うそうさ〜第二号室〜

フリゲ・鬱展開・ヤンデレ 万歳!

フリゲサイト「Take it easy!」2作品&SS感想

「なんかとりあえずキスでもしてみっかってノリで」

かましていかないと倒れてしまう前置き。

 

えー、今回は今回はTake it easy!さんところのフリーゲームSay!(言わなくちゃ!)」「恋人はじめました。」およびサイトで公開されている小説の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

ゲームのほうは分岐ありの短編ノベル。小説のほうはどれも数分~数十分で読み切れるショートショート。相互に関係しているようなしていないような感じですが、他作品をプレイしてからだとより楽しめる要素も多めです。

 

というわけでラインナップは以下の通り。

 

 

『Say!(言わなくちゃ!)』

[概要]

元旦に先輩へ告白したいラブコメ短編ノベル。エンド分岐あり。男性視点。両片想い。

 

[感想]

にやにやが止まりませんでしたね!

勢いに任せて初手で好きだと叫ぶも良し。もだもだ照れ照れしながら進み切れずにヘタレるもよし。二人ともが赤面してあわあわする姿がもう可愛かったです。

主人公の僕が決して男としてダメなわけじゃなくて、送る送らないのシーンで照れを言い訳にせずきちんと先輩のことを想って強気に出るところがこれまたすごく良かったです。男らしいヘタレ!

くっつきそうだけどくっつかない、いやくっつけ! な気持ちをとくと味わえて、短めながらもほんわかするプレイ感でした。

 

ちなみにこちらがお好きなら彼のお姉さんが出てくる、これまたキュートでにやにやな『キミとKISSがしたいのだ!!』もおススメです。

 

[一言]

背中を押したくなる可愛いラブコメをプレイしたい方向け。

 

 

『恋人はじめました。』 

[概要]

らぶで明るくて初々しくて相思相愛だぜー、なゆるいBLノベル。ツッコミ不在。

 

[感想]

冒頭から独特の雰囲気で始まる、ゆるくてズレてるほのぼの会話が一番の魅力です。駆け引きとか黒い気持ちとかが全く無くて、もう、お互いがただただなんかめっちゃ好き。でも熱くはない。好きではある。そんな感じ。

会話の掛け合いがすごく良いんですよねぇ。

あと、「中学生」「初恋」感がものすごく出ているところもポイント高いです。行くのはカラオケ・ファミレス・マック。思いつくシチュエーションはどれも漫画みたいなロマンティック展開で、とりあえず思いついた恋人っぽいことは全部やりたい。そういう、なんだろう、初めてのうきうき感や背伸びしたいお年頃な感じに癒されました。

想い合うっていいよねえ。

 

一部のシーンや後日談では『Share』な雰囲気の例の二人が出てきます。知らなくてもそういう関係の誰かなんだなあで差支えはないはずですが、知っている私は思いっきりにやけました。ふふふ。

そう、二人の独特の笑い方もすごくいいですよね。つられて笑っちゃいそうになりました。

BGMが極端に小さいのは変わらずなので、ボリューム高めで。

 

[一言]

幸せのおすそ分けを貰えるゲームだなあと思います。ほのぼの!

 

 

Web小説感想

最後に、サイト内の小説について。こちらはネタバレも伏字にせずオープンに書く感想です。

読んだ順。

 

『ごぽごぽ』

小説説明文に「ヤンデレ」とあったのでまず手を付けました。小区切りのマークがすごい好きなんですよね、シンプルに泡。こういう、純朴な子が囚われたり、二人で閉じていったりする話が大好きです。

 

『ゴリラくんと私とときどき苺』

少女漫画にありそうな雰囲気、の中に血という異物が混ざっているところが気を引くなあと思います。読者のほうも「え、」って感じて終わるので、なんだか綺麗に繋がってていいなあと思います。

 

『土曜日アフタヌーンティー

なんとなくカミサマの具合は察せれるんですが、それを作中で一切突かずに、カミサマのままでにっこり終わらせてくれるところが大好きです。氷を噛み砕くところのくだりがすごく、なんだかかわいくて優しくて好き。

 

『千本分の春』

最後の一文の殺傷力が本当に強くて、ちぎれそうな気持でいっぱいになりました。切ないなあ悔しいなあ。直前の、レイさんの想いの濁流とそれに差し挟んでいく彼のセリフの書き方が本当に素敵で、そこからシンプルに短文で落とすの本当上手いなあと思います。最後の一文がどこにかかってるのかとか、どうしてとか、考え出すと色々解釈できる余地があって、でもなによりもやっぱりレイさんが恨めしやなところが肝心要なのかなーとも思いました。

 

『青春起承転結』

作者様の持ち味の一つ(だと思っている)、会話のテンポの良さが出てる明るい話。本当に起承転結してるし、web小説ならではの表現が素敵。

 

『caffe latte』

意外なところで知ってる人が出てきて二度読みしました。おおう。そのほかちらちらと顔を出す人たちといい、今までのゲームや小説のプチ総集編、お祭りゲーっぽい雰囲気の小説だなあと思います。朝からパンケーキ食べれる人はすごい。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

記事書いてる現在(201805)サイトで公開されているゲームと小説は全部楽しませて頂きました。好みの作品がたくさんあるのって心底ありがてぇなあ。

 

始まりは『夏葬』からだったんですが、シリアスもギャグも幅広く、本当に文字通りどれも楽しめる作品だったなあと思います。やっぱり掛け合いや語り口と距離感が好き。

よい出会いができました。恋ってすばらしい!

 

 

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フリゲサイト「Take it easy!」5作品感想

「同じを手に入れられないぼくたちにそれでいいと言わないで欲しい」

どうにかどうしても同相になりたい前置き。

 

 

えー、今回はTake it easy!さんところのフリーゲームAster」「Try!(今でしょ!)」「Share」「しぇあ!」「キミとKISSがしたいのだ!!」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

どれも短編で分岐ありのノベルゲーム。

「Aster」→「Try」→「Share」→「しぇあ!」は明確に時系列順で繋がっており、「KISS」についてはゲストキャラっぽい登場で関連がある作品です。

 

というわけでラインナップはこちら。

 

 

『Aster』

 http://cult.jp/skycat/aster/

[概要]

一定時間以上離れることができない、びょーきの話。男女幼馴染。共依存。シリアス。

近年プレイしたフリゲの中で一番好きかもしれません。

 

[感想]

まず発想が好きでしたねぇ。

手を繋いでいないと呼吸すらうまくできないっていうまさに共依存なところ。設定だけみると非現実的にも思えてしまうのですが、カウンセリングや認めない教師、許してくれる大人と遠巻きにするクラスメイトなどを見せることで、だんだんと二人の触れている世界をリアルに感じられるようになっていきました。

そんな現実を見せたうえで、これからどうしていくのかという絶望が立ちはだかるのが大きな分岐点です。

共依存というテーマではあるものの、モラトリアムの終了など、色々と共感しやすいつくりだなあと思いました。

 

