うそうさ〜第二号室〜

フリゲ・鬱展開・ヤンデレ 万歳!

フリーゲーム「汝の神を愛せよ」感想

「分かれ道に立てた木の棒も、道標たるなら神と呼べ」

形のないものを信じるのは疲れる前置き。

 

 

 

えー、今回は露骨(あきばれ)さんところのフリーゲーム汝の神を愛せよ」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

 

エンド分岐有の男女恋愛ノベル。育ての親×孤児。

同作者様の他フリーゲームと世界観を同一とする、シリーズものと言えばシリーズものな作品ですが、おそらくここからでも入れはする……はず? 少なくとも、ゲストキャラなどはいません。

 

 

というわけで、良かった点など。

エンド内容や話の展開など、軽くネタバレにも触れますのでご注意ください。

 

 

 

顔隠し×糸目

 

公式サイトを見ればわかる通り、メインキャラはどちらもお目目が見えないキャラデザになっています。

片や顔も髪型も隠した司教服、片や常ににっこり目な形の糸目

私は片目隠れ好きなんですが、こういうキャラデザがヘキな方絶対いらっしゃると思ってるので、そこに上手いこと届けばいいなあの気持ちを強く感じました……!! メカクレ攻略対象や糸目攻略対象まとめたサイトがあればいいなあと思うくらいなので。

 

で、使い分けも上手いなあと思っていまして。

司祭の方は頻繁に目も見開いて、困惑や驚きが見えやすい。一方、司教の方はまったく顔色が見えない、からこそ、ハッとさせられるシーンが多々。これは「好き」だからこそできる演出だなと感じました……。良い……。

 

 

 

敬語×敬語

 

時々くだけはするものの、基本的にはお互いが敬語で会話を重ねます。でも不思議と堅苦しくないんですよね~! 明るい会話のシーンだとテンポよく率直にやり取りしてるからかな?

あくまで彼らの自然体は敬語なんだなあと思わされるといいますか。なんか、親密度って別に語尾だけで測れるものではないんだなあと改めて感じました。

司教の、お前呼び&馬鹿扱い&含みと破壊力のある褒め言葉が大好きです。辛辣さとときめきのバランスがたまらん……。

 

 

 

エンドの半数がお別れ

 

斬新だな!と感じたのは、用意されているエンドの半数が攻略対象と別れて終わるという点です。全クリしたらそりゃそうなると納得するものの、初めはかなり驚かされましたね~。

ある意味2部構成とも言えるのかな? まずはこの作品における神の愛の定義を感じつつ、エンド5~8を埋める。そうすることで次に、司教という人となりの根っこにある部分を理解しながら、エンド1~4が埋まる。みたいな。

こういう構成になっていることで、司教の覚悟なり、二人の立ち位置の違いなり、色々な深みを感じました。

分かり合えないかもしれない二人がそれでも居心地よくくっつく、みたいな、恋愛に欠かせない要素がそのまま丸っと人生観や人間の相互理解に繋がってるの、すごい構成だなーと思います。

 

 

 

神の愛とは?

 

さて、本作の大きなテーマの一つである、「神の愛」。これがかなり独自の定義で、内容としても興味深かったです。また、舞台は教会であるものの、この教義を信じていない人も多く登場するので、こちらも設定に入り込みやすく、スッとプレイできました。

何より、司祭の告白というか懺悔というか、想いの丈を吐露してくれるシーンがすっごくストンと心に響いたんですよね。恨みとか怒りとかじゃなくて、ただぽつんとした静かな気持ちだったのが、めちゃくちゃ好きでした。

 

あと世界観と言えば!

