うそうさ〜第二号室〜

フリゲ・鬱展開・ヤンデレ 万歳!

翻訳フリーゲーム「第七号車」「PRICE」「偶弦(ぐうぜん)~人形の糸~」感想

「言葉を編んだ船で海を越えてきました」

今後とも大歓迎していきたい前置き。

 

えー、今回は悲しき魚(http://www.freem.ne.jp/brand/3974)さんの翻訳による中国製のフリーゲーム「第七号車」「PRICE」「偶弦(ぐうぜん)~人形の糸~」の感想をつらつら書いていきますね。一部レビューっぽいかも。

 

翻訳者様≠製作者様です。

なので勿論、作品相互に関係性はありません。が、せっかくなので中国フリゲという枠で一つ。

どうもこの翻訳者様はてにをはが苦手なようなのですが、単語選びや語尾に関してはかなりこだわりを感じました。雰囲気もばっちり伝わって文脈も読み取れる、良い翻訳作ばかりです。

 

 

 

というところで、各作品の感想など。

 

 

 

 

『第七号車』

http://sadfish.web.fc2.com/Japan2.html

 

[概要]

水野的四叶草さん製作、心を癒す列車でのひと時ノベルゲー。クリアまで40分程度。

 

[ストーリー]

 

まず皆気になるであろう翻訳について。助詞や語尾などにぎこちないところは見られるものの、一読ですんなりと意味の通る翻訳でした。特に良いと思ったのは少女の口調、控えめながら可愛らしい性格がよく出ていて素敵です。

「ふーん。」も初めはちょっと違和感あったんですが、終盤ではなんだかすっかり気に入ってしまいました。

続いてメインのストーリー展開について。あたたかくて切なくて優しくて――としか書けない自分の表現力がもどかしいのですが。本当、じんわりと染みいるお話で、わかっちゃいたけどラストでは泣いてしまいました。浄化作用はんぱない。人によってはありきたりと思われる話かもしれませんが、演出やシステムとよく噛み合った展開が涙を誘うんですよね……。

最後の質問は、なんというか、これを言わねばならないのかという辛さも感じられて大変良かったです。

 

 

[システム]

 

セーブのタイミングは決まっていますが、話の区切りとしてセーブ画面に入るので良い具合に休憩を入れつつプレイできました。

どうしても機能上バックログやスキップなどが使えないので、ノベルゲーに求める読みやすさ、という意味ではどうしても不便なところも。でも息継ぎせずどんどん読み進めるより、ゆっくりじっくり味わいたくなるお話だったので、ある意味機能制限されてるほうが合っている気もします。

相手の質問に対して、選択肢の中から一番合いそうなキーワードで返し、話が進んでいくというのがメインのゲーム要素。ただ単に選択肢が表示されるんじゃなくて、文面の中からプレイヤーが積極的に探しに行けるのが楽しかったです。少女の反応が見たくて、間違いだとわかっていてもついつい別の選択肢を選んでしまうこともしばしば。時々うろたえるのが可愛いです。

しかもこのミニゲームの画面がまた良いんですよねぇ。文字も素朴で可愛らしいし、花弁や青に彩られるワードもお洒落。

 

 

[演出]

 

がたんごとん、と揺れる音がさりげなく良い味だしてるなーと感じました。

バッドエンドの一枚絵で予感が確信に変わるのもまた、胸にきます。そういえば凄く気にしてたものね……。起動画面が変わっていくのも良かったなあ。一通りクリアした後も、すぐに終了してしまうのが惜しくて、起動画面を眺めながらしばし余韻に浸っていました。旅先で物想いにふける感じが味わえてとても良い時間でした。しみじみ。

 

 

[一言]

優しい物語を読みたい方、大人しい黒髪ロングの少女に惹かれる方にオススメ。

 

 

 

 

『PRICE』

http://www.freem.ne.jp/win/game/7149

 

[概要]

夜兔AVGさん製作、もぐらゲームスさん校正。

ビジュアル重視の探索ホラーゲーム。アクション要素は一切ないので苦手な方もご安心。

 

[ストーリー]

ざっくり書くと、随所に散らばる不穏な影や悪い予感の正体を探していく、兄妹の悲劇ものになります。

アイテムやムービーで匂わせるところはあるものの、はっきりこういうストーリーだということは語られません。なので、ある程度自分で考えながら進めるのが好きな人向けになるかと思われます。

がっつりホラーな演出をしつつ、ところどころで和むのが主人公の反応です。妹の部屋にいることに照れたり、虫にぎょっと怯えたり、デフォルメアイコンの豊かな表情もあいまって、プレイをすればするほど彼に愛着が湧いてきます。

音楽、兄妹、ゴシックな世界観、人形、悲劇などにピンとくる方向けのストーリー。

隙を見せぬ二段構えの構成も魅力的でした。

 

[システム]

気になるところをクリックするとキャラがそれに誘導されてアクションを起こす形になっています。操作感はフリゲというよりもブラウザゲーに近いかなと。といっても近頃はその垣根もなくなりつつありますがw

単純にアイテムを使用して謎を解いていくだけでなく、「手がかり」という一捻りが効いていて面白かったです。手がかり同士を組み合わせるパズル的な楽しさもありますし、段階を踏んで蘇っていく記憶にぞくぞくできます。ミスしても影響がないのは本当にありがたかったです。

ただ、探索がアイテム不足のせいで詰まっているのか手がかり不足のせいで詰まっているのかがわかりづらかったのは難点ですね……。ここだけ少し詰まりがちになるかと思います。それでも、攻略などは有志の方が作っていますし、全体的にヒントも良心的なので、探索ゲーとしてはとっつきやすいはず!

 

[グラフィック・演出]

何より注目したいのがこのグラフィック面!作中のムービーは驚きの11個です。圧巻。

まずプレイを始めようとスタートをクリックし、始まるOPムービーの豪勢さに思わず息を止めて見入ってしまいました。「これは映画か!?」と叫びたくなるほど。

前述した通りきちんとゲーム要素もあるのですが、こういったグラフィック面がとんでもなく秀でているので、一つの映像作品としても推したくなります。

ゴシックファンタジーな雰囲気の世界観や、探索場所となる室内の洋装っぷりもお洒落。綺麗さだけでなくホラーとしての怖い表現も上手で、人形やOPの蝶などの不気味さには思わず鳥肌が立ちそうになります。

さらに、キャラの動きがとても丁寧なので、クリックでキャラを誘導するのがとても楽しいです。調べる箇所に合わせてしゃがんだり背伸びしたりする細かさも素敵!

セーブロード画面やコンフィグ画面の退廃的な美しさにはもう、その裏に隠された意味がわかった今でもつい見惚れてしまいます。

見た目だけでなく、要所で入るボイスもかっこいい!おそらく中国語?ではありますが、言語が違うだけでグっとファンタジーな感じになってどきどきしました。主人公の少年声が好みです。

 

[考察]

クリアして改めて考えたことや雑な解釈考察など。

以下伏せ字、ネタバレ注意。反転どうぞ。

 

・真相と大前提

とりあえず、魔術師がそそのかし死神(猫)が魂を頂くという協力関係の元、妹が兄をネタに餌食となる――というのが真相かな。そして前提として、妹はECIRP中に見つかる「幻の術」をかけられ、兄は「復活の術」をかけられていると。ゆえに、ゲーム中の兄はいわゆる魂とか仮想媒体とかで、現実ではただの人形。これはPRICEエンドでもわかりやすく示されてますね。

 

・イヴァーはどこにいてどういう状態?

