うそうさ〜第二号室〜

フリゲ・鬱展開・ヤンデレ 万歳!

フリーゲーム「エインルート」感想

「世界のため、魔法のため、愛する人のため」

自らの苦しみがために自らを捨て置く前置き。

 

 

えー、今回は箱庭のイデア(栄崎)さんところのフリーゲームエインルート」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

綺麗なマップを歩きながら心に触れていくゲー。エンド分岐はありますが、一つ察しがつけば攻略にもピンとくるはずです。

 

 

というわけで良かった点など。

 

 

私の心を力にするシステム

 

一番好きなのがこの作品の大きな根幹にもなっている、心の要素です。

戦闘前に“感情”を選び、それに付随するステータスに沿って戦うのですが、これがまた物語性を感じまして。敵と戦う前のエピソードが悲しいものだと、こちらもついついポジティブな感情で対抗したくなったり。1周目ではステータス等の実利面以上に、それこそ感情に従って選んでいた気がします。

プレイする人によって選ぶものがかなり変わりそうな作品だなー、なんて。他の人のプレイも見たくなる作品ですよね。

 

そして何より、あの色相図みたいなメニューが変化していくさまも良い没入感がありました。元ネタを調べて一つ賢くなった気になったり。不安と信頼で服従、っていうのがなんかすごく、すごく、言い表しにくいながらも心に残ってます。

戦う敵のグラフィックもかなり象徴的で、語られるもの以上に感じるものが大きかったように思います。

 

 

風と色を感じるマップ

 

基本的にマップは横スクロールの一本道です。温もりを感じるような背景で、主人公の歩くと揺れる髪も併せて、風や温度が身近に感じられそうなマップばかりでした。短いながらもじっくりと歩き回りたくなるマップです。BGMがそれぞれ異なるのも素敵なところ。

もちろん1周目はゆったりとした速度で噛み締めるように進みたくなる作品なのですが、2周目からはダッシュが解禁されるのもありがたかったですねぇ。

 

 

民族風な儀式と文様

 

儀式、継承、という言葉がある通り世界観はどことなく民族調です。こういう世界観ってツボな人にはたまりませんよねぇ。因習村とか好きでしょ皆、知らんけど。

また、戦闘時の怪しげなBGMと、それぞれの敵によって変わる背景の文様、攻撃エフェクトなど、あちこちに儀式を感じさせる演出が敷かれています。

あの戦闘突入から終了までの雰囲気が本当、すごい好きなんですよね……。おどろおどろしい感じというか、神秘と恐怖の間というか。好きです。

 

 

とまあ、こんな感じで。

儀式、感情、丁寧なグラフィックなどにピンとくる方へおススメの作品です。

 

 

追記ではネタバレ込みの感想など。

 

 

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フリーゲーム「Line」感想

「ずっと君といたかったから何千回だって負けたくなかったんだ」

信じるよりも自分本位で強固な前置き。

 

 

えー、今回はおにぎりと四葉のクローバーさんところのフリーゲームLine」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

大長編マルチエンドRPG。ウディタ製。魔法と魔物と迷宮が存在する、けれど王道から少し捻ったファンタジー物です。

 

初めに、以下の内容では作品根幹に触れるネタバレを1つ含みます

いわゆる「この手法好きな人いっぱいいるけど言った瞬間ネタバレになる」ってやつですね! 知ったうえで楽しめるところも多いので問題ないとは思いますが、絶対にネタバレ嫌という人は軽く()クリアしてからまた戻ってきて頂けると嬉しいです。

 

 

というわけで良かった点など。

 

 

大胆に分岐する世界と、全てが繋がる展開

 

さてこのゲーム、マルチエンドかつ周回プレイが必須です。そういうことです。

真っ先に良いなあと思ったのは、マルチエンドものでよくある結末や終盤イベントだけが変わるのではなくて、丸っと一本筋で「ルートそのもの」が変化する点でした。いや、ここまで物語の流れ自体が分岐するのは本当初めてだなと!

特にΩルートの変わりようといったら目を見張るものがありました。ここまでお決まりを作ったうえでズラしてくるというこの手法よ。

 

一方で、どのルートも本当の意味で通ってきた道のり全てがトゥルーエンドへ繋がります。

淡々としたバッドエンド回収じゃなくて、あれらの世界に意味があったんだと伝えてくれる姿勢がすごく良かったですねぇ。こちらもプレイしていて熱くなるってもんです。

数多に張られた伏線もさることながら、メインどころのスチルや強く覚えのあるセリフを持ってきてしっかりとプレイヤーに思い出させてくれる、伏線の開示の仕方も親切でした。「あれ何だったっけ?」っていうのがほとんどないんですよね。見た瞬間鮮明に思い出せる、あれがここに繋がる、うわあああ!っていうこの気持ち良さ。大好きです。

 

各キャラの知識量と動きがかなり厳密に管理されてるのも好印象です。

あのルートで知ってることをこのルートでは知らない、あっちではこう動いたからこうなったけど向こうでは飛ばしたから別の結果になった――そういう思考実験にも似た楽しみ方もできました。

某シーンでとあるキャラが鉢合わせしないように避けるシーンがあるんですが、あえて鉢合わせようと思って移動したら別キャラに止められまして。作者様の手の行き届き具合に惚れ惚れです。

 

そんなわけで、同じゲーム内でまったく別の物語を広げていながらも、根幹が一本に収束する――まさにタイトル通りのプレイ感でした。

 

 

 