エンドに入る直前の、それこそ天啓のようにぼんやりと浮かび上がる一文が大好きなんですよ……! 全体的に白基調でBGMも荘厳、隅々まで神というモチーフを感じられる作品です。過去作と雰囲気が全く違うため、同じ世界観ということもしばらく気づかなかったほどです。

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

本作独自の宗教要素、それにまつわる人たちの想いなど、ずっしりした世界観を感じさせつつもメインの恋愛も骨太さを見せてくれる良作でした。

 

 

同作者様の他フリーゲーム感想記事↓

shiki3.hatenablog.com

 

 

 

 

追記では思いっきり核心まで書いているネタバレ感想。

 

 

続きを読む

フリーゲーム「退屈■■」感想

「幕を閉じるまでが責任というけれど、こんなのは遊びでしょう?」

箱庭世界でお人形ごっこする前置き。

 

 

 

えー、今回はつかみんさんところのフリーゲーム「退屈■■」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

一本道、1時間前後の短編RPG。雰囲気重視ゲーな印象。救われない物語の断片達に終わりを打つ話です。

 

www.freem.ne.jp

 

というわけで、特徴的な点など。

 

 

 

落ち着いた色彩のグラフィック

 

まず着目したいのはグラフィックとキャラデザ!

メカクレ被り物ちゃん・拘束衣・貴族紳士風などなど、並んで揃うと奇抜に見えるはずなんですが、不思議と一貫して見えます。

色合いのおかげかな。彩度低めって言うのかな、全体的に落ち着いた色合い。金髪の子でもすんなりあのベージュ基調な背景に馴染んでるのすごいですよね。

 

ただ、ちょっと類似作を思い浮かんでしまい、もやっとしちゃったかも。

マップの強調表示や命名センスにもちらりと見え隠れ……まあこういうのは思い込んだらそう見えちゃうものなので、何かしら感じた方は避けるほうがいいかもですね~。

 

 

 

厭世と安寧を感じるテキスト

 

まず驚かされたのは、初手で出会うマップの切り替え選択肢です!

ドギツイ言葉をどかんと一発目に持ってきて、説明なしでもどことなく察してわからせるこの演出。掴みからして実にゾクゾクしました。

他にも、敵名やボスの戦闘前口上など、あちこちにダウナーでネガティブな空気が漂います。

 

一方で、拠点での会話はとても和やか。

こう、ガールズトークといえばいいのか百合といえばいいのか……主人公だけ除け者にされたり逆に愛でられたりするのは、どことなくラノベ文脈っぽいかも?

いずれにせよ、温度差はかなりあります。何より初めてのボスを倒した時のBGMがめちゃくちゃ明るくてびっくりしたんですよね……。

 

なので、ダウナーな世界観ではありますが、鬱一辺倒というわけでもありません。緩急があるというよりは、ドロッとしたものを共有できる安心感……?

尖りと賑やかさの両方を感じる雰囲気でした。

 

 

 

不便だった点

 

システム的な説明やマニュアルがないため、もやもやするところはありました。

例えば初期装備の「解放」。ラスボス戦で使うみたいなエモ装備かと思いきや、使いどころが見極めきれずにいたので、気になっています。うーん。

 

あとは「クロワッサン」。

ちょっとした会話が見れて装備品がもらえるというアイテムですが、説明は「仲良くなれる」の旨のみだったので、戸惑いました。エンド分岐や好感度設定があるのかなと……。

クロワッサンの価値が100と重ためなので、軽率に使えないというのもためらいの理由でしたね~。といってもレベルデザイン的にそう安くできないのは理解できますが……。

 

こまごまとしたところだと、3つ目のダンジョンが広すぎたり、階段→前回のドアの先→前回のドアの先→階段と次のダンジョンへいく方法が一貫しなかったり。

 

総じて説明が甘め、かつ、やってみてわかる作りでもないという感じでした。ここら辺、フリゲ慣れしてる方向けの作品かな。

 

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

他にも、レベルや経験値の概念がないので、雑魚戦が嫌いな方にはとっつきやすいやもしれません。

 

正直言えば荒削りの印象はあるものの、雰囲気やグラフィックが特に光る、フリゲらしい良作でした。

 

 

追記ではネタバレ感想。

 

 

続きを読む

フリーゲーム「ドリートポーカー!!」の感想

「チップを賭けて、人生欠けても、夢を描いて続けよう!」

延々とギャンブルがやめられない前置き。

 

 

 

えー、今回はpsycho02さんところのフリーゲーム「ドリートポーカー!!」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

www.freem.ne.jp

 

ショタと心行くまでポーカーし続ける、エンドレスカードゲーム。一つの区切りは用意されていますが、クリアという概念はなさそうです。

 

 

 

というわけで、良かった点など。

 

 

どこでも気軽にレッツポーカー!