兄は妹に刺されたとして。妹自身はどうなったのか? いや、ムービーで首がかき斬られたことから死んでるは死んでるんだと思うのですが、彼女も人形にされたんでしょうか。もしそうだとすると、ECIRPのEDでイヴァーが人形ではなく髑髏の形で描写されるのが引っかかるんですよね。

なので一連の流れを考えてみました。

初めのうちは兄の人形と妹本人が幸せに暮らしていた(ECIRP編)

→時が経ち妹は(施設暮らしという金銭的理由または病気あるいは幻覚剤による廃人化などで)生きられなくなる

→妹は永遠に兄と共にいるため自分の身体もまた魔術師に捧げて二人とも人形になる(PRICE編)

みたいな。ちょっと妄想入ってますが。つまりゲーム本編の世界は、魂の世界。魔術師にそそのかされた妹と道連れになった兄が、地獄で死神に囚われている魂が見ている夢である、そんな感じかなと。思っております。

 

・どこまでが代償?

初めは妹の魂が地獄に行くことと引き換えに、兄との永遠の時間を手に入れるという契約だと思っていたのですが。この時兄の身体が代償に含まれているかどうかがちょこっと気になりました。

仮に上記の流れで物語が進んでいた場合、妹は既に魂を代償にしているので、自分が人形化する時には捧げるものがない。身体も代償として受け付けられるなら、自身の身体を捧げて人形化できるんですが、身体を殺すのはあくまで手段であり代償として受け取られなかった場合、妹がさらに払ったものは何だったのかなあと。

というふうに疑問が残ってしまうので、代償は兄の身体を殺すこと=魂が地獄に行くことでワンセットと考えてよさそう。

 

・兄の記憶があやふやだったのは何故?

直接的な原因はともかくとして、最大の理由は「兄を目覚めさせないため」かと思っています。記憶が鮮明になる→兄が死んでいることに気づく→夢を見れなくなるみたいな理論。

魔術師曰く、あの夢は王子様が目覚めないと終わらない、つまり、兄が目覚めると終わります。なので、プレイヤーがこのゲームのPRICE編をクリアすることで、兄妹の夢は終わってしまうと。……考えたら罪悪感が。永遠に彷徨い続けるのとどっちがましなんでしょうね。

 

・あの子誰

あともう一つ。ECIRPのEDの黒髪少女は誰?

お兄さんのほうはおそらく魔術師?かと。一方黒髪少女は誰なのか。猫が化けた姿とかでしょうか。でも猫のボイスが男性なのは引っかかるところ。うーん。謎です。

 

 

以上伏せ字終わり。

 

 

[一言]

グラフィック重視の人には是非ともやってほしい、ゴシックホラーゲーでした。

 

 

 

 

『偶弦(ぐうぜん)~人形の糸~』

https://www.freem.ne.jp/win/game/6799

 

[概要]

Onion rabbitさん製作、館探索ホラーゲーム。

余談ですが、同梱テキストファイルを読むと、中国語のキャラ名を日本語名にする際にとても考えて翻訳してくださっていることがわかって、すっごく好印象でした! 細やかなニュアンスを汲み上げる姿勢がとても素敵です……!

 

[ストーリー・キャラクター]

自分の身代わりになってくれる人形に惹かれてやってきた少女たちが、館に閉じ込められる話。

メルヘンホラーなモチーフや設定にはとてもときめくのですが、残念ながらストーリーの面では合わないところも多くありました。やっぱり一番は、キャラクターに愛着を持てないというところが大きいと思います。

 

以下、ネタバレに抵触するため伏字にしますが……

詩月・詩夜

「祈りの人形」の説明役および儀式の数合わせとしか思えなかったのが残念な点。見た目双子・二人の世界・「ふかふかのベッド初めて」発言を見るに良い扱いを受けてはいない、と設定部分だけ見るとドストライクな二人なんですが、細音が部屋から締め出されて以降は全く動きがないのでとにかく印象に残らないんですね。何だったんだろうあの二人、ってなってしまう。ひそひそ話をしてるイベントが1度だけ見れましたが、他にも何かあったんでしょうか……。とにかく、せっかく立ち絵ありで設定も濃いそうなキャラなのに使い捨てな印象でもったいなかったです。

新蕗

こちらも同行はしてくれるんですが期間が短いのが難点。後になると、「おかあさん」に惹かれてあの絵画に憑りつかれてたんだろうなあと推測はできるんですが、あの段階だと絵画側の情報も新蕗側の情報も少なすぎて急展開に戸惑うところがありました。

家族の話をすると表情が暗くなるなど序盤の伏線の撒き方は良点。

「なぜ細音を助けようとするのか?」がはっきりせず、動く時も細音の好きにさせる感じなので、いまいちポジションに悩むキャラ。細音との距離の詰め方が雑と言ってもいいかもしれません。こちらは初めましての気分なのに相手はすっかり気を許してる感じがあって齟齬を感じるというか……。ちょっとした会話は豊富なんですが、それ以前に仲良くなる大前提がぽろっと抜け落ちてる感じがしました。

ぶっきらぼうな口調と言い、チェスの部屋で「怖い→はい」を選んだ時のなんともぎこちない優しさといい、キャラの性格や外見としてはもうたまらんめちゃくちゃ好みなんです。人形エンドはご褒美でした! ああいう展開大好き!!

だからこそもうちょっと、プレイヤーの警戒心を緩ませるような展開や、細音だけが助けられるのではなく相互に助け合うような流れがあると良かったなあと思います。

最も信頼できる味方キャラかと思いきや一時的なお助けキャラでござった。狐との行動もけっこう長かったですし、このマップこそ立ち絵ありのキャラ達を活躍させたら感じ方は違っていただろうと思います。

細音

上記の理由により、この子が他キャラに対してなぜあそこまでなついているのかがよくわからないままになってしまいました。エンドを見るに、「兄がいる」ということもかなり重要なポイントだと思うのですが、それが新蕗との会話一つだけにしか登場しないのもマイナス。また、おまけを見ないとこの子があの館に連れてこられた理由はついぞわからなかったと思うので、全体的に情報開示の仕方が惜しかったなあと思います。

 

以上、伏字おわり。

やりたい設定やキャラの背景が先行しすぎていて、プレイヤーに伝えようという感じがあまり見られなかったのが難点だったかなあと思います。逆に言えば設定だけでも萌えられるタイプの人はすんなり受け入れられるスタイルなのかもしれません。

某所の「諦めた。」等に見られるおちゃめさは好きです。

 

 

[システム]

 

基本的にはあちこち虱潰しして鍵を見つけていく館探索ホラー。

部屋に置いてある童話からヒントを得て謎解きを進めるのがまさにメルヘンダークでした。

ヒントが一か所にまとめてドンと置いてあるので、物語の進行によってはうっかり忘れてしまったり、どの本とどの謎解きが繋がっているのか混乱したりする時もありましたが……。無茶な謎解きは無く、きちんと手元に参照できる情報で謎が解けるのは良点です。

ストーリー面でも語った通り、作者様はプレイヤーに対する情報開示が苦手なんだろうなあという印象。私は先に色々握ってから動きたいタイプなので、この謎解き面はウマが合いました。

即死イベントは多いですがそのぶんセーブポイントの配置も良心的。追いかけっこも速度がかなり遅く、ダッシュしていれば多少道を間違えてもまず追いつかれません。私はアクションがかーなーり苦手なので大変助かりました…!

 

 

[グラフィック・演出]

 

とにかくドット絵の動きが細やかです!