ゆーきのことについて。

なんだろうなあ、世間一般で見たら、ヤンデレと評されるかもしれないキャラだと思うんですよ。でも彼のことはあんまりヤンデレって言いたくなくて。弱っている子というか……立ちかけてる小鹿というか……悲壮な感じが辛くて好きです。

初めはカウンセリングの先生の言う「甘えたがり」みたいな評価がピンときてなかったんですが、物語を進めるごとに重く突き刺さってきました。あのざっくばらんとした喋り方も、もしかすると否定を恐れて先に突き放すような感じなのかなー、なんて。

 

 

[ネタバレ]

 

『夏葬』でも語らせていただいたんですが、やっぱりこの作者様は名前欄を使ったギミックが上手いですよね……! ゆーきとあーこの名前が変わるところも好きですし、さりげないところだと、カキモトくんのところも好きでした。

カキモトくんが柿本くん表記になることで、ああ名前もおぼろげだった彼がようやくあやこの中で向き合うべき一人の男性になったんだなあって思って、じんと来たんですよね。

そういうわけなのでやっぱり前向きで変化を受け入れるエンド1-1も好きなんですが。

 

やっぱり重苦しくってどうにかならないものをどうにかできたかもしれないと思うエンドも好きなので、つまり、私のお気に入りはエンド3でした。

ゆっくりゆっくり、丁寧に描写を重ねて、あーこが泣いて縋った瞬間にはっと息が詰まりましたよね。ゆーきはあーこに同じ構図を作っちゃったんだなあって。ゆーきの「ごめん」も色々と深読みができてすごく胸にきます。この瞬間、恋愛の芽だったはずのあーこの気持ちがもう違うものになったんだろうなあと思って、そういう見えないところで消えたものを想うとすごく鬱で、好きでした。

 

初めはゆーきのほうがあーこを好きだと思っていたので、意外な展開でもありましたねぇ。でも確かに思い返してみたら、ゆーきのほうが生存戦略というか、必死なのに対してあーこは一応余裕があるように思えて……。ゆーきは生きるための手段としてあーこを握ってるけどあーこは気持ちの表現として手を握ってるみたいな……。

同じことをして同じものを共有しているのに、なんだか二人の態度がそれぞれ違うように見えるのも、さりげなく自然に上手い描写だなあと思いました。

 

いっぱいいっぱいハグしてる二人が好きです。

 

[一言]

依存の重さとままならなさを噛み締めたい人向け。

 

 

 

『Try!(今でしょ!)』

 http://cult.jp/skycat/try/

[概要]

上述『Aster』で重要なサブキャラ()として登場した柿本君がメイン。しっかりBL。真面目×誘い受けな感じ。シリアスだったり明るかったり。

 

[感想]

時系列としてもAsterの後に位置する作品。

元々柿本君は前作から、自分の本音は一歩引いたところから見せてくるような印象があるなあと思っていたのですが、それが本格的に剥き出しになる感じでした。根アカなんだけど自分に対してだけちょっと雑というか。

そりゃ好きなほう(谷君)からしたらもだもだするよね!と思うところもあり。

初回プレイではこう、ままならない気持ちが全てツンに現れてしまい、見事行くに行けないエンドへ辿り着きました。ごめんなごめんな。

 

掛け合い自体は終始明るめ。ところどころ、ノンケが感じてしまう一歩びくつく気持ちにも踏み込み、好きとしっかり向き合うために重苦しい雰囲気になることも。ですが、最終的には前向きな気持ちで応援したくなる作品でした。

 

[一言]

生真面目照れ屋×チャラっと見せかけた誘い受けの、恋人未満な距離感をじっくり味わいたい人向け。

 

 

 

『Share』

http://cult.jp/skycat/share/

[概要]

上記2作の続編。ルートによって切なかったり明るかったり。メインとなる視点は『Try!』の二人なのでBL中心ですが、『Aster』の二人のその後もしっかり語られます。シリーズ好きな人に嬉しい一作。

 

[感想]

好きの形は同じじゃないといけないのか、ってところに踏み込んでいく良作だったなあと思います。恋愛話でもよくありますよね、相手は湿っぽいけどこっちはドライみたいで心地よい距離感が掴めないみたいな。

今回のメインは「好きなのにできない」、二人が優しく相手を気遣っていて、本当に心から大事にしたがっているからこその上手くいかなさが丁寧に語られます。これが痛いの辛いの愛しいのって。

恋愛相手の性別問わず共通するテーマじゃないかなーなんて。

 

[ネタバレ]

 

キャラは皆大学生になり、距離感も行為もちょっとずつじわじわ進んでいます。特に『Aster』の二人はかなり変わったなあとしみじみしました。

『Aster』をプレイした時、この『Share』に続くエンドってある意味二人の二人にしか理解できない世界が終わったとも思えて、やっぱり少しだけ寂しい気持ちもあったんです。それがこうやって綺麗に、丁寧に良い方向へ変わったんだと語ってもらえたら、あの時の惜しい気持ちもなんだか報われたように感じました。

なんかまあ、私一人が勝手に切なくなって勝手に嬉しくなって良かったなあって思ってるだけなんですけどね!

 

あと、谷柿本の関係がすんなりと受け入れられてるところも良いなあって思って。

思い返せば綾子も柚輝も、「おまえたち付き合ってるだろ」とは言ってないんですよね。なんとなく気づいているし、どことなく事情もわかっているけれど、「応援するよ」とだけ残していく感じ。で、谷も柿本も、「おまえらいつから気づいて……」みたいな話をしないんですよ。気づかれていることをまた受け入れてる感じ。

なんだかここが、すごく、すごく自然で好きだなあって思ったんです。泣きそうなくらい。

どうしても、まだマイノリティって思われている関係性が描かれる時って、過剰になりがちじゃないですか。指を刺されるというか、特別感が際立つというか。そこにスポットを当てるか当てないかで作品の方向性ってかなり変わると思うんですよね。

で、特別な扱いにしんどさを感じているらしき谷や、無理解な人に遠ざけられる綾子柚輝をさんざ見てきたからこそ、こういうふうにするっと入ってくる描写ってすごくいいなあと思いました。

 

こうやって尺を割いて取り上げてしまうこと自体が、なんだか異質だと指さしているみたいで、本当にままならないんですが……。本当、すんなりと入ってくるような優しい距離感の描写だったなあと思います。

 

[一言]

シリーズやったならこれも是非!