心砕かれる鬱展開と、明るさを忘れないキャラクター達

 

鬱展開があります。

キャラに愛着がわけばわくほど辛さがこみあげる鬱展開が、何度も、何度もあります。

誰もが幸せになりたいはずなのにうまくいかないこの歯がゆさ、あんなにも頑張ったのに駄目だった虚しさ、「それでも!」を求めるこの気持ち! 私が鬱展開に対して求めるものが揃っていて感動しました。

そしてこの、それでも先に進んでどうにか幸せをつかみたいプレイヤーに、この作品は全力で応えてくれます。辛い形でも、嬉しい形でも。だからこそ大いに感情移入してがっつり楽しめました。

 

鬱の濃度がかなり濃いので、私のように鬱好きな人には勿論プレイして頂きたいですが。鬱展開にある程度耐性があって、かつハッピーエンドを求めたい人にこそクリアして欲しいゲームでもあるなあと感じました。

 

また、暗いだけではなく、本領はむしろ明るい面にある気もしています。

終始沈み続けるのではなく、どんなシリアスシーンにも笑いを忘れないこの気持ち。特に某和服キャラの芸人魂には実に助けてもらいました。

緊迫した空気に耐えかねたところでクスっと笑い、肩の力を抜いて自然体で挑ませてくれる、そんな気遣いがあたたかい作品です。

 

 

 

成長するキャラ達と、細やかな変化

 

キャラクターの内面や言動が、物語を通して成長していくのも素敵でした。

主人公の影響だけじゃないんですよね。フラメがきっかけになったキャラは多くても、誰か一人を中心にしたり負ぶさったりするんじゃなくて、皆が輪になって影響し合っている感じ。

初めは唐突に感じられたり受け入れがたい加入をしたりしたキャラも、いつの間にかかけがえのない仲間になっています。いやあ、あの流れで受け入れられちゃうお話づくりをできるのがすごいところだなあとしみじみ。

 

また、特筆すべきはスキットシステム。

マップ上の吹き出しを調べるとちょっとしたキャラの雑談が聞けるんですが、これがまた面白くってもう。メタいギャグから重々しい設定のチラ見せ、心情描写の補完など、数も多ければ内容も多彩です。中にはメインストーリーに並ぶほどの感動があるスキットも有ったりして、ミニ会話ながら侮れません。

そして、前述のルート分岐の細やかさにも関係しますが、同じ場所のスキットでも同行しているキャラによって内容が違っていたり、反応が変わったりするんですよね。どれだけ手を尽くしてあるのかと!

私はRPGの会話分岐や差分集めが大好きなので、そういう意味でも楽しかったです。

 

会話分岐と言えば、ボス前会話もそうですねぇ。ルート分岐の関係で何度か同じダンジョンを攻略したり同じ敵と戦ったりするんですが、その反応も細かく変わるんです。流し読みしかけて二度見し、大慌てでバッグログを取ったことも。いやあ実に油断しておりました、感服するほど丁寧な作りです。中にはキャラの組み合わせによって全く違う会話になる戦闘もあり、たいそう興奮しました。

 

 

 

区切りのちょうど良さ

 

前提として、大長編RPGというと私はDLする時点でよっぽど好みだと事前にわかっていないと及び腰になってしまうタイプです。また、プレイ中も「腰を据えてやらねば」と気合を入れがちです。

そんな自分ですが、この作品はプレイ時間の長さやシステムの面ではかなりテンポよくカジュアルに楽しめました。

 

一番の理由は1ルートの長さです。

私は1ルートにつきフルでだいたい4~6時間かかってたんですが、この長さが私の想定する短編RPGとぴったり合致するんですよ。なので最後まで気合入れてプレイできました。

序盤は繰り返しもあるので、別ゲーに浮気してから戻ってきてもすぐ思い出せて、区切りがいれやすいのも魅力ですね。

 

また、ポイントとして挙げたいのが引継ぎ要素の超豪華さです!

各種引継ぎはもちろんのこと、さくっと共通部分をショートカットできる「タイムリープ継承」なるシステムまで搭載。しかも、セーブデータは通常のセーブと別枠なので、引継ぎのために貴重な思い出集を削る必要はありません。本当ここ嬉しかったなあ!!

余談ですがデータ作成中の皆がわちゃわちゃ動くドットかわいくて好きです。

 

さくさく進んでボス戦でちょっと悩んで、物語の濃さに震えて手を止めて、それでもまた手を伸ばせばどんどん先へと向かっていける、そんな作りだったように思います。

 

 

 

カツカツMPをG技でやりくりするハードバトル

 

上記の通りシステム面はプレイヤーに優しい一方で、バトル面はそこそこハードなバランスです。初回プレイではよっぽどの修羅でない限りスタンダードをおススメします。

といっても、理不尽だったり運ゲーだったりするわけではなくて。単純に通常攻撃連打では厳しいけど、ゲージ技やスキルを使いこなすとめちゃくちゃ幅広くて楽しいので、独自要素に慣れるためにまずはスタンダードでチャレンジして欲しいなあという気持ちです。

 

各種スキルの奥深さはそれこそ実プレイでボスに挑みまくって蹴散らされてこそだと思うので置くとして。面白かったのは常にキャラが動き回ることと、リソース管理要素を含んでいるところでした。

まず前者について、手持無沙汰に防御したり通常攻撃したりするターンが全くないんですよね! 通常攻撃がMP回復手段のうちなのでダメージ以上のリターンがあって、スキルもダメージのみでなくゲージ(以下G)稼ぎに利用できる――ダメージだけ見れば不要な行動も別の方面では効率的に戦略へ組み込めるところが楽しかったです。

そして後者、G技の発動タイミングや稼ぎ方がそりゃもう、めちゃくちゃ楽しかったんですよね! チャージして必殺技を放つというそれだけでもうテンション上がりませんか。私はめっちゃ上がります。醍醐味です。

戦闘後もGは継続されるので、ボス前にある程度稼いでおいてから挑むなんていう小技もできます。3Gを越えるとリセットされてしまうので積極的に使いたくなるのもニクイ作りです。どのキャラも複数の属性技を使えるので、どのパーティを組んでも応用が利くと言うのも嬉しい点でした。やっぱり好きなキャラを連れ歩きたいですもんね!