初めの部屋でまず、椅子に座れることに驚き、さらには座ったままで細音がきょろきょろしてくれることにテンションが上がりました。めちゃくちゃかわいい! ちょっとした動きなのに見ているだけで全部伝わる、これはさりげなくもかなりの描写力だと思います。

不思議な呼び声の表示のさせ方や、知らぬ間に増える壁の血糊など、わかっていても怖いマップ表現もグッド。部屋の置物や家具の数も多く、それこそドールハウスのような細やかさが素敵でした。

セーブ画面の人形風なキャラ達も可愛くて、同行キャラが増えるとまず時計を探していました。

立ち絵の美麗さにも注目ですよねぇ。もう本当弦のキャラデザがめちゃくちゃ好みなんですよ。はぁかっこいい。要所ではムービーが入り、ぞっとした雰囲気を際立たせてくれます。CGが見返せるのも嬉しいポイント。

ドットとスチル両面での表現が上手く、また彼女が溺れるシーンなどはツクールならではの表現も味わえました。グラフィックは文句なしの大満足です!

 

 

[考察]

 

クリアして改めて考えたことや雑な解釈考察など。

以下伏せ字、ネタバレ注意。

 

プレイしていて私がすんなり理解できなかったところだけ、自分の整理がてら取り上げます。

 

・序盤の謎の声と追いかけてくる闇は何だったのか

まず、あの声を人形と仮定するとして。儀式のシーンを見るに館の人達の立場としては、ご主人様>人形達>弦なはず(たぶん人形達は弦=ご主人様だと気づいていない)。なので、あの弦と細音の初対面シーンで謎の声が弦におびえているのはおかしい気がします。

となると、あの声は過去に引きずり込まれてきた少女たちの念みたいなものなのかなあと思っています。

失ったものエンドを見るに、そもそも細音が欠けてしまえば儀式は失敗してしまう? ので、人形が細音を殺そうとするのもおかしな話です。また、あの館に来た少女達は後々人形となるであろうことも人形エンドからわかるので、各所のデストラップは過去の犠牲者である少女達の怨念みたいな……。

つまり、同じ人形であってもあの館には「弦の願いを叶えるための人形」と「過去の犠牲者である少女達の成れの果てである人形」の二種類がいて、細音を害するのはもっぱら後者のほうの人形なのだろうなと思います。

 

 

・夢エンドの間取りが家来の部屋と同じなのはなぜ?

序盤の弦の「部屋が記憶と違う~」というセリフ、初めは弦と父親の意識が混濁していたせいなのかなと思っていたのですが。家来の部屋の間取りがOPや夢エンドで見せられた細音の場所とわざと似ているところなどを考えると、あの館は細音を含む連れ去られた少女達の記憶が混ざり込んでいる異空間なのかなあと考えなおしました。他の人の記憶による再構成も混ざっているから弦の知らない場所が出てくる、等々。

ハートの部屋の右にある、焦げ付いた扉の中身も謎です。ハートの部屋が新蕗、花の部屋が詩夜詩月のための部屋だとするなら、あの部屋は細音のための部屋なんでしょうか。火事で家族をなくしたのかな……?

 

・かかしのシーンで細音の後ろにいた人物

赤いタネを取得するときに、キャラチップがぼやっと浮かび上がってくるんですよね。

このキャラは細音とかなり似ているんですが、成長した姿だとしてもズボンだしネクタイの色が違うし、弦だとしてもリボンタイじゃないし色が違うしで悩んでおりまして。たぶんお兄さんなのかなーと思ったんですが、ここで出てくる意図はわからず、謎なままでした。うーん。よくしてくれた狐さんがああなったことで、過去のトラウマが想起されて、亡くなったお兄さんを思い出してしまったとかでしょうか。書いといてなんですがこじつけな気がするので違うでしょう。

 

 

・棚裏のイラスト

狐と行動を共にするマップで、棚の裏に書かれていた女性の絵。心から謎です。誰か解説ください。

 

 

と、こんな感じで。

このように気になるところがありつつも、大筋は綺麗にまとまっていて、特にトゥルーエンドはとても爽やかな印象でした。

といっても仄暗いのが好きなのでやっぱり人形エンドを推したいです。

 

以上伏せ字終わり。

 

 

[一言]

メルヘンダークな世界観が好きでグラフィック重視の方向け。

フリーゲーム「iroiro.」感想

「不平不満を私のような矮小な人間が申し述べるなど到底到底」

言いつつ中指立てる前置き。

 

 

 

えー、今回はnununuさんところのフリーゲームiroiro.」の感想を書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

ツクール製の短編ホラーちっくなノベル寄りのADV。鬱展開。幽霊やびっくり系の怖さではなく、人の心の闇を開けてみたような系統の怖さです。クリアまで30分もかからないので、気になったら是非。

というわけで、さっそく魅力的な点など。

 

 

 

かわいいドットと色づく表現

 

部屋にぽつんと置かれたぬいぐるみ、一色の少女達、シーンごとのテーマが決まった背景などなど。グラフィックはどれも可愛く、またタイトルにもなっているように“色”の使い方が絶妙です。

説明無しで放り込まれるこの世界ですが、やることは「はなしをきく」ことだけ。進むうちになんとなくこの作品のルールがわかってきたところで、それを見透かすかのようにドンと突き落とされる。見てわからせる力の強いゲームでした。

 

 

 

独特の台詞回しと言語センス

と、上では書きつつ、テキスト面のセンスも抜群です。この言い回しはこの作者様しかできないだろうと思わされるパワーがあります。

一見して電波に見えそうな台詞も、読み進めていくうちにピンと思い当たるものがあったり。精神的に不安定な夜中に考えることって案外誰しも同じなんですよね。ネジが外れたかのような陽気さで語られるのがまたうすら寒いものを感じさせてくれます。ぞくぞく。とってもツボでした。

明確なストーリーはありませんが、考察要素はちりばめられているので想像が膨らみます。何よりぐさりと心を刺してくる台詞の一つ一つが強烈なので、テキスト重視の方も是非やってみてほしいところです。

 

 

 

ツクールの機能を全振りした演出力

 

テキストやドット絵は勿論のことながら、他の細かい点でもさりげなく演出が凝っています。例えば操作キャラの歩行速度や文字表示の仕方、訴えかけてくる背景画像など。

映像でわかりやすく脅してくるホラーはよくみかけるけれど、こうやってあらゆるシステムを駆使して演出してくるこの丁寧さは滅多に見られないかと。それでいてシンプルにまとまっているのもまた、短編らしいやり口で素敵です。

一本道だけど何度もプレイしたくなるのはひとえにこの演出力のおかげだなー、なんて。

 

 

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

ちょっと躁鬱な気分の時、やらかした過去を思い出したせいで頭を壁に打ち付けて死にたくなるような気分の時にやりたくなる良作でした!

追記では考察もどきやネタバレ込みの感想など。

 

 

 同じ作者様の他フリーゲーム感想記事↓

shiki3.hatenablog.com

 

 

 

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フリーゲーム「四塞の恋事」感想

「どれからでもいいと言われると逆にとっても悩む」
けど結局全部おいしかった前置き。

 

えー、今回は児戯ズムさんとゆうあかりさんところの共同制作によるフリーゲーム四塞の恋事」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

ジャンルは乙女向けノベルゲー。

小粒でぴりりと辛い4作をまとめたヤンデレ短編集です。
“あの”二サイトの共同制作と聞き、喜びのあまり立ち上がってしまったのは私だけではないはず。いやー今回も期待を大きく上回ってくれる良作でした。

 

 

というわけで各話の感想を。
ネタバレ匂わすところもあるのでご注意を。

 

【メッツァペラタ】

実はプレイし終わるまでこちらがゆうあかりさん全担当のシナリオだと思い込んでいました。違った! でもこういう取り違えをしてしまうくらいお二人の息がぴったりというか、雰囲気にまとまりがある気がします。
相手の無邪気な一面が行動に表れていて、人より格上の立場としての傲慢な一面が口調に表れている印象。この二面のギャップにずぶずぶ落とされるお話でした。

 

 

【少女の瞑目、男の謀略】

この話がいっちばん大好きです!!!
「お嬢呼び」「爪噛み癖」「エセ敬語」そりゃもうツボでした。あのね、本当大好きなんですこういうキャラ。惚れます。謀略の言葉にそぐわぬ丁寧な絡め取りっぷりも悶えました。
それに、あの「バカ」ですよ。たった一つの「バカ」にこれほどの表現の幅があるのかと。詰まった想いに痺れました。ヒロインも本当、一途で“バカ”なんですよねぇ。とっても好きです。
衝撃的な真実にガツンと頭を殴られるタイプの鬱展開も好きですが、こういうゆったりと薄氷の上の幸せを噛み締めるタイプの鬱展開も萌えるんだよなあとしみじみしました。この生活を延々と続けてほしいです!ほのぼの()!!