 

ディーラーとの駆け引きのようなものはなく、手札配布→チェンジ→ダブルアップ→手札配布、の流れを延々と続けます。

このテンポの良さが夢中になるんだ、これが!

ややこしいオリジナルルールなどもないので、空き時間にちまちまと、あるいは何かのついでにだらだらと楽しめます。

私はDL版でプレイしましたが、これからプレイするならブラウザ版をオススメしたいかも? DL版には最新アップデートが202108現在は入っていない他、隙間時間にプレイするスタイルからも、スマホから遊ぶのを想定されている気がします。

 

 

 

ストーリーから? スキンから?

 

ポーカーで溜めたゲーム内のお金を使って、ショップでお買い物ができます。ストーリーを進めるもよし、着せ替え要素を買うもよし。

この手のゲームは、一定の数を稼ぐとストーリーが勝手に進行するイメージがあったので、自分のペースで進められるのは嬉しかったですねえ。

 

しかもスキンのデザインがこれまたオシャレなこと!

パンク・ゆめかわ・季節ものなどなど、バリエーションも豊富で楽しかったです。エジカルロックがお気に入り。LINEの着せ替えとかで普通に欲しい。

ただ、買う順番はよく考えた方がいいかも……。私は掛け金アップのシステムを後回しにしていたので、ちまちま稼ぐしかない分、プレイ時間がかなり長くなりました。たはー。

 

また、システム関係だとBGMも注目かな。

曲数が多いのは嬉しい! スキンによってBGMが変わるのも斬新で楽しい!

一方でSE音量が一部調整できないのは耳が辛い……。難点はありつつも、基本的には操作しやすく楽しい作りでした!

 

 

 

転落も停滞も肯定するストーリー

 

さて、何度かストーリーという単語を使いましたが、いわゆるノベルゲームのような重みはありません。数行のテキストで進展し、世界観もふわふわとしています。

 

じゃあ不満なのかといえば、そんなことは決してなくて。

まず始まりから、どろりとまとわりつく挫折、厭世観、倦怠感などを感じるテキストがツボでした。そして、そこからバッと華やかなカジノのステージへ引き込まれるように展開していくのがまた、開放的で気持ち良かったです!

 

「鬱展開も好きだけど幸せになって欲しいよ~」とか、「一時の夢を永遠に!」みたいなのが好きな方向けかなあと思います。

 

ちなみに、仕様としては、スチルを買ってそこにストーリーがおまけとしてついてくる感じ。実質ギャラリーとストーリーが一緒になっているのが新鮮でした~。

 

 

 

ハロー、マスター!

 

本作の注目ポイントは、ゲーム起動時のパワフルな注意書きからもわかる通り、ショタです。

ゲーム画面の上部で常にさりげなくおしゃべりして、プレイヤーといつまでも共にいてくれるショタ達! なお、タイプとしては一見ロリと見紛うようなショタです。ショタに一家言ある方はその辺り確認してからのほうがよろしいかと。

 

私は2号くんが好きですね~! お話を進めてわかる彼の根っこのギャップで、ドボンと沼に落ちてしまいました。ふへへ。不安定なキャラ好きです……。

 

会話パターンはシンプルに数種類ですが、そこから感じられるキャラ属性はしっかり伝わってくるセリフばかり。

何よりダブルアップって、煽って後押ししてくる観客がいると熱も上がりますからね!

 

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

作業ゲーをお求めの方、運試しギャンブルを楽しみたい方、ビビットでキュートなグラフィックを楽しみたい方にオススメです。

 

 

同作者様の他フリーゲーム感想記事↓

shiki3.hatenablog.com

10分~30分短編ノベルフリゲ感想(「こちら、XXXXサービス」「アイビー」「画家オリフィエルの娘」「sister in the xxx」「ゆたかな暮らしの屑かごは」)

~「静かな夜に読んだ話を翌朝もまだ思い出す」

余韻が残る作品ラブな前置き。

 

 

えー、今回はフリーゲーム「こちら、XXXXサービス」「アイビー」「画家オリフィエルの娘」「sister in the xxx」「ゆたかな暮らしの屑かごは」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

10分前後でクリア・コンプできそうなノベルゲーをチョイス。相互に関係性はありませんが、あえて挙げるなら、女性向け寄りかな……? 乙女ゲーや女性向けノベルゲーに慣れている方が作成しているゲームが多いかも。

なお、DLできる作品は全てDL版でプレイしています。

どれもさくっとプレイできるので、少しでも気になる作品があればぜひ!