 

バトル要素を切り出してハクスラゲー等も面白そうだなー、なんて。武者や戦闘狂い用にバーサーカーなる高難易度まで搭載されているので、ストーリーのみならずバトルもがっつり楽しめます。

 

 

 

合わなかった点

 

さて一方、これだけの超大作であるからには、少しばかり合わなかった点もありはします。

 

マイナスに感じたのは、

 

・作中だけだと完結しない設定がある

主にメタ要素になるので、むしろ作中では解き明かせないというジレンマもありはするのですが。ですが……! フラメが選ばれた辺りとウサギの設定云々はやはり知りたかったところでした。

 

・序盤~中盤の水Gが死にスキル化している

終盤は大活躍でもあるのですが、G技が少ないとどうしてもその属性の技を使う機会も減ってしまうので、もったいなかったなあと感じます。

 

・キャラの内面や演出重視でやや唐突なシーンがある

具体的にあげるとクロエ初加入時や、Ωトゥルールートの東西ボスなど。クロエは余所で事前情報を得ていたのと彼女の役割の特性上まだ受け入れられたんですが、東ルートは「初めまして……?」という気持ちがありました。そして西ルートは、ここで決着をつけておかないとヴァニが割り切れないままになってしまう気持ちはわかりますし魔女云々の話のフラグがありはしたんですけども、もうちょっと強いフックが欲しかったです。

 

・秘奥義など特定の操作の説明が遅すぎる

序盤チュートリアルは丁寧なんです。ただ、秘奥義だけはうーん! 既にリィトのスキルに秘奥義マークが出ていた後だったので、今更感がありました。勿論説明がないよりはずっと親切なんですけどもね。

 

とこの辺りがぱっと浮かぶ合わなかった点、黙っておくと不誠実な気もするので書きました。

 

 

とまあ、こんな感じで。

少しだけ合わなかった点を書きましたが、やっぱり本編の充実感とは比べ物にならない些細な要素ですし、作りがかなり丁寧な作品であることは確かです。

 

ループ物、キャラや心情描写重視、鬱展開を乗り越える鬱展開のその先、熱くハイレベルなバトル、などにピンとくる方へ。

 

 

追記ではネタバレ込みの感想など。

 

 

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フリーゲーム「1bitHeart」感想

「何でも合わせてみせるけど何一つ合わなくたってよかった」

十人十色のお友達を作りたい前置き。

 

 

えー、今回はStar Vlastaさんところのフリーゲーム1bitHeart」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

エンド分岐とフリー行動有り、本編は一本道なADV。

ちょっとズレた少年がおともだちづくりを始めるゲーです。

 

とにかくキャラクターとグラフィックがめちゃくちゃ合いまして! 気づけば感想文がめっちゃ長文になってしまいました。お急ぎの方向けに書くと、キャラ重視派の方で公式サイトの雰囲気にピンときたらとりあえずDLして損なしだと思います。

 

というわけで良かった点など。

 

致命的にズレてる主人公

 

この作品を語るにおいて、何よりもまず主人公について触れる必要があります。

プレイしていただいた方ならわかると思いますが、なにせ登場時の自己紹介からあの有様! コミュ障・引きこもり・自己尊厳欠如などなど、キャラ属性だけ取り出すとそりゃもうとんでもなくダメダメに見えてしまいがちな子です。

しかし、勘違いしないで頂きたいのが、決して決して「悪い奴」じゃないんです。むしろ主人公としてはパーフェクト。

困った人がいれば自分の身を一切考えずに助け、どんな奇人変人相手でも柔軟に対応でき、能力もかなりの優秀さです。自己卑下がすさまじいんですが、ウジウジはしてないんですよね。さくさく話は進みます。その軽さに裏を感じたくなるほどに。

 

なんかもうここまで書いた時点でどうまとめようか悩ましいくらいにはややこしい子です! ややこしいけど愛くるしいんです! 応援したいけどビンタしたい! わかりますか! わからん!

作中、色んなキャラが彼のことをぽそりと口にしてくれます。その言葉がどれも形は違えど共通です。そして、彼のことをどれだけ好ましく思っていても「確かになあ」と感じてしまうくらい、的確なマイナス表現です。

 

こんな厄介な彼を主人公にして、話はどう転がるのか?

彼はクズでごみでどうしようもなく優秀な引きこもりとして終わるのか?

 

これはもう見届けざるを得ないでしょう。

そんなわけで、キャラ重視の私みたいなプレイヤーをがっつり掴みにかかるキャラ造形だったなあと思います。

 

 

友達100人できるかな!?