 

 

【少年陛下は本気なようです】

末恐ろしいヤンデレショタに翻弄され――るかと思いきやヒロインのほうが強かった!? いやーあの展開には驚かされました。
最強メンタルのヒロインもいいものですね! 女の子らしく悩んだりへこたれたりするところも見せつつ、踏ん張る時は思いっきり喝入れて開き直る、この強さに惚れ惚れでした。

 

 

【失望世界の虚心希望】

冒頭からハードモードな中、さらにずぶずぶと落ちていくお話でした。
他作を多くプレイしている自分としては、「ああいつものゆうあかりさんだ」と安心できるところもあり。あとこれはちょっと変な楽しみ方かもしれませんが、ほんのり民俗学っぽい萌えを感じるところもありました。
聖女キャラや、心折れるシーンはよきものですね!

 


とまあこんな感じで。
ヤンデレ好きにとってはまさに宝箱な一作でした!

 

 

 

同作者様達の他共同制作フリーゲーム感想記事↓

 

shiki3.hatenablog.com

shiki3.hatenablog.com

 

単独作品についてはリンクを貼り切れないため、

ミギキマ様の他作品は「児戯ズム

きるえ様の他作品は「ゆうあかり

で画面右柱のブログ内検索をどうぞ!

 

フリゲサイト「和製オフィーリア」BL作品感想

 「二人だけの世界とは同一体に限りなく近い」

ベン図書こうぜベン図な前置き。

 

 

えー、今回は和製オフィーリアさんところのフリーゲーム「rainline」「夢の通い路」「或いはアイラブユー」「黒猫know」「黒猫芝居」「dogs.1」「dogs.2」「カムパネルラ」「lima」「崩壊LSD」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

で、以前こちらのサイトの感想記事を上げた時も書きましたが、どうもこちらのサイト様は移転(閉鎖?)されたようです。

この記事の原本を書いたのがなにせ一年前なので、DLをちょこちょこ推奨したり熱く語ったりしていますが、現在はおそらくDLできません……。

 

以上ご了承のうえでお読みいただければ幸いです。

 

 

 

 

 

『rainline』

 

[概要]

私がプレイしたのはver2.1です。readmeの履歴を見たところ、どうやら前のバージョンだと色々システムが異なっていたらしいんですが、このバージョンでは選択肢ありのビジュアルノベルと捉えて良さそうです。ドロドロ心理描写が魅力のBLものでした!

 

[ストーリー]

Sの自殺に関わっていた可能性のある5人が、2日間の軟禁生活を送ることになる……と、あらすじはこんな感じになるかなあ。サイトの紹介文的にサスペンスな犯人当てものが来るかと思いきや、心理描写を中心に彼らの関係性の謎が解き明かされるような展開になってました。が、それが悪いかと言えば全然そんなことはありません。

ピュアな恋心とドロドロした嫉妬、その他いろんな感情が一人称で綴られていくのは読んでいてとてもぞくぞくしました。

 

 

[キャラクター]

単体だと花村君がお気に入り。なんというか、表面上まともそうに見えて実は不器用な生き方してるようなキャラクターが好きなのです。

Sの奇行自体は噂で語られることが多くて、メインとして彼が動く時はしっかりしてる描写が多かったので、どうしても正気の時の印象が強いです。でも、こうしてまともな状態をたくさん見られるほうが「なのにどうして」といった感情が芽生えて良いのかもしれません。

 

で、BLゲーなのでせっかくですしカプ萌えもしたいところ。ビビっと来たのは見崎×本庄ですね!!執着エンドにはやられました……誰も報われなさそうな展開がとても好き……。

エンディングでは凛のエンドが好きです。ラストの台詞がずるい。あれは惚れざるを得ない。本庄の心情を考えると実に複雑ですが、それもそれでぐっときます。また、おまけでの、身体とこころについての独白も印象的でした。

 

 

[システム・グラフィック]

シンプルなカットインが入ったり、キャラ名が章名になっていたりして、視点変更はあるものの読みやすくなるよう配慮がしてあります。おかげですんなり読み進められました。

周回するとOPがスキップできるのもありがたいですねー。内容は前述の通り心理描写メインですが、群像劇に近い構成も楽しめるかと思います!

拝見したところ、一部でかの有名作『こころ』をモチーフにしているようなのですが、いかんせん私はあの作品を理解しきれていないので……好きな方が読めばさらに魅力が増すのかもしれません。

 

 

[一言]

複数人の想いが絡み合うようなドロドロストーリー好きな方にオススメ。

 

 

 

『夢の通い路』

 

[概要]

ラストに分岐があるものの基本一本道なBLノベルゲー。絶望して身を投げかけた小説家志望の主人公と、不思議な少年が出会うお話です。切なくて儚い雰囲気が印象的な一作でした。

 

[ストーリー]

挫折や落ち込みがリアルで、けっこう身につまされるところがあります。あはは……。

この手の話は結局夢を取り戻したよやったー、な展開になりがちですが、この作品はそこを軽視せずにきっちり一度落としてくれるのが好印象でした。また、選択によってはどちらとも取れる帰結をしてくれるので、現実はシビアだよ派も夢を見たいよ派も満足のいく内容だったなあと思います。

初めてあの鶴を知ったのですが、いやー、ロマンがあって良いですねぇ。テーマがわかりやすく、読みやすい短編でした。

 

 

[グラフィック]

攻略対象、と言っていいのかわかりませんが、相手は少年ということで可愛らしい雰囲気の絵柄がよく似合ってます。うっかり手を出すと(年齢的な意味で)危ない感じもあって実に良いです。

 

 

[一言]

はかない幻想系がお好きな人向け。

 

 

 

 

『或いはアイラブユー』

 

[概要]

ver1.0をプレイ。分岐選択一切無しの一本道BLノベルです。属性としてはヤンデレ×クーデレ、な印象を受けましたがどうなんでしょう。とにかくヤンデレがいます。やったね!

 

[感想]

ラストの陰鬱な雰囲気がとても良い! とにかく一番はこれです。

他に向けて開いていた朔多が、物語が進むにつれてどんどん司と二人きりの方向へ閉じていくのもたまりませんでした。破滅しか予想できない二人ボッチいいよいいよ~。

気になったところとしては、回想シーンが地続きなので過去形に見えなくて違和感があるくらいでしょうか。背景画像とか画面の色味を変えると良さそう。

日常パートの、だらっと軽薄に見えて実は凄いことを喋っている、あの何ともいえない雰囲気も良かったですねぇ。独特な淡々感というか。これはやっぱり司のキャラによるところが大きいんだろうなー。

案の定、司がすごくお気に入りです。

何回も読み返したくなる一作でした。

 

[一言]

鬱展開やヤンデレ、暗い雰囲気が好きな方にオススメ。

 

 

 

『黒猫know』

 

[概要]

過去作品を2作まとめたシリーズもの、とのこと。愛され主人公のBLもので、ゆるーい日常と意外な真相が楽しめます。

 

[黒猫歌舞伎1]

こちらは中学生編。初めは、今までの作者様の作品と違ってほのぼのな雰囲気だなーと思っていたのですが、真相の毒にやっぱりなと頷かされました。欲を言うなら、飛鳥の蝶よ花よな扱いに異常なものを感じるので、彼が人間らしく見えるようにもうちょっと敵対して欲しかったなあというところ。自然と庇いたい・守りたい体質に見せたいのはわかるんですが、うーん。

それでもストーリーはやはりビターに良くて、真相とサブタイトルががっちり嵌まって思わず膝を叩きました。上手い!