 

 

 

『こちら、XXXXサービス』

www.freem.ne.jp

 

10分ほどで全クリ可能、ティラノ製ノベルゲー。2周前提。

プレイ時間こそ短いものの、細やかなタイトル画面の変化や、イラストの構図を生かした演出などが光ります。ヤンデレらしいヤンデレの作品ですが、演出自体はミステリ?サスペンス?っぽいかも。

セーブデータが無い仕様で、全クリしても起動し直すとクレジットや後書が全部消えてしまうので、ここだけ注意。またティラノ製のお約束の通り、オート・文章スピード調整などの機能は一切ありません。分ゲーだから問題はないかな。

 

彼女が彼に言ってくれた言葉、良いですよねえ。

ここ上手くネタバレ伏せながら書くの難しいな。ええと、彼の異常性を誰一人として指摘しないまま終わる、真実は闇の中な雰囲気も好きです。

設定自体は、オムニバスな形式でいくらでも使いまわせそうな、汎用性のある内容なんですよね。だからこそ、この短さで多くを語らずブツンと終わらせるところが良い判断だなーと思います。

 

ミステリアスはベールの内側でこそ。

種明かしはないほうが、興奮するってもんですよね。

 

同作者様の他フリーゲーム感想記事↓

shiki3.hatenablog.com

shiki3.hatenablog.com

 

 

 

『アイビー』

https://www.freem.ne.jp/win/game/16917(現在は非公開)

 

10分ほどで全クリ可能、ティラノ製ノベルゲー。2周前提。

ティラノ製のお約束の通り、オート・文章スピード調整などの機能は一切ありません。セーブはできますが、再起動するとクリア状態がリセットされる?らしいのも注意。といってもスキップ機能はついているので、見直そうと思えば楽々です。

 

面白いなと思ったのは、ノベルゲーからシームレスにクリックADVのようなシステムに変化する点です。

えっ、と一瞬手を止めてから、恐る恐る手を動かして少しずつストーリーの断片を拾っていき、全て理解してしまう──。このプレイ感がまさに本編中の主人公の戸惑いや驚きを追体験しているようでした。

 

一方で惜しいのはストーリー。これ、冒頭の注意書きと台詞である程度先が読めてしまうんですね。もちろん先が読めても期待通りの楽しみはありますが、本作は別。演出を思い返すに、1周目の意外性と2周目の答え合わせを狙っている作品のように感じられるので、先が読めることがマイナスに働いてしまっているように感じます。

いやあでもやっぱり、凝ったギミックや彼女の仕草など、演出の効果が高いからこそとも思えますね。

 

決して夢作品というわけではないのですが、視点主の姿や反応が明記されず全てプレイヤーにゆだねられている点は夢やシチュエーションCDに通ずるものを感じます。この手のやり方をこういうタイプのお話に入れ込んでくるのは斬新だなあ。

斬新といえば、作品の色使いがビビッドカラー?なのも意外性がありました。お話自体はメランコリックだったりダウナーだったりな内容だと思うのでなおさら印象に残りますね。

そんなわけで、グラフィックと演出は満点です。

斬新な雰囲気ゲーをやりたい方は是非。

 

 

 

『画家オリフィエルの娘』

www.freem.ne.jp

 

こちらも10分足らずで全クリ可能、ティラノ製ノベルゲー。ティラノ製のお約束の通り、システムは(中略)。

 

起動して、読み始めた瞬間のあの空気が忘れられません。

まさに美術館、展示のルートへ一歩踏み入れた時の感覚。扉が開けた、って感じがしたんですよね。すごく良かった。

 

全体的にグラフィックは絵画めいた雰囲気で、萌え系アニメ系とは一線を画しています。一方、途中でコミカルな絵柄やコマ割りを交えた演出で、取っつきやすさも出してくれていました。

間口を広く持ちつつ、自身の世界観へそっと連れ出してくれるようなプレイ感です。

 

特徴的なのが時代考証について。

いや、恥ずかしながら自分はあの時代のことも美術のこともさっぱり何一つ知らない人間なので、あとがきの諸々がとてもためになりました。そして何も知らなくても、あの短いプレイ時間の中でしっかりとあの地に立っているような感覚になれたのは、やっぱり土台がしっかりしているからなんだろうなあと思います。知識がある方はもっと細部に注目してテンションが上がったのかも。

 

お話は、うんと、伝記風と言っていいのかな……?