 

熱く語った主人公のお友達を作っていくことが作中の主な目標です。

好きそうなアイテムをチョイスしてプレゼント――というところは一般的なキャラ攻略ゲーの手法通り。ですが、主人公の設定が「好きそうなもの」のわかる理由付けにもなっていて、システムとストーリーが見事に噛み合う気持ち良さを感じました。

 

さらにはそのアイテム類もかなり多種多様で個性的。なんとなーく聞き覚えのあるアイテムから自分まで欲しくなっちゃいそうなものまで、なんと驚き50種類! 

好みのアイテムを渡すと特別セリフを見れて、どんどんキャラを知ることができてなおさら魅力が深まりました。

そのぶん使う機会の少ないアイテムがあったのは少し惜しくもありますが……。このキャラは地元由来のアイテムが好きなんだなあとか、このイロモノアイテムはやっぱり人気が無いんだなあとか、色々とキャラ妄想が捗りました。

 

さて、もちろんアイテムを渡すだけがイベントではありません。

総勢47名!(のはず!)という多さでありながら、全キャラにしっかりしたエピソードが組み込まれているんですよ。しかも中にはちょっとしたイベントやおまけゲームが挟まれているキャラもいて、キャラ萌え勢な私としてはたっぷりボリュームに大満足でした~!

 

 

一言に個性と熱の込められたパートボイス

 

この時点ですでにこれでもかというほどなんですが、さらに全キャラパートボイスがついてます。なんたることだ。

基本的には自己紹介・タイトルコール・フレンド・会話中数種類、という感じで、短さの中にがっつりと個性を感じられるような作りです。良い声の人ばかり、耳が実に幸せでした……!

 

ボイスが好きだからキャラも好きになっちゃう、なんてキャラもいたり。私はヒユの「ふっふっふ~」と、エンリの「あ~……」みたいなボイス、あとミカドの物腰柔らかながらも危うげな感じが大好きです。一声でキャラを感じさせてくれて惚れてしまいました。ヒトヒトの「しゃっす!」も良いですよね、聞いててすんげぇ元気が出ます。

特にエンリは惚れたので中の人のサイトまで探しに行ったんですが、こちらの声質の幅広さに惚れ直しました。喉に数人飼ってる!

 

しかもメインキャラは決めどころではフルボイスで喋ってくれます。この演出がまた凄い。

ただいかんせん、私実はミサネちゃんとナナシの中の人のセリフ部分の喋り方がどうも苦手でして……。叫び声や反応ボイスはとても上手だと思うのですが……素直クールや明るく乾いたキャラって演技難しいよね、わかりはする。なので、苦手なボイスのキャラがいると逆に……ということもありうるとは思います。

そういう意味ではボイスの音量調整ができると嬉しかったかもなー、なんて。

でもでも、ボイス付きなこと自体はそりゃもうめちゃくちゃすっごい嬉しいし楽しかったので!! ボイス付きフリゲはまだまだ少ない数しか触れられていないので、中の人を知るきっかけにもなりました。

 

ゲームの作者様自体がボカロ動画等で活躍されている関係か、ニコ動関係で有名な方も多かったように思います。ぷよキャラ音MADドン栗さんや、「殺し合いハウス」シリーズのうち「盗み合いハウス」から参戦したガッシュ役のFull-Go-Riさんなどなど。

特にガッシュは声を聴いた時に「おっ?」と思って調べてみたら「やっぱりー!」だったので二度嬉しかったです。演技が好きなんだよなあ!

あと、イヅチ役のしぐれなおさんは今作から気になってサンプルボイス動画を聞いてみたんですが、いやあ演技の幅広さにびっくらしました。

 

余談ですが各キャラのイベントでそれぞれ専用BGMがあるのも良いですよね~。

こういう、キャラの見せ場だと専用曲が流れる演出めっちゃ好きです。

 

と、ここぞとばかりにリンク貼りまくってしまった。

つまりボイス面も豪華でプレイしててめちゃ楽しいです。

ゲーム内の一部シーンを中の人がフルボイスにした有志の動画もあるので、クリア後は遊びに行くとなお美味しいかと!

 

 

 

話し合って相手の矛盾を突きつける

 

キャラ面を強く推しまくりましたが、もちろんメインのゲーム部分も面白いところです。

あちこち歩いて情報集めをした後、気になるキャラと1対1でトークバトルを行うのがだいたいのゲームの流れ。

ミステリ要素が強いですが、推理が苦手な人のためにヒントの閲覧ができるスペシャルモードが実装されていることに加え、ギリ総当たりもできる難易度なので詰まることは少ないと思います。私は推理物好きなわりに下手くそでして、この辺りのゆるさにはとても助けられました。

 

私はよく、物そのものを指摘すればいいのか、その情報に至る経緯?を指摘すればいいのかわからなくて困りがちなんですが、その辺りも情報のアイコンである程度判別がつくようになっていて良心的でした。

 

「それは違うよ!」さながらのスタイリッシュさも素敵です。カットイン入ると盛り上がりますよね!

 

 

 

イマドキ近未来世界観

 

各個人にIDが付与される「管理プログラム」

メール送受信もフレンド登録もアプリもこれ一本「ビットフォン」

皆の近況を共有できる「poturi」

バカへの罵声は「bit以下!」

今現在(2017年)の感覚からなんとなーく発想が共有できる、「近々実現しそう/してる」雰囲気がすごい興味深いなーと感じました。極端にSFしているわけではなく、駄菓子屋さん等々も生き残ってる、まさにありそうでない近未来世界観です。

 

キャラのネーミングも形は苗字名前の馴染み深いものでありながら、名前が漢字一字・響きがかなり独特、というのもオリジナリティを感じました。DQNネームでも厨二ネームでもなく、あえて挙げるなら暗号やもじりに近い気がする? なまじ私が命名論齧ってた関係ですごい興味深かったです。

 

で、ここに作者様の圧倒的なキャラデザパワーが加わるおかげで、共感できるのにものすごく目新しいフィクションワールドが出来上がってるんですよね!