 

[黒猫歌舞伎2]

一方小学生編。1のほうで気になっていた事故の話かと思いきや、まったく別の方向でトラウマを受け付けられる話でした。事故自体はおまけの後日談として収録されているので、気になっていた分嬉しかったです。本編とおまけを合わせるとなかなかのボリュームかと。

通常ルートはリアルにありそうな学級騒動で、当時を思い出してしみじみしました。八戸さんみたいな子、本当いますよねぇ。あるある。そしてトゥルーエンドでは、ちょっと置いてけぼりになったのは確か。どうも兄サイドのお話が別作品としてあるようなので、その伏線と思っておいたほうが良さそうな感じでした。

 

 

[キャラクター]

 

飛鳥:

総受け主人公の中でも姫扱いされるタイプ。態度だけは徹底して自己犠牲に走っていて、思考も極端にお人よしなのが気になります。事故のせいかと思いきや、おまけエピソード後編を読む限りけっこう最初っからこんな感じのご様子? 色々ルーツが気になるキャラですねぇ。

水島:

推しキャラ。長髪の理由がたまらんかわいいです。

田中:

唯一の癒し。あほのこ設定なりにけっこう難しい言葉も知ってるのがまた、漫画の知識からっぽくて面白い。

中尾:

共感したくなるキャラ。前述しましたが、やっぱり憎悪に振りきれてほしいです。けど葛藤する君が一番輝いてる気もする。

栃:

対飛鳥のみ姫キャラ化するツンツンさん。生きにくかろうなあと思います。

兄:

溢れ出るラスボスオーラ。こちらも弟同様態度が極端なので、サイドストーリーが気になるところ。

橘先生:

初めは「あの言動で先生ってのは無理がある」と失礼ながら思っていたのですが、ラストで見事にこの不満が回収されて土下座しました。甘かったです。申し訳ない。これまた過去の色々が気になるキャラ。

 

他、サブキャラモブキャラにも皆立ち絵がついているのに驚かされました。丁寧だー。

 

[一言]

主人公総受けやほのぼのとシリアス両方楽しめる方向け。

 

 

 

『黒猫芝居』

 

[概要]

『黒猫know』の次作、高校生になった飛鳥達の話。今回はなんと3つもの事件を解決に導くということで、長さも重みもたっぷりな一作になっていました。個人的には、一つ一つの事件で良い具合に一区切り入れられてプレイしやすかったです。

 

[ストーリー]

まず、見どころとして挙げたいのがミステリ研の暗号!

単純にアナグラムだったり人から話を聞いたらすぐわかったりするパターンではなく、実際にメモなり何なりに書かないと解けない暗号です。資料を見比べて推理していくのもまた、ミステリって感じで燃えましたね~。

ちなみに私は中尾君の力を借りました。ありがとう、君がいたから解けた。

 

さて、心理描写のほうも良い具合に愛と執着と依存がどろどろと詰まっていて大変萌えました。特殊エンドの、明らかに闇の方向へ突き進む感じがとても好き……! 主人公の飛鳥や栃だけでなく、サブキャラ同士の因縁があったり、逆に後日談でのほっこりエピソードがあったりするのも良かったですねぇ。登場キャラが多いぶん、色んなところにドラマを感じられました。

これに限らず、三つの事件が一つの点に収束していくストーリー構成も実に良かったです。BLでメインとされる心理描写だけじゃなくて、大元の物語もきちんとしているのが好印象でした!

 

 

[キャラクター]

今回は登場キャラが多いので、気になった子だけ。好きな部分も批判もごたまぜなので、ネガティブな感想見たくない人はスルー推奨

 

青戸:

淡野先輩は飛鳥よりむしろ村上のほうに頼ってるみたいだし、攻撃するなら村上に対してじゃないと筋が通らないのでは……? と、思っていたのですが。あくまで自分の手を汚したくはないタイプに見えるし、柊を動かすためなら多少対象がずれても飛鳥に行かざるを得なかったのかなあ。というかミス研さえ壊れれば別にいいやって感じ…?うーん。行動思考はちょっと理解しきれていないんですが、表飄々裏どろどろなキャラは好きです。あと立ち絵の隙のない笑顔が良い!

柊:

前作ですごく好みなタイプだなと気になってはいたのですが、いやはやここまで大活躍してくれるとは。とても嬉しかったです。青戸と話してる時は気を許してる感じというか、ちょっと口調が砕けてるのも良いですねぇ。前日談のねちこい感じもたまらんです!

飛鳥:

自立する、一人でやっていく、と言っている割にやっぱり相変わらず周りの気を引いてばかり。何かとトラウマが多い子ですが、無理とわかっているくせにむやみにぶつかって人を気遣わせるくらいなら、きっぱり無理・駄目と諦めて別の手段に移るほうがよっぽど自立してるよなあと思うのですがいかがなものか。一人でやらなきゃ!が空回りしてる未熟さを書きたかったのかなあ。ほっとけない危なっかしさが飛鳥の可愛さってつもりで描写されてるのはわかるんですが、飛鳥の優しさや可愛さを表現するシーンが何かとカマトトで当てつけがましく見えてしまうので、色々と打算的に感じてしまいます。構成や描写として感じざるをえないというか。萩原先輩がその辺ガツンと言ってくれるかと思ったけど消化不良。持ちあげられ損するキャラだよなあと思います。

栃:

前までは頭脳面で役に立ちつつも飛鳥に守られる側という印象が抜けなかったんですが、夜間部や律さんなど彼だけで築いた世界がいつの間にかできていて驚きました。知らぬ間に巣立っていた……。純粋に栃の成長は嬉しいです、めでたやめでたや。ちょっとずつ栃なりの人間関係を広げてってくれるといいなあ。

水島:

特殊エンドおめでとう。時が経つごとに彼氏力を増していく感じがしてどきどきします。努力家な面も描写されてはいたけどやっぱり元々ハイスペックでもあるよなあと思ったり。特定力がすんげぇ。

律さん:

何故かさんづけしてしまう。一・二を争うくらい好きです。あの物静かな雰囲気も良いですし、それに反してわりとおちゃめだったり、苦手な物から逃げる子どもっぽさがあったりするのが可愛くて、グッときます。栃に勉強教わってるシーンがさりげなくお気に入り。

 

[一言]

栃・水島推しはとにかくやって損無し、それ以外の方も惹かれるところがあるなら試しに一つの事件だけでも解決してみてはいかがでしょう。

 

 

 

 

『dogs.1』

 

[概要]

上記で取り上げた黒猫シリーズの、サイドストーリー的なシリーズ。黒猫シリーズと違って読むだけのノベルなので、初めてでもとっつきやすいかと思われます。たぶんこっち先でもすんなり読めるはず。

 

[ストーリー]

黒猫のほうからミステリ要素が薄まってどろどろ心理描写要素が濃くなった印象です。閉じた関係に亀裂が走る様な感じ。事件そのものはとりあえず収束するものの、随所に見られる綻びや不穏な伏線に心躍る一作でした。次作に絡む伏線があるのも、またシリーズものならではですね。

弟側と人数や構成は似ていながら、しっかり別の関係性を作り上げているのが良かったです!