途中でふっとプレイヤーと距離が取られてしまうんですけど、その、空白の中で何があってどんな時が過ごされたのか、想いを馳せたくなる感じが素敵でした。欲を言えばもちろん、クリア後おまけや後日談などにもっと切り込んで長く楽しみたかった気持ちはありますが……。後書の裏事情など踏まえても、良い具合に想像の余地が残る作品だったと感じます。

 

彼女が“画家の娘”ではなく“彼女”の評価で大成したように、彼も肩書ではなく彼を誰かに伝えたかったのかなー、なんて。

 

 

 

『sister in the xxx』

rocotsu.main.jp

 

さらっと数分で終わる、一本道ノベルゲー。兄妹愛、鬱展開。

本作、とある企画の参加作品であり、なんと一週間で制作されたとのこと。その短期間でこんなに体裁の整ったゲームができるのは、いやはや、すごいの一言ですよね……。

 

同じ語りがA→B→Cと続き、視点主のみが変わることで真相が明かされるタイプの作品。Aですでに察しはついてしまいましたが、それでも演出や見え方の変化は細やかで、丁寧な作りでした。

 

キャラクターはシルエット表示ですが、それでも背景画像に自然と馴染んでおり、作中の雰囲気はしっかりと感じるものがあります。

独特の絵の塗り?タッチ?が好みでした!

 

じっとりと陰惨な気持ちになりたい方向け。

 

 

 

「ゆたかな暮らしの屑かごは」

http://knr.webcrow.jp/アップローダーにて配布)

 

一本道、短編。個人的に一気読みするには少し長い話だったように思うので、セーブロードがなかったのは残念。でもそれ以外の機能は充実していて、画面の色合いもメランコリックな雰囲気が魅力的です。

 

お話としては、惨めで哀れでかわいそうな子が報われたり騙されたりする話。

生活水準の違いで友人についていけなくなる、という設定と、そこからいじめに発展する流れの自然さがとてもしっくりきました。ストーリーの構成が違和感なく、主人公のすさまじい卑屈さにもそうなるだけの土壌があるので、すんなり飲み込めたように思います。

 

色々わかった後だと、やっぱりゴミ箱はゴミ箱だから輝けないんだな、と思わされるところもあり、こう、えげつなくてニヤニヤしました。仁科くんがヤり手で若干無自覚ヤンデレを見え隠れさせてくれるところも好き……。

 

何より、終盤にめちゃくちゃ良い情景描写がありまして!

一部分だけ引用してしまいますが、「けれど静かな夜なのだ」と続くあの段落、ものすごくグッとくるものがありました……! あの文章を読むためにプレイしたんだな、と思えるくらいの響きっぷりです。

 

暗い話が好きで、じっとりとした感情に浸りたい方にオススメ。

 

 

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

どれも独特の余韻があって、短いながらも心に残る作品でした!

フリーゲーム「善想モンタージュ」「占択◆スクランブル」感想

「ゲームとはいかにプレイヤーを盛り上げるかというもの!」

そしてこちらはニヤリと笑う余裕も必要な前置き。

 

 

えー、今回はPixel_Note(三條)さんところのフリーゲーム「善想モンタージュ」「占択◆スクランブル」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

どちらも1プレイ数十秒~1分のお手軽ゲーだったので、まとめて取り上げます。相互に関連性はないので、気になる方だけでもどうぞ!

 

 

 

 

『善想モンタージュ

www.freem.ne.jp

 

[概要]

選択肢を選んで3行短文を作るだけの、1分ゲー。

 

[感想]

着目したいのはやはり、演出!

たった数分でもガッツリ印象に残るのはこれらの演出があったからだなあとしみじみ思います。いいですよねあのドンドンパフパフ!!