 

 

 

『しぇあ!』

http://cult.jp/skycat/share_af/

[概要]

谷と柿本が好きになったら迷わずやろう!な番外編。『Share』の後日譚的な小話が複数。

 

[感想]

起動時のメタメタ小話に笑ってしまいましたw 好き! ちゃんとセーブ推奨してくれるところもファン心理突かれますよね。

そういえば、シリーズ総じてLoadもRoadですよね。私って作者様に直接コメントした際に(私の長文癖やらタイミングやらが悪いんだと思うんですが)そのサイトが閉鎖していく経験を何度かしているのでこちらから作者様に指摘しにいくつもりはないんですが。人生の分岐点みたいな作品が多いですし、彼らの道と取ればそれはそれでオシャレで好きかもなあなんて。

 

余談はともかく。

いやあ、見届けたなあって感じのする、読後感のよい作品でしたねぇ……。

 

本作は短編連作形式、彼らの後日談や綾子と柚輝のちょっとしたこぼれ話などが見られます。各エンドのアフター話もあり、すっかり大学卒業して社会人になった彼らも見られる豪華仕様。

彼らの人生の一部を追って来れたんだなあと思うと感慨深いものがあります。

どの話も会話のテンポがよくて、ゆるーく優しく受け入れ合ったり傷つけあったりしているところが、うん、いいなあと思います。

 

ただ一点、初恋の人関連の話でえらく個性の強い新キャラが登場したのでどうしたのかなーと調べたところ、どうやらこのシリーズとはまた別の作品が絡んでいるらしいです。そっちを先にやっておけば良かったなあと後悔。やっぱりシリーズ物や作者様追いする時は公開順にプレイしないといけませんねぇ。

 

作品の中では特によっぱらいがめちゃくちゃ好きです。ツッコミに紛れて柿本が谷の一人で崖へ飛んでいく性質をきっちり掴んでいるところがツボでした。

 

[一言]

バッドな世界の彼らもハッピーな世界の彼らも見れる、短編連作。

 

 

 

 

『キミとKISSがしたいのだ!!』

http://cult.jp/skycat/kiss/

 [概要]

そんなわけで上記の流れで『しぇあ!』に登場した初恋のお兄さんの今カノ話をプレイ。エンド分岐あり男女恋愛。内気で奥手な片メカクレ先輩×押せ押せラブラブな直球後輩。

 

[感想]

タイトルの勢いが好きだなーと思ってプレイを始めたところ、いやはや、思った以上のパワーがあってめっちゃ微笑ましい男女恋愛ノベルゲーでした!

こうね、こういうね! 恋する乙女の押せ押せなところってすごい可愛いですよね! それでいてしっかり照れちゃうところもまた可愛いんだな……。

先輩のほうも、片メカクレで黄色目でネガネガしい陰気ででも一途に彼女さんのことは大好きっていう、大好き過ぎて大好きっていうところが、ほんっと萌えました。はぁかわいい。

この二人が将来ああなってそうなるのかーと思うとたまらんですね。

 

エンド3だったかな、思わぬ不意打ち食らったわたしさんの最後の叫びと「気にしていたがため!」みたいな急な文語口調がめっちゃツボでした。出るよねそういう口調ね。テンパるとね。

柿本くんのセリフもそうなんですが、セリフのテンポと、自然なのにくすっとくる言い回しが本当うまいなあと思います。

 

唯一の欠点はBGMが初期設定だとたいそう小音量かつボリューム調整が行えないところ。無音ゲーなのかなと思いながらプレイし、必読の音素材の記載を見て初めて気づきました。普段からPCボリューム大きめの方やスピーカーの方なら問題ないかなーと思います。

 

[一言]

めちゃくちゃかわいくってパワフルで元気の出るラブコメをみたい人向け。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

 

この作者様の作品は、他にもサブキャラ同士が繋がってたり、web小説にちらっとお名前が出ていたりして、キャラクターがこの作者様のワールド内で生活している感じがすごく出ているので作者追いをおススメしたいです。ぜひとも!

 

 

 

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フリーゲーム「夏葬」感想

「これも燃料の一環だろうかと花を置く時に考えた」

祖母の好きな花をその日まで知らなかった前置き。

 

 

えー、今回はTake it easy!さんところのフリーゲーム「夏葬」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

匂わせる程度に百合、女子高生がぼんやりと考え事をしながらお話する短編ノベルゲーです。ほどよく重く、しかし陰惨ではない、独特の読み心地でした。

(記事公開現在は公開停止中? リンクがありませんがご了承ください)

 

というわけで良かった点など。

 

 

「わたし」と「先輩」が語る私

 

お話のほとんどは登場人物二人の会話で進んでいきます。

で、ものすごくこの作品特有のプレイ感覚だと思ったのが――「わたし」も「先輩」もなんだか、私だなあと思ったんですよねぇ。キャラをキャラとして見れなくって。

でも感情移入や代弁でもないんですよ。なんかこう、私が話しているのを私が聞いて初めてああ私はこういう気持ちだったんだなあと気づくような。

たまに悩んでる時って自分と自分で会話するじゃないですか。するよね? そういう感覚が一番近い気がします。

 

 

感覚を画面に組み込む演出

 

そして、前述のプレイ感覚が、終盤にさっと塗り替えられます。最後の最後になって、私と限りなく近かった二人は、二人の手で、二人のお話を始めちゃうんです。

あの演出ね! 好きなんですよ! 未プレイの人にまったく通じない書き方でごめんなさい!! いいよね!

クリア後に変化するタイトル画面も、喪が明けた、という感じがして好きでした。

 

また、会話の区切りが日の区切りになっている演出や、繰り返される「I think,」など、随所で時間の流れやテーマを意識づけるような画面になっているのも印象的。屋上に上がって話をするという流れは変わらずとも、屋上へ向かうシーンに緊張感がある時には背景が表示されるなど、シンプルな雰囲気作りが上手かったなあと思います。

立ち絵形式ではなく、一枚絵と随所のカットインで構成されているのも、お話に集中させてくれる感じがして好きでした。

 

 

日常でふと考えてしまう死

 

二人の話題のテーマは、誰かの死、です。

ただこれが暗くない。いや、明るくも無いんですが。鬱や絶望ではなくこう、日常なんですよね。お葬式のやり方とか、人が死んだ時の手続きとか、それらに追われる家族の姿とかを通じて感じる私の気持ちがダイレクトに語られていきます。リアルさが凄まじかったです。

 

二人の話し方がすごく自然なのも良いんですよね。重い話題だとついかっこつけたくなったり、冷めた見方をしようとしたりして、けどそれほど劇的でもないまま終わって。なんとなく自分の中で結論を作ろうとして、でも結局わからないなあで途切れる感じが、本当、日常の中でふいに死を思う時の感覚だなあと思いました。

 

納得しようのない死というものに、わからないなりに納得をつける話のような気もします。立ち位置を決める感じ。

 

 

 

 

で、余談で自分語りするんですが。

私、なんとなく身近な人の死と言えば夏と言うイメージがありまして。

そういえば初めての身内の葬式の時泣けなかったなあ、泣こうとして義務で泣くのもよくないと思って悲しいのか何なのか自分がどこ立ってるのかよくわかんなかったなあ、でも行事は普通に出席したんだよなあ、等々をつらつらと思い出しました。不謹慎っていうんですかね、厳粛にしないとだめな気はするのに何をしたらわからないあの感じとか、だんだん時間の無駄に思えてきて自己嫌悪するあの感じとか。色々、こう、しみじみ。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