これ本当すごい。横スクロールな画面も合わさって、あちこち歩いて背景を見たりするだけでもすっごく楽しかったです。ミカドルームとか飽きずに定住できる勢いです。

新キャラが出てくるたびにそのデザインにほれぼれすることもしばしばでした。耳元のビットフォンのデザインが全員違うのも細かくていいですよねぇ。

 

どのキャラも大好きだけど、特にトバリさん・セキユさん・同志サガラ・サヤ・メアリーがお気に入り。ツイッターアイコンお借りしてました。かーわいい。

公式サイトで全身立ち絵と設定メモが見れるので、お絵かきする方はそれこそ涎ものの資料になるのではと思います! 簡明でちょっと本音の零れてるコメントにもふふっとなりました。

 

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

少年少女と青春話、近未来世界観、日常?ミステリ、キャラとの交流などにピンとくる方に強く強く強くおススメしたい一作でした!

追記ではネタバレ込みの感想など。

 

スピンオフの続編『1BeatHeart』

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フリーゲーム「8人目のフラグ」感想

「0と1が繰り返す世界では単純に事を為すべきだ」

届かないなら壊せばいい、足りないのなら作ればいい前置き。

 

 

えー、今回はすいかじるさんところのフリーゲーム8人目のフラグ」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

 

クリックで進める、探索&ノベルなADV。クリアまで2時間かかりましたが、細かいポイントを回収していくともっとかかります。そしてそれだけの価値と細やかさがあるゲームです。

 

なお、ネタバレしちゃうとかーなーりもったいない作品でもあります!

紹介ページで察せれそうなところまでは隠さず書いてしまっていますが、既に気になっている未プレイの方は掴みだけでもまずやってみることをおススメします。

 

 

というわけで良かった点など。

 

 

暗中模索の廃墟探索

 

真っ暗な廃墟にポンと放り出されるところからゲームは始まります。

何をすればよいのか? 主人公は何者か? 現れる少女たちはどういった立ち位置なのか。それらの疑問が明確に開示されるまでにまずは手探りで動く必要があります。

「なんだこれ?」が「なんかわかってきた気がする」になったタイミングでイベントが起こり「なるほど!」と思わず叫びたくなってしまうこの感覚。いやあこれぞ探索ゲームですよねぇ。察しのつく情報とまったく意外な展開、二つが織り交ざっているおかげでぐいぐい先を見たくなる魅力がありました。

 

また、廃墟探索ということで暗く荒れ果てた雰囲気も魅力の一つです。

ボロボロのぬいぐるみ、割れた窓、破れかけの手記、スクラップの機械などなど。軍艦島とまではいかずともこういうスポット好きな人には涎ものかと思います。

 

 

 

ドアは蹴り飛ばして開けるもの

 

探索ゲームとして面白い切り口は、小難しい謎解きや常識クイズが一切ないのにも関わらずきっちり謎が隠れている点です。

基本的にパスワードも鍵もそこらへんに落ちていて、取得だけならとっても簡単。「どうそれを生かすか?」に頭を悩ませる場面があったように感じます。この辺り上手いと思うんですよねぇ! 探索ゲーにおける突っ込んじゃいけないツッコミ部分を全く感じさせることなく、「その場所にあっても違和感ないもの」が大半を占めているところにリアルさがありました。

ストーリーの進行状況に応じて行ける場所が増えていく解放感を残しつつ、その制限の仕方にはきちんと理由があるという……ストーリーとシステムが繋がるのも気持ち良かったです。

 

 

 

細かな探索ポイントと嬉しい会話イベント

 

調べられるポイント自体はかなり多め。ですが、虱潰しになる場面ではあえて探索ポイントが限られる状態になったり、前述の通り序盤は進行制限がかかっていたり、行動可能時間が極端に減ることでまだ先に進めないポイントなのだと示唆してくれたり、プレイヤーのことも考えてくれている作りだなあと感じました。

また、見つけるとちょっとクスッとなる楽しい会話イベントもあります。こういうサブイベントっぽい会話とか、道中で誰かに話しかけられるシステムとかって、さりげないながらもにこにこできて良いですよね。

 

 

 

コミカルで元気いっぱいのキャラクター

 

会話についてもう少し。

タイトル画面の低く響くモーター音と言い、くすんだ廃墟とモノトーン寄りの画面と言い、初回プレイ時はホラーかと思うほど退廃的な雰囲気が漂っています。

が、その雰囲気をがらっと変えてくれるのが登場するキャラクター達です。軽快な掛け合いに加え、それぞれ異なる性格ながら根がからっと明るいところも魅力的。某所の「だめじゃん!!」には思わず吹き出してしまいました。

探索文書内で見られる掛け合いも、ほんとにリアルでありそうな和やかさとテンポの良さでした。

 

基本は親切なコンフィグ・システム面

 

一方惜しい点として、少々バグが残っているのも触れざるを得ないところ。

ですが基本は「実績開放率が100%を超える」といったある意味お得なものです。強制終了も稀に起こりますが、オートセーブ式なので復帰は楽ですし、基本的に詰むことは無かったと思います。あれだけのイベント数をウディタで管理してる時点で相当な苦労があったでろうことは想像に難くないですしねぇ……。