 

 

[キャラクター]

主人公の陽琴がかなり男前でしたね!

ダイレクトに犬に見立ててる文章が多いのもあいまって、トップブリーダーのような貫録でした。弟と違って自分でできる範囲で行動してるし、好感持てます。こう、ペットを飼う時には自分が面倒見切れることを保証したうえで~的な言葉が思い浮かびました。

他のメインキャラだと海野がお気に入りですねー。誰に対しても傷つける形しか取れないのが切なくも可愛いです……。

続いて久生もお好き。基本、依存体質の子に萌えます。内気なのかと思いきや、けっこうグイグイ来てくれてこれはこれでグっときました。

 

 

[一言]

犬とご主人様的なものにピンとくる方向け。

 

 

 

 

『dogs.2』

 

[概要]

上記のシリーズ2作目。こちらも読むだけノベル、ミステリより人間関係のごたごた中心。

 

[ストーリー]

今までは一応一作できちんとオチがついて完結している感じだったと思うのですが、今作だけは次回に続くって感じの終わり方でしたねー。どうやら次の3で犬シリーズは終わりだそうなので、クライマックスに向けた伏線になるのでしょう。

1のほうで仕込まれていた目戸についても回収されて、さらにこの作品で入れられて――と、かなり伏線やフラグに凝ってる印象でした。次でどう回収してどう締めるのか気になるところです。

 

 

[キャラクター]

陽琴:

な、なんだか弟化してきたような……? 1での、恩と感じさせないくらいきっぱり人助けする彼が好きだったのですが、今作ではまたあの作為的な人の良さが出てしまっていて残念でした。わざとらしい自己犠牲や鈍感っぷりがもうぶりっこ甚だしくて!もったいない!……まあ兄弟だし本質としては書かれたいのはむしろこっちなんでしょうね……。

岡本:

名実ともに彼氏ですってやったね!いや、岡本自身は飛鳥からの矢印をそこまで求めてはいなさそうに見えるので本人としては不本意かもしれませんが、でも嬉しいです。

久生:

デレ度と積極性が増して、傍に控える形からグイグイ押せ押せになった印象です。可愛い。

海野:

変わらず暗い方向に生き生きしてて好き!飛行機エピソードとても微笑ましかったです。

未影:

こういうキャラが内側のどろどろを解放する展開が大好きです。大好きです。

 

[一言]

どういう形に収めるのか、次が気になるシリーズです。でした……(追記)。

 

 

 

 

『カムパネルラ』

 

[概要]

読むだけ短編さっくりBL。幼馴染とか約束とか、少年期の成長につれて変わっていく人間関係とか、そういう感じ。

 

[感想]

まさにメリーバッドエンドでした。うむ。

独白で語られていく感じのストーリー、きついところもなく、前半は淡々と沈んでいける感じがします。で、ラストは今までのがぱぁっと報われて幸福感溢れてます。

状況として考えると紛れもない悲劇で切なくはあるんですが、全体的に夢見心地な雰囲気だったので、つられてふわふわとした思考になって、二人とも幸せならいいよな~と思うなど。寝る前とかに読みたい一作です。

 

[一言]

お前がいないと生きていけない、系が好きな方向け。

 

 

 

 

『lima』

 

[概要]

読むだけ短編さっくりBL。演劇、俳優、ハッピーエンドなどがたぶん反応ワード。

 

[感想]

少し不思議系で心温まるストーリー。もちろん読んでる途中でもあの俳優の正体は想像つきましたが、それでもつい主人公気が多いなあと思ってしまったのは許して欲しいですw

ノベルをベタ打ち移植してる感あって改行少なめ、オートモードだとちょいリズム合わなくて読みづらいかも。

終わり方が好み。同じ道を歩むわけではないけど一緒にいる、っていうのは個人的にとても好きな形なので、良い具合にまとまってくれて安心しました。

 

[一言]

雰囲気重視の方向け。

 

 

 

 

『崩壊LSD

 

[概要]

パズルありの狂気幻想BL。考察したり、話を自分の中で組み立てたりするのが好きな人向け。

 

ミニゲーム

パズルが難しかった!です! いえ、慣れてる人や手番計算が得意な方は楽なんだと思うんですが、私はどちらかと言うと言語系のパズルのほうが得意なのでかなり時間をかけてしまいました。というか、その、恥ずかしながらこの作品全クリできていません……。おそらくLルートだと予想はつくのですが、行き方がわからない……! クリア済みの方の攻略を切実に求めてます。

(9/18追記 右柱コメントフォームより攻略情報を頂き、無事にクリアができました!嬉しい……!めちゃくちゃ嬉しい……!!!ありがとうございました!!!!

 クリア後の感想は改めて下記にて。)

 

 

[システム]

システムと世界観がかなり嚙み合っていて、まさに“ADV”だなあと感じました。ストーリー重視でもギミックに手を抜かない、そんなノベルゲームが大好きです。

夢うつつな雰囲気が終始漂い、狂った世界を二人だけで行進し続けるこの世界観がたまらなくツボなんですよねぇ。選択肢を選ぼうとすると……というギミックには本当心臓を掴まれたような思いでした。

背景画像やセーブ画面、あちこちにメッセージ性が込められていて、また章ごとに画面デザインも変わるのでどこまでも飽きません。図書室の、夢十夜めいた断片が好きでした。彼の世界には先輩しかいない……。

セーブできるシーンが限られているぶん、章ごとのスタートやリセット、クイックセーブなどの機能が充実しているのも良いところ。回想や再チャレンジがしやすいのはとても助かりました。

 

 

[ストーリー・BL面]

いじめられっ子×飄々とした先輩。狂信じみたキャラは良いものです。先輩が好きだからできない、というのと、先輩が好きだからやってみせる、というので揺れ動くさまが最高でした。人殺しの倫理的抵抗は眼中外であり先輩を害すること一点が引っかかっているというのも狂気じみていて萌えます。

私は閉鎖空間でヤンデレが延々と迷い続けるような展開が大好きなので、まさに理想でした。

時系列も夢も現実も妄想も全てがごちゃ混ぜになって断片として散りばめられているので、それらを紐づける楽しさもあります。自分がどこにいて何を読んでいるのか、混乱しつつも多幸感でいっぱいにされるこのプレイ感覚はまさに麻薬的で悪夢のよう。夢中で最後まで読みふけった一作でした。

 

 

[9/18追記 完全クリアに寄せて]

本当ね、最後の最後までシステム面とストーリー面の噛み合いに驚かされた一作でした。

エンドリストも美しすぎる……! 夢現をさまようみたいなあのプレイ感覚も楽しかったので、改めてどれがどこかわかる脳内回想機能に思わずガッツポーズしました。

 

「先輩のため」とかじゃなくて極論の根本は「渡したくない」なのがすごくBL的で良いですよね……。暴力から救い出すのが単純な正義となるのではなく、先輩の抜け出せない心の鎖やら葛藤やらを余すところなく書き上げたうえで、あの場所に辿り着いたという構成がもう好きです。好きです……!