 

出来上がる文章も組み合わせによってはシュールで愉快。いったいこのプレイヤー(私)は生前どないなことやらかしとんねん、とツッコミたくなりました。たーのしー。

 

まずもう起動画面からオシャレなんですよ。

ゲーム開始なんて言葉は使わない、起動時からすでに世界が始まっている感じが好きです。次の展開を楽しむためのヒントが、少しずつころんと手元へ転がり落ちていく感じも楽しかったです!

 

[一言]

さくっと元気を欲しいあなたに。

 

 

 

『占択◆スクランブル』

www.freem.ne.jp

 

[概要]

ナントカ三術将』シリーズのお祭りスピンオフゲー。シリーズ未履修の方はこちらの記事からまずどうぞ。

 

 

 

[システム・バトル]

本作はなんとシリーズ初の石取りカードゲーム。6ターンで必ず決着するので、テンポよくさくさくと楽しめます。夢中になって数戦、なんてこともあるかも。

初戦で大勝して調子乗ってた私ですが、続けていくと勝率半々な感じでした。10戦全勝みたいな方もいるのかなあ。

 

ただの三すくみや総取りだけでなく、ヘリオールの登場でひっくり返る可能性があるところも好きです。やっぱ一発逆転あると盛り上がりますよねえ。

カードを代用すればリアルやアナログでもやれそうなところがまたいい! いっそカードセットみたいなの販売されないかな……。手札が初めから決まっているので、対面でやると心理戦がより際立ちそうです。

 

あと、何より、BGM!!!

BGMの選曲センスがめちゃくちゃいいんですよ~。シリーズおなじみの曲から新曲まで。BGMと演出を堪能するために数十戦プレイするまである

種類が豊富なうえにランダム再生付きなのも嬉しかったです! このシリーズ、タイトル画面の曲が一番好きになっちゃうんだよな……。

 

 

 

[グラフィック・キャラクター]

 

相変わらずもうグラフィックがたっまんねぇんだ!

差分の量のすさまじさに毎度震えます。もう見てて楽しい! カッコイイ!

しかもただのカットインでなく動きまくるので、めちゃくちゃテンション上がりました。やってやったぜふふふ、って感じ!

このドヤな感じを味わえるのは、本編の敵キャラメインだからこそですね~。多少えげつい手をとっても罪悪感が薄め。むしろ強者笑いができる。はっはっは!

 

ヘリオールが登場した時に三者三様の「げっ来やがった」って顔をするのがすごくツボです。

また、一見ただの勝ち負けでも、キャラを知っているからこその妄想が捗って楽しかったです。レベータプレイで漁夫の利で独り勝ちしたのめちゃくちゃ興奮しました。はっはっは。

 

 

[ストーリー]

 

一通り数戦して、おや、とも思ったんですよ。テキストたっぷり本シリーズにおいて、ストーリーやセリフが一切無いのはかなり珍しいなあと。

ご堪能下さい、あります!! もちろんあります!!!

思わぬ形でテキストが一気に増えたので、「やったー!」と叫んでしまいました。わーいわーい。アツイ展開もしっかり健在です。

悪役キャラメインということで毒っ気が強くなるのかと思いきや、相変わらずくすっと笑える掛け合いも多め。敵も味方も弱い面があって憎めないのがこのシリーズだなあと改めて感じました。

 

 

[一言]

華々しい悪役たちのゲス顔を楽しみつつ気持ち良くなりたい方向け。

 

 

 

 

同作者様の他フリーゲーム感想記事↓

shiki3.hatenablog.com

 

 

フリーゲーム「廃工場の煙突」「ずっとここで」「思考実験インザボックス」感想

「何かと何かが繋がることを人は満足と呼ぶ」

大きくなくとも足るに至れる前置き。

 

 

えー、今回は時雨屋本店さんところのフリーゲーム「廃工場の煙突」「ずっとここで」「思考実験インザボックス」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

相互に繋がりはありません。ないはず?

3時間でゲームを1本作ろう、という「おいおい正気か?」と問いたくなる企画に参加されている作品です。いや、ツクラーさんってすごいなあ!