 

ほんのりと百合、死ぬことに対する思索、学生らしい自然体の会話などにピンとくる方へおススメです。

 

 

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フリーゲーム「セブンスコート」感想

「誰かではない、あなたに届けばよいと思う」

あなたの心を掴むならきっと誰かにも届く前置き。

 

 

えー、今回はNovectacle(ノベクタクル)さんところのフリーゲームセブンスコート」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

かの有名なシェアウェアゲーム「ファタモルガーナの館」と全く同じキャラを全く違う物語とほんのり絡む関係性で描いた、スターシステム?もの。

語り過ぎるともったいないタイプのメタノベルゲーです。

が、こらえきれないので語ります。あまりに根本的なネタバレは避けますが追記にはガッツリ書いてしまっているので、ちょっとでも現時点で興味の湧いている未プレイの方は、是非とりあえずプレイしてみてください。

 

 

というわけで良かった点など。

 

メタを華麗に調理しきったシナリオ

 

RPGな世界をベースに、とにかくメタネタに全力投球しているのが本作の特徴です。知名度の低いフリゲ作者と好き勝手言うプレイヤー、VIPPERなネタ発言、どこぞで聞き覚えのある呪文名などなど。

立ち絵自体はファタモル本編のままなので、初めネット用語が彼らの口から飛び出た時には思わず妙な鳴き声が上がりました。はっは。でも見慣れると馴染むもので、随所のメタネタにわかるわかると頷いてしまうなど。

 

作中のキャラクターには現実世界の姿と仮想世界の姿という2面の知識があるのに対し、プレイヤーはさらにもう一つファタモル世界の姿という3つめの知識を持っているところもポイントでしたねぇ。短編でも確かにプレイできますが、やっぱりファタモルをプレイしておく方が、驚愕やギャップを楽しめるかとは思います。

 

余談。これを書いている現在、ノベクタクル様では新作予定としてRPGが発表されておりまして。

セブンスコートをプレイするまではノベル一辺倒なイメージがあったので、戦闘バランスとかRPGのお約束とか色々どうなるのかなあと勝手ながらハラハラしていたんですが、いやあ杞憂のようです。ノベルだけじゃなくてゲーム自体が好きなんですねこの作者様! RPG好きあるあるネタが多くて嬉しかったです。

 

 

掲示板では伝わらない人の中身

 

前述のとおりこってこてのメタゲーな本作、現実のネット上にも作中舞台の一部であるサイトが建設されています。この凝りようですよね。

で、サイトを実際に見ていくとこれがまあ、うわあ、な内容なんですよ。まさにこう、マイナーアングラBBSな感じ。背景色が黒なのも相乗効果で、少なくとも爽やかとは到底程遠い位置にある何かです。

けれども、セブンスコートをプレイし終わって見てみると、かなり違った印象を受けると思います。サイトのみでなくキャラクターについてもそうですが、見え方の転換こそが、本作の一番の味だなあと感じました。

 

 

プレイヤーのことを認めてくれるストーリー

 

このゲームの導入部分をざっくり書くと、

「アイタタ系中二病フリゲ作者が自作ゲームらしき世界へ巻き込まれた」

になります。

フリゲ作者の話をフリゲでやってのけるというからには、やっぱり例に漏れず、創作の懊悩、レビューの話も出てきます。フリゲ界隈に親しみがあるほど共感度も高まることでしょう。本作をプレイしていてグサグサやられた作者様もいらっしゃると思います。

 

で、私はどうあがいてもプレイ専なので、プレイヤー視点で語るんですが。

この手の話にはやはり、作者の魂を込めた作品を娯楽として好き勝手消費していくプレイヤーの話も出てきます。好きのアピールの下手さ、好意から来ているのに誉め言葉になっていない感想、素朴な感想が作者の心を折っていく流れ…………。

この手の話を見るたび、私は好きであれ嫌いであれ「感想を表出すること」を辞めたほうがいいのではという想いに駆られるんですね。マイナスを生む可能性があるなら、例えプラスに思ってくれる作者さんがいたとしても、黙るべきではという。

 

そんな、不安を!

さりげなくも、丁寧に、きっちりと、「そうではない」と。

作者やプレイヤーが神だとか、感想の書き方や受け取り方がどうだとか、そういった論争のようなステージを全部飛び越えて、プレイヤーという一個人の存在をただ認めてくれるのがこの作品です。こんなにありがたいことってありますか。

もちろん、私のような語りたがりではなく黙して秘めるプレイヤーに対しての言葉も、やはり丁寧に、自然なスタンスでつづられています。詳しくは追記で熱く語るとして。

 

フリゲ作者目線の話と思われがちな構図のゲームですが、上記の理由で、プレイ専視点でもかなり身近に感じられるメタゲでした。

 

 

耽美な立ち絵とピコピコ音源の異物感

 

基本のBGMはMIDI・ファミコンっぽいピコピコ音源。SEも懐かしいジャギジャギしたノイズを感じさせる音で、一部の表現もドットフォントです。

そんなレトロゲー世界を表現しつつも、立ち絵はファタモル世界の耽美なイラストのまま。このあからさまな異物感がすごく好きでした……! 来ちゃいけないものがいる、っていうバグ感がすごい出てるんですよね。

普段通りの立ち絵でネット用語を使い尽くすミシェルはなかなかのパンチが効いていて、いやあ、めっちゃ好きでした。

 

 

とまあ、こんな感じで。

フリゲ作者様に取り上げられがちですが、プレイ専の私のような方にも是非プレイしてみてほしいところ。良い意味で“刺さる”ゲームにチャレンジしたい方へ向けたい一作でした。

 

追記ではネタバレ全開で熱く語ります。

 

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フリーゲーム「アレックスと9人の少女」シリーズ感想その2

「切って捨てるは仕方ない、ガタガタ抜かすは見苦しい」

それでも言い切れない葛藤がそこにある前置き。

 

 

えー、今回は月人さんところのフリーゲームアレックスと最終戦争と9人の少女」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

うっかり文字数が長くなったので区切ったぶんの後編になります。一万字超えてぐだぐだ言ってるのでお暇なときにどうぞ。

未読の方は是非こちらから。

今回はようやく表題作! と、勢い込んだものの、長編になったぶん合わなかった点もちらほら。しかし、合わないところがあったからといって素敵だったところが欠けるわけではないので、批判も賛歌も書きます。

 

 

というわけで、まずは全体を通した感想から。

 

【良かった点】

 

全員に与えられるスポットライト

 

元々9人の少女という多めのメインキャラ数で進んできたこのシリーズ。バレンタイン、ホワイトデーとシリーズを進めるたびにキャラは増え、そしてついにプレイアブルキャラだけで70人越えというとんでもない大所帯になるのが本作です。

そもそももしもシリーズと言えば魔法具現化だけでも数多の数、派生やら兄弟やらはい説もわんさかで、キャラ図鑑やWIKIやらも飽和状態。それでも数の多さに決してあきらめることなく、可能な限りたくさんのキャラクターを登場させている気合ですよ。しかもどんなサブキャラにも熱いシーンや想いを告げる場を与えているところが大きな魅力でした!