コンフィグ面で言うと、文章スピードの一瞬表示やバッドエンドでのエンドロール早回しは実に助かりました。

 

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

さらに語りたいポイントもあるのですが、ここはネタバレド直球になってしまうので追記にて。

 

廃墟、シリアスだけど明るい意外性、細やかな会話分岐、綿密な伏線などにピンとくる方へ強くおススメの一作でした。

 

追記ではネタバレ込みの感想など。

 

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同人ゲーム「ファタモルガーナの館」感想

「真っ暗闇に落とされるよりろうそくだけ持たされる方がなお恐ろしい」

消えてくれるなと祈り続ける前置き。

 

 

えー、今回はNovectacle(ノベクタクル)さんところの同人ゲーム「ファタモルガーナの館」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

人の想いが痛いほど響くノベルゲーム。

確かかなり昔にタイトルを聞いたんですが、今でも必ずと言っていいほど話題に上がる有名な同人ゲ。商業化やコミカライズなどもされた他、シナリオライターの縹けいか様は「モーテ」というラノベデビューもされています。

 

そんな有名話題作を今になってプレイしました! 

良いものはいつプレイしても良いものですねぇ。

 

 

 

というわけで良かった点など。

 

 

誰しもに非がある悲劇

 

あらかじめ書くと鬱展開で彩られている作品です。心が痛む展開も、どうにかできないかと歯を食いしばりたくなる展開も、多くあります。

根っからの悪人はいません。常に恨み言なく佇む善人も、たぶん本当の意味ではいません。お前が悪い、と言いたくなる人が多く居ますし、あなたのせいではない、と言いたくなる人が多く居ます。

この具合がね、もう心底絶妙なバランスで震えました。

どちらかに傾きすぎるとただのお綺麗事か、あるいは露悪的なイジワルのお話になってしまう気がするんですよ。ここがね、この作品だとどちらともつかなくて、人の気持ちの葛藤とか、どうにかしたかったのにどうしてもどうにもならなかったやるせなさとかが、痛いほど感じるんです。

具体的に書くとネタバレを免れませんので追記で熱く語りますが。

何とも言い難い、割り切れない気持ちに惹かれる身としてはとてもツボでした。

 

 

 

悲劇の先を探し出す選択肢

 

さて、この作品はマルチエンド式で、選択肢によってエンドが分岐します。

驚かされたのはこの分岐の仕方です。仕組み自体はたまに見かけるものの、そこに至る過程が丁寧だなあと思いまして。

私がぶつかったのはエンド1と2だったんですが、どうにかならないかなあと探しに行ったその先にヒントが明示されていて、本当感動したんですよ。あれを見つけた時にぶわっと鳥肌が立って、ああこれは見届けねば!と力強く拳を握りしめました。

 

また、特殊な分岐について、事前のバッドエンドがあるからこそ次の選択肢での正しい行動が察せられるような作りになってるのが、まさに巧み! プレイヤーがどう動きどこに驚くか、といったところを見透かすかのような出来でした。

舞台裏を読み、この辺りも狙われていたんだろうなあと思ったり。

 

 

 

美麗で重厚なグラフィック

 

厚塗り?っていうのかな。スチルや立ち絵はどれも重厚なのに幽玄。舞台が闇に包まれた館なのもあわせて、息の詰まるような重苦しさや陰惨な鉄さびの臭いまでが伝わってきそうなグラフィックです。

 

また、キャラによって表情差分が全然違うのも見どころでした。歯を見せてにかぁっと笑う彼女と淑女らしく微笑む彼女、考え事をしてる時にふいと斜め上を見ちゃう口下手な彼と、気まずそうに伏し目がちの卑屈な彼、等々。

ストーリー内で視点変化が時折起こるんですが、終盤ではそのキャラ視点でなくとも「あの表情してるってことはああいうこと考えてるんだろうなー」と察せられて微笑ましかったです。

 

 

 

歌声が耳になじむBGM

 

私、元々ゲームのBGMに歌声が入ってるのには否定派だったんですね。バトルみたいに別の頭を使う場面ならともかく、読書中にボーカル曲が入るとなかなか集中して読めない性質なもので……人の話し声は全く耳に入らないんだけども……。

ともあれ、それがこの作品で認識を改めさせられました!

随所で響く綺麗な歌声や、ここぞという場面で盛り上がる曲調が本当に美しくて。もちろん綺麗な方面だけでなく、陰惨な場面での唸るような声や、どこからともなく聞こえる狂笑などなど。さすが起動画面の注意書きにヘッドホンが推奨されているだけあって、音の演出も素晴らしかったです。

 

プレイを進めるとだんだん、この曲が彼のBGMなんだなあというのがわかってくるんですよね。例の曲が流れだすと気になるキャラのメインどころではないかとわくわくしました。

ちなみに亜麻色の曲がお気に入りです。あれ、歌詞はなんて言ってるんでしょうね? 「のどかのどか」だけがはっきり聞こえて、うす暗い闇が忍び寄る展開と裏腹だなあと思って、なんとも心を刺された覚えがあります。

 

 

 

 

余談

 

実は私、派生作の『霧上のエラスムス』を公開当時にDLしておきながら、本編をクリアするまで取っておこうと思って置いてたんですよね……。今にして思うと本当にもったいないことをしたなあと!思います!!

