、察しの良さは必要かもしれません。
というわけで、良かった点など。
ストーリー以前にゲームのシステム自体がかなり挑戦的で面白かったので、未プレイの方はまず公式サイトへ! そしてご興味が沸きましたら、いったん遊んでみてから読んでほしいです。
やってわからせる斬新さ
まず好きなのがReadMeの書き方。実際あれを読んでおかないとバグだと勘違いする方も出てきそうなので、読もうと書いてあるものは読んでおきましょう(当たり前)。
操作すればプレイヤーに求められている行動がわかる、という、単純なれどゲーム作りにおいてものすごく難しい設計。ここがきちんとできている作品です。説明しすぎず、説明不足でもない、本当ちょうど良い塩梅なんですよね……。
最初の「いんせき」でだいたいのつくりを察して、次が本番、やることが増えて、エンディング。
わかりやすい! でも難しい! やるべきことはわかるから試行錯誤が楽しい!
レベルという概念こそありませんが、ゲームデザインとしてのレベルが階段状で美しい作品でした。
ゲームの意義を問う哲学
作品のテーマ自体は哲学的に感じられました。
このゲームをプレイすること自体が検証作業……なんなら公式サイトからすでに問いが始まっている……そんな感じ。このプレイ感が綺麗にエンディングで回収されたところも含めて気持ち良かったです。
タイトル含め文字が全部当て文字なのも、何か意図したものがありそうな気がするんですよね……。
なお、他プレイヤーさんの感想を探しにネットの海へ旅立ったところ、なかなかサーチのやりようがなくて笑いました。検索除け力(ぢから)が高い。
ゆるくも深くて複雑だけど空虚
画像の枠はフリーハンド、敵として設定されるもののグラフィックはどれもゆるキャラ。フリゲだから許せるという言い方は、少し語弊がある気もするんですが、フリゲだからこそ下手に突かれずこのままの形で見られるグラフィックです。
で、一方で、話の内容は前述のとおり少し複雑。
でも、ラストの会話はやっぱりどこかゆるい雰囲気なんです。日常会話、二人だけで通じるだらだらゆるゆるとした日々。そんな感じ。
この雰囲気がね~……。本作独自の大きな魅力でしたね~…………。
喪失、哲学、でもちょっぴりわけわからなくて、どこかで力が入りきらない。緻密だけど、ゆるくて、むなしい。なんだか不思議な感覚になれる作品でした。
とまあ、こんな感じで。
「やられた!」と「まあ確かにそうなるよな……」の両方が味わえて、楽しかったです!
余談、公式サイトのURLが「9ame」なところ好き。
追記ではネタバレ感想。
同作者様の他フリーゲーム感想記事↓
ネタバレ注意!
一番苦労したのはラスボス前の戦いでした。
メッセージ送りと攻撃対象選択。盲点!
そしてプレイヤーの操作入力スピードとロボットの動きのラグ。これまた盲点!!
1秒ごとに動くというのが、本当に面白かったですね……。しみじみと作りが上手い。
最後に見覚えのある部屋に来たのも、ギャッと叫びました。
ここ知ってる~!! だからあの戦闘でも操作キャラ名がgirl、うおお……。
メタ的に言えば『Flyend』と繋がっている、というか、あのゲーム世界をここで皮肉ってるともいえる構造なのかな。本作の実験を別の形で行ったのが『Flyend』……? ふむ……。
皮肉ってるゲームなはずなんですが、意地悪さは感じなくて、そこも好きでした。受けた印象は、「純然とした疑問」の方が近いかも。
まだ『Rotation Girl』をプレイしていないので、そっちを遊んでみたらさらに違った見え方がするのかもしれません。わくわく。
先に指示をセットしておいてから動かすというのは、『帝国魔導院決闘科』『Phan Somunia』『ランナーズ・エクリプス』辺りにも通ずるものを感じます。こういうの何ゲーって言えばいいんだろう……? 万人に伝わりやすい言い方、募集してます。
ともあれ、プレイ時間以上の楽しいがあって、脳がバチバチはじける感じの作品でした!