私は状態異常魔法が好きなので、彼らががっつり登場してくれてすごい嬉しかったです。

推しが話してくれるだけでも嬉しい、そんな人達には良い陽の目があるかもしれません。

 

 

ルートを越えて絡み合うキャラクター

 

基本的にどの順番からでもプレイできるようになっている本作、面白かったのはサブキャラの絡みです。○○編で見かけたあの子の家族が××編で活躍したり、◆◆編で彼らが襲い掛かってきた過去が~~編で語られたり、等々。もちろんキャラ達は別々に行動しているのでキャラから主張されることはないんですが、気づいてニヤっとできるのは神視点たるプレイヤーの醍醐味ですよね。

前述の、どのキャラにも見せ場や想いを語る場を作る気概がこういったところにも表れていて好印象でした。

また、様々な視点が最終的にアレックスという一つの点に繋がる、群像劇的な楽しみ方もできるかと思います。

 

 

個性あふれるスキルと効果の組み合わせ

 

面白いなあと思うのは、編成のTCG感。

TCGヴァンガードとか遊戯王とかそういうのです。「カード名称に《銀の茨》を含むユニットのパワーを750+する」みたいなあれ。もしもシリーズの各陣営の設定をかなり上手く生かしてるなあと感じました。ついついセットで使いたくなるし、物語上もセットのほうが熱い展開になるっていう相乗効果。

 

そう、キャラクターの個性をバトルで表していくやり方もすごく上手なんですよね。ウィンディがHP1の避け盾タイプだったり、幕田が超スピード型だったり。好きなキャラをそのキャラらしく運用していけるのは、キャラ厨な私としてもすっごく嬉しかったです。

また、全キャラがそれぞれ固有のスキルを持っているところも見どころ。いやもう、よくこれほどの数のスキルを設定したなあと。作者様の労力に敬礼です。

 

さらにこの世界は属性が性格診断的になっているようで、意外な属性が振られているパターンもあり新鮮でした。他だと闇属性の印象が強いダーエロが光属性とかね。同梱の設定テキストファイルを見るとなるほど納得。面白い解釈だなーと思います。

こういうのって水見式的に自分の属性も考えてみたくなりますよね。

キャロルが氷属性なのがなんかなんとなく嬉しかったです。

 

 

動き、暴れ、ぶつかり合うキャラドット

 

ドットの動きが細やかでエフェクトがド迫力なのも健在、むしろパワーアップ。バトルパートでも見るゲパートでも、ドット絵が跳ねまわり吠えまくりながら進むので、とにかく派手で見飽きることがありませんでした。

前々から感じてたんですが、斜め向き?顔だけ斜め向く?8方向グラフィック?みたいな感じの表現、レアで良かったです。

 

特にバトル中使う機会の多いコマンドが防御だと思うんですが、同じ防御でも種類によってそれぞれモーションとSEが違っていて、細やかさに惚れ惚れでしたねぇ。

またキャロルの話をしてしまいますが彼女の防御モーションがめっちゃ好きです。かっこいい。惚れてしまう。

反撃防御も、上からどっこいせって持ってきてドコン!って置く感じのモーションとSEが好きです。例えば同じ反撃でも、ブライアンやクオンは構えて解き放つ感じ、アルシェスはスマートにささっとカウンター決める感じ。こういうキャラの違いも本当好きです。

 

 

他細やかな点

 

その他、バレンタインの頃から引継いで強化されたリングコマンドや、キャラルートによって異なる一枚絵、セーブ画面の熱い物語を感じさせるドットアイコンなどなど、システムやグラフィックにかなり気合を感じるところが多かったです。

 

 

 

【合わなかった点】

 

自上げ他下げ展開

 

誰かの信念や理想論を強固にするために、極端に他キャラを無能にしたり爆走させたりしてキャラをストーリーの犠牲にしちゃう、よくあるあれが苦手でした。

団体のトップがグダグダだったり言い訳がましかったりすると、もうその団体ひっくるめて全てカッコ悪く見えちゃうんですよ! 自分自身のこと信じてなくてうじうじしてる人が、トップに立って俺達の絆を~みたいな話をしたって、全然説得力ないじゃないですか。強くて皆をまとめ上げてるカリスマがあって合理的な考えもできるって将が、あっさり内部崩壊起こってたら、なんかもうシリアスな笑いしかないじゃないですか。

人生をなんとか這いつくばって生き抜くような信念のあるカッコ悪さじゃなくて、ただの行き当たりばったり感ただようカッコ悪さがもったいなかったです! 

 

ポンコツ化するのが一般人・空気・地味なポジションだったりするなら良い意味で等身大の共感が得られたと思うんです。あるいはオリジナルキャラや、既存のはい説をぶっ壊すくらいの濃いキャラ設定がついてたら、ここまで拒否反応は出なかったんだと思うんですよ。

私がもしもシリーズを齧った程度の状態でプレイしたのも原因なんでしょうねぇ。多様過ぎるはい説を認められるくらいの広い心がなかった。シリアスだからと真面目に構えすぎてたのが悪かった。

魔王様嫁様ナイ様ヘル様辺りが好きな方には正直言っておススメしたくない作品です。

 

キャラ同士の想いの衝突自体は好きですし、その手の答えのない言い争いをやりたかったんだろうなあという感じはします。戦争ですしね。

実際、クオン編やライチ編のラスボスは、わかっちゃいるけどやりきれない強い想いを感じさせるのが上手くて響くものがありました。なので好きな意見衝突もありはします。うん。

 

 

9回にわたって繰り返す正義のゴリ押し

 

ストーリー構成がどのルートも共通で、

正義の主張→敵側の反論→思い悩み→感情と絆と愛でとりあえず僕らは正しい!