私のように派生作を後回しにしがちな方がいれば、先にエラスムスをプレイしておいて作風含め色々掴んでおくのを強くオススメさせていただきますね。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

そう言ってやりたくはない気持ちも含めながら書きますが、濃密な鬱展開でした。お話面も演出面も、どこをとっても驚かされ、心が震える良作です。

 

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追記ではネタバレ込みの感想など。

 

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フリーゲーム「白のキョウメイ」感想

「どちらかが選ばれるのではなくて、望まれるほうだけが残される」

あなたの意図に生死を沿わせる前置き。

 

 

えー、今回は箱庭のイデア(栄崎)さんところのフリーゲーム白のキョウメイ」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

探索重視の謎解き脱出ゲーム。パステル調の可愛らしいイラストと、和やかな中に一匙の猛毒が入っているようなお話が魅力の作品です。

 

以下はネタバレを匂わしてしまっているので、これからプレイ予定の方はぜひプレイ後にどうぞ。

 

というわけで良かった点など。

 

 

 

4人の少女を切り替えて謎を解くシステム

 

この作品で一番特徴的なのはザッピングシステムです。

探索自体は狭い1マップで行うのですが、4人の少女の視点を切り替えていくことで少しずつ脱出への道が進展していきます。こちらで手に入れた情報があちらで役立つ、というパズル感が楽しいシステムでした。

情報は引き継がれてもアイテムが引き継がれない、というのがまた上手いですよねぇ。

それぞれのヒントとなる情報は色で判断できるので、難易度としても調整が効いてて良いなあと思います。なお、私みたいにちっとも謎が閃けないプレイヤーでも安心の攻略ページもあります。ご安心。

 

 

 

四色に分かれた部屋と繊細なドット

 

ぱっと目を引くのはやはり色使い。四色の部屋に4人の少女とあなた、部屋固有のBGM。見た目は異なるけどピアノの音色やパステルな色味は共通で、和やかなのにどこか落ち着かない気持ちにさせてくれます。静かな不安、たまりませんよね。下手なホラーより怖い。

 

クリア後にBGM鑑賞ができるの、すごく嬉しかったです。ああいう、ええと、アンビエント? 綺麗な音なのにざわざわする雰囲気の曲好きなんですよねぇ。聞きやすいのは赤だけど、好きなのは青かも。

 

話を元に戻して。

1マップだからこそ必要なアイテムやフラグはその部屋に全てぎゅっと詰まっています。全て。うぅ……。その部屋にいる少女を印象付けるアイテムがぽんと置いてあるのがまた、良いんですよねぇ。象徴的。

基本的に虱潰しすれば探索はなんとかなりますが、一か所よく目を凝らさないとわからない点は注意かも。室内が繊細で雰囲気のある空間なので、探索自体はむしろずっと浸っていたいと思わされるくらいでした。

 

 

 

要所を彩るスチルと細やかな少女の表情

 

ボリューム自体は短編ですが、スチルや表情変化は豊富です。

こう、プレイヤーの性癖が性癖なもんで、ついハイライトの消える場面ばかりスクショを集めてしまいまして。でも皆の、ほわ、っとした笑顔も和やかで可愛らしいです。うぅ……。

一枚絵やアイテムに関しては、こう、モチーフの使い方が上手いんですよねぇ。

エンドロールでのリボンの位置に気付いた時は思わず息を飲みました。

こういう、棘のように襲い掛かってくる感じが、大好きです……。

 

 

 

うそつきレーネの物語

 

前作「ハコイリさま症候群」でサブメインキャラとして登場していた、嘘つきなレーネちゃんが主役です。これだけでもめっちゃ嬉しい人は多いのではなかろうか! 彼女については前作で色々と気になる点がありつつも、焦点はそこまで当たらずに終わってしまった印象があったので、新しい形でがっつりと彼女の魅力が楽しめて嬉しかったです。

といっても、前作の話は知らずとも本筋に影響はないので、この作品から始めても問題はありません。ただ、レーネが嘘つきだという前情報さえあれば理解はしやすいと思います。

名前入力で没入感を大きくするのもまた良い演出ですよね。

数日は後に残りそうな感じでした。

 

 

とまあ、こんな感じで。

 

 

切り替え型謎解き脱出、和やかな雰囲気の裏の不安定さ、パステルカラーとピアノと少女達、鬱展開などにピンとくる方へおススメの一作です。

 

同作者様の他フリーゲーム感想記事↓

shiki3.hatenablog.com

 

フリーゲーム「ひびかけ色のキセキ」感想

「ご都合主義を少し損じるくらいの奇跡がちょうどよい」

欠けてる部分に魅力を見出す前置き。

 

 

えー、今回はecoddrさんところのフリーゲームひびかけ色のキセキ」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

ポータブルやブラウザ版としてのリメイクがあるようですが、私がプレイしたのはDL版ver2.14です。やっぱりPCに保存できる形式が安心するんですよねぇ……。

中身としては、ステージクリア型でバトルと会話が交互に進行する感じ。こういうのもローグライクって言っていいのかな。

 

なお少し変則的ですが私は、

『ひびかけ色のキセキ(以下、今作)』のストーリークリア

前作『Test of Magic(以下、前作)』をクリア

今作のおまけモードをクリア

という経緯があります。そんなわけで多少前作のプレイ感が前提となっている感想になってます。気になる方はそちらも併せてどうぞ。

なお、公式には作品双方に関係性はありませんので、今作単品でしっかりがっつり楽しめます。

 

 

というわけで良かった点など。

 

 

 

手持無沙汰はあり得ない、洗練されたバトルデザイン

 

前作とバトルシステムはだいたい共通ですが、大きく注目したいのは「Linkage」コマンドです。ざっくり書くと他キャラのMP回復ができるコマンドなんですが、これ一個あるだけでかなり戦略に幅が持たせられました。

よくあるRPGってたまに“待ち”のターンができると思うんですよ。例えば敵が無敵ガードスキルを使ったとして、バフデバフと回復でのんびりターンを進めたり、たまに手持無沙汰で無駄に防御してターンを消費したり。あるいは回復役が雑魚戦でターンを持て余して無駄に素殴り1ダメージを繰り出したり。

 

そういう“待ち”の状況が、このコマンド一つでまるっと解決してしまっているんです。上手い!