 

 

というわけで目次はこちら。

 

 

 

 

『廃工場の煙突』

www.freem.ne.jp

 

[概要]

変態執事×クールツッコミお嬢様の一人称視点なダンジョンRPG

 

 

[感想]

 

ワンマップなんですが、きっちり通路に分岐があったり全体マップが用意されていたりと、踏破するのが楽しい広さ。

何より会話イベントがかなり豊富! これだけの掛け合いをこの短時間で詰めてあるのはすごいな~、と感心しきりです。若干ヤンデレじみた会話が見え隠れしてにやにやしちゃいました。うへへ。

 

戦闘もテンポ良し。状態異常は鬱陶しいですが、ジェイムズのTPを溜めるコマンドのおかげで、雑魚敵もさくさく倒せます。むしろ状態異常がないとただの作業ゲーになってたのかも。

 

お嬢様が置物扱いなのも、作中でツッコミ入ったうえでネタにされてるので、上手いな~と思います。

メタ的に考えると、クーのパラメータ調整の時間がなかったのかな……?と邪推もするんですが。でもちゃんと魔法使ったら雑魚敵には対応できるしなあ。

執事に守られつつ自分も戦おうとするお嬢様、という構図はそれだけで萌えるものなので、そういうニュアンスやもしれません。何にせよ面白くて良き!

 

色々と設定があるようなので、いつか見れたら嬉しいな~という気持ちです。

 

 

[一言]

二人のテンポ良い会話をぬるっと聞き流しつつ、さらっと楽しめる一作! 

 

 

 

 

『ずっとここで』

 

[概要]

魔法反射と物理反射を駆使して、指示に従うRPG

 

 

[感想]

 

こういう天からの指示があるゲーム大好きです!!

メタとも言えそうだけど、本作はギリメタ一歩手前な感じもして、表現が難しいですね……。

 

指示に反抗するときっちり反応が返ってきてくれるあたり、ニヤニヤできて楽しかったです。意にならないプレイヤーをよくわかってらっしゃる。

無口主人公ではあるんですが、プレイヤーからも読めないものをエンディングからひしひしと感じて、なんだかこの距離感がすごく心地よいゲームでした。想いを馳せたくなる……。

救いがないようには思うんですが、力強さも感じます。これを鬱展開と呼ぶかは人それぞれかも。

 

バトルはパズルっぽい感じかな?

物理と魔法の反射を使い分ける。ただそれだけなんですが、特に終盤2戦はこの「それだけ」の使いようが面白い。段階を踏んですべきことを把握できる、ゲームのレベルデザインという意味ではかなり興味深いシステムでした。

 

タイトル画面のBGMと暗黒画面が好きで、クリア後もぼうっとそのまま放置してました。余韻を噛み締めたくなるゲー。

 

[一言]

システムメッセージまたは神の声に反抗したくなるあなたに。

 

 

 

 

 

『思考実験インザボックス』

 

[概要]

ワンマップのADV。突然の死。

 

[感想]

選択肢があれば必ずネタが仕込まれる、これぞこの作者様のおなじみだなーと感じます。

ストーリー自体はけっこうダーク路線。双子キャラの代替可能性と、シュレディンガーの猫をうまく組み合わせたお話でした。ノリはゆるっと、後味ざらっと。

 

[一言]

過去も夢も共にどうにもならないものですね。

 

 

 

 

と、こんな感じで。

公式サイトからだとDLできないものもありますので、(202106現在)気になる方はこちらの作者様のツイートからどうぞ。

 

 

 

同作者様の他フリーゲーム感想記事↓

shiki3.hatenablog.com

 

フリーゲーム「木陰のアンチクリスト」感想

「恋は人を狂わせる、それを誰かは魔と呼んだ」

それでも幸せだから大丈夫な前置き。

 

 

 

えー、今回は嫌気性ネオテニー(鍵虫)さんところのフリーゲーム「木陰のアンチクリスト」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

 

www.freem.ne.jp

 

エンドまでは一本道、一部やり込み要素ありのRPG。ふわっと百合。魔女の師弟もの。

 

 

 

というわけで、良かった点など。

 

 

魔女と異端狩りと恋の話

 

やっぱりストーリーとセリフ回しが好みだったのでそこを推して参りたい!

まず、メインキャラ二人の関係性ややり取りがとても和やか

ししょーを慕う元気いっぱいな弟子チコリー

落ち着いた雰囲気でありながら時にはほだされてくれるウルティカ

どちらも魅力的でした~!