みたいな感じだったのがちょっとお腹いっぱいでした。

なんだろうな、主張の雑さが嫌だったんです。こじれた後に結局初めの主張に戻ってきたり、「きっと彼らもわかってくれるよ!」「こうするしかなかったんだ……」みたいな感じで終わったことにして敵キャラ死後の誇りすら踏みにじっていったり、博愛キャラが意外と敵やサブキャラは見捨てていったり、っていうところ。キャラが必死に自己肯定を繰り返すように喋らされてる感じも圧が凄くて怖い。

 

理想論自体は好きなんですよー。なんだかんだで熱いじゃないですか、好きですよ甘ちゃん勇者。挫折してでも前向きに突っ走る展開、わかっちゃいても応援したくなりますよ、鬱展開好きであっても。

でもなあ、敵に対するバッシングと味方キャラのセリフの語調が強すぎて、勧善懲悪でないものを目指しているっぽく見えるのに結局は「悪とモブは死すべし」みたいに見えてしまっているのが、もったいないなあと思うんですよね。

ぶっちゃけ正当化が多い! なのでメインストーリーの大半は合いませんでした。でも最終編ラスボスと一部のシーンが輝いていたことは主張しときます。

 

 

単調化するバトル

 

まず前述の通り、あれだけ豊富なキャラ達にスキルを当てはめて属性を当てはめて固有技を考えてという、それだけで価値はあります。めっちゃすごい、愛が無ければできない、素晴らしい。

それを踏まえたうえで、惜しいと感じたのが、バトルの単調化です。

防御でSPを溜めて奥義を放つ、これだけでほとんどのボスは倒せてしまうんですよね。変化球を入れてあるボスもいるんですが、どうしてもダレがち。また、明らかに勝てる試合が強制終了して負けイベントに突入するところもちょっともやっとしてしまって、それなら演出バトルとして戦闘に入らず終了させても良かったのではないかなーと思う時もありました。

 

いや、でも、ここを惜しいところとして挙げるのは申し訳ない気持ちもあって。

あえて簡略化してるとも思うんですよね、ストーリー重視作品として。

それにあれほどの数のキャラを動かそうとして、皆に魅せ場を作って、そりゃ戦闘が長引くのも回数が増えるのも当たり前なんです。むしろあの長丁場を見事作り切って完結してくれたことが尊い

ただ詰将棋型で一瞬一行動気が抜けなかったホワイトデーのバトル形式と比べれば、かなりプレイ感覚は変わります。演出重視のバトルと言えるかもしれません。

なので、バトル面こそが好きだった、という人はちょっと事前に長丁場の前菜があることを覚悟をしておくと、良い具合にプレイ感を切り替えられるかなあと思いました。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

ボリュームたっぷりキャラたくさん、愛着増し増しの大長編RPGでした。

追記では、ネタバレがっつりの各編感想です。

 

同作者様の他フリーゲーム感想記事↓

shiki3.hatenablog.com

 

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VD・短編乙女向けフリゲ6作感想

「溶かして固めて再構成、喜べ愛の再構築」

熱をあげればあげるほど不安定になる前置き。

 

 

えー、今回は、フライングバレンタインということで! 短編乙女向けノベルゲーを取り上げて感想文を書いていきますね。一部レビューっぽいかも。

まずは免責事項。

一部公開停止中(記事投稿日時現在)の作品を含みます。各作品は相互に関係性無し、雰囲気バラバラ、バレンタイン関係あったりなかったり。年齢制限ありの作品もあるので、公式サイトの注意書きをご参照ください。

ではさっそく!

 

 

 

『いもうとバレンタイン』(ヤンデレ・学生・兄妹)

http://10no.jp/sora/sv/index.html

 

ヤンデレ妹がお兄ちゃんのために一生懸命頑張る、恋愛ノベル。本作は明確に乙女向けとはされていない(はず)なんですが、おまけ要素が乙女向け視点で見るとグッときたのと作者様の他作品の関係で、併せて紹介します。

今作もめちゃくちゃ萌えましたー!

 

この作者様の見せてくださる「萌えるヤンデレ像」の波長が近くて、プレイしていて思わずうなずきたくなるんですよね。

乃愛ちゃんがお兄ちゃんのためなら全力のすっごく一途なので、つい応援したくなります。一方で、拭い切れない「うわぁ……」な部分もきちんと見せてくれていて、いやあもう、実に、実にヤンデレ萌えを味わえました……! 邪悪ヒロイン大好き。大好き。ほどよく幼くて浅はかなのも大好き。まさに理想の妹像でした。完璧な妹に……と呪文のように言い続ける乃愛ちゃんがほんっと可愛かったです。

で、だからこそ、アフターストーリーも最高なんですよ!

 

と、その前に惜しかった点を述べるんですが、片方のエンドがもう片方のエンドの延長線にあるので、別々のエンドというよりはルート途中でぶつっと途切れてしまった印象が強かったんですね。で、実はちょっと物足りなさやヤンデレ全開のエンドを見たい欲求があったんです。

 

CGコンプ後のおまけでこれらの気持ちが全部払拭されました。

本当にご褒美でした。ありがとうございました。

グラフィック面も満足。選択肢ごとにスチルがあって、「お兄ちゃんはキレイな感じ」「妹はかわいい」が絵でも表現されているのが素敵でした。

ヤンデレ好きはぜひぜひ!

 

同作者様の他フリーゲーム感想記事↓

「ねじまき前奏曲」「コッペリアの墓標と廻る恋のはなし」感想 

「満月の夜に狂宴を」感想

「新月の夜に晩餐を」感想

 

  

『でっど・おあ・ちょこれーと ~チョコをあげなきゃ世界が滅ぶ!?~』(公開停止中)

http://hassaku.otodo.net/dc/dc.html

 

タイトル通り、本命チョコを作って渡さないと世界が滅ぶ乙女向けノベルゲー。

選択肢をミスると即滅亡するので難易度も簡単、テンポよくさくさくと進みます。そしてそのまま超展開と共にストーリーが彼方へ吹っ飛びます。どういことなの! どういうことなの!!

体言止めやビックリマークをピンポイントで多用して、立ち絵も効果的に利用して、かなり演出面で凝ってはいるんですよね。突っ込まずにはいられない、深夜テンションは素晴らしい。

いやあ、ラブコメのうちのコメに全力をかけている作品でした。

 

私の初回プレイではけっこう順当に終盤まで行ったんですが、いやあ、負けましたね。魔の選択肢がありました。あれ選ばざるを得ないじゃないですか。そりゃ選びますよ、好奇心という名の獣を乙女は常に飼ってるんですよ。そんなわけで、軽率に→釣られて→考え直して、の三コンボを食らいました。特に考え直す流れは腹抱えて笑いました。楽しかったです。

 

あと独特だなーと思ったのは、ヒロインの立ち絵の視線ですね。いっつもちょっと上の方を見ている感じ? 攻略対象の背の高さとか、例の終盤の演出の関係で空を見ている感じとかを表しているのかなー、なんて。

なんとなくいつも口を開けている子なイメージがあります。のんびり屋というか、ちょっと抜けてるというか。和む。立ち絵がぴょこぴょこ動くのもかわいかったです。

超展開どんとこいの豪胆な乙女の皆さま向け。

 

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明るめヤンデレノベルフリゲ感想(愛して!勇者様)

『かわいい河合くん』(下記)

 

 

『かわいい河合くん』(公開停止中)

http://hassaku.otodo.net/kawai/top.html

 

『でっど・おあ・ちょこれーと』と同じ作者様の、こちらもラブコメノベルゲー。

比較するとこちらのほうは糖度が高めで、初々しい距離感ではわはわ照れ照れする二人を眺めるのが楽しいゲームでした。

 

