「水際で考えている、水底までの距離について」
一歩踏み込めばどこまでも流されてしまう前置き。
えー、今回は短編のBLノベルゲームを複数作まとめて感想を述べていきますね。作者様はそれぞれ別。作品は下記の目次の通り。
『閉塞空間 -enclosed space-』
無口クール×ツンデレの短編BLノベルゲーム。
導入部分で思わず「○○しないと出られない部屋系か!?」と思いこんでしまいましたが、話は意外な方向へ転がっていきます。
全体的に無機質な雰囲気のデザインですが、内容としては軽快なやりとりが多く、ややほのぼの寄り。ただし、真実がわかるルートのみ不穏・切ないものになっています。シリアスかなと気を引き締めて始め、途中の会話に思わずクスッと気が緩んだところで、これまた身体が硬直するという。上手にまとまっている一作でした。
何考えてるかわからない、って言われがちなキャラ大好きです。脳内の想いの大きさと出力の少なさの不一致萌えみたいな。無口クール君の隠された内心を妄想してにやにやしました。
あとグラフィック面では、スチルの使い方が面白いなあと思わされました。立ち絵としても楽しめて一石二鳥ですねぇ。
世界観としては一応、近未来なのかな。私の普段の好みとしてはやっぱりED3を推したいところですが、なんだかんだでアナザーストーリーのゆるい会話が一番好みかもしれません。
小粒で良作の不穏なBLゲーをしたい人向け。
『誰か俺を殺してください。』
R-15短編BLノベルゲーム。性的展開や暴力描写などが多め。
エンドロールや起動時のウェイトがかなり長く、短編でもちまちま区切りながらプレイする自分にはちょっと辛かったです。クリックとかで飛ばすかウェイト省略させてもらえたら助かったんですが。
ストーリーの中心はいじめ問題です。序盤のいじめあるあるな流れにリアルさを感じる一方、BLな展開が始まりだすと非リアルな展開になっていくので、ほどよい距離感で物語を楽しめました。プレイヤーの精神が抉られるというよりは、キャラを俯瞰してリョナとして見やすい形式の一作かなーと思います。
助けた相手を疎ましく感じたり、偽善とのはざまで揺れたり、心が荒みだすと好意的に見ていたはずの相手まで憎らしく思えたり――等々の心理描写が良かったです。
復讐エンドが特に好きです。いやー星川君可愛かったですね! 後日談が気になるのはストックホルムエンドかなぁ。渚の取り合いが見れやしないかなとわくわくしつつ、月村にあるのは恋愛感情に限りなく近い別物だと嬉しいので複雑なところもあり。何にせよ妄想が捗りました。
タイトルでピンと来たなら。いじめと聞いて想定される鬱展開がぎゅっと詰めてあります。
『FRAGILE』
雰囲気を味わうBLノベルゲーム。
起動画面すらなく、自動的に始まって終われば再度始まります。水のキラキラした背景と、じっとり語られる文章のギャップが不思議な世界観を生んでいる短編です。
ポエムとセリフからぼんやりとしたストーリーは読み取れますが、明確な情報は全く得られません。代わりに本筋がわかるよう、解説のテキストファイルがついています。
個人的には語るべきことは作中で語って欲しい(補足説明があとがきにあると本編に組み込んで欲しいと感じる)派なんですが、本作は全力でポエムして中身をぼやけさせることを作者様自身が狙っているように見えたので、これもこれでありかなと。
私はてっきり狂った片想い風の相思相愛ものだと思っていたので、解説テキストのグレーパート2行目の記述に驚きました。
綺麗な雰囲気で色々と妄想を膨らませたい人向け。
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フリーゲーム「アンダーブルー」「アンダーブルー2012」感想
フリーゲーム「ソレノナ」「ソレノナ-And to End-」感想
『神様ボクのお話を』
公式バナーがBL表記だったのでここに入れますが、心温まる動物ものとも取れるノベルゲー。文字入力のシーンもありますが、ポイントはわかりやすく強調されているので、難易度自体はかなり易しめです。
難点はやっぱりシステムかなあ。お話を聞いて、という趣旨なのでセーブロードがないのは理解できるんですが、音量調整機能などが外されているのはやはり少々不便に感じました。
お話自体はお涙頂戴ハッピーエンドっぽい雰囲気で、健気な猫ちゃんと悪人だったおじさんの交流が描かれています。やや人間的な描写が目立つものの、猫あるあるも味わえたのが嬉しかったです。意外と猫って返事するよね。
動物系感動系がプレイしたい方向け。
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