「恋」というパワフルで切ないものをガツンと叩きつけてくれる、あのストーリー展開が大好きです。

 

一方で、「魔女」が主役であるとおり、物語の根幹はかなりダーク

このダークな面が匂わせのような形で見せられるのもまた、とっても好みでした。ダンジョンギミックやちょっとした探索、敵キャラの容姿や行動などなど、どこをとっても深読みしたくなる要素が盛沢山。

ちなみに、ボスバトルの前口上もめちゃくちゃカッコよくて好きです。再戦でイベントスキップしてもキメ台詞は読めるの、ものすごく助かる。

 

まとめると、メイン二人だけに着目するとほのぼの、でもその奥底は……という感じで、とっても素敵でした!

 

 

 

あちこちで強調される太陽と月

 

本作で幾度も出てくる「太陽」と「月」、この要素の使い方がすごく好きでした!

ゲームを始める難易度選択の時点で、「うわ好きだー!!」ってなったんですよ。システム用語を作中の世界感で表現してるフリゲ大好きです……。

バトルでは二属性に絞ってシンプルに、短編ゲーのボリュームにぴったりな遊びやすさでした。キャラの性格としてもわかりやすいですし、天体なのがこれまた魔女な世界観って感じで好きです。

そしてダンジョンの謎解きでは、まさかの場面でこの二属性が登場してびっくりしました。ちょうどバトルでも隊列変更の重要性に気付いた頃だったので、相乗効果で上手いな~と思わされましたね……。

 

俗な話をすると、キャラ同士の関係性を太陽と月で表現するヤツすごい好きなので、想起されてにやにやしちゃいました。

 

 

 

宣言があるからこそ燃えるバトル

 

さて、前述の通りバトルの難易度を選べる本作。

私は(ふつう)でプレイしたんですが、いや~これがなかなかに強敵ぞろいでめちゃくちゃ楽しかったです!

味方側にバフデバフの技がないところもさりげなく良バランスだな~と感じましたねえ。私は敵のバフはデバフで打ち消すという発想しかなかったので、「バフはされる前に行動妨害で防げ!」なのがものすごく斬新でした。あと、味方のステータスは気にせず状態異常だけ考えればいい、ここも前述の短編ボリュームにぴったりなシンプルさだなーと感じます。

全体的にはパターン行動をする敵が多く、MP回復手段の制限もあいまって、詰将棋めいたバトルを求められることが多かったかな?

 

バトルがしっかり厳しい分、プレイヤーへのサポートが充実していたところもしっかり注目したいですね。

中でも特に嬉しかったのが、「時計石」!!!!!

自動で今何ターン目かがわかるこのアイテム。そう、プレイヤーがいちいち今何ターン目で……と数えなくていいんですよ! しかもターンを消費して使用する必要すらなく、ただアイテムコマンドを見るだけで良いという! こんな素晴らしい発想、もう、五体投地ですわ。

このほかにも細やかな部分で助かるなあと感じることが多く、隅々の配慮がとてもありがたかったです……。

 

 

 

お得で楽しいやり込み要素

 

エンド一つで一本道の本作ですが、やり込み要素はしっかりご用意されてます!

中には一度トチると取り返しのつかなくなる項目もあるので、1周目での全達成は難しいかもしれませんが……。ストーリーの真相を知ってからまた見返すとかなり見え方の違ってくるシーンも多くあるので、むしろ2周目への導線と考えると面白いのかも。

 

例えば宝箱などは、置き場所が隠してあるもの開け方に謎解きが混じってるもの、二種類あるのも楽しかったですね~。探索のしがいがあって腕が鳴りました。

あと、クリア後の要素になるので詳細は控えますが、プレイ実績がこれまた世界線に合わせた演出で見られるのもポイントです。これは集めたくなっちゃうな~!

 

 

 

 

 

とまあ、こんな感じで。

さくっとプレイしたい方は謎解きゴリ押しもできて、がっつりプレイしたい方はバトルも探索も腰を据えて楽しめる短編RPGでした! 

ダークでセンチメンタルな百合を堪能したい方にオススメです。

 

 

追記ではネタバレ感想。

 

 

 

同作者様の他フリーゲーム感想記事↓

 

続きを読む