虐待描写と愛情のすり替えがとても丁寧に書かれているので、手を伸ばしたいのに伸ばしきれない、この歪な感じがよく出ていたなあとしみじみ感じました。

あらすじだけ取ると知らない人からすれば手段を間違えただけの麗しい話なのですが、その裏は二人だけの愛に満ちていると言うのがこう、たまらなく、たまらなく萌えます。最高です。やはりBLは関係性が第一……。

 

パスワードまで凝っていて、こう、打ち込む時にひゅっと息を呑む感覚があります。あれはずるい、大好きです。

時々引っ張り出してプレイするゲーになるんだろうなあ。

 

[一言]

斬新で狂気的で夢見心地、二人にしか通じない世界が満ち溢れている一作。

 

 

 

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フリーゲーム「狂骨」感想

「恐怖は目と目の隙間から来る」

ホラーの雰囲気作りってかなり難しそうな前置き。

 

 

 

えー、今回は凍土博覧会さんところのフリーゲーム狂骨」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

ウディタ製の短編ホラーゲーム。追いかけっこあり、謎解き難易度は高め、音で脅かすタイプの仕掛けはありません。じわじわくる不気味さを堪能するタイプのホラゲです。

というわけで魅力的な点についてあげていきますね。

 

 

 

セピア色と旧字体が織り成す明治の世界観

 

まず一番に見て頂きたいのが注意書き!

いやぁreadmeや取説に目を通すのは当たり前なんですが、こういうところから既に雰囲気が出てると没入感が違いますよね。

他にも、常にゲーム画面を覆うセピア色、少し胡散臭い宣伝混じりの張り紙、掲示物の文字順が反対なところや婚約者云々の設定と言い回しなどなど。あちこちに醸し出される明治らしい雰囲気にぞくぞくしました。

 

 

 

妖怪好きには涎もののギミックや引用

 

かの鳥山石燕大先生の妖怪図が引用されているように、妖怪好きならニヤリとくる場所がたくさんあります。雰囲気作りとしてだけでなく、謎解きのギミックになっているのがまた好ポイント! 風の神の仕掛けに気付いた時はテンションが上がりました。

なお、ゲームの必読等には書かれておりませんが作者様が京極夏彦ファンを公言されている通り、こちらの作品は「京極堂シリーズ」の影響がかなり強く見受けられます。が、単なるオマージュに留まらず、しっかり“ホラーゲーム”らしい味を出してあるのが本作の素晴らしいところ。これは前述したギミックに加えて、あの静かに襲い来るようなOPを見れば伝わるんじゃないかなと思います。

 

 

 

真相の影を色濃くする断片情報

 

さらに興味深いのが情報の落とし方。

新聞記事や博物館の説明書きなどの事実関係と、日記などの思わせぶりな文章が組み合わさって、最後にガチリとピースがはまってくれます。もうこれが気持ち良くって! 探索した分だけ見返りが出てくる感じで嬉しかったです。

また、作中で操作キャラ変更や視点切り替えが起こる時もあるのですが、別視点中も各キャラが動いて物語が進行しているのがわかるのも面白いところ。それぞれのタイムラインとか作ってみたら楽しそうだなあ。

あ、と言っても群像劇のように複雑になっているわけではなく根幹はシンプル、身がまえる必要はありませんのでご安心を。

 

 

 

 

一方惜しかった点としては、

 

 

 

 

一部ストーリーの展開

 

京極堂シリーズ好きな自分としては、一部の真相や後日談があまりにそのままに感じられて少しだけ残念でした。でも、前述の通りお話の全体像はかなり骨格のしっかりしたものです。それこそ未読の方は全く気にならない点かと思います。

 

 

 

もう少しを求めたくなる音響面

 

まずキークリック音、これがデフォルト音なのが非常にもったいない! 視覚面と内容面で良質な不気味さを醸し出しているぶん、ここも是非こだわって欲しかったところ。

そしてBGM、曲自体はお洒落なものが多かったんですが、博物館・明治時代・校舎などの印象とはちょっとズレがあるように感じてしまいました。序盤は和テイストなものから選んでも良かったんじゃないかなーと思いつつ、明治の洋風文化を意識してあえてやってるのかなあとも思いつつ。

 

ぐだぐだ書きましたが、雨音の使い方や最後の間に入った時のBGMが流れるタイミング、あれは本当震えるほど素晴らしかったんです。だからこそ、贅沢ながらもう少しと言いたくなってしまいました。

 

 

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

セピアで明治な世界観や、妖怪のどことなく不気味な雰囲気、細かな情報が繋がっていくストーリーなどに惹かれる方へオススメです。

最後に、ネタバレ込みの感想をほんの少しだけ追記にて。

 

 

 

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フリーゲーム「Complex Labyrinth」感想

「気にする姿が一番かわいい」

成長を見込めなくさせていく罠な前置き。

 

 

 

えー、今回はAntiCさんところのフリーゲームComplex Labyrinth」の感想を書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

ジャンルは短編乙女向けノベルゲー、選択肢分岐でエンドは10種類。ヤンデレな展開もあります。やったね!

フリゲではありますがZIP解凍のタイプではなくインストールが必要な作品なので、ちょっと初めの一歩は踏み出しにくいかも。けど、数時間でコンプが可能なお手軽ボリュームなので、気になった方は試しに、なんて。

 

というわけでさっそく魅力的な点など。

 

 

新米成長物語をメルヘンで包んだ独特の世界観

舞台は童話の世界ですが、童話の登場人物を“役者”に見立てていたりヒロインが“マネージャー”に近い立場だったり、お話自体はどちらかというとお仕事ものの印象が強いかもしれません。

特にお仕事中のヒロインの動きがリアルで印象的でした。ちょっと要領が悪いんだけど、事前に準備できるところでは有能さを見せるこの感じ。ヒロインの得意な面と苦手な面とが両方伝わってきて好印象でした。

特に要領の悪さは自分にも思い当たる節があり、苦い顔になるところもありつつ……w 共感はできて感情移入しやすかったです。

勿論、ファンタジーらしい設定や異種族ならではの小ネタも随所に出てきているので、メルヘン要素もばっちり。ドイツ系の料理が多かったのもさりげなく雰囲気が出てて良かったです。

 

 

それぞれの抱くコンプレックスをときほぐしていくストーリー

キャラごとのエピソードとしてメインになるのが、人種による差別や偏見など、タイトルにもなっているコンプレックス面。それに加えて共通ルートでは、ヒロインの家柄やストーリーテラー協会に関わるちょっとした事件が絡んできます。

全体に一本筋の通った話があるおかげで、共通ルートのまとまりも良くてすっきりした印象でした。口説かれたりときめいたりと乙女ゲーらしい糖度も含みつつ、根本のストーリーも重視されているのが素敵。こういう、共通ルートでお話としてハラハラドキドキさせられる作品は久々だったように思います。

 

  

 

美麗でまさに乙女ゲーらしいグラフィック

そしてまず目を奪われるのがグラフィック面! キャプチャ画像やスクショを見てDLしたという方も多いのではないでしょうか。

特にヨシュアは見た目がお話のキーになることもあって、細かな瞳の変化が見ていてとても楽しかったです。キリアがしょんぼりすると耳まで凹むのもきゅんときました。

立ち絵やスチルだけでなく、おとぎ話な世界観に合わせたクラシカルな枠やシステム画面なども、さりげなく魅力的な点の一つです。

 

 

 

驚きのフルボイス

なんとサブキャラまであますところなく声が入っている豪華仕様でした。メインのキャラについてそれぞれ感想を書くと……

 

ルゥは弱気なシーンでも元気いっぱいな声だったので、ちょこっと力が抜ける時もありましたが……一貫した演技をしてると思えばむしろ凄いのかも。

ベルは初め聞いた時かなり声が低くてびっくりしたのを覚えています。優男っぽいふんわりした声なのかと思っていました。が、これがあるからこそ彼のコンプレックスにちょっと繋がるような気もして妄想と共ににやついたりも。

 