もう基本はタイトル通りです。河合君がかわいい。男の娘やショタの方面ではなく、オトメン、女子力高めの癒し系男子って感じです。

一方できちんと男子学生らしさもあって、男友達にいじられたときには「やめてよ」じゃなくて「やめろよ」で返すかっこよさもあったりします。めっちゃツボでした。こういう自然な形で口調が変わる会話ってすごく好きなんですよね~。

 

また、ヒロインのほうもあとがきに「共感しやすいヒロイン」とある通り、あちこちで頷けるところが多かったです。

バッド直行のほうはうっかりついちゃったささやかな嘘のやらかした感を味わえて、学生時代の黒歴史がぶわりと蘇りますし。恋愛なムードが漂い始めると堪え切れなくなる辺りもものすごく、強く共感しました。わかるわかる。照れがな。勝るんだよな。

BGMのチョイスも最高ですよね。吹き出しました。コメディにおける緩急の重要性をよくよく熟知して我が物にしてらしてる作者様だなと思います。

 

全体的に春夏っぽいかわいい色合いと、乙女要素と、笑いを全部一気に取り入れた楽しいゲームでした。ED3クリア後にコンプイラストが見れて、雰囲気の落差にまた吹き出してしまったのもいい思い出です。

 

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明るめヤンデレノベルフリゲ感想(愛して!勇者様)

『でっど・おあ・ちょこれーと ~チョコをあげなきゃ世界が滅ぶ!?~』(上記)

 

 

『華氏98.6度』(SF・シリアス&コメディ)

http://fahrenheit986.tumblr.com/

 

主人公は宇宙船の乗組員、相手はAI。SFの雰囲気がガッツリ感じられる乙女向けノベル。

ビジュアル面はかなりクオリティが高く、立ち絵のみでなくシンプルで未来的な起動画面や、薄青で彩られた船内の背景画像など、随所にSFの世界観が漂います。右クリックでメニューがまさにデバイス的なのもかっこよくて素敵!

 

一方で、ストーリーにはやや物足りなさを感じました。すでに二人の関係が始まっているところから始まるので、レベッカ→ビショップの矢印が少し唐突に感じられたのが一点(てっきり相棒的な形で救ったと思っていたので……)。

また、ED3がエンドというよりただのゲームオーバーに感じられてしまいました。ここでビショップ視点の回想等入れたら鬱展開としてもグッと引き締まったのになあと惜しく思います。

ED4はギャグエンドだとしても根本の問題が置き去りにされてしまうので消化不良でした。

付け加えて、緊張感のあるシーンやバッドエンドはもう少しBGMを変えてみても良かったのではと感じます。

 

けれども、全体的な世界観の構築はかなりハイクオリティです。港湾の出立を急かされるくだりとか、架空のシチュエーションのはずなのに思わず「あるある~」と言ってしまいそうなリアリティを感じられました。

序盤の、操作パネルに指を躍らせるレベッカの描写もすっごくかっこよくて素敵! 地球に憧れる女性という設定自体、ロマンを感じられてすごくときめきます。

エンド名等、ちょっとしたところにSF好きの心をくすぐるネタが入っているのも見どころ。

宇宙船な世界観が好きな方には合うゲームだと思います。

 

 

『ジンセイ兄イロ』(ラブコメ・学生・兄妹)

https://www.freem.ne.jp/win/game/6681

 

ブラコン妹が勉強もラブも頑張っちゃうラブコメノベル。

いやあ、すさまじい勢いでしたね! 妹ちゃんがお兄ちゃん好き好きなノベルはわりとよく出会いますが、初手ですーはーすーはークンカクンカをキメてくれるタイプのヒロインは初めてだったので良い勢いを楽しめました。あのカッコイイスコープポーズが出た時はただならぬ雰囲気に思わずセーブしに行きましたもんね。

兄妹の通じ合いがラストで発覚する流れは熱く、笑いながらも感心してしまいました。これは上手い!w

 

起動画面やシステム関係の動きもスタイリッシュで、BGMも選曲もかなりオシャレな感じ。画面だけ見ればクールな乙女ゲに見えるかもしれません。でもコメディ。そこがいい。

お兄ちゃんの反応がけっこうツンツンなので、選択肢の○×は少し判断しづらかったかな? でもセーブさえしていればやり直しは楽々ですし、セーブが必要なポイントもポーズでわかるので、易しめの作品だとは思います。

何よりお兄ちゃんのツンは愛のある棘って感じがするので好き。

全力でラブとコメをやり切っている作品でした。

 

 

『幼馴染の金で食べる焼肉はうまい?!』(ヤンデレ・現代ファンタジー

http://tokitokito.skr.jp/oy.html

 

キャッチーなタイトル、そしてゲーム紹介ページの「カニバリズム」の単語からどことなく何か察せられるものを感じる、乙女向けノベル。

こうして公式からうっすらとネタバレしてターゲット層にしっかりと届かせたうえで、さらに上回るオチを持ってくるところが本当巧みだなーと思いました。これはかなり話題になる、実際なってた。のでDL。期待していたヤンデレ萌えがしっかり満たされて大変幸せでした。

 

もうね、あのね、幼馴染君がね、理想なんです!!!

私の理想のヤンデレ! 間違いない! 出会わせてくれてありがとう!

まず、病んだ行動をとる理由にすごく納得がいくんですよね。面白い設定を生み出したなあと思います。ヒロインにしてくれることもどれも怖いし容赦ないしで最高でした。そのうえ、一途なところや、なんだか放っておけないところを見せてくれるのもまた魅力的。

こう、致命的なところがずれているように見えるキャラが好きなんです! 生存意欲とか! 周囲への関心意欲態度とか! 愛情表現とか!!

ストーリーギミックもシチュエーションも、好みが好みの好みで色々と好きが被ってて幸せでした。へへへ。

 

他にも、ヒロインがけっこうガッツを持ってるところとか、文章にさりげなくパワーワードや鋭いツッコミが入ってて唸らされるところとか、好きです。まだこの作者様の作品は本作しかプレイしていませんが、かなり響く単語選びセンスを持っているので、たぶんギャグもシリアスも書ける方なんだろうなあと思っています。勝手に。

 

この手の乙女ゲーはトゥルーのために周回必須ですが、本作はその周回のやり方がちょっと変則的で興味深かったです。トゥルーで言われた日数も上手いなーと。

糖度も恐怖も味わえるヤンデレ萌えを見たい方に強くおススメです。

 

 

 

 

と!