 

キャラによって性能が異なる他、特殊効果は1ターンで切れるため「誰を」「誰に」「どのタイミングで」回復させるかというところでも試行錯誤の楽しみがありました。

 

 

快適さをこだわり抜いたコンフィグ

 

画面サイズや音量はもちろんのこと、難易度調整からSEのオンオフに至るまで、ツクール製では珍しい細やかさがありました。

あえて上げるなら拡大するとピンボケっぽくなってしまうところは惜しくもありましたが、あるだけでありがたいのでそこを突っ込むのは厳しすぎかもとも。

 

実績要素のおかげでバトルの楽しみも加熱されます。

解除100%の実績がなぜか解放されなかったのは切なかったですが……どうやら既存の原因不明なバグのようですし、コンプ特典等があるわけではないようだったので致し方なし。

エレクトロチェーンなど、少なくとも私の脳筋な戦闘スタイルでは使う機会のなかったであろう技は実績あってこそでした。ややこしげな技のチュートリアル代わりにもなっているのかなー、なんて。

 

 

 

付け替え・固有で好きキャラをよりお気に入りに

 

かなり戦略バトルに重きを置かれているこの作品ですが、嬉しかったのはスキル付け替えができる点でした。ノーコストで色んなスキルをお試しできるうえに、スキルレベルの上げ下げも自由にできるのが本当にありがたかったです!

どのスキルでも使えるというわけではなく、キャラによって使える使えないの差があるのもポイント。使いたいスキルと愛着あるキャラとで脳内会議をしつつ、パーティ構成のバランスを考えるのも楽しみの一つでした。

 

また一方で、一切付け替えができない固有スキルがあったり、キャラによって覚えるステータス上昇スキルが変わっていたりするのも見どころです。

何よりこういう固有スキルって“キャラらしさ”が感じられていいですよねぇ。Linkageに追加される効果も併せて、誰とどれを組み合わせるかの幅がかなり広がって楽しかったです。

 

属性幅の広いルネは、ローバッテリーも併せて補助キャラなんだろうなあとわかりますし。エリシャは強気な姉御肌と思いきや、例のスキル名でニヤニヤしますし。ヒーラーらしいミシェルが水属性使えないのも良い縛りになってますし。

私は特にソラが好きだったので、スキルポイントをつぎ込めばつぎ込むほど強くなってくれるのがすごく嬉しかったですねぇ。

 

 

 

シリアスとほのぼの両方が楽しめるストーリー

 

バトルのみならず、ストーリーもなかなかのボリュームがあり見どころたっぷりです。

状況としてはかなりシリアスで陰鬱。危ない魔物や怪しい薬、陰謀うかがえる情勢と戦争など、私好み――もとい、ちらりとハイライトが消える展開もありはします。が、キャラ同士の掛け合いが明るく前向きなので、鬱展開というよりは困難に立ち向かう女の子たちの友情物語という印象でした。暗い話が好きな人にもハッピーエンド至上主義の人にも、おススメできる内容だったと思います。

 

区切りごとに会話シーンが入るので、お話が飲み込みやすかったのも良かったですねぇ。さらには細かな回想機能のおかげで、読み終わったストーリーを一通り全部見返すこともできます。これは本当にうれしい!二次創作が捗りますね!待ってます!!

章ごとのタイトルもひそやかにツボでした。クリア後のソラリジェ会話のタイトルがたまらん……!

 

 

 

キャラ同士の関係性が深まっていく展開

 

また上記と重なるところもありますが、キャラ同士が少しずつ形を変えて成長していくのを見守れるのもストーリーの良点でした。

リジェの方向性、シイナの気持ちの在り方、ソラの自暴自棄、ルネの無感動、などなど。どの面を切り取ってもそれぞれに成長があって、ああこの子たちを応援できて良かったなあと思わされます。出番や見せ場に差はあれど、どの子も主人公、と言えるかもしれません。

 

キャラとキャラの関係も良いですよね。言ってしまえば百合ですよね。ブラボー。

ある程度組み合わせは固定化されていますが、ステージによっては意外なキャラ同士で進むことになることもあり、全員がきっちりストーリーに組み込まれているところも好感が持てました。置いてけぼりがいないって大事。

 

ここらは詳しく語りすぎるとCP萌えが過ぎそうなので、詳しくは追記にて。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

 

ここまで見返すと、本当前作で物足りなかった部分が順当に進化してるんですよねぇ。しみじみ。前述のとおりスマホ版も出ていますし、さらなる進化を応援したいところです。

 

シリアスでほのぼのな友情物語、百合、魔法、戦略バトルなどにピンとくる方向け。

 追記ではネタバレ全開の各キャラへの所感など。

興味ある方は下へどうぞ。

 

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