ヨシュアの中の人はとっても上手でしたねー! 文字で表示される口調はどれもお上品ですが、そこに棘を含ませるか優しさを含ませるかの表現が絶妙でした! 特にデレ期の時や心配してくれている時のボイスは何度でも聞きたくなる甘さで、もう……! まさに聞き惚れました。

 

ここまで書いておきながら、実は真っ先に脳内再生されるのはキリアの「ルゥちゃーん!」だったりします。作中でいっぱい名前を呼んでくれるおかげで、自然と印象に残ったのかなーなんて。

 

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

他にも、ボイスの聞き直し機能やクイックセーブ等のシステム面も行きとどいていて、クオリティの高い一作でした。キリよく綺麗にまとまっているので、グラフィック重視の方やきっちりした作品をお求めの方にオススメします。

基本は明るめですが、バッドエンドがほんのりヤンデレちっくだったりするので、そういう意味でもオススメ。

 

追記ではネタバレ全開の感想など。ご興味ある方は右下よりどうぞ。

 

 

 

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フリーゲーム「My gray hugger-muger」「昨日森口が死んだらしい」「asylum」感想

「観客がいなければ彼らの物語は知られず終わっていた」

そして知られど結末は変わらない前置き。

 

えー、今回はハラワリさんところのフリーゲーム「My gray hugger-muger」「昨日森口が死んだらしい」「asylum」の感想を書きますね。一部レビューぽいかも。

どれも短編のノベルゲーで、単品で楽しめます。うす暗い世界観が好きな方向けのラインナップです。

 

 

 

 

『My gray hugger-muger』(男女・近親相姦)

[概要]

兄から妹への濃厚な想いを描いたノベルゲー。一本道ながらプレイには2時間少々かかりました。18歳以上推奨とあるように、性的な描写も含みます。かなり近親ネタが好みの方ならもう、激しくオススメしたくなる一作でした。

 

[シナリオ]

とにかく、描写と話の流れが丁寧です。手をつなぐ、兄としての境界線に気づかされるシーンと、「良かったな」と言ったあと部屋にこもるシーンでは思わず息を呑みました。単に心理描写を重ねるだけじゃなくて、仕草や耳鳴りなどの感覚の描写も合わせている辺りが凄いなーと。こういう文書けるようになりたいものです。
で、しっかりした描写力に加えてもう一つ挙げておきたいのが会話のテンポです。
家族間とか友人に対してとか、作中の会話がすごくリアルなんですよね。それこそ御近所で聞けそうな感じの。現代ものの会話シーンって、ラノベ調やら台本ふうになりがちだと思うのですが、ここまで日常感あふれるだべりっぽさを出せるのは流石の一言です。
あと、間の使い方が上手い!終盤の感動シーンでは、語り過ぎない「うん」に全てが込められていて、とてもじんときました。

 

[グラフィック]

この手のはコラージュって言い方でいいのかな、色んな色が滲んで混ざって、しかもその加減が絶妙で、お洒落な雰囲気が出ています。クリア後のおまけページがBGMも相まってすごくかっこいい……!
シーン切り替えで出てくるタイトル字とその背景が、ストーリーの行く末を暗示しているようで、それだけでどきどきしました。
なお、立ち絵こそありませんが、代わりにスチルでキャラクターの外見が確認できます。ふみちゃんが想像以上に活発な見た目でびっくりしました。和氏が追い詰められてぐるぐるしてるところのスチルが印象的です。

 

[一言]

近親ネタが大丈夫なら是非やりましょう。嫉妬、独占欲、家族愛、背徳的などがキーワードです。

 

 

 

 

 

『昨日森口が死んだらしい』

 

[概要]


20分ほどで終わる短編ノベル。選択肢はあるものの一本道で、淡々と皆の噂話を聞いていく感じのゲームになります。公式サイトに「「ん?」と思いながらプレイするのが正解です。」と書かれておりますが、まさにこの「ん?」が面白いゲームでした。

 

[ストーリー]


とにかく、タイトルの通り。これが全て、シンプルイズベスト。
地の文はほとんどなく、ほとんどのシーンが「噂話」の形で語られていきます。学校の閉塞感と言えばいいのか、その無神経さがぐさぐさくる良質なつくりです。
勘の良い人は真相まで一気にわかってしまうかも? でも、わかっても冷めることはなく、むしろいっそうどんよりとした気分でゲームを楽しめました。
改めて読んでいると色々伏線もあり、最後で「ああ、なるほどな」と納得できる、良いまとまりっぷりです。

 

[世界観]


画面や音楽なども、お話に合わせて全体的に暗い雰囲気を漂わせています。鬱展開らしい、気だるい感じがたまりません。聞くのはあくまで噂話だけなので、観客というか、盗み聴きする第三者な気分でプレイできるのも新鮮でした。

 

[一言]


さくっと短編で、どんより暗い、なんとも言えない読後感が魅力の一作です。

 




『asylum』(BL・病院)

[概要]


非人道的な内容を含むBL一本道ノベル。おまけ含めフルコンプで1時間くらい。BLとありますが、告白や性的接触はありませんので、ブロマンス系が好きな方だとかなりぐっとくると思います。注意事項を読んで大丈夫そうなら是非やって頂きたい、とても好みの一作でした。

 

[シナリオ]


主人公の、ぼんやりと退屈な病院生活から話は始まります。プレイ中は何気なく読み進んでいましたが、負の衝動がほとんどなかったこととか、単に退屈って読めてしまう時点でよくよく考えると相当――。うん……。
色がついた、と言えばいいのかな。彼が訪れた時の、世界が開ける感じがすごく好きです。
じわじわなつく感じと、彼の寂しげな笑顔が忘れられません。この手のうす暗い雰囲気と箱庭世界なもの大好きです。

 

[キャラクター]


とにかく主人公がお気に入りです。なんといえば良いのか、ああいう無垢な感じの受け好きなんですよね……。ひな鳥の擦りこみができるタイプというか……。
彼、の方も穏やかのピリピリの差が激しくてきゅんきゅんしました。いや、作中で彼と会う人はほとんどが憎むべき相手とかその関係の人なので、態度の違いも当たり前っちゃ当たり前なのですが。主人公以外は興味薄なタイプだと萌えるなあと勝手に妄想。
サブキャラクターもほどよく存在感がありましたし、良い動きしてるキャラが多かった印象です。

 

[おまけ要素]


アフターエピソードは絶対に読むべき!!!
と言い切ってもいいくらい、最高に萌えました。
主人公視点で進んでいる時は、感情豊かで子どもらしくて可愛いなーと感じていたのですが……立ち絵を見てひゅっと息を呑みました。まさかそんな顔をしていたなんて……。主人公を見た時の彼の気持ちが今さらになってひしひしと感じられます。そりゃ見た瞬間寂しい顔もするよね……。
お名前が???の研究員さんは、辞書をくれた人なのかな? 研究員が病状について説明している時、さりげなく、「あれが原因ではないと思うんだが~」みたいに自分の責任から逃れようとしていたのがなんだか印象的でした。そこかよって思われるかもしれないんだけどそこなんです。罪悪感持ってるからこそああいう言い方しちゃうんだろうなーっていう。それで彼がイラっときたんだろうなーっていう。なんだろう、あそこでモノローグとか入れて長々せずに、あの一つのやり取りでぽろっと本音が零れ出た感じを出せるの本当良いよねって思いました。
読んでいる時に気になっていた、カタカナ混じりの表記についても補足があって納得です。

 

[予備事項]


asylum:保護施設、亡命 
phobetor:ギリシア神話関係。悪夢を産む。
morpheus:ギリシア神話関係。意味のある夢、というか、比較的理解しやすい現実的な夢を産む?
タイトルがぴったりすぎて震えました!

 

 

 

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