こんな感じで、一気に紹介させて頂きました。

どの作品も「これは!」と光るポイントがあるので、バレンタインを前にときめきたい皆さん、この三連休に是非ともどうぞ。

 

 

 

短編ノベルゲーまとめ感想記事↓

GW・短編乙女向けフリゲ6作感想 

明るめヤンデレノベルフリゲ感想

謹賀新年・短編ノベルゲーム7作感想

短編ノベルフリゲ5作感想

 

フリーゲーム「アレックスと9人の少女」シリーズ感想その1

あなたがいるから強くなれた、あなたがいたから弱くなった」

そしてあなたがいるから世界は滅ばずに済んでいる前置き。

 

 

えー、今回は月人さんところのフリーゲームアレックスと最終戦争と9人の少女」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

ジャンルはVIPRPG。「もしも」「魔法具現化」などのワードがある程度ピンとくる人向けの作品です。

過去に投稿された「9人の少女シリーズ」に関わる全作品が、これ一つで遊べちゃう豪華仕様。タイトル画面からそのゲームを遊ぶか選択できるんですが、この画面自体がなんだかアーケードゲームの面セレクトみたいでわくわくしました。

もうね、DLページのマウスオーバースクショが好き。

 

 

私は過去作未履修だったので全作プレイしたんですが、これがもうボリュームたっぷりで楽しくって!

うっかり表題作をプレイする前に過去シリーズをプレイするだけで感想文が長くなってしまったので、今回は過去作編もとい「バレンタイン&ホワイトデー&GW編」ということでいったん区切ろうと思います。

 

 

というわけで各作品の特徴など。

 

  • 『アレックスとバレンタインと9人の少女』
  • 『アレックスとホワイトデーと9人の少女』 
  • 『アレックスとホワイトデーと9人の少女 番外編』
  • ホワイトデー・ネタバレ感想
  • ホワイトデー番外編・ネタバレ感想

 

 

 

 

『アレックスとバレンタインと9人の少女』

ギャルゲちっくな選択肢有りノベルゲ、もとい見るゲ。

 

[良かった点]

初めから選べる女の子が9人というバリエーションの多さに驚かされました。メジャーな水風光闇の四人集はもちろんのこと、(個人的に)あまり見かけないストーンⅠや、あえてフレイムさんでなくクオンなど、変化球が用意してあるところも注目。

そしてスパイス的につけられているはい説がまた魅力的でした。短い会話の中でキャラの背景事情や抱えているものをちらりと見せつつ、見せびらかしはしないで受け入れて終わるこの塩梅、好きです。

 

1周に5分ほどの短さで、周回や会話回収もお手軽。セーブデータの相手キャラが変わってくれるのも凝ってて好きです。ライチの歩行グラが好きなのでついセーブデータをライチで終わらせるなど。

OPや途中のブライアンイベントをスキップ出来るなど、周回前提の仕様も親切でした。

 

そして何より熱く推しておきたいのが二股でのイベントが起こること!

ゲームオーバー的にちょっとした会話分岐が起こるだけではあるんですが、このパターンが非常に多くて、大変興奮しました。単純に浮気を叱る汎用セリフがあるだけではなくて、特定の二人の組み合わせで罵るパターンが変化するなど、小ネタまでしっかり組み込まれています。

ちょっとした暇つぶし、のつもりが延々とアタックをかましまくるゲームでした。

隠しキャラの登場の仕方がほんと好き。

 

[惜しい点]

OPスキップとブライアンスキップ、キャンセルの選択肢がそれぞれ逆位置にあるのはなかなかのトラップ。

 

[一言]

魔法具現化が好きな方や、クールかっこよく少女を受け入れる勇者が好きな方に。

 

 

 

『アレックスとホワイトデーと9人の少女』 

ギャルゲから一転、少女の恋と救済をめぐる九つの短編集。どのルートでも1度挟まれるボス戦がかなり熱いやるゲ。

 

[良かった点]

要点上げると、会話分岐・戦略重視の自作戦闘・異なる少女の関係性、です。

 

まずは会話分岐について。

特定のキャラが生存していると聞けたり、特定の順番で敵を倒すと聞けたり、先に勝利に必須の条件を満たしてると「おまえはわかっているようだが」って言ってもらえたりするあれです。

もうねー、この細かな会話の変化パターンが多くてめちゃくちゃ楽しかったです!!

みんな好きでしょ!私は好きです!

聞けるときだけ聞けるサブ会話かと思いきや、キャラの過去について掘り下げられたり、世界設定の伏線が語られたりして、なかなかどうして必見ものです。

 

自作戦闘はSP回復と行動順がカギになる、戦略性の高さがウリですね。タイミングを計りながら奥義をぶっ放したり、ルートごとに異なる攻略方法で立ち向かったり。手持ちのスキルでどう動けばいいのか、あれこれ試してカチッとハマった時がめちゃくちゃ気持ち良かったです。

ブライアンがパラディン性能だったり、空気なわてりが回避盾だったり等々、キャラクター性がスキルや立ち回り方で表現されているのも花丸満点。キャラ厨な自分としては大いにテンション上がりました。

グラフィック面、戦闘時に動き回るドット絵やエフェクト、カットインでガツンと決めてくる奥義技も必見です。

 

最後に少女とアレックスの関係性について。弱気だったりピンチだったりの少女を勇者アレックスが助ける構図自体は共通なんですが、ストーリーのバリエーションに脱帽でした。彼女たちの裏で動く事情や少女たちの性格付けなどが決してテンプレではないんですよね。アレックスもハーレム主人公的な動きをするんじゃなくて、全てを受け入れるのではなく、彼なりの我を示しつつ少女達を救っていくというところに個性を感じました。

彼らなりの言葉で語って叫んで恋して幸せなキッスをして終了! この勢いが素敵です。

 

[ネタバレ含む各編感想]

追記に最下部の追記に畳みますね。

 

[一言]

ハードモード達成済みが並ぶこの達成感を是非とも味わってほしい名作。

 

 

『アレックスとホワイトデーと9人の少女 番外編』

ホワイトデーを踏まえたうえでの後日談。見るゲ。

 

[良かった点]

バレンタインが少女、ホワイトデーが少女とアレックスの関係性を描いたうえで、今度は敵側にスポットが当たります。後日談かつ前日譚、あるいは回想シーン集。中にはキャラの死と改めて向き合う話も出てくるので辛いところもありつつ、この鬱が好きだったり。

黒幕が「ふふふ奴は四天王の中でも最弱……」的なことをしゃべるシーンにわくわくしてしまう私としては良い具合に少年心掻き立てられました。

見るゲではありますが、画面外のモブキャラが暗転後に喧嘩してるっぽい配置になったり増えたりするなど、細かい演出は健在です。素敵!

あと、ルートによって行ってらっしゃいを言ってくれる光魔法の皆さんのメンツが変わるのもさりげなく好きです。

 

[ネタバレ他]

追記に畳みます。

 

[一言]

敵にも事情がありこちらにも正義がある、勇者像も単なるイエスマンにとどまらないところがすごくツボです。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

 

そのルートもそれぞれ独自の良さがあるということは前提として。

 

性癖を抉られるやみっち編。

読みやすくすんなり受け入れられるウィンディ編。

関係がニュートラルで安心できるわてり編。

 

この3つが特に好きだなーと思います。

 

表題作は、待て次記事。

記載の通り、追記にネタバレ感想あり。

 

